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第十八話 協力者になる

新章……スタートゥウゥ!!


 救世の勇者に代わりをやらされていた青年は、自分を助けてくれた少女が勇者に復讐することを知ると、恩を返す為に少女の協力者になることを決意した。


 

 そして少女の返事は……



「遠慮するわ」


「ぐぅ……ッ!!」


 断りの返事だった。


 肯定してもらえると思っていたレイオスは、まさかの返事に精神的な大ダメージを負い項垂れる。


「気持ちは嬉しいけど、私はあのイエガーを殺そうとしているの。この世界で最強と言われているあのイエガーを。悪いけど、私より弱いあなたじゃどうやっても足手まといになるじゃない」


「仰る通りです……でも!」


 正論を言われても引き下がらずに、レイオスは自分の利点を主張する。


「おれと一緒にいれば、イエガーに出会う機会がたくさんあると思うんだ! ほら、イエガーはおれを殺すの失敗しているから、今頃血眼になって探しているはずだよ。今のイエガーは皇族並みに接触するのは難しいし、わざわざこっちから会いに行って大変な目に遭うよりも、おれを使った方が効率的じゃない?」


「あなたそれ……()()()()()()()()()()()()()()()()()って言ってるようなものよ? その意味わかってる?」


「うん。()()()()()()()()ってことでしょ?

もちろんわかってるよ。だっておれ、イエガーに存在を消されるくらいに殺されそうにあったんだもん。今度会ったら本当に殺されると思う」


 利点の危険性に気づいたジェシカはレイオスを指摘する。しかしレイオスは引き下がる姿勢を一切見せなかった。


「だったら尚更、私に協力するのは駄目よ。せっかく助かった命を無駄にしているようなものじゃない」


「……やっぱりきみって優しいんだね。さっき冷たく正論を言ったのも、おれを気遣ってくれたからなんだよね?」


「…………」


 真意を見抜かれてジェシカは黙ってしまう。


 ジェシカにとって一番恐れていることは、罪のない人がイエガーに殺されるということ。だからこそ"イエガーに接触しに行く自分と関わったら今度こそ命がない"という事実にすぐに気づいたジェシカは、わざと突き放す態度をとり、レイオスを守ろうとした。


 しかし、お人好しな部分が裏目に出て、すぐに見抜かれてしまったジェシカ。先程の強く意気込んでたレイオスを見て、簡単には諦めない相手だと理解したジェシカは、無言のまま頭の中でレイオスが諦めてくれる方法を考える。


 相手を納得させる方法を互いに考え始め、地下室に沈黙が生まれる。するとレイオスの方から口を開いた。


「ねぇ……リリス。ちょっと聞きたいんだけど、きみはどうやってイエガーを殺すの? 何か算段があるの?」


 レイオスはジェシカが、どのような作戦でイエガーを倒すのか気になり質問した。


「……私は隠密スキルと欺きの魔法、それと転移の魔法が使えるの。だから気配と姿を消してあいつを殺すつもりよ。ちなみに前にイエガーに会えた時、あいつは一切気づかなかったわ」


 隠蔽監獄の件で、イエガーに察知される心配がないこと確認できているジェシカ。そして彼女は様々な計画の内容を話し始めた。


 踊り子リリスの魅力やテイマーの力で家蜘蛛達の力を借り、情報収集や城の地図を入手したり。感謝祭の期間中に城に滞在するイエガーの場所を突き止めて、油断しているときに殺すという計画などをレイオスに明かした。


「それにイエガーってかなりの酒飲みって聞いたわ。だからあいつの性格なら、必ず感謝祭の時に羽目を外して泥酔する可能性は高いのよ。その後あいつが一人で休んでいるのを見計らって部屋に侵入し、油断している隙に殺す。……まだあいつがどの場所を利用するかわからないけど」


 家蜘蛛の協力で城の地図を入手できていたが、まだ肝心のイエガーの滞在場所を見つけていない事実に少し落胆する。


「で、でも、あいつがファブンベルク城に滞在するのは確かだろうし、また調べればわかることができるよ。……なるほど、確かにあいつならそうなりかねないな」


 落ち込むジェシカをフォローしつつ、作戦の内容にレイオスは頷きながら納得する。


 しかしレイオスは、ジェシカの知らないイエガーの情報を話すことで、その作戦では難しいことを口にする。


「でもリリス、その作戦は難しいと思うんだ」


「どうして?」


「きみの考察通り、あいつは酒を飲めるようになってからすごい酒飲みになって、泥酔することは多いんだ。だけどあいつは一人で眠ってる時、()()()イエガーを守ってるから手出しできないんだよ」


「あれって……?」


「あの"黒い力"だよ」


「えっ? どういうこと?」


 就寝中に仕留める作戦の障害に、黒い力が関係していることにジェシカは驚き、レイオスは説明をする。


「そのままの意味だよ。イエガーが一人の状態で眠っていたり無防備になっている時は、あの黒い力がイエガーの身体から現れて、敵から守るように動くんだよ。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……どうしてあなたはそれを知っているの?」


