第5話 アルはロリコン、M野郎
少し短いですが、キリがいいところで投稿。
1000PVありがとうございます。
明けて翌日、異世界生活3日目。結局、俺は一睡もさせて貰えなかった。現在はシーナの部屋から朝食に向かう途中である。
ニース家に仕えるメイドが、朝食の用意が出来たと呼びに来るまで、シーナは俺を質問攻めにした。昨日、町に入ったのが17時頃で、ニース家に案内されたのが19時頃、その後夕食をごちそうになり、シーナの部屋に呼ばれたのが21時を回ったくらいであった。今は6時。9時間拘束されていたことになる。ちなみに、こっちの世界でも1日は24時間で、1週間も火・風・水・土・光・闇・無の7日で変わらない。曜日は魔法の属性であらわされている。1ヶ月は4週間、28日。1年は13ヶ月、364日である。月の名前にはこの世界の13柱の神の名前が使用されている。
シーナが俺の話の中で特に興味を持ったのは、俺が持つ銃であった。俺の愛銃、スプリングフィールドXD。9x19mmパラベラム弾をばら撒く殺人兵器。春野という名字を英語にすると、春がスプリング、野がフィールドであるから愛用するようになったものであるが、何度か死地を救われたこともあり、最も信頼のおける相棒である。
しかし、この世界では銃弾の補充が出来ないため、無暗に使用できなくなってしまった。一昨日、マガジン1本分、16発を撃ち尽くしたのは失敗であったと後悔したものだ。残りはマガジン5本の80発である。こちらの世界にも銃はあるが、それは遺跡から時々見つかるもので、旧世界の遺物であり、芸術品とされ、使い方すら把握されていなかった。
銃1つでおおよそ白金貨2枚、200万Xである。王族や貴族が見栄のために買うような超ぜいたく品である。ちなみに、この世界の貨幣はこんな感じである。
黒金貨1枚=1億X=白金貨100枚=100億円
白金貨1枚=100万X=金貨100枚=1億円
金貨1枚=1万X=銀貨100枚=100万円
銀貨1枚=100X=銅貨100枚=1万円
銅貨1枚=1X=100円
この世界において1食の値段は平均で銅貨5枚、宿屋に1泊すると銅貨30枚くらいである。騎士団の1ヶ月の給金は銀貨20枚前後。はっきり言って銃の値段はかなり高いのである。
もちろん、シーナは銃を見たのは初めてで、2丁持っているといった時は、1丁欲しいと超興奮気味に俺に詰め寄ってきたほどだ。しかしまあ、少し冷静に考えて、自分では買えないと思った時にはあからさまにしょんぼりしていた。
「お父様、お母様おはようございますわ。」
「おはよう、シーナ、ミツキさん。」
「おう、おはよう。ミツキは随分と疲れているな。」
「おはようございます。…本当に寝かして貰えなかったんだよ……。」
ダイニングにはすでにアルとその奥さんのセレスさん、セレスティーナ・フォン・ニースがいた。セレスさんは28歳で13年前にアルと結婚したそうだ。42のおっさんが15歳の少女を娶る、元の世界であればロリコンの犯罪者である。だが、この世界では結構普通のことだそうだ。もちろん一夫多妻も推奨されている。
アルは1人しか娶っていないが、貴族は平均して3人は娶るそうだ。国王様には10人の妻がいるらしい。羨ましい限りである。俺はこれまで、彼女がいたことはない。女の子と仲良くしていると、朔夜が邪魔してきて、彼女には至らず、友達止まりで終わってしまったのだ。朔夜曰く、妾は正妻である私が許した人だけだとか。海外では俺を女と勘違いした男から告白を受けたことあるが。もちろん断った。時々、俺が男であるというと、それでもいいとかいう男もいたから困ったもんだ。
「がはははっ、その割にシーナは元気だぞ?なんだ、搾り取られたか?」
「搾り取る?何のことですの、お父様。」
「朝から下品だぞ。」
「そうよアル、シーナの教育に悪いじゃないの。お仕置きが必要かしら?」
