第二十話 壊れたペンダント
お久しぶりの投稿。
執筆の神様に会えたら執筆の力を強化してほしいとお願いしたいです。(他力本願するダメ作者)
アッシュが仲間として加わった後、ジェシカは食事の後片付けをしながら、レイオスにある質問をした。
「ねぇ、改めて聞くけど、あの黒い力に何か弱点とかないの?」
「う〜〜ん……ないなぁ……」
黒い力をイエガーの次に詳しく知っている立場のレイオスは、布巾でテーブルを拭きながら頭の中の記憶を模索する。しかしそれらしき答えは見つからず、ジェシカも自分の知る限りで黒い力の特徴を思い返す。
「イエガーの思うがままに動き、イエガーにとって都合の良い効果を発揮する……それぐらいしかわからないわね」
残念ながらジェシカも自分の記憶から得られる情報には有効なものが見当たらず、頭を悩ませる二人は揃って片付けのスピードを遅くしてしまっている。
「弱点とは関係ないと思うんだけど……」
おもむろにレイオスは、弱点とは違う話をしだした。
「前におれ、イエガーの隙を見計らって黒い力を鑑定したことがあるんだ。そしたら『鑑定不能』って表示が出て、調べることができなかったんだよ」
「……レベル差によって『鑑定』を打ち消したりする人間がいるって聞いたことあるわ。イエガーがあなたから力を奪った理由ってそれも含まれていたんじゃないかしら」
「やっぱり……! はぁ〜〜イエガーはあれを術名を言わない無詠唱の魔法みたいに使ってるから、名前がわかんないんだよね。せめて名前さえわかれば調べることもできるのに……」
「無詠唱……あれ?」
項垂れているレイオスが不意に放った言葉に何か違和感を感じたジェシカは、その正体を探るべく、イエガーが黒い力を使っていた場面を思い返す。
「黒に染める力……」
「……ふぇ?」
「前に、イエガーが黒い力を使う時に、あいつはそう言ってた気がする……」
「……それホント? あいつの身近にいたおれでも聞いたことないのに……。 ねぇ、その時のこと詳しく教えて」
ジェシカは昨夜の牢屋の中でイエガーに追われていた時、イエガーが黒い力を無詠唱ではなく、詠唱を唱えていたのを思い出した。違和感の正体に気づいたジェシカが口にした言葉にレイオスは不意をつかれて間抜けな声を出してしまうが、すぐさまジェシカの語った出来事に深掘りをし始め、ジェシカは地下道でアッシュに出会った経緯から隠蔽監獄での出来事も全てレイオスに明かした。
「………」
「……大丈夫?」
「……色んなことを知ってちょっとくたびれたけど、もう大丈夫だよ。……それより」
様々な衝撃的事実を聞かされ、頭の整理に疲労したレイオス。しかし自分のことは後回しにし、何故かジェシカのペンダントを真剣な眼差しで見つめ始めた。
その視線にジェシカは思わず身を引くが、視線の理由を直ぐに確認する。
「な、なに? このペンダントがどうかしたの?」
「……ねぇリリス。もしかしたらそれが、イエガーの黒い力の打開策になるかもしれないよ」
ジェシカのペンダントに指を指すレイオス。
「……えっ? どうして?」
予想外の返答にジェシカは驚き、レイオスは変わらず真剣な眼差しで理由を語る。
「まず最初に"イエガーが詠唱してから黒い力を再発動した"っていう点について。おれが知る限り、今までそんなことは一度もなかったんだよ。それってつまり、詠唱が必要になるほどイエガーの力が弱まったことさ」
この世界の者達は術技やスキルなどに対して、名称や詠唱を口にしてから発動している。
主な理由は、魔法の詠唱は口にすることで発動する術に必要な魔力などを練り上げ、個人差はあるが更に威力を高める効果がある。さらに詠唱には術の構築を補助する効果があり、不発する可能性を軽減できる。
技やスキルも発動する際に、名称を口にするのは魔法の詠唱と原理がほぼ同一であり、これによって詠唱などが必要とされる理由となっている。
しかし、そういった能力を駆使し続け、身体の一部のように使い熟すと、話が大きく変わる。
修得者のステータスによる個人差はあるが、技や魔法やスキルは使い込めば込むほど様々な変化を起こし、新しい術技を習得、使用する際の魔力や気力の消耗を抑えるなどの、その者たちにとっての多くの利点が生まれる。
そしてその利点には、詠唱を省いて魔法を発動したり、使用者の意思によってスキルを瞬時に発動なども含まれている。
だが、いくら強化された能力も完璧とは言い切れず、弱体化や無効化する力を受ければ詠唱などが必要になる状態になってしまう。
「ちなみにだけどリリス、きみがシェラ村でイエガーと初めて会った時に、あいつはあの黒い力の名称とか口にしてた?」
「シェラ村で……。……ッ!!」
レイオスはジェシカに過去のイエガーの出来事を振り返させ、彼女に答え合わせをさせる。
そしてジェシカの記憶の中で、一番印象に残る記憶が、レイオスの考察と一致していた。
しかし記憶を振り返ったことにより、ジェシカの表情には再びイエガーに対する憎悪が露わになった。
