第8話 スクレクドの町と智の塔
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グランフィズを出てから10日、俺たちはスクレクドに到着した。
強い魔物が出るかもと言われていた、渓谷でも特に問題はなく、盗賊の件以外は順調な旅路であった。
エディさんからはニースから護衛したことと、盗賊を討伐したことについてお礼を言われ、割符を渡された。
これで、護衛依頼は完了である。
俺たちは依頼完了を報告するべく、ソードダンスの面々と一緒にスクレクドのギルドに行き、報酬を受け取った。
その後ソードダンスのメンバーとも別れ、俺たちは馬車をギルドに預け、マリアの家にお邪魔していた。
「改めて、スプリングフィールドの皆さんにはお世話になりました。」
家に入り、椅子に座るように促されたので、着席するとマリアにお礼を言われた。
「気にしなくていいよ。俺らも目的地はここだったんだし。」
「今後ミツキさんたちはどうするんですか?」
「しばらくはスクレクドにいる。明日には一度智の塔に入ってみるつもりだから。」
俺たちは護衛依頼があったからスクレクドに来たのではなく、あくまでも智の塔を攻略するために来たのだ。
それに、ここの図書館の蔵書は王国随一なので、そちらにも興味がある。
「私も一度智の塔に入ったことありますが、3階までしか登っていません。」
「そうなのか?マリア、智の塔について知っていることを教えてくれないか?」
「わかりました、私の知っていることをお教えします。」
智の塔には現在確認されている段階では、魔物の存在は確認されていないとのことだった。
現在は4階まで攻略が進んでおり、各階で出される問題を解くことで、次の階への扉が開かれるそうだ。
何度入ろうとも問題は変わることなく、3階までは現在観光名所になっていて、誰でも自由に入れるとのことだった。
4階には学院の関係者か、高位ランクのギルド員しか入れないとのことだ。
塔の階層は全部で5階層であるようで、あと1つ問題を解けば攻略できるのではないかというのが、学院関係者の見解である。
4階層に上がってからはすでに50年ほど経過しており、かなり難解な問題であるそうだ。
3階層までの問題の傾向が数字に関することであったことから、4階層の問題もそうであるのだが、それまでの階とは毛色が異なっているという。
また、各階層を攻略すると、マジックアイテムが手に入り、この町ではそれらのマジックアイテムを研究し、簡易的なものは住民生活に還元されている。
例えば宝石型街灯や水晶型通信機がそのいい例である。
ただし、それらのマジックアイテムは塔の魔力が届く範囲でしか使えないため、この町独自のものになっている。
「なるほどな。」
「それと、シーナさんが古代語の勉強に使われていた本に書かれた文字と同じものと思われる文字が、智の塔にも書かれています。」
「そうか、こりゃあ、うまくいけば明日にでも攻略出来るかもな。」
どうやら智の塔も日本人の手によって作られたもののようである。
そうであれば、俺ならば4階層の問題を解くことが出来るかもしれない。
「いくらミツキさんでもそんな簡単に解けませんよ。学院がどれだけの間、その問題に挑戦していると思っているのですか。50年ですよ。にもかかわらず解く手立てが全く見つかっていないんです。」
「ところで、話は変わるけど、マリアは随分と智の塔について詳しく知っているみたいだけど、それってこの町じゃ常識なのか?」
「いえ、私は王立魔法学院で教鞭をとっていますので、この町に住む住民よりも詳細に知っています。」
「へえ、マリアって魔法が得意なんだな。」
「いえ、魔法はあまり使えません。私の専攻はマジックアイテム製作です。ニース東部の遺跡に行こうと思ったのも、何かマジックアイテムが無いかと思ったからです。あの遺跡は攻略されたとギルドから発表があったのですが、詳しい情報がほとんど入ってこなかったんです。まるで、意図的に情報が伏せられているかのように。」
やