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考古学者の異世界探索紀行  作者: 桜井由貴
第1章 遺跡の攻略紀行
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第7話 イケメン鍛冶師のエルフ

 結局、昨日は宿をとることなく、ギルド長の家に泊まってしまった。ギルド長はまるで俺を孫のように扱ってくれた。ギルド長にばあちゃんって呼んでいいかと聞いたら、好きに呼んでくれて構わないといわれたので、ばあちゃんと呼ぶことにした。ばあちゃんのおかげで、少し肩の荷がおり、気持ちも軽くなった。知らず知らずストレスが溜まっていたのであろう。


 とりあえず、俺は朝一でギルドへと足を運んだ。クエストの報告をするためである。ばあちゃんからは、数字の書かれた割符のようなものを渡され、それをギルドのカウンターにいたメルティさんに渡すと、クエスト達成ですと言われ、報酬である銀貨1枚を貰った。


 報酬を貰った俺は、今日も何かクエストを受けようと掲示板に目を向ける。相変わらずすごい数の依頼である。遺跡に行くとしても、まずはこの世界になれないといけない。焦りすぎて、失敗したら元も子もない。魔物相手に失敗したら、それは死を意味するのだから。

 とりあえず、常時依頼を確認する。Gランクで受けられる依頼は10個であった。その中のゴブリンとウォルフ、ラピッドラビットの討伐と、薬草の採取のクエストをやることに決めた。これらのクエストはすべて東の森で賄えるからだ。

 早速森に行くための準備をしなければ。持ち物に関しては、向こうの世界のから持ち込んだ品物も全て魔法の袋にしまってしまった。2丁の銃も袋の中である。なので、現在は腰に俺の持ち込んだ日本刀を挿しているだけで、他の装備はない。服も探索の時に来ていたもので、森に入る分にはいいが、戦闘をするには防御力という点で心もとない。防具を購入しようにも、防具がどこで売っているのかわからない。この町に来て3日目にもなるのに、ギルドとニース家、ばあちゃんの家しかわからなかった。昨日までの俺は、こんなことに気付かないくらい、余裕がなかったようだ。


