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第十九話 何スライム? 

アッシュの体重表記に『グム』って書いてありますが、この世界での『g』の呼び方です。


 救世の勇者イエガーへの復讐にレイオスと協力することを選んだジェシカ。


 そして彼女は、夕食の野菜スープと半熟の目玉焼きを乗せた焼きベーコンをレイオスに振る舞い、イエガーを殺すのに障害となる"黒い力"の打開策ついて一緒に夕食を堪能しながらレイオスに相談する。(もちろんアッシュにも水球を振る舞った)



 しかしすぐにはできなかった。



 それはレイオスが泣きながら食事をしていたからだった。



「うぅまあぁあいぃいいいぃぃ……ぐすん……」


「……スープがしょっぱくなるわよ」



 レイオス曰く、まともな食事は一ヶ月ぶりで、隠蔽監獄では水も食事も出されずに、常に空腹との戦いだったらしい。


 しかしそんなある日、孤独な牢屋の中である存在と出会ったことをレイオスは話し始めた。


「壁に開いてた小さな穴から侵入して、アッシュがおれがいた牢屋の中に入って来たんだ。それでおれはアッシュと出会ったんだよ」


「……えっ? ス、スライムくんに?」


 まさかの灰色のスライムとの出会いがあの監獄で起きていたことにジェシカは驚く。


 そしてレイオスはアッシュとのエピソードを語り始める。


「最初は警戒して距離を取っていたんだけど、話し相手もいなかったおれはアッシュに話しかまくってさ、そうしている内に意思疎通みたいなのができて、それで仲良くなったんだよ。いや〜アッシュが敵意の無いスライムで助かった〜」


「それであなたが名前をつけたの?」


「まぁね! それでアッシュってすごいんだぜ!

おれが空腹なのを理解してか、何処からか木の実や水を持って来ておれにくれたんだ。あの環境のお陰で空腹耐性のスキルを手に入れられたけど、アッシュの差し入れが無かったら流石にやばかったな〜」


「……」


 レイオスの話を聞いて益々アッシュに対しての謎が深まり、ジェシカはテーブルの上で水球を飲むアッシュに怪訝な顔を浮かべる。


「……ねぇ、スライムくんって他のスライムとは違う感じがするわよね。何の種族なのかしら?」


「そういえばアッシュの鑑定をしたことないな。よし! 調べてみるよ!」


 アッシュの正体を気になったジェシカが疑問を口にすると、今まで気にしていなかったレイオスも気になり、鑑定のスキルをアッシュに使用した。


 すると水球を飲み干して寛いでいるアッシュの前にステータスウィンドウが表示された。


************************



 【名前】 アッシュ 


 【種族】 クリエイトスライム


 【年齢】 三ヶ月   【職業】 なし


 【身長】 10セメトル 【体重】 10グム


 【称号】 物好きスライム


 【レベル】 3


 【生命力】 150  【魔力】 150


 【体力】 150  【知力】 70


 【精神力】 100 【成長力】 50


 【器用】 1000 【敏捷】 100


 【幸運】 100  【魅力】 30


 【攻撃力】  50  【防御力】 50


 【魔攻撃力】 50  【魔防御力】 50


 【状態】 なし


 【習得技】 なし


 【習得魔法】 不可視(インビジブル)


 【所持スキル】 軟体 縮小 俊敏 

         魔力節約(小) 鍛治 複製 


 【固有スキル】 なし



************************



「……クリエイト、スライム? 初めて見るわね。……?」


 未知のスライムであるアッシュのステータスウィンドウをまじまじと目視するジェシカだったが、一緒に見ていたレイオスが何故か落胆していた。


「おれ……アッシュに色々負けてる……」


 どうやらアッシュより能力が劣っていることに、ショックを受けていたようだった。アッシュのステータスは並みの冒険者なら倒せるほど弱いが、非戦闘員や民間人並みであり、今の貧弱化しているレイオスよりは上だった。そんなレイオスをジェシカは励ます。


「私に恩返しするんでしょ? こんなことでへこたれないでよ」


「……そうだよね。ありがとうリリス。それにしてもクリエイトスライムか〜……。器用さがかなり高いし、スキルに『鍛治』と『複製』があるから、物作りが得意なスライムってことかな? ねぇアッシュ。お前って何か作れるの?」


 今までイエガーの代行者として様々な魔物と戦ってきたレイオスにとっても、アッシュの様なスライムは初めてだったらしく、レイオスはアッシュに何ができるのかを尋ねた。


 するとアッシュは腕?の様な部位を出し、ジェシカのベッドにある盤上遊戯を指す。


「えっ! あれはお前が作ったの!? おれはてっきり、あれはリリスの物かと思ってた……」


「私のじゃないわよ。なるほど、そういうことだったのね……」


 ジェシカは隠れ家に戻ってレイオスとアッシュが対戦中だったのを確認した際、自室に身に覚えのない物があることに疑問を感じていたのだが、あの時は今まで眠っていたレイオスが目覚めたことによって、盤上遊戯の方に意識を向けることができなかったのだ。


