第8話 やわらかさと罰と裸
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「……て。に………と…。」
誰かが俺の体をゆする。もう朝なのだろうか。まだ、頭がはっきりしない。眠いのだ。もう少し寝かせてほしい。
「…し、……に………はと…。」
まだ俺を起こそうと頑張っている。一体誰だ…って、俺を起こしに来るのは朔夜しかいないが。
「で……い…き……す。」
待て、朔夜が起こしに来た?待て待て待て、早く起きなければ。朔夜は俺が起きないとみると、これまで何度か既成事実を作ろうと、寝ている俺にいろいろしてくる。この前はなんか下半身がスースーすると思ったら、ズボンが降ろされていた。もちろん、パンツが剥ぎ取られる前に跳び起きて、その時は事なきを得た。
その前は、人の息遣いを感じて目を開けると、目の前に朔夜の顔があった。危うくキスするところであった。その前は、衣擦れの音がして目を覚ますと、朔夜が制服を脱ぎ、俺の布団にもぐりこむ直前だった。その時、朔夜も成長したなー、なんて思っていない。
とまあ、朔夜はこれまで何度も俺の寝込みを襲おうとしているのである。きっと、今回も早く起きないと大変な事になる。
だけど、頭が重く、思うように体も動かない。ヤバいヤバい、とうとう薬でも盛られたのか。頭は重いし、頬は痛い。そうだ、魔力を体に通せばもしかしたら。
「……ま…、……て…。」
俺の頬に冷たい何かが触れる。そして、頭が持ち上げられた。これは本格的にヤバい。一体俺は何をさせられているのだろうか。体に魔力を通す。すると、体の感覚が戻り、頭もすっきりし、頬の痛みも引いた。
「朔夜、待った、もう起きた、ストップ。」
むにゅん
目を開けると同時に、両手を前突き出す。
「きゃっ!」
案の定目の前には金髪の女の子が…金髪?
むにゅ、むにゅ
この両手に広がる、素晴らしい感触は一体?それに、後頭部にも柔らかさを感じる。金髪、金髪…。
ドスッ、ゴン
「うごっ、いてっ!!!!」
頭が一瞬中に浮いたかと思うと、地面に叩き付けられた。
「あ、申し訳ございません。」
頭の上から声が降ってくる。その声、言葉遣いは朔夜のものではなかった。
改めて上にいる人物を確認する。そこにいたのは、緩いウェーブのかかった金髪と空のように澄んだ瞳をした女の子だった。
さて、状況を理解しよう。ここは俺の部屋ではない。青空の下だ。
ではなぜ、青空の下で寝ていたのか。寝ていたのではなく、頬を張られ、気絶していたからである。
それでは、俺が頬を張られた原因は。フランの胸を触ったから。
フランが胸を触られて起こったのはなぜだ。それは、フランが女の子だから。確かに、男にはない柔らかさがあった。
よし、俺がここに寝ていた原因はわかった。ここでもう1つ、先ほど両手に感じた感触はなんだったのか。俺の見上げた先には、両腕で胸を守るようにして、顔を赤らめているシーナの姿が。
とりあえず、地面に寝ているのもなんなので起き上がる。
「あー、その、すいませんでしたっ!!!!」
地面から起き上がるも、すぐさま再び地面に額を付ける。土下座である。
「あの、えっと、ミツキ?」
困惑したようにシーナが声をかけてくる。でも、俺は土下座をし続ける。シーナの胸を揉んでしまったのだから。
「ミツキ、顔をあげてくださいな。私、少し驚きましたが、怒ってはおりませんわ。」
顔をあげると、いつも通りのシーナがそこにいた。若干、頬が赤い気もするが、そこは気にしてはいけない。今度こそ、俺は立ち上がる。
「本当、ごめんな。」
もう一度、シーナに謝罪する。
「そこまで、謝られますと、私の方が困ってしまいますわ。ですので、この話はここまでにしましょう。」
「ありがとう、シーナ。」
「ニース嬢!そいつには罰を与えるべきです!極刑に処すべきです。ボクのむ、胸をもも、もみも、揉みしだいたあげく、ニース嬢の胸まで。屑だ、ゴミだ、万死に値する。今ここで、命を絶つことこそこの国、いやこの世界すべての女性のためだ。」
「フランさん、ミツキはそのようなお人ではありませんですのよ?」
