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第十六話 名前はレイオス 


「おれの名前は『レイオス』


 イエガーの幼なじみで、勇者イエガーの『代行者』をやっていたんだ」 


 隠れ家に帰宅し、目覚めた男にジェシカが問い詰めると、男は自分の名を"レイオス"と名乗り、イエガーの関係性を明かす。


「よろしくね! え〜と……恩人さん!」


 まだジェシカの名前を知らないレイオスは、ジェシカのこと恩人と呼ぶが、呼ばれた当人はすぐに訂正してきた。


「なんか"おじさん"って聞こえるからその呼び方はやめて。私はリリスよ。踊り子のリリス」


 ジェシカはまだ完全にレイオスのことを信用できず、自分の本名を隠し、偽名で名乗る。


「リリス……それがキミの名前なんだね!」


「そうよ。さぁ、お互い名乗りは済んだし、話の続きをして」


「わかった。おれはイエガーと同じ……ねぇ」


「なに?」


 話を途中で止め、レイオスはジェシカに話しかけた。


「結構長い話になるから、座ったらどう? ほら、アッシュも座ったほうが良いって言って……あっ!」


 レイオスの膝下にいたアッシュは、レイオスから弾む音を鳴らしながら離れ、椅子の上で手?を振る。


「……そこに座れば良いのよね。わかったわ……スライムくん」


 アッシュに対しての呼び名を変えずに、ジェシカはアッシュを抱き抱え椅子に座り、レイオスに目線を合わせた。


「それじゃ、続きを話して」


 ジェシカは淡白な声で話の続きを催促してきた。しかし、抱き抱えているアッシュを愛猫の様に優しく撫でており、ジェシカの声と態度には、良い意味での不釣り合いな姿が出来上がっていた。


 レイオスはジェシカの姿に可愛らしさを感じ、顔に微笑が生まれるが、見ていたジェシカが怒りの気配を放ち、すぐさま話の続きを始めた。


「おれとイエガーは同じバロ村の出身で、村長の息子であるイエガーとは幼い頃から付き合いがあったんだ。でもほとんどは、奴隷の身として付き合いだけどね」


「奴隷って……どういうこと?」

 

 再び予想外な言葉を口にしたレイオスに、ジェシカは無意識な位に素早く生まれた疑問を、レイオスにぶつける。


「おれ両親がいなくて、病弱でベッドから動けないじーちゃんと暮らしていたんだ。暮らしは貧しかったし、税も納められなかったから、肩代わりしてくれていた村長から色んな賦役(ふえき)をされていたんだよ」


「賦役って……周りの人は助けてくれなかったの?」


「……いなかったよ。元々じーちゃんは、赤子のおれを連れてバロ村に来たらしくて、おれとじーちゃんは得体の知れない余所者なんだよ。だからイエガーやイエガーの家族、そして村の人全員から、毎日ひどい言葉を言ってきたり、嫌がらせとかをたくさん受けてきたよ」


「……」



"守ってくれる者が誰一人いない環境で彼は育った"



 話を聞いていたジェシカは、胸に見えない痛みを受けながら、そう感じていた。冷遇な目にあってきたレイオスの瞳に映る苦しみが、より彼の悲痛さを強調させる。


「そしてじーちゃんが亡くなった後、おれの戸籍はイエガーの家に取られて、借金を返す為に、おれは本格的にイエガーの奴隷にされてしまったんだ。その後の扱いは酷かったよ。捕獲する魔物の囮をされたり、技や魔法の練習台にされて、たくさん死にかけたんだ」


「……隷属(サブオーディ)の魔法(ネイション)もかけられたの?」


隷属(サブオーディ)の魔法(ネイション)"とは、文字通り奴隷を絶対服従させる魔法であり、かけられた奴隷は様々な制限をされる。(大抵は"所有権を持つ者に逆らえなくなる"がほとんどである)