「実際に見たんだよ。おれはイエガーに反抗できない存在だったからか、他の奴等と違って側にいてもあの黒い力が現れたりしたんだ。だから観察する機会がたくさんあったんだよ」

 

 黒い力に敵と見做されなかった経験により、特徴を他人より把握しているレイオスの情報は、ジェシカの計画が難しいものだと説明する。


「……だとしても問題ないわ。私の欺きの魔法はあの黒い力にも気づかれなかったし」


「……ちなみだけどリリス。きみの欺きの魔法ってどれくらいまで続くの?」


「え? え〜と……。三十分くらいね」


「それで、きみが言っていた()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 強く追求するレイオスに疑問を感じながらも、ジェシカは隠蔽監獄でのカムフラージュの効果時間を思い返してみた。


(イエガーに見つかる前に姿を消して、そのあとレイオスのいた牢屋に……あれ?)


 改めて思い返したことで、ジェシカはある違和感に気づく。


「三十分も経ってなかったと思う……」


 隠蔽監獄で様々なことが起きていたせいか、ジェシカはあの時カムフラージュの効果がいつもより早く解けたことに気づけなかったのだ。


 そしてカムフラージュが早めに解けた事実を聞いたレイオスは、頭を悩ませる様な表情をしながら納得していた。


「やっぱり……」


「やっぱりって、どういうことよ?」


「きみの欺きの魔法がいつもより早めに解けた原因はね、それも"黒い力"の仕業なんだよ。イエガーの近くに敵意を抱いている存在がいると、その者の色んな力を弱らせるんだ。実際におれの力を『能力奪取(アビリティスティール)』で奪う時、黒い力で弱らせて奪ったりもあったから間違いないよ」


「……厄介にも程があるでしょう」


 黒い力の性能を聞けば聞くほど"反則級の力"だと思い知らされ、ジェシカも頭を悩ませる。


「じゃあ要するに、私がイエガーを殺そうとしようとしている時は、あの黒い力が色々と問題になるってことね……」


「そういうこと。……ねぇ、リリス? 姿を隠してイエガーが一人の時に狙うのって、やっぱりイエガーの味方になっている奴らに正体がバレない様にする為?」


「そうよ。理由はわかるでしょ?」


 レイオスはジェシカがイエガーが単独している時にしか狙わない作戦の意味を見抜き、否定することができないジェシカは頷き、理由を語る。


「殺すことができても正体がバレてしまったら、逆にあいつ(イエガー)を支持する存在とかに命を狙われる可能性が高い。私はイエガーを殺した後も死ぬわけにはいかないの。だから誰にも気づかれずにイエガーを殺す必要があるのよ」


「それは……()()()()()()()?」


「……ッ!!」


 復讐を遂げた後、故郷の為に生きることを諦めないジェシカの決意もレイオスは見抜いていた。


「リリスってすごいね。おれだったら復讐のことで頭がいっぱいになって、その後の事とか考えらないよ」


「ーー凄くなんかない!!!」


 レイオスはジェシカを褒めるが、ジェシカは大声をあげて否定する。

 

「……本当はわかっているの。あなただけじゃなくて、私もイエガーには敵わないってことに。だから弱者の私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で、復讐を成し遂げようとしているの。……だから私は、凄くなんかないのよ……」


 五年間、誰にも本心を打ち明けずに非力な状態から力を身につけていったジェシカにとって、自分の目的を見抜いたレイオスの言葉は、ジェシカの抑え込んでいた感情を露にさせた。


「それに私は、あの黒い力にまた恐れてしまって何もできなかった。シェラ村の時の様に、あの時と同じ様に……」


「……それでも、きみは止まらないんでしょ? きみの大切な、かけがえのないものの為に」


 たとえ無謀と言われても、決して復讐の道から外れない強い意思をレイオスは感じ取り、ジェシカは涙を流しながら質問に頷いて答える。


「やっぱりおれはきみの力になりたい。ううん絶対なるよ。きみに何を言われても」


 レイオスの恩返しする気持ちが強固になったのを感じたジェシカは、レイオスのしつこさに呆れて涙が引っ込んでしまい、根負けした。


「……どうせ断っても、"じゃあ恩返しじゃなくて、利害の一致できみに協力する!"って言うつもりでしょ?」


「えぇえ!? なんでわかったの!?」


「私は昔ウェイトレスをやっていたの。接客業を経験すれば、相手が次に何を言ってくるのか少しはわかるようになるわよ」


 何気に難しい高等技術を簡単だと語るジェシカにレイオスはさらに驚く。


 しかしそのやりとりは、湿っぽくなっていた雰囲気を明るく変え、ジェシカは心にレイオスと協力する気持ちが芽生えた。


読んでくれてありがとうございます! 



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