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第十五話 おれの名前は

主人公本格的な登場回&自己紹介


 夕日が沈み、街灯と店の明かりで彩られる帝都。町通りには、帰路に向かう者や夕食を堪能しに行く人達が現れ、朝や昼とは違う賑やかさが生まれようとしていた。


 そして西区の三番街にあるアダルバリエの名花の宿舎の二階の一番奥の部屋で、ジェシカは城の調査に貢献した家蜘蛛達に、好物である蝿魔物(モンスター)の死骸を与えていた。


「みんな、本当にありがとね。おかげで城の地図を作ることができたわ」


 家蜘蛛一匹一匹に目を向けながらお礼を言うジェシカ。そして彼女は家蜘蛛達が食事してる間に、今日のやるべきことを手で数えながら確認し始めた。


この子達(家蜘蛛)の回収に、メイド服の入手、あとポーションも買ったからあとは……」


 踊り子達の練習が終わった後に、ジェシカは洗濯店に侵入して城のメイド服の入手し、次に()()()()の治療に使ったポーションの補充、そして家蜘蛛達の迎えを行っていた。


「この子達を迎えに行った時も、あの書庫は相変わらず人けが無かったわね。昨日は少し危なかったけど……」


 昨日の夜のアクシデントを思い返しながら、ジェシカは最後にやるべきことを再確認する。



「……あの男の様子を見に行かないと」



 東区の隠れ家にいるイエガーだった男の様子の確認すべく、ジェシカは食事を終えた家蜘蛛達をケースにしまい、諸々の準備を始めた。


 まずはカーテンを閉め、部屋の外のドアノブに『就寝中』の札をぶら下げて鍵をかけ、魔道具で作り出した本物そっくりの身代わりを作りだした。


(今日の会議は終わったし、招集も無いから誰かが入るってことはないと思うけど、念には念をいれておかないと)


 身代わりをベッドに忍ばせると、ジェシカは敷いてあるラグの端を掴みながら捲り、隠していたワープシートの上に乗る。


 そしてジェシカは、ワープシートに魔力を込めながら、行き先を強くイメージし、合言葉を唱える。



「……『愛おしきシェラ村』」



 今は無き故郷の名を告げると、ワープシートの魔法陣は輝き、ジェシカは転移の光に包まれて消えた。


 支えを失ったラグは再び床に敷かれ、ワープシートを隠し、ジェシカの存在も秘匿する様に元の位置に戻る。

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 

 場所が変わり、東区の隠れ家の、一階の古いクローゼットの中。ひと一人が余裕で隠れられるクローゼットの中にはワープシートが敷かれ、しばらくすると描かれている魔法陣から光が溢れ、その中からジェシカが現れる。



 キィ……



 木の軋む音をたてながら内側から開ける。するとジェシカは、何かの音を耳にした。



(……ん? 誰かの声?)



 留守番しているスライムしかいないはずの隠れ家に、自分以外の人の声を聞き取り、ジェシカは短剣を構えながらあたりを散策する。



(……地下の部屋?)



 声の出どころが地下室だと気づいたジェシカは、地下へ通じる隠し扉を、音を立てずに開け、足音を立たせずに階段を降りる。そして部屋の扉の前に立ち、聞き耳を立てた。



「これで……トドメだ!」



(……!)



 "トドメ"という言葉に、スライムが何者かに襲われていると思い、勢いよく扉を蹴破る。



 バン!!!




「スライムくんから離れなさいッ!!」




 鬼気迫る顔で部屋に入り込むジェシカ。しかし部屋の中で起きていたのは、ジェシカの想像とは全く別のものだった。



「うわっ!! ……って、君は……」



「えっ、あなた……。って、え……?」




 部屋の中で起きていたのは



 イエガーだった男が、スライムと一緒に




 ベッドの上で盤上遊戯をしていた。


 



 理解するのに時間がかかりそうなものが目の前に幾つも存在し、呆然とするジェシカが唯一できたことは、呆気に取られながら、構えていた短剣を下ろすことだった。


 そして男が気不味そうにジェシカに話しかけ始める。



「えっと……こんばんわ。キミがおれを助けてくれた人なの?」



「えっ! ……ええ、そうよ。具合は大丈夫?」



 男に話しかけられたことで、意識が戻ったジェシカは声が裏返ってしまうが、そのあと冷静に男の問いに答えた。


「そうだったんだ! どうもありがとう! おかげで元気を取り戻せたよ!」


 屈託のない笑顔でお礼を言う男は、対戦していたスライムを抱えながらお礼を言った。


「あと、アッシュの世話もしてくれたんだよね。アッシュもお礼を言ってるよ!」


「……アッシュ?」


 覚えの無い人物の名前を聞き、ジェシカは首を傾げる。


「このスライムの名前だよ。おれの仲間で『アッシュ』って言うんだ」


「そのスライムくんって、あなたのだったのね……」

 

 対戦相手になっていたスライムの頭?を撫でる男。意外な関係性があったことにジェシカは驚くが、先駆けて質問を始めた。


「……あなた、一体何者なの? どうして勇者イエガーの姿をしていたの?」


「えっ!? キミ、おれがイエガーの姿をしていたってのをどうして知って……あっ! そうか! あの夜おれの目の前で苦しんでいた女の子はキミだったのか! そっか〜だからか〜」


 一人で納得している男にジェシカは少し苛ついたが、昨日まで重傷だった男にあたるのは失礼と思い、気持ちを抑える。


「いきなりあれこれ聞いて申し訳なかったわ。

だけど、あなたには聞きたいことがたくさんあるの。病み上がりで悪いけど、私の質問にちゃんと答えて。

……あなたは何者なの?」


「あぁゴメン、話しそらしちゃって……。

 じゃあまずは自己紹介から」


 ジェシカの本気の眼差しを向けられた男は、先程の質問に答えなかったことに謝罪し、改めてジェシカの質問に答えた。




「おれの名前は『レイオス』



 イエガーの幼なじみで、勇者イエガーの『代行者』をやっていたんだ」



読んでくれてありがとうございます!

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