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原理

 鉄骨が落ちてきてても無傷。それはまさに奇跡としか思えない光景であり、本来であれば階戸の無事を泣いて喜ぶべきであった。しかし、そこに流れていたのは異様な空気であり、三人の反応が更にこの状態の異常さを極立たせていた。

「こんな事二度と経験したくねー、、」

「一日に二度も死を回避するなんて、今日は運がいいね」

「悪いの間違いでしょ……」

 心底嫌な気持ちになる階戸と、スキップでもしそうな軽い足取りで楽しそうに近づいてくる星刻。そして

「……何で助けたんですか」

 助けられた事に不満げな月黄泉。

 誰も俺が生きていた事を喜んでいる様子が無い。面白がっている人が一人と理不尽な怒りをぶつけてくる自殺志願者が一人。こいつの為に二回も命を失いかけたのかと思うと、自然と苛立ちが湧いてくる。

「……なんでそんなに死にたいんだよお前」

「知らない。」

「は?」

 予想外の返答に、不抜けた声を出してしまう。知らない?こんなに死にたがっているのに理由の一つもないっていうのか。

「なんとなく死にたい、そういう人もいるんだよ楓」

「それでも、それでも死ぬなんて簡単に言うなよ」

「……」

 言っても理解されないと諦めたのか、それともふて腐れて言い返すのを辞めたのか、月黄泉は下を向いて口を噤む。

「死ぬってのは周りにも迷惑がかかんだよ、今までの恩を裏切るってことなんだよ」

「楓」

「黙ってろ脳内お花畑。いいか、よく聞け月黄泉。」

「…………」

 何を言っても反応が無い。その様子に更に俺の心はヒートアップした。

「死んだら楽になれるとでも思ってんのか?それとも死にたい自分に酔ってんのか?悲劇のヒロインぶるなよ」

「…………」

「おい、聞いてんのか月」

「………よ」

「あ?」

 階戸に怒られてから初めて月黄泉が口を開いた。

「……ろせよ」

「あ?聞こえねえよ!」

「自殺がだめならお前が俺を俺を殺せよ!」

 予想外の返答だった。どの文脈から、殺せに結びついたのかは分からない。他殺だろうが自殺だろうが死ねれば良いと思ったのだろうか。ただ自分の死にたい気持ちを否定された月黄泉の心はもう限界だった。

 一方で、階戸の方も冷静では無かった。度重なる死にかけ体験。助けた人から感謝されず、恨まれる。挙げ句の果てには殺してくれと怒鳴られる始末。反射的に彼の口から出た言葉は、彼の本心とは全く真逆の言葉だった。

「……ああ、そんなに死にたいなら殺してやるよ」

「っっ!」

 まさかそうなるとは毛ほども思っていなかったのか、殺せと言った張本人である月黄泉はその気迫に一歩後ずさる。

「死にたいんじゃなかったのか?その自殺行為はお遊びだったのかよ、かまちょ。」

「ち、違う、俺は、」

「じゃあな、月黄泉」

そういって俺は


ー「位階崩壊」


能力を発動させた。

俺の能力は対象の優先順位を組み換える。干渉対象は、なにも物質だけではない。俺はあいつの精神における()()()()()()()()()()を最下位へと叩き落とした。

死を願う月黄泉は、今ここで死んだ。

「じゃあな、死にたがりの月黄泉。」

 俺は勝ちを確信し、月黄泉の無になった顔を見上げる。しかし、その瞬間

「いっっっっっ」

 依然鉄骨の下敷きの状態であった階戸の体に激痛が走る。痛みが無いから鉄骨を寄せるのをすっかり忘れていたのである。

「あれ、楓、スーパー強化タイムは終わっちゃったの?」

「分からな……って今そんなのどうでもいいので助けてくれないですかね」

 星刻は鉄骨をよせようとするが、何をしてもびくともしない。

「重い~無理い~」

「ほ、本当に死ぬ……」

 目の前にこんなに苦しんでいる人がいるというのに、星刻はもうだめだープリンが無いと力がでないーとわざとらしく倒れ込む。

「あ、あんた、おれ、、ほ」

 痛みの限界が来た俺の言葉が途切れる。その様子を見て星刻は数秒んーと考え込んだあと、何かを思い出したように目を輝かせる。

「月黄泉くん!」

「……は?」

 限界を迎えた俺の口からでた「は」という言葉にニコニコしながら星刻は答える。

「僕がここに月黄泉くんを連れてきた理由覚えてる?」

 痛みで頭が回らない俺は、返答する余裕すら無い。その状況を理解しているのかしていないのか、いつものゆっくりとした口調で星刻は続ける。

「君のそのスーパー強化タイムの鍵が彼なんじゃないかなって」

確かにそんな事を言っていたような気がする。でも

「(だからなんだってんだよ)」

 月黄泉が俺のスーパー強化タイム(仮)の鍵なのかもしれない、それは理解した。しかし、それが分かったところで何の解決策にもならない。そもそも発動条件が全くもって不明だ。

「これは仮設なんだけどね」

 俺の心を見透かしたかのように星刻は言葉を重ねる。

「彼のー()()()()()()()()()がキーなのかもしれない」

「っっっっっっ!」

 その言葉を聞いた瞬間、俺は反射的に能力を解いた。希死念慮を奪われ虚ろな顔つきをしていた月黄泉の瞳に再び光が宿る。それと同時に鉄骨から重さが消える。

「ほんとに、どういう原理なんだよ……」

 星刻の読み通り、月黄泉の『死にたい』という願望が戻った瞬間、階戸の体は強化されたのだった。

拙い文章ですが読んで頂きありがとうございます。

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