「どうっすかなー。」


「ミツキ様、見つけましたわ。」


 今後について、どうしようかと思案していると、ギルドの扉が開き、シーナが俺を見るなり、駆け寄ってきた。


「ミツキ様、ひどいではありませんか!」


 そして、なぜだか若干怒っているようである。俺に身に覚えはない。


「えーと、俺何かしたか?」


「昨日、どちらに泊まるのか教えていただけませんでしたわ。」


 そういえば、アルが去り際に泊まる場所が決まったらギルドに伝えてほしいと言っていた。あれは、シーナに頼まれたことだったのか。


「おかげでミツキ様を探すのに苦労しましたの。」


「あーすまん、昨日はばあちゃ、ギルド長の家に泊ったんだ。」


「そうだったんですの?なら、どうして伝えてくださらなかったのですか?」


「昼にお邪魔したまま、朝までお世話になったんだよ。それで、その、忘れてた。」


「そうでしたの、なら仕方ありませんわ。」


 やけにあっさりとシーナは引き下がった。


「それに、ミツキ様は昨日に比べて、なんといいますか、話しやすくなりましたわ。きっと、今のミツキ様が普段のミツキ様なのですね。」


「そうか?」


「そうですわ。口調も砕けたものになってますし。」


 言われてみれば、昨日まではアル以外には丁寧な感じでしゃべっていた。確かに、今の口調が俺本来の口調であるといえる。


「戻した方がいいか?」


「いえ、今のままで結構ですわ。ミツキ様が私に心を許してくれた証拠ですもの。」


「そうか。ならこれからはこの口調で行かせてもらうな。それと、俺のこともミツキでいいよ。様はいらない。」


「ですが、ミツキ様は私のあこがれの考古学者様ですのよ!呼び捨てだなんて恐れ多い。」


「では、システィーナ様は貴族ですので、失礼があるといけませんから、私もこの口調にいたしましょう。」


 ちょっとからかい気味に口調を変える。


「そんな!ミツキ様、シーナとシーナと呼んでください!」


「いえ、そうはまいりません。私は考古学者であっても平民。システィーナ様は貴族であらせられますから。」


「ぐぬぬ、わかりました、わかりましたわ。ミツキ…は、その、意地悪ですのね。」


「はは、悪い悪い。でも俺の気持ちもわかっただろ?」


「そうですわね、今後はミツキと呼ばせて頂きますわ。それで、ミツキはこれからどちらへ?」


「魔物の討伐に行こうと思っんだが、その前に武器と防具をいくつか揃えたいかなー。だけど、店の場所がわからない。」


「武器と防具ですのね。でしたら、私にお任せください。この町で1番腕のいい鍛冶屋を紹介いたしますわ。ただ…」


 シーナの知っている鍛冶屋であれば、まず間違いなく一流のお店であろう。俺としては願ったり叶ったりである。しかし、どうにもシーナが歯切れ悪い。


「鍛冶屋としては一流の腕を持っておられる方なのですが、少し問題がありまして、その、自分の認めた相手以外には販売をしてくださらないんですの。」


「あー、なるほどな。」


 頑固おやじっていうやつか。そいつはちょっとめんどくさい。


「まあ、行くだけ行ってみるか。ダメならダメで、他の店を紹介してくれよ。」


「わかりましたわ。それでは案内しますわ。」


 そう言って、シーナは出口に向かう。俺もそれを追う。ギルドを出て北門の方へと向かう。北の方は農地が広がっており、農家以外住んでいないと思っていたが、そうでもないのだろう。

 しかし、農地まで来ると今度は西の方向へ歩き出す。そちらはまだ開拓のされていない地で、塀の中ではあるものの、荒地になっている。その荒地に1軒の木造の家が建っていた。町の中でも僻地中の僻地である。


「ミツキ、もし気分を害してしまったら申し訳ありません。こちらが、この町で最も腕のいい鍛冶屋ですの。」


 その建物は煙突がついており、そこから煙が上がっていた。看板などは出ていないが、シーナが言うのだから、鍛冶屋であることは間違いないと言いたい。


「失礼しますわ。フランさんおりますの?」


 ドアを開けシーナが建物の中に入る。俺もそれに続く。中には、いくつかの武器、特に刀剣類が飾られていた。槍や弓矢もあるが、圧倒的に刀剣の数が多い。


「やあ、ニース嬢じゃないか。今日はどうしたんだい?武器の手入れかな?」


 そして、そこにはイケメンがいた。シーナよりは色は薄いものの透き通るような金髪の髪と、金色の瞳を持ち、その耳は細長く尖っていた。顔の造りはものすごく整っており、街中にいたら、男女問わず彼に注目するに違いない。

 座っているので身長はわからないが、ざっと170cmくらいであろうか。適度に筋肉もついていると思われ、健康的な肉体をしている。笑顔もまぶしく、まさにさわやか系のイケメンである。なんか、負けた気分である。


「いえ、今日はこちらのミツキに装備を見繕って欲しいのですわ。」


「初めまして、ミツキ・ハルノです。」


「へえ、これに?」


 シーナの後ろにいた俺に目を向けてくるイケメン。しかも、これ呼ばわりである。


「こんななよっちそうな奴に?いくらニース嬢の紹介でも、こんな奴にボクの装備は売れないね。装備たちがかわいそうじゃないか。」


 ずいぶんと失礼な奴だ。事前にシーナから説明を受けていなければ、すぐさま回れ右をして、この場を去っている。こういう手合いは相手をするだけ無駄だ。それに、面倒である。関わらないに限る。

 だが、シーナ曰く認められさえすれば、シーナのように友好的に接してくれるのであろう。そう願いたい。


「なら、どうすれば装備品を売ってくれるんだ?」


「そうだね、無駄だと思うけど、ボクと闘って勝てたら装備を売ろうじゃないか。まあ、君程度じゃボクに触れることすらできないだろうけどね。」


 いちいちムカつく奴だ。こういう奴には1度お灸を据えてやらねばならん。


「いいぜ、その話乗ってやる。」


「なら、外に出てくれ。」


「わかった。」


「ミツキ、連れてきた私が言うことではありませんが、大丈夫ですの?」


 先に外に出た俺に対し、シーナは申し訳なさそうにしている。シーナはこうなることがわかっていたのだろう。


「なんとかなると思う。フランはどういうやつだ?」


「フランさんは見ての通り、エルフですわ。ですので、魔法が得意ですの。お母様でも魔法の腕だけならフランさんに勝てないとおっしゃってましたわ。それに、剣の腕も普通の冒険者では相手になりません。私も時々剣の稽古していただきますが、5回に1回勝てればいい方です。もちろん、手加減してもらってですが。」


