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灰色大戦  作者: 灰色のネズミ
第一章 炎路のラスボス
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担任教師高天ヶ原

今日のコーデ


髪型はふわふわな三つ編みで、ふさは肩にかけている。

服は緑の黒のトップスに、黒のロングスカート。咄嗟にの柄は特徴的で、黒い部分が首元から左右は肩口まで、下は胸下にあるボタンまで、背中側は腰あたりまで黒となっている。袖は肘下で捲られている。

首からは銀のリングネックレス。

 住田は母が作り置いてくれた朝食を済ませ、すぐ隣の家の前で待つ。ここは街の名物『大きな湖』のそばで、家から出て前を見れば朝日に照らされ煌めく湖が、幻想的な存在感を放つ。


「ふあ……」


 欠伸。とても魔王の子がいる街とは思えないほど、朝は平和だ。昨日も住田の中学の時からの友人、炎路と島が魔王の子と戦ったと言うのに、住田はとても平和だった。

 新垣美穂も家から出てきて、共に学校に向かう。新垣美穂は緑高校で、住田は赤高校。隣り合う学校なのに通うところは別。


「あー、めんどくさ。なんで学校二つあって、それがよりにもよって隣り合って建ってんだ?」


「え? 知らないの? この街に何年住んでるの。『三傑』の二人がこの街が出来上がる前に、敷地を取ってそこに学校を作った。仲の悪いその二人は、どっちも学校を作った。どうして学校を作ったのかは知らされてないけど、でも結果として互いに高め合うライバルとしてあっという間に成長して、今では人間界一のヒーロー高校となった。あ、人間界の一位二位か、二つあるから。もう、こんなこと常識でしょ!」


「その常識がわからないの。まったく、どっちも人間界の頂点を取ってるんだから、もう一つに纏まってくれたらいいのに」


「そんなに私が心配なら緑校に来ればよかったじゃん」


「別にそんな事言ってないだろ、その通りだけど。学校の体制が合わなかったっていうかな、自由じゃない気がして」


 二つの高校はそれぞれやり方が違う。

 赤校の制度は『主席』。真田村雲がそうだったように、他にも二年と三年にも代表となる主席がいる。実力が校長に認められてなれるものだ。ただし校長が関与するのは一年の主席取り決めだけ。そこから二年や三年に上がるまでに生徒と教師に実力を示し、認められればまた主席のままでいられる。認められなければ主席から降ろされる。学校の規則は緩め、そのため緩さから成長が見込めないと感じた生徒が緑校に移る事もままある。

 緑校の制度は『生徒会』。三年から二年までの上級生から立候補させ、5、6人の生徒の代表を決める。行事のあらゆる取り決めは生徒会が全てを取り仕切る。生徒会は仲間と相談して学校をよりよくするため、校長の管理の元、活動。規則は厳しく、中にはあまりの厳しさに生徒が赤校に移る事もままある。


「でもつまりは、他者からの期待から生まれる指導者か、立候補して自分からやる指導者かってことだろ。俺は親がヒーローってだけで、無能力だし、期待もされないだろうしラクだなって」


「ふーん、でもわかんないじゃん」


「わかるだろ。でもヒーロー高校卒業はデカい資格だ」


「だから通うって? つまんないの」


「ふん」


 そんな話をしながら、西から東へ歩き、学校の前まで来ると校門前がなんだか騒がしい。


「なんだろ?」


「さあ?」


 と、集まっている生徒の中に中学で同じだった緑校女子生徒を発見。住田はその肩を叩き、どう言う事かと尋ねた。するも緑校女子は校門の先にいる二人を指差した。

 一人は二メートルもある巨漢で、一人はその巨漢に見下ろされる小柄な少女……の見た目をした人ならぬもの。

 灰色の子の方は誰でもわかる。魔王の子だ。

 そして片側は、住田が昨日会った人物。入学式の後に教室で学校の説明をした担任教師。名前は高天ヶ原(たかまがはら)。身長210センチ、この街では珍しくないが、低身長のタールと並ぶとよりデカく見える。


「たしか、魔王も俺と同じクラスになったんだよな。つまり魔王の子と、その担任が校門の前で睨み合ってるのか。いやどっちも感情のわからないすました顔してるけど……何してるんだ?」


「あ! あの子!」


「何か気付いたのか、美穂」


「可愛い!」


「は?」


「ほら見て! すっごい、お人形さんみたいに可愛いよ! 服も可愛くて……」


「服? あ」


 新垣美穂の謎の可愛い連呼の中にあった答えを聞いて、住田は気づいた。タールの服装が制服ではなかったのだ。

 緑と黒のトップスと黒のロングスカート、さらにはアクセに首からはネックレスをぶら下げて、髪型もふんわり三つ編みでふさを肩にかけている。お姉さんちっくな格好だった。

 ちょうど騒ぎの中心にいる二人の会話が聞こえてきた。


「おい、どうして制服を着てこなかった。この質問五回目だぞ」


「それは、あの制服も良かったけど今日は別のを着てきたかったから。この答え五回目だぞ」


「ワガママ言うんじゃない。ここは学校だ、周りに合わせろ。それができないならできるようにしろ、帰るなんて甘えは許さん。この叱責五回目だぞ」


「じゃあ女子制服も着させろ。この返し五回目だぞ」


「お前は“息子”、つまりは“男子”として登録されている。女子の制服は似合う似合わない着れる着れないに関わらず禁止だ。許すと他男子が女子服を着るだろう。この返しも五回目だな」