「もちろん! 逃亡禁止に命令の拒否、主人に対する暴行禁止、あと自死も禁止されたな〜。制限をやぶったら体中に激痛が走るから、我慢の毎日だったよ」


「そう……」


 隠蔽監獄での惨劇を知っているジェシカは、レイオスが体力がないが故に反撃できずにいたと思っていたが、奴隷により行動を制限されていたことを改めて理解した。


 そして、"憎き仇の奴隷"という、ジェシカにとっては考えただけで悍ましい境遇を味わってきたレイオスに、ジェシカは徐々に警戒心を解き、彼に同情した。


「で、この先の話なんだけど、おれの()()()()()に関係するから、それの説明もするね」


 イエガーとの関係性をある程度説明し終えたと思ったレイオスは、部屋に漂っていた悲しい雰囲気を断ち切るかの様に話を区切り、自身の身につけている技能(スキル)について話始めようとしていた。


 ちなみに《スキル》とは、この世界に存在する生き物全てが身につけている技能のこと。身体能力、魔力、知恵、生活力など種類は様々。習得方法は、子どもの場合は親から生まれてくる時に受け継いで身につけていたり、努力末で手に入れる後天的な場合など、習得する方法も様々である。


 そして《固有スキル》とは、個体ごとの個有能力に位置付けられ、複数の能力で統合、構成されていることが多く、そのスキルを宿す者の個性を表すことから、固有スキルという名称になっている。(または別名で、《ユニークスキル》とも呼ばれている)


「あなたの固有スキル……? それがイエガーとどういう関係があるの?」


「大いに関係あるんだ。おれの固有スキルは、さっき名乗った時に言った『代行者』なんだよ」


「……代行者?」

 

 意味が理解できなくもない言葉に、ジェシカは少し戸惑う。その様子に気づいたレイオスは、突然ある言葉を口にした。


「ーーステータス!」


 突如レイオスの前に、文字が記載されている半透明の四角形の板が浮かび上がり、ジェシカは驚く。


「あなた、それって……ウィンドウ?」


「うん、そうだよ! おれのステータスウィンドウ!」


 レイオスが出現させたのは、自身の情報を目視可能にする上級の鑑定魔法『ステータス』によって表れた、『ステータスウィンドウ』だった。


 鑑定魔法は高度な技術のため、使える者は珍しく、大抵の人間はギルドや教会、治療院などで用意している鑑定の魔道具で自分のステータスを確認している。ちなみにスキルで『鑑定』という似ているモノがあるが、自身ではなく他者のステータスを確認する能力であり、使い勝手が少し異なる。


「……自分でステータス確認できるのね、あなた」


「まぁね! じゃあさっそく見てみてよ。おれの固有スキル」

 

 自分のステータスウィンドウを、指先で操作しながら、ジェシカの目の前に移動させるレイオス。普通に高度な技術を操作するレイオスにジェシカは戸惑いながらも、目の前に表示されているレイオスのステータスウィンドウを確認する。



************************



 【名前】 レイオス 【種族】 人間族


 【年齢】 十九歳  【職業】 元奴隷


 【身長】 174セメトル 【体重】 49キグム


 【称号】 勇者の代行者 


 【レベル】1


 【生命力】 100 【魔力】40


 【体力】50   【知力】150


 【精神力】500 【成長力】5


 【器用】5   【敏捷】5


 【幸運】5    【魅力】50


 【攻撃力】 5  【防御力】300


 【魔攻撃力】5  【魔防御力】300


 【状態】 栄養失調 

 

 【習得技】なし


 【習得魔法】 ステータス

  

 【所持スキル】 鑑定 悪食 空腹耐性


 【固有スキル】 代行者

  


************************



  

(…………………)



 ジェシカは絶句した。


 固有スキルを確認する前に目にしたレイオスのステータスがあまりにも……



 弱すぎる。



(レベル1ってどういうこと!? 防御面は良いけど、攻撃面の数値が雑魚の魔物すら倒せないくらい弱いじゃない!)