「エルフってあまり荒事に向いていないって聞いたことがあるんだが…」


 シルヴィアから貰った知識では、エルフは森人(守り人)族と言われ、深い森の奥に住み、あまり他の種族と関わることがなく、争うことを好まないとされている。争いを好まないからこそ、魔法の腕を磨き、森に他種族や魔物が入り込まないように結界を張っているとも。主に、遠距離の攻撃手段しか持っていないはずであった。


「ええ、それがエルフの認識で間違いありません。ですが、フランさんは変わり者ですの。10代の時に森をでて、鍛冶師になるためにドワーフに師事したらしく、その後は30年ほど冒険者として活動しながら、鍛冶師の腕を磨いたそうですわ。」


「30年って、あいついくつだよ?」


「確か、70くらいであったかと。エルフの寿命は人族の2倍から3倍といわれておりますから。」


 見た目から、20歳くらいかと思っていたのだが、そんな爺であったとは。俺のじいちゃんと同じくらいだ。


「やあ、待たせたね。」


 シーナからフランの情報を聞いていると、店の中からフランが出て来た。これから闘うというのに、その手には何も持っていない。


「おい、武器はどうした?剣が得意なんだろ?」


「おや、ニース嬢から聞いたのかい?何、君相手は素手で十分だよ。もちろん魔法は使わせてもらうけど。それに、ボクに勝つのは無理だろうから、ボクに触れることが出来たら、君の勝ちでいいよ。」


「そうかよ、なら俺も素手でやってやるよ。」


「気にしなくていいよ。ハンデだよハンデ。」


 すっげームカつく奴である。


「それでは、審判は私が務めさせていただきます。お二人とも準備はよろしいですか?」


「ボクはいつでも。」


「ああ、いいぜ。」


「それでは、始め!」


 シーナの言葉で俺は駆け出す。フランまでの距離は10m。近づいて1撃入れるだけなら数秒の距離だ。


「遅いよ!」


「ちょっ!」


 一歩踏み出した先の地面が槍のごとくもり上がる。急制動をかけ止まる。それを見計らったように、


「まだまだ。」


 今度は火の弾が10個近く俺を標的に飛んでくる。俺はそれを横っ飛びにかわ…せない。かわした方向に火の弾が曲がってきた。追尾機能付きかよ。


「降参するかい?」


「誰がするか!」


 魔法には魔法だ。だが、俺には回復魔法しか使えない。


(だったら、回復魔力を使う要領で、手に魔力を集めれば、相殺できるはず。ものはためしだ。)


「逃げてるだけじゃ、ボクには触れないよ。」


「そうだな…はっ!」


 振り向きざま、魔力を込めた拳で火の弾を打ち落とす、そして、すぐさままた打ち落とす、打ち落とす、打ち落とす、打ち落とす、打ち落とす、打ち落とす、打ち落とす、打ち落とす、打ち落とす。10個をすべて打ち落とした。


「へえ、中々やるじゃないか!なら、これはどうかな!!」


 フランの背後から水の龍が現れる。それが俺に向かって飛んでくる。


「それがどうした!」


 同じように、水の龍を魔力を込めた拳で打ち落とす。


バシャッ


 龍は原型を失い、水へと戻るも、すぐさま復元し俺を襲う。何度打ち落としても、同じだけ龍は復活する。


(厄介な。だったら、狙うはフラン本人。この距離ならいける。)


 フランの魔法から逃げ回りつつも、俺は徐々にフランへと近づいていた。今は7m

ほどである。手に魔力を込めたのを応用し、今度は逃げながら足に魔力を込める。そして、


ドン


ペタン


ぷにゅ


 一歩、たった一歩でフランまで距離を詰め、右手を彼の胸に当てた。おおよそ心臓がある位置に。


 フランは顔を真っ赤にして、体を震わせている。よほど悔しかったのだろう。


「どうだ、これで俺の…か……ち」


 最後まで言葉をつづけることが出来なかった。フランの目尻に涙が溜まると、俺をにらんできた。


「いつまで、いつまで触っているのよ!!!!!」


バチン


 フランの右手が振りかぶられたかと思うと、それは振るわれ、俺の頬を強打し、俺は意識を失った。


最後まで読んでくださりありがとうございます。

誤字脱字、その他気になった点がありましたら、コメントよろしくお願いします。

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