俺のことを許してくれたシーナに対し、俺からかなりの距離を取っているフランは俺の視線から、体全体を隠すように両手で抱きながら、目尻に涙を浮かべていた。
やはり、フランは女性であった。目尻に涙を浮かべ、怯える様子は、なんというか、こう、クルものがある。Sっ気は強くないつもりなのに、目覚めそうだ。
「ほら、この野獣のような表情!ボクを凌辱しようと企んでいる。まるで、得物を見つけた狼じゃないか!」
ひどい言われようだ。しかし、考えていたことを見透かされた気がして、すぐさま反論できなかった。
「ミツキ?」
訝しげにシーナが俺を見てくる。
「否定しないじゃないか!この変質者!今ここでボクの手で滅ぼしてやる!」
膨大な魔力の本流がフランの周辺を漂う。先ほどの闘いなどとは比べ物にならない。
あわてて、フランに対し鑑定を使う。
フランチェスカ・ルルシェン・エル・フォストレア(Lv95) エルフ 女 110歳 鍛冶職人・魔導師
HP:650
MP:1620
攻撃力:610
防御力:700
STR:185
VIT:140
DEX:210
AGI:120
INT:600
LUK:150
スキル
魔法適合者
火魔法:上級
水魔法:上級
土魔法:上級
風魔法:上級
光魔法:上級
闇魔法:上級
無魔法:下級
合成魔法
精霊召喚
剣術
弓術
錬金術
武器鑑定
防具鑑定
鍛冶師
魔眼:魔力眼
ちょ、レベル高い。スキルもヤバい。魔法ほとんどの属性が上級だし、合成魔法とか聞いたことがない。しかも、INTに限っては俺より高いときた。俺も人族の中ではチートの強さであると言われたが、他の種族には上がいるものである。100歳超えの年齢を考えれば、妥当なレベルなのかもしれない。
「いまさら何をしようが遅い!己が罪、その身で贖え!!!」
「逃げろ、シーナ!!」
「ですが!」
「いいから、俺にかまうな。」
「わかりましたわ。」
フランは俺を殺すつもりで魔法を放とうとしている。それにシーナを巻き込むわけにはいかない。シーナは俺から距離を取る。これで巻き込むことはない。ぶっつけ本番であるが、この状況を打破するには、あれを使うしかない。
考える間もなく、体が勝手に動き、袋から目当てのものを取り出す。
「覚悟を決めたか、ゴミ虫!エレメンツ・レーゲン!!!!!」
フランが天に向けていた右手を振り下ろす。それに同期して、空から俺に向けて七色の光線が降り注いでくる。
先ほど取り出し、左手で腰の位置に据えたに鞘に入ったままの日本刀、村正を右手でつかみ、居合を放つ。もちろん刀身にありったけの魔力を込める。
ずっぱぁぁぁぁぁあああああん
あたり一帯に砂埃が舞う。
「ミツキ!!」
「はあっ、はあ、ふふ、これで悪は、ついえた。変態、はあっ、男など、ボクの、ふう、敵じゃ、ないっ。跡形も、なく、はふっ、消え去った。」
焦りまくったシーナの声と、かなりの魔力を消費し、息も絶え絶えのフラン。2人とも俺がやられたと思っているようだ。
俺だって、村正がなければ今の魔法で死んでいたと思う。それほどフランの放った魔法はヤバかった。
「残念だな、俺はまだ生きている。」
砂煙が晴れてきて、フランの姿がうっすらと見え始めたので声をだす。
「なっ!馬鹿な、ボクの最高傑作の魔法だぞ!6属性の上級魔法を掛け合わせ、相乗効果で破壊力と殲滅力を10乗まで上げた、魔族だって1発で屠れる魔法だ。たかだか変態程度に防げるわけが!?」
「それが防げたんだよ。まあ、こいつがなかったら今頃あの世行きだっただろうがな。」
右手で抜身のままの村正を目の前に掲げる。
「それは?」
「俺の故郷の武器だ。まあ、ちょっとチート臭いが。」
「み、見せてくれ!!!」
どこにそんな体力が残っていたのか、フランは一瞬で俺に詰め寄ると、村正をふんだくっていった。
「村正…なんだこの武器は!すごい、すごいぞ!一切魔法が使われずに作られているのに、この輝き!この美しさ!それに、魔力を込めることも出来るなんて!なあ、ゴミ虫、君は一体どこから来たんだ?」
先ほどまで、俺に対し殺気全開で敵対していたのに、なんていう変わり身の早さだ。てか、ゴミ虫って。
