母のいる家庭
「すみだ〜〜! 起きろー!」
入学式より、次の日。
黄色の少年住田は朝、紫の少女新垣美穂に大きな声で叩き起こされた。マフラーを巻いた彼女は、ツインテールをぶんぶん振り回して、住田の布団をひったくった。
「うう〜ん、美穂、今何時だよ……」
「七時! 入学そうそう初日に遅刻なんてありえないよ!」
「でも炎路も島も無断欠席だったろ」
「悪い事を真似しない! 私のような健全で明るい可愛い女の子を真似しなさい!」
「なら一個言っていいか」
眠気まなこを擦り、そして住田は新垣美穂を指差してこう言った。
「パジャマのままな奴の、どこを見倣えって言うんだよ」
「え……あー!」
マフラーはしてきたが、服はパジャマのままだった。自分の姿を確認して新垣美穂は顔を真っ赤にする。
「わわわ! こ、これは、そう! 住田を起こすために急いでたからなの! 住田が寝坊するのが悪いんじゃん!」
「そ、そう」
「そ、それじゃ! 私は一回家に帰るから、先に家の前で待ってて!」
それだけ言って、新垣美穂は部屋から出て行った。
住田はため息をつき、赤校の制服に着替えてから、一階に降りた。玄関では母親が今から出勤するところだった。
「いってら」
「おう色男、おはよう」
「なんだよそれ」
「朝から可愛い幼馴染に起こされて、いいご身分ですこと。私なんか愛情のかけらもない時計よ」
「もしかして玄関通った時も母さんはここにいたのか? 見てた?」
「うん。まさかパジャマで男部屋に突撃するなんて思わなかったわ。美穂ちゃんったら大胆」
「見てたなら俺の部屋に来る前に止めてやれよ。いらん恥かいただけじゃんかアイツ」
「恥を見るくらいいいじゃん、どうせ結婚すんでしょアンタら」
「……しねーよ」
「いい? 結婚って言うのはね、その相手のうんこ触った手で握った握り飯が食えるかどうかなの」
「母さん独身未婚だろ」
支度していた住田の母は、住田の頭を撫でる。住田は金髪で母は黒髪。
「ふふっ、アンタはうちの子よ、間違いなく」
「……うん」
「そいじゃ、中央街に出張だからかなり日がかかるけど、そのうち帰るから。美穂ちゃんとこの家にもよろしく言っといて」
「いやもう美穂んちに頼りになる必要ないって」
「だーめ」
息子のおでこにデコピンしてから、住田の母は出て行った。




