第14話 魔法大祭 一日目
年に一度の大イベント――魔法大祭。
魔法学院中の生徒が参加する祭典であり、各学年・各学科が己の技術を競い合う。
競技は全部で四つ。
五キロメートルマラソン
お題競争
必殺技披露
トーナメント式対戦
初日は対戦以外の三競技が行われる。
朝から観客席は満員だった。
第一競技 五キロメートルマラソン
「位置について!」
スタートの号砲が鳴る。
一斉に百人以上が走り出した。
理人も普通に走り始める。
(魔法を使うより体力温存かな。)
ところが先頭を走る一人の男子生徒が突如光に包まれた。
「身体変換魔法――エネルギー体化。」
足が地面から少し浮く。
まるで光そのものになったかのように加速した。
「速い!」
一瞬で全員を置き去りにする。
ゴール。
圧倒的な一位だった。
「細胞を一時的にエネルギー体へ変換し、筋収縮や空気抵抗の影響を極限まで減らす魔法らしい。」
観客席がどよめく。
「すげぇ……。」
理人も感心した。
(細胞単位で状態変化か……かなり高度だ。)
第二競技 お題競争
司会が箱から紙を取り出す。
「今回のお題は――」
「橋を作れ!」
スタート。
炎魔法使いは困る。
氷魔法使いは時間が経てば溶ける。
土魔法使いは強度不足。
しかし一人だけ違った。
「物質創造。」
光が集まり、鋼鉄製の橋が一瞬で完成する。
「完成。」
「早っ!」
教師が強度確認を行う。
「問題なし。」
文句なしの優勝だった。
第三競技 必殺技披露
学院中が最も盛り上がる競技。
強さだけではなく、
・独創性
・完成度
・芸術性
・実用性
すべてが採点対象となる。
何人もの生徒が技を披露していく。
巨大な炎。
吹雪。
雷。
巨大な召喚獣。
歓声が響く。
「次!」
「一年科学魔法科!」
「天城理人!」
観客席が静かになる。
理人は競技場中央へ歩いた。
「俺の必殺技は。」
右手を前へ出す。
「磁界支配。」
瞬間。
周囲数十メートルに強烈な磁場が展開された。
空気が震える。
金属製の観客席。
教師の腕時計。
鎧。
武器。
すべてがわずかに震え始める。
「なっ……。」
教師が驚く。
理人は右手を握る。
ガガガガガッ!!
フィールド内に存在する鉄を含む物体が一斉に理人の周囲へ吸い寄せられた。
さらに、
魔法で帯電させた小石までもが磁場に捕まり宙へ浮かぶ。
「帯電した物質なら材質は問わない。」
理人が指を鳴らす。
数百個の石が高速回転し始める。
半透明の球体が完成した。
「この領域では。」
「俺に近づくことはできない。」
飛び道具を模した鉄球が撃ち込まれる。
しかし。
磁場へ入った瞬間。
進路が曲がる。
全て理人の周囲を公転し始めた。
「攻撃は防御へ変わる。」
最後に右手を振る。
鉄球、小石、砂鉄。
すべてが一直線に射出される。
ズドォォン!!
試験用の岩壁に無数の穴が開いた。
一瞬静まり返り、
その後、
「おおおおおお!!」
大歓声が巻き起こった。
(派手さは控えめだけど、防御性能は群を抜いてる。)
審査員たちも頷いていた。
続いて二年生。
一人の男子が前へ出る。
「俺は。」
「原子解放。」
手を前へ向ける。
指定した空間が一瞬白く光る。
そこに置かれていた鋼鉄製の盾。
木材。
岩石。
すべてが音もなく崩れ去った。
サラサラ……
残ったのは灰のような微粒子だけだった。
「対象空間内の分子結合を切断する魔法です。」
会場が凍り付く。
「空間魔法……いや、それ以上か。」
「防御も攻撃もできる。」
「恐ろしい……。」
理人は思わず息を呑んだ。
(物質そのものを崩壊させるのか……。)
最後に登場した三年生。
「行くぞ。」
空へ向けて両手を掲げる。
上空に巨大な魔法陣が浮かぶ。
「大気中の水分を分解。」
「水素・酸素生成。」
「着火。」
次の瞬間。
ゴォォォォォォォ!!
空を覆うほどの爆炎が発生した。
轟音が学院全体を揺らす。
演習場の奥に設置された巨大な人工岩山が、
ドォォォォン!!
爆発とともに崩壊した。
観客席は総立ちになる。
「山が……。」
「消えた……。」
「なんだあの火力……。」
全員の演技終了後。
投票結果が発表される。
「第三位!」
「一年――天城理人!」
拍手が響く。
理人は軽く頭を下げた。
「第二位!」
「二年――石破武!」
大歓声。
「そして栄えある第一位!」
「三年――神埼信之!」
学院中が歓声に包まれた。
理人は表彰台を見上げながら、小さく笑う。
(威力だけなら敵わない。でも俺の魔法は、まだ発展できる。)
明日はいよいよ、魔法大祭最大の見せ場――トーナメント戦が始まる。




