第二十二話 路地裏の露店
失踪したの?と思われたかもしれませんが……していません!
ですが、更新遅めですみません。
「いらっしゃーいッ! 南国でしか食べられない絶品の果物があるよー!」
「こちら東方の国の生地を使った雑貨品でーす!
見ていってくださーい!」
商業区に近い地区では感謝祭の開催より先駆けて、他国の商人たちが早めに露店を展開し、帝都の産物以外の品々を売りに出していた。
なぜ感謝祭の開催前に営業しているのか疑問を浮かべると思うが、答えは明白だった。
他国の商人が帝国に赴くのと同じように、感謝祭の話を聞き他国からの観光客、帝国に赴いているからだ。
早い話、開催前にはすでに大勢の客が帝都にいるという事である。
店員の売り込みや他国の珍しい品々に目移りして購入する人々によって、感謝祭の為に開かれたそこは晴れやかな天候と賑やかな声が合わさり、活気のある露店通りと化していた。
その人混みの中に、レイオスの新しい服を購入しに来たジェシカ。
衣服を販売している露店通りを回っていたにもかかわらず、彼女はまだ一着も服を購入していなかった。
(……無難な服が無いわね)
ジェシカの言う通り、露店で売られている衣服は土産や凝った品がほとんどで、一般人が着るような服はあまり売られていない。
理由はもちろん感謝祭のせいであり、ふだん露店で売られている町民向けの衣服は裏へ片づけられ、表に出る機会が無くなってしまったのだ。
(試しに来てみたけど、そんな都合よく売っている店はないわよね。……はぁ、仕方ない。商業区の店に買いに行こう)
ジェシカはイエガーに狙われているレイオスの状況を鑑みて、目立つ服の購入は避けていた。しかし露店で目当ての服が入手できないとジェシカは判断し、露店通りを出ようとする。
(農民の秘密基地みたいに、露店が路地裏にあったりしないかしら……)
トニーと食事した隠れ家レストランを思い浮かべながら、ジェシカはふと近くの路地裏へ目を向ける。
そこで彼女の足が突如止まった。
「…………あった」
あるものが視界に入り、目を大きく見開くほど驚いているジェシカ。
それもそのはず、その路地裏には露店がひっそりと佇んでいたからだ。
自分の望んでいた店が存在していることに驚きながらも、ジェシカは勇気を出して店に近づく。
その露店は通りに展開している店とは違い、屋根も壁もない敷物を敷いて商品を陳列している質素な店だった。
しかしその店も服を扱っており、なおかつジェシカの望むような衣服が売られていた。
そして店員らしき人物が木箱の後ろでしゃがんで荷物整理していたが、路地裏の暗闇と荷物の木箱の陰で姿がよく見えず、ジェシカはおそるおそる声をかける。
「あの〜……すみません」
「……え? あっ! い、いらっしゃいませ……」
(ーーお、女の子? しかも一人?)
木箱の後ろから立ち上がり、オドオドしながら挨拶してきた人物は、小柄な少女だった。
店員の正体に驚きながらも、接客してくれた少女に対して目線を合わせるように屈み、ジェシカは笑顔で挨拶する。
「こんにちは。急用で男物の服が必要なのだけど、これくらいの大きさのってあるかしら?」
「…………」
少女はジェシカの視線に合わせると、何故か言葉を発さずに、ジェシカの顔を驚いた表情で見ていた。
当然、少女の反応に違和感を感じたジェシカは、心配をしながら少女に声をかける。
「……? どうしたの?」
「ーーッ! い、いえ! なんでもありません! 男性の服ですね? 少々お待ちください」
声をかけられて正気に戻った少女は、ジェシカが両手で示した寸法の服を足元の木箱から取り出し、ジェシカの前に提示した。
「こういうので、どうでしょうか……?」
少女が見せた服は、胸元に結び紐が付いている象牙色のシャツと亜麻色のズボン。そして皮のベストの三点セットだった。無難な品だが、それら全てはジェシカが求めていたタイプの衣服だった。
ジェシカはその衣服を手に取り、大きさや丈夫さを確認をする。
衣服の材質は一般的なものだったが、つなぎ目などがしっかり縫われており、見た目では分かりづらいが長持ちができる代物だった。
「じゃあこれと、あと二着ほど見繕ってくれる? それを買わせてもらうわ」
「あ、ありがとうございます! 少々お待ちください!」
出来の良い衣服を確認したジェシカは、少女に他の服を選定してもらい購入に移る。
その最中、少女が衣服を取り出した箱の中に靴や下着が収納されているのをジェシカは目撃し、ジェシカは"服以外にも扱っている品があるなら見せて欲しい"と少女に頼んだ。
そして支払いが済んだ時には、ジェシカは服と一緒にブーツと下着も入手し、今日の目的の一つであるレイオスへの衣服を用意することができた。
ちなみに靴と下着は、少女いわく日を変えて販売する品を変えようとしていたので、服以外はしまっていたらしい。(なのでジェシカに声をかけられる前にしていたあの作業は、後日陳列する靴や下着などの整理だったのだ)
そして自分の望み通りのような店と出会い、衣服以外の品も手に入れたジェシカはすっかり上機嫌となり、少女に再び笑顔を向けて礼を言う。
「本当に助かったわ。お祭りの影響で普通の服がほとんど売られてなかったから困ってたの。ありがとうね」
「い、いえ! あの……お、お役に立てなら私も嬉しいです」
ジェシカの心からの感謝が伝わったのか、少女は紅潮しながら笑みを浮かべた。その雰囲気は最初に会った時とはえらく異なっていたが
可愛いので何も悪い問題は生まれない。
愛らしい反応をした少女に、ジェシカは避けようの無い興味を抱く。
そして少女と話をしようとしたその時
ぐうぅぅぅ……
少女は大きな腹の虫を鳴らした。
客の前で醜態を晒してしまい、気まずそうにしている少女にジェシカは持参していた昼食のサンドイッチを譲る。
少女は最初断ったが、ジェシカは"予備があるから平気"と言い、空腹の少女の手を優しく掴み、掌にサンドイッチをのせる。
根負けした少女は感謝を伝えた後、柔らかいパンと瑞々しい野菜の食感に感激しながら黙々と食べ続け、様子を見ていたジェシカは喉詰まりを心配して少女に水も渡す。
その後、腹を満たした少女は少しずつ元気を取り戻し、壁に寄りかかりながら二人はお喋りを始める。
そして最初にわかったことは、少女は『アメリア』と名で、父と二人で『エカリア村』という地から来たことだった。
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