 さらにジェシカは部屋を見渡しながら、盤上遊戯に対してのもう一つの疑問も解消する。


「部屋をよく確認すると、そこの石壁とそこの天井、あと棚の一部分が少し抉り取られているわね」


 ジェシカが指摘した場所をよく目を凝らして見ると、彼女の言う通りに、ある部分がスコップで土を掘り起こした様に抉り取られていた。


「……もしかしてアッシュ。あれの材料って、リリスの部屋の一部?」


 レイオスが恐る恐る盤上遊戯に指差しながらアッシュに確認すると、アッシュは無邪気に頷く。


 そしてすぐさまレイオスは頭を下げてジェシカに謝罪する。その際に下げた頭は思いっきり机にぶつかった。


「ゴメンリリス!! アッシュが勝手に君の部屋を弄ったりして!!」


「別に部屋が壊れる程じゃないし、気にしてないわよ」


 ジェシカの言う通りほんの小さな損傷だったので、

家主のジェシカはさほど気にしていなかった。


「それにスライムくんがあれを作ったのって、きっとあなたの為でしょ。今まで孤独だったあなたと一緒に遊ぶことができるようにね。そうでしょう? スライムくん」


 ジェシカはアッシュのレイオスに対する配慮を理解し、質問を受けたアッシュは頷く。


「アッシュ……ありがとな」


 隠蔽監獄で脱水症状を起こさない為に極力涙を堪え続けていたレイオスだったが、今はそれを気にせず存分に嬉し涙を流し、アッシュに礼を言う。


「それにしてもあんな細かいのをよく作れたな〜。素材を別にして駒とか色分けしてるし、ホントすごいなアッシュ!!」


 盤上遊戯は駒やマス目が市販の売り物と同じ位に精密に作られており、出来の良さに思わずレイオスはアッシュを称賛し、アッシュは照れる動作をした。


「本当に人らしさがあるわね。この子……」


 世の中にいるスライムでも一際人間味があるアッシュに、ジェシカの興味はより増していった。


「なぁアッシュ。一つ頼みを聞いてほしいんだ」


 唐突にレイオスは瞳を真剣な眼差しに変え、アッシュにあることを頼み始めた。


「お前のその器用さは絶対リリスの助けになると思うんだ。だから頼む! おれと一緒にリリスの復讐を手伝ってくれ! お前の力をおれ達に貸してほしい!」


 魔物だろうと関係なく、信頼できる存在としてアッシュを見ているレイオスは、誠心誠意を込めてアッシュに協力を要請する。


 熱意が伝わったのか、アッシュは両腕?のような部位を出し、大きな丸のサインを示した。


「承諾してくれんだな! ありがとうアッシュ!」


 アッシュを持ち上げて頬ずりし、感謝を伝えるレイオス。その光景に少なからずの嫉妬心をジェシカは抱いていたが、アッシュがこれから協力してくれることに喜びを感じ、ジェシカも感謝を伝える。


「ありがとうスライムくん。……だけどスライムくん。私達が殺そうとしている相手はとっても危険なの。もし今後自分の身が危なくなったら、私達のことは気にしないで、すぐに逃げたり隠れたりするのよ。いいわね?」


 ジェシカの忠告を聞き入れたアッシュは頷き、腕?のような部位をジェシカの前に差し出す。


「……もしかして、握手?」


 アッシュの謎の行動の意味を"握手"と解釈したジェシカは尋ねると、アッシュは頷く。


「ふふ、わかったわ。じゃあ改めて……これからよろしくね」


 小さなアッシュの腕?を優しく握るジェシカ。


 するとジェシカの頭の中で、ある文字が浮かび上がる。



『クリエイトスライムが従魔に加わった』



「……え?」


「? どうしたのリリス?」


「この子、私の従魔になったみたい」


「え!? ウソ!?」


 突然の従魔契約が完了したことに二人は驚き、レイオスは再びアッシュのステータスウィンドウを表示する。


************************



 【名前】 アッシュ 


 【種族】 クリエイトスライム


 【年齢】 三ヶ月   【職業】 なし


 【身長】 10セメトル 【体重】 10グム


 【称号】 物好きスライム


 【従魔契約者】 リリス


 【レベル】 3


 【生命力】 150  【魔力】 150


 【体力】 150  【知力】 70


 【精神力】 100 【成長力】 50


 【器用】 1000 【敏捷】 100


 【幸運】 100  【魅力】 30


 【攻撃力】  50  【防御力】 50


 【魔攻撃力】 50  【魔防御力】 50


 【状態】 なし


 【修得技】 なし


 【修得魔法】 不可視(インビジブル)


 【所持スキル】 軟体 縮小 俊敏 

         魔力節約(小) 鍛治 複製 


 【固有スキル】 なし



************************



「……ほんとだ。従魔契約者の項目にリリスの名前がある……」


「ふふ、スライムくんは私の従魔になってもいいって思ってくれたのね。とっても嬉しいわ」


 レイオスから取り上げるが如く、自身の手のひらにアッシュを移動させたジェシカは、優越感を感じながらアッシュに微笑む。


 するとアッシュはジェシカの肩まで移動し、彼女に頬ずりを始めた。


「ふふ、くすぐったいわよ」


「……なんか悔しいな」


 親しい友人を他の人に取られたかのような気分を味わうレイオス。


 しかし、心強い仲間が増えたことに喜びを感じ、表情はすぐに朗らかにもの変わる。


 まだ謎な部分はあるものの、友好的で不思議なスライムは、改めて二人の同行者として加わった。


前のお話でありましたが、ジェシカはむかし名無しの子供として教会に匿われた後、『リリス』で情報を上書きされています。偽装ができないライセンスカードや、鑑定によるステータス表の載る名前も偽名なのはそういう理由です。


その時の詳しい経緯や本名がバレるお話も随時更新します。


読んでくれてありがとうございます!


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