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第13話 校外学習

 朝早く、一年生全員が大型バスに乗り込む。

 今日の授業は初めての校外学習。

 目的地は王都近郊に存在する第一ダンジョンだった。

 巨大な岩山の麓にぽっかりと口を開けた洞窟を前に、生徒たちは興奮を隠せない。

「おぉ……。」

「本物のダンジョンだ!」

 しかし担当教師は厳しい表情だった。

「静かに。」

 ざわめきが止まる。

「これから説明する注意事項を守れない者は、即退学もあり得る。」

 教師は入口を指差した。

「本日の探索範囲は第一層のみ。」

「第二層には絶対に入るな。」

 声が一段低くなる。

「もし魔物に囲まれた、仲間とはぐれた、異常を感じた。その時は戦わず、必ずベースキャンプまで戻れ。」

 教師の表情はさらに険しくなった。

「……十年前、このダンジョンでは校外学習中に事件が起きた。」

 空気が張り詰める。

「突如現れた黒い魔物によって引率していた教職員は全滅。」

「生徒は辛うじて救助されたが、事件の詳細はいまだに解明されていない。」

 誰一人として口を開かなかった。

「現在も第一層は安全と判断されている。だが、油断だけはするな。」

 教師は笑顔を作る。

「さて、今日の課題だ。」

「一人一個、魔鉱石を採取して帰還すること。」

「それでは探索開始!」

 生徒たちは数人ずつの班に分かれ、ダンジョンへ足を踏み入れた。

 中は意外にも明るかった。

 壁一面に淡く光る鉱石が埋め込まれ、天然の照明となっている。

「へぇ……。」

 理人は壁を触る。

(発光鉱物か。蛍光とは違う……MTPがエネルギーを放出してるのかな。)

 歩き始めて数分。

 ぷるぷると青いゼリー状の物体が道を塞いだ。

「スライムだ!」

 誰かが叫ぶ。

 低級魔物とはいえ立派な魔物である。

 理人は前へ出た。

「まずは実験。」

 右手を前に出す。

「身体電流化。」

 バチッ──。

 青白い電流が全身を駆け巡る。

 筋肉が一気に活性化され、身体能力が跳ね上がる。

「速っ!」

 周囲の生徒が目を見開く。

 理人は一瞬でスライムとの距離を詰める。

 その高速移動は一年生離れしていた。

 触れた瞬間。

 バチィィィッ!!

 電流がスライム全体へ流れ込む。

 内部の水分が一気に加熱され、魔核が耐え切れず砕け散った。

 ぷしゅう……

 スライムは煙を上げて消滅する。

「終わり。」

「えっ、一撃!?」

 周囲が驚く。

 教師も腕を組みながら頷いた。

「身体強化と攻撃を同時に行う電撃魔法か……面白い。」

 一方、他の生徒たちもそれぞれ戦っていた。

「火球!」

 炎がゴブリンを包み込む。

「氷槍!」

 氷の槍がコウモリ型魔物を撃ち落とす。

「風刃!」

 真空の刃が植物型モンスターを切り裂く。

 土壁で防御する者。

 光で目くらましをする者。

 水流で押し流す者。

 それぞれ異なる魔法を駆使しながら魔物を倒していく。

「これが実戦か……。」

 理人は周囲を観察しながら歩く。

(魔法にも相性がある。火は威力が高いが燃費が悪い。氷は拘束向き。風は切断力がある……。)

 戦闘を避けながら壁際を調べていると、小さく黒く光る石が目に入った。

「……これか。」

 岩を軽く砕くと、中から拳ほどの黒い鉱石が姿を現す。

「魔鉱石発見!」

 教師が頷く。

「よし、それで課題達成だ。」

 周囲でも次々と歓声が上がる。

「見つけた!」

「俺も採れた!」

 こうして一年生たちは、それぞれ一つずつ魔鉱石を手に入れ、無事ベースキャンプへ帰還した。

 しかし理人だけは、ダンジョンのさらに奥へと続く暗闇を見つめていた。

(第二層……。)

(あの先に、教職員を全滅させた『黒い魔物』がいるのか。)

 その闇は静かで、不気味なほど何の音もしなかった。

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