「……心当たりあるみたいだね」
表情から確信を得たレイオスに、ジェシカは考察が一致した記憶を語る。
「母と私を殺そうとした時、あいつは名称や詠唱もなしにあの黒い力を使ったわ……。だからあなたの考えは合っていると思う……。」
ペンダントを強く握りしめるジェシカに、レイオスは辛い記憶を思い返してくれたジェシカに感謝をし、彼女の心を落ち着かせたあと、結論を話し出した。
「だとしたらやっぱりそうだ。あの力が弱まった原因はキミのそのペンダントの発した光なんだ。そうすれば、今まで聞けなかったあの黒い力の詠唱とかを聞くことができた理由も納得できる」
今は能力を奪われて貧弱な状態のレイオスだが、イエガーの代わりに多くの戦闘を経験し、そこから身についた考察力によって、今までなかった黒い力の異変を見破る。
するとジェシカは意を決したかのようにペンダントを外してレイオスの前に差し出し、あることを頼みだした。
「ねぇ、お願いがあるんだけど、このペンダントを『鑑定』して」
「え? いいけど……大切な物なんでしょ? 鑑定していいの?」
大切な形見というのを先ほど聞かされたレイオスは、持ち主の許可が下りても触れてはいけない雰囲気を出していたペンダントに、触れるのを躊躇する。
「構わないわ。このペンダントにイエガーを殺せるヒントがあるなら、むしろ調べてほしいくらいよ」
「……そこまで言うならわかった。……鑑定!」
ペンダントに手を添えて『鑑定』を発動させるレイオス。すると二人の目の前にペンダントの情報がステータスウィンドウとして表れる。
しかし……。
「なにこれ……?」
「これは……」
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【_____のペンダント】
《効果》 __の__
《物質》 _____ン
《持ち主》 ____
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鑑定の結果、ペンダントの情報は何故か歯抜けしており、詳細が確認することができない状態と化していた。
するとステータスウィンドウを隅々まで見ているレイオスはポツリと呟く。
「……もしかしたらこれって、壊れてるのかも」
「えっ! 壊れてるってどういうこと!?」
形見が壊れたと聞かされ、ジェシカは取り乱しながらペンダントを確認しだし、レイオスは慌てながら先程の言葉を訂正する。
「あわわ、ゴメンね!! ペンダント自身が壊れてるんじゃなくて、そのペンダントの情報や能力が損なわなれているって意味だよ!」
「ペンダントの情報……?」
「そう。長年手入れされてなかったり、何かの影響を受けたとかで、道具の情報が乱れて見れなくなったりする時があるんだ」
「そう、だったの……ごめんなさい。また早とちりしてしまって」
「ううん。大事な形見が壊れたなんて聞いたら誰だって慌てちゃうよ」
早合点な行動をしてしまったジェシカをレイオスはフォローし、話を本題に戻した。
「リリスのペンダントはとてもキレイだし、手入れを怠って見れなくなったってことはないだろうから、あるとすれば……」
情報が見れなくなった原因を模索するレイオスだが、この後のジェシカの言葉で深く考えるのを中断する。
「恐らくその原因も黒い力のせいじゃないかしら。今の私たちでわかる範囲だとそうとしか思えないわ」
「……だよね。よし! じゃあさっそくペンダントの修理に取り掛からないと!」
「えっ、直せる……っていうより、あなたがやるの?」
言葉の雰囲気からレイオスが修理を担うのを感じ取ったジェシカ。その上にペンダントの情報が直せることにも驚く。
「専用の修理道具があれば直せるよ。前にこれに似たステータスウィンドウを直したことがあるから、情報を直すくらいだったらおれでもできるよ」
「……なら明日必要な道具を買ってくるから、その時はあなたに任せるわ」
「ーーうん! 任された!」
恩人に頼み事を任されて喜び、鼻歌をしながら片付けを始めたレイオス。
そんな浮き足立っている彼にジェシカは少し呆れながらも、内心感謝していた。
(恩人の頼みとはいえ、まだ病み上がりなのに素直に聞くとか、かなりのお人好しなのね。……まぁ、おかげで色々助かってるけど)
ジェシカの心には、"本当は今すぐにでも修理道具を買いに行きたいという"衝動が根付いていたが、レイオスのお気楽な雰囲気に緩和され、彼女は落ち着いていられた。
明日の買い物には修理道具だけじゃなく、今なお囚人服を身につけているレイオスに、新しい衣類を用意しようと思えるほどに。
だが、その翌日には落ち着いていられないほどの騒動が巻き起こることを、二人は知らない。
そしてその騒動が、ジェシカとレイオスに関係しているということにも。
その頃のアッシュは……
「……zzZ」
ジェシカの水球で満腹になり、先にベッドで就寝。
読んでくれてありがとうございます!