「なあ、フラン、さっき俺を殺そうとしたよな?」
「そんなこと、この剣の前では些細なことだよ。」
「じゃあ、胸触ったことは?」
「この剣の価値に比べたら、ゴミ虫に触られたことなど、蚊に刺されたに等しいことさ。」
なんだこいつは。と、言った目でフランを見ていると、
「ミツキ、彼女はその、私の考古学者に対する態度のように、素晴らしい刀剣が目の前にありますと、見境がなくなりますの。」
なるほど、シーナとフラン、類は友を呼ぶというやつか。シーナはシーナで、見境がなくなっている自覚があったのか。驚きである。
「いいなあ、この剣。どうすればこんな剣作れるんだろう?すごいなすごいな!」
四方八方から村正を監察しながら、まるで別人のようにはしゃいでいる。
「焼き入れしていることはわかるが、それだけではこの柔軟性と切れ味は…魔法を使えば……だが、これにはその痕跡が。それに、材料は鉄か?いや、それにしては。」
フランは1人でぶつぶつと村正がどのように作られたのか、考察している。既に、周りは見えていない。俺に出身地を聞いたことも忘れている。
「ゴミ虫、ゴミ虫、これは慰謝料としてボクが貰う。」
「誰がやるか!それと、俺はゴミ虫じゃない。ミツキ・ハルノだ。ミツキって呼べ。」
「だが、ミツキ、君は僕の胸を触ったじゃないか。慰謝料としてボクにはこれを貰う権利がある!」
「なんでそうなる!?お前、俺を殺そうとしただろう?それで、チャラじゃないのかよ。」
「わかった、胸程度では足りないということだな。なるほど、これほどの武器ならば、よし、ボクのことを好きにしていいぞ!さあ、今すぐボクのことをその猛り狂った欲望で蹂躙するといい。ボクはそういう経験がないから、初めは優しくしてくれると嬉しいが、そこまで贅沢は言わない。好きなように犯してくれ!!」
こいつ、残念すぎる。胸を触られて激怒していたのに、体を好きにしていいとか、頭がおかしすぎだ。
頭が痛くなり天を仰ぐ。すると、しゅるしゅるっという音がすぐそばから聞こえてきた。
「ちょ、フランさん、なぜ服を脱ぎますの?ダメですわよ!ここは外ですわ!?」
下を向けなくなった。目をつむる。
「フランさん、下着は?下着はつけてないんですの?って、早く服を、服を!!!!ミツキは見てはいけませんわ!」
もう目を瞑っております。早く収集つけてください。
言葉には出さないが、心の中で切に願う。こんなカオス空間から早く脱出したいです。
「シーナ、離してくれ!ボクはこの剣のためならこの身など惜しくない。どれほど汚されようとも、白濁したものでぐちょぐちょにされようとも、もし孕んだとしても、ボクは後悔しない。だから離すんだ!」
「何をおっしゃっているのか、よくわかりませんが、男性の前で裸になるのはいけません。淑女としてそれは認められません!」
フランの発言がどんどんヤバくなっていく。今ほど、ここが町の僻地でよかったと思う。もし街中だったら、俺衛兵に捕まっている気がする。
「ああ、そういうことか!ニース嬢、君はボクのためにそこまでしてくれるんだね。」
「そうですわ、わかってくださいましたのですね。」
どうやら、やっと話が落ち着きそうである。
「わかったとも、ニース嬢もボクのためにその身を犠牲にして、ミツキに捧げるというのだね。確かにボクの体は貧相だ。ボク1人ではこの剣とつり合いが取れるとは言えないからね。そうと決まれば、君も脱ぎたまえ。一緒にミツキの熱く滾ったモノを受け入れようじゃないか。何、年長者としてボクが先に犯されるさ。初めては痛いと聞くが、何も怖がることはない。」
「や、やめ、フランさん、服を、ぬがさ、ちょ、ダメですわ。いやぁぁぁぁぁっ。」
再び、しゅるしゅるという衣擦れの音がする。
本当、この状況はどうしたら収まるのだろう。だれか、助けてください。
真っ暗な視界の中、俺は神様にそう願うのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
誤字脱字、その他気になった点がありましたら、コメントよろしくお願いします。