 ジェシカが知っている限りだと、この世界での青年期のほとんどは、生命力が150〜300、魔力100〜200、そして体力等は平均80〜100位。だがレイオスのステータスは平均以下の数値だらけであり、そしてレベルが1というのが、ジェシカにとって一番の驚愕だった。


(子どもや非戦闘員、民間人でもほとんどはレベル5〜10はあるはずよ!? どうしてこんな……)


「……やっぱりおれのステータス低いよね?」


「ーーッ!」


 心の声を読まれたジェシカはたじろぎ、レイオスは少し落胆していた。すぐさまジェシカは謝罪の言葉を述べる。


「ごめんなさい……何か事情があったのよね?」


「うん……その事情も固有スキルと一緒に話すよ」


 肩を落としたままウィンドウを操作するレイオス。そして固有スキルの欄が変化し、説明文が浮かび上がった。 



************************



《代行者》 本人に代わって行う者。行う者がいない場合、もしくは行えない場合に限り発動する。


 ◇効果◇


 ◦元々行うはずの者から、命令または許可を得ると、その者と同等の力を持つことができる。


 ◦同じ力をすでに身につけ、同等の力を得た場合は、先に得てる方と後の方、どちらかしか使用できない。上乗せや両方を使用するなどはできない。


 ◦目的を達成し、得ていた力が未修得の場合は、その力を会得することが可能。引き続き使用できる。



************************



「どう? これがおれの固有スキルだよ」


「…………」


 『代行者』という見たことがないスキルの説明を、まじまじと見ながら確認するジェシカ。それもそのはず、アルバーグの教会や、帝都の図書館などにある様々なスキルが載っている文献を見ていたジェシカにとっては、レイオスの『代行者』というのは未知のスキルだったからだ。


「……始めて見たわ、こんなスキル。どうやって身につけたの?」


 ジェシカは素直な疑問をレイオスにぶつける。


「色んな仕事や雑用をやらされている内に身についたんだ」


 さらにレイオスはスキル獲得した経緯の苦悩も口にする。


「イエガーだけじゃなくて村の人達ってさ、みんな面倒くさがりで傲慢だったから、大変な仕事を全部おれにやらせたんだよ。そんなのを子どもの頃から行い続ければ、こんなスキルも身につくわけさ」


「そう…… (そういう目にあった人は少ないし、同じスキルを持っている人はいたはず。だけどやっぱり見たことも聞いたこともない……)」


 レイオスのスキル獲得の経緯を聞いてジェシカは、スキルに対してジェシカは疑問を抱く。


 だが、今はレイオスのイエガー関係の話が重要なので、ひとまず頭の片隅に疑問を置いた。


 そして今までの説明とスキルの効果を頭の中で組み合わせたジェシカは、ある結論に辿り着き、その答えをレイオスに確認する。



「あなたはイエガーの……

"救世の勇者の代わりをしていた"ってことなの?」



 ジェシカの正解とも言える質問に、意外にもレイオスは首を横に振る。



「半分正解で、半分間違い……かな? なにせおれはあいつの奴隷だから、正確には"代わりをさせられていた"があっていると思う」


 答えを訂正した後、レイオスはふぅ……と、一息を吐き、続きを話した。


「イエガーが十才の誕生日を迎えた時、あいつが救世の勇者になった話は知っているよね?」


「……知っているわ。有名だもの」


 イエガーの勇者としてエピソードは、今もなお帝国中に英雄譚として語られており、その中には勇者として目覚めたきっかけも含まれていた。


「その翌日にね、おれはイエガーに大事な話があるって言われて、人けのない場所に呼ばれたんだ。


 ……そしてあいつに言われたんだよ」


 レイオスは意を決した顔つきに変えると、話の続きを語る。



「『勇者の仕事は代わりのお前がやれ』って。


その時に始まったんだ。おれが"救世の勇者イエガーの代行者"として、地獄を味わうことにね」


セメトル=cm キグム=kg


この世界での重さの呼び方です。


読んでくれてありがとうございます!



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