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第10話 魔法空間学

国立魔法学院。

六時間目。

天城理人が向かった教室には、今までとは少し違う雰囲気があった。

黒板には魔法陣ではなく、複雑な図形や数式のようなものが描かれている。

円。

球。

立体図形。

そして、空間を表す線。

「……数学?」

理人は思わず呟いた。

正直、数学は苦手だ。

魔法式学や魔法生物学は興味があった。

しかし、数字が大量に並ぶと少し眠くなる。

先生が教壇に立つ。

「本日は魔法空間学について学びます」

黒板に文字が表示される。

魔法空間学

「魔法空間学とは、魔法が展開される範囲や形状を研究する学問です」

先生は一つの魔法陣を表示する。

「魔法はただ発動するだけではありません」

「どの範囲に」

「どの形で」

「どのように存在させるか」

それを制御する必要がある。

先生は例を出した。

「火魔法を手のひらから出す場合」

「必要なのは炎そのものだけではありません」

炎が存在する空間。

熱が広がる範囲。

周囲への影響。

それらを考える必要がある。

理人はノートを書く。

「魔法の場所を設計する学問か」

魔法式学が「魔法を起こす仕組み」なら、

魔法空間学は「魔法を存在させる場所」。

そんな感じだった。

先生は次の図を出す。

「魔法空間学の代表例が、結界術です」

巨大な球状の結界が表示される。

「結界は指定した空間を魔法領域として固定します」

外からの攻撃を防ぐ。

内部を保護する。

特殊な空間を作る。

そのためには、空間の形状を正確に理解する必要がある。

「しかし、今日扱うのはもっと簡単なものです」

先生が言った。

「防御魔法です」

生徒たちが少しざわめく。

防御魔法。

戦闘でも重要な魔法だ。

しかし、魔法式学のように魔法陣を書く準備はしない。

先生は手を上げる。

「防御魔法には、魔法陣も詠唱も必要ありません」

理人は驚いた。

「え?」

今までの魔法は、

式を書く。

詠唱する。

条件を満たす。

何かしら準備が必要だった。

しかし防御魔法は違う。

「防御魔法は、体内の魔力を直接固定化します」

先生が説明する。

「魔力を密度の高い状態へ変化させ、自身の周囲に展開する」

つまり、

体内の魔力

固定化

自分の周囲へ膜状に展開

防御壁になる

という仕組み。

理人は考える。

「体の外に魔力の層を作る……」

まるで透明な装甲だ。

実習。

生徒たちは順番に防御魔法を使う。

「集中してください」

先生が言う。

「魔力を外へ押し出すのではなく、形を維持してください」

生徒の周囲に薄い光の膜が現れる。

「成功!」

歓声が上がる。

理人も挑戦する。

「魔力を固定……」

意識する。

普段なら魔力は流れる。

しかし今回は違う。

動かさない。

形を保つ。

すると――

薄い膜が理人の周囲に現れた。

「できた」

しかし。

次の瞬間。

パキッ。

音がした。

防御膜が消える。

「……」

理人は首を傾げる。

「維持できない」

先生が説明する。

「防御魔法は発動自体は簡単ですが、維持するための魔力消費が大きいのです」

「魔力を常に固定し続ける必要がありますから」

理人は納得した。

攻撃魔法なら一瞬だけエネルギーを使う。

しかし防御魔法は違う。

壁を存在させ続ける必要がある。

「消費電力が高い装置みたいなものか」

先生はまた驚く。

「独特な表現ですが……近いですね」

授業の最後。

先生が注意する。

「防御魔法は便利ですが、長時間使用すると魔力切れを起こします」

「無限の盾ではありません」

生徒たちは頷く。

理人もノートを見る。

魔法空間学。

最初は数学っぽくて苦手そうだと思った。

しかし。

「意外と面白いな」

魔法がどこに存在するか。

どんな形になるか。

それを考える学問。

魔法を「現象」ではなく、「空間構造」として見る。

それは理人の好きな考え方だった。

授業終了後。

理人は教室を出る。

今日だけでも、

魔法式。

魔法生物。

古代魔法。

魔法開発。

魔法空間。

多くの知識を得た。

でも、まだ分からないことも多い。

「この世界の魔法……奥が深いな」

天城理人。

異世界での学校生活は始まったばかりだった。

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