「別に誰だろうが何だろうが好きなもの着ればいいだろ。この返しは初めてだ」


 言い合う二人の会話からして、タールが勝手に私服を着てきたため担任の高天ヶ原が注意し、そしてそこから延々と言い合いが続いているのだろう。いや延々ではなく五回くらい繰り返してるらしい。

 タールは、まあ魔王の息子だと言うのだから不思議ではないが、担任相手に遠慮ない口調で強情にしているし、高天ヶ原も退く気はない様子。


「高天ヶ原先生、魔王相手にすげーな」


「ねーねー住田、あの子のメアド知ってる? 今度カラオケに誘うんだー」


「……お前さっきから何言ってんだ? なんでそんな好印象?」


「えーだって可愛いじゃん。というかあれが魔王の子なんだー、へー意外〜」


「あのな! アイツはあんな見た目でも魔王なんだぞ! いいか、魔王ってのは『変身』するんだ! 第二形態だ! あれは仮の姿で、本当はもっと怪物みたいに恐ろしくなるかもよ?」


「ええ! 変身⁉︎」


 住田が魔王の本当の恐ろしさを説明すると、新垣美穂は恐ろしくなって身を引いた。と、そこで新垣美穂は見覚えのある赤校生徒を見つけた。


「あ! 島くんだ!」


「え? あ、ほんとだ」


 住田も見覚えのある青髪を見つける。


「……美穂、もうお前は緑校に行っとけ」


「え、なんでよ」


「いいから」


「ぶー」


 先に新垣美穂に緑校へ向かわせてから、住田は島に近寄る。島は野次馬の後ろの方で、離れたところからタールと高天ヶ原の言い合いを眺めていた。

 目元に隈ができていて、肩も落ち込み、暗い感じだ。


「よっ、島。おはよう」


「………おう」


「どうした? なんか様子が変だぞ」


「………まあな」


 島は住田の方を見ずに、ずっとタールの方を見ている。


「なあ、お前って魔王と戦ったんだよな? 結果は知らされてないが、どうだったんだ」


「……勝ててねぇ」


「え?」


「俺はまだ勝ててない……あんなの、勝ちに入らねぇ、降したとは言えねぇ。記憶のない勝ちなんて奇跡でしかない、奇跡で全てがうまくいくわけがない。魔界の魔王や魔物を殺すってつもりなのに、奇跡で満足しちゃダメなんだ………くそ」


 何があったのか、住田は首を傾げる。

 と、島のある方を見ていると、北側の道から見覚えのある白と黒の美少女が歩いてくるのを見つけた。真田家の次女と三傑山の助校長の孫娘、その二人がやって来ていた。


「むらくも……あなた、結構遠慮ないのね」


「え! わ、私、加奈子に何かした?」


「朝起きるたらいつのまにか私の布団に入って来てたわよ」


「あ、なんか寝てる時柔らかいもの抱きしめてる感覚したけど……夢じゃなかったんだ」


「うわごとで姉様、姉様ってずーっと……」


「うわわっ! やめてやめて!」


「まったくこんな事なら泊まらせるんじゃなかったわ」


 10年来の仲だろうか。住田から見て二人の会話はそれほど仲良さそうに見えた。茂木加奈子の方は冷たくあしらっているが、どことなく優しさが感じられた。


「もう泊まっちゃダメ? 加奈子の卵焼き甘くて美味しくて、また食べたい」


「卵焼きなら貴女に作ったお弁当の中にあるわよ」


「えへへ、加奈子って優しいよねー」


「貴女がぐいぐい来るからよ。噂で聞いてたのと違って押しが強い……」


「初めて出来た友達だもんー……あ、いや、初めてはタールか」


「……………」


「ん? どしたの? あ、もしかして嫉妬?」


「……いいえ、貴女のコミュニケーション能力の低さを憐れんでいたのよ」


「ひど! てか言い方きついし、やっぱなんかイラついてない⁉︎」


「お弁当も返してほしいわ」


「そこまで⁉︎ ごめん、謝るから許して……何を許してもらうのかわからないけど、今日も泊まってもいい?」


「どうして……貴女だって立派な家があるじゃない」


「友達と一緒にいたい……なんて」


「朝昼晩一緒にいたいとか、本当、意外に大胆ね。嫌よ」


「あっさり断られた! そんなこと言わないで———アイテ!」


 ずーっと喋り続けて、校門前にできていた野次馬の集団に気づかず、真田村雲は人にぶつかってしまった。そこで集団の存在に初めて気付いた様子。


「イテテ、す、すみません、前を見てなくて……って、あれ? なにこれ?」


「!」


「あ! タールだ! って、なんで先生と……あ、服が違って———」






「タールきゅううううぅぅぅん♡♡♡ あーいたかったぞッ♡」







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