「ま、待てセレス、ちょっとした冗談だ!もう言わない、言わないから。」
杖を取り出したセレスさんを見て焦るアル。この家で1番権力を持っているのは、セレスさんであり、アルは思いっきり尻に敷かれている。
セレスさんも元冒険者で、12歳にして王国最恐の魔法使いと言われていたそうだ。遠距離では広域殲滅の魔法で魔物を一瞬で塵に変え、近距離では魔法使いのくせに杖の先から炎を鎌のように噴射させ、接近戦で敵を焼き殺す様は、戦闘狂以外の何物でも無かったそうだ。ついたあだ名は「紅の死神」。彼女は、周りの冒険者からの畏怖の視線にもどこ吹く風で、全く気にしていなかったらしい。
アルはそんな彼女に惚れ、3年もの間魔法をぶっ放され、焼かれ、凍らされてもめげることなくアタックし続けた。そして、ついにセレスさんを落とすことに成功したのだ。どんだけMなんだと思う。セレスさんの見た目は赤みの強い茶髪と、碧い瞳を持ち、身長は150cmないくらいで、10代に見られることがあり、シーナとは姉妹に見られることが多い。チビやガキと馬鹿にしてきた相手には容赦なく制裁を下すとのことだ。怒らせないように注意しよう。
「本当に反省しているのかしら?お仕置きするべきじゃないかしら?」
「そんなことない、反省している。それより、飯にしよう、な。」
貴族の威厳台無しである。周りにいる朝食を配膳しているメイドたちは、いつものことかといった風に仕事をテキパキとこなしている。
「仕方ありませんね。ご飯が冷めてしまってはメイドたちに悪いですし、次はありませんよ。ふう、棺桶の必要がなくなったようで何よりです。」
「………。」
冷や汗をかきつつ、アルは黙ってしまった。なんだよ棺桶って、本当に怖いよ。その様子をメイドたちは仕事をつづけ、朝食の配膳が終わった。
「それでは食べましょう。」
アルの隣にセレスが座り、その向かいにシーナ、その隣に俺が座っている。セレスの言葉でシーナが食べ始める。アルはまだ遠い目をしている。
朝食はパンと魚の燻製、野菜のスープである。
「いただきます。」
両手を合わせてから野菜スープを一口すする。うん、うまい。
「いただきます?ですか?ミツキ様、どんな意味ですの?」
「んー、俺の国の言葉で、食材に対して命をいただきありがとうございます。って感謝の意味がある言葉なんだ。ほら、この魚だって元は生きていたものを殺してここに並んでいるだろう?俺たちは他の命を奪って生きているから、感謝して生きようってことだよ。」
うろ覚えであるが、小学生のころ道徳か何かの時間でそう教わった気がする。
「なるほど、すばらしいお考えですわ。流石はミツキ様です。では、いただきます。こうでよろしいですの?」
シーナが俺のまねをして、両手を合わせ、「いただきます」をする。なんか、少しうれしい気分である。
「ところで、ミツキさんは今後どうするのかしら?」
「そうですね、とりあえずギルドでクエスト受けながら当面は暮らそうと思います。あの遺跡も気になりますし。」
「そうなのか、お前さえよければここにいてくれてもいいんだぜ。」
復活したアルが会話に加わる。先ほどのことはもう忘れたようにモリモリと朝食を食べている。
「そうですわ、ミツキ様一緒に暮らしましょう、それがいいですわ。」
「それは流石に悪いよ。俺は自分の力で生きていくからさ。ありがたいけどさ。」
「ですが、ミツキ様!」
「シーナ、無理強いはいけません。ミツキさんにも思うことがあるのでしょう。」
「わかりましたは、お母様。すいませんでしたわ、ミツキ様のお話はとても楽しかったので。」
「シーナが謝ることじゃないよ。本当にありがとうな。」
朔夜にやるように、シーナの頭を撫でる。シーナは嫌がるそぶりも見せず、俺に撫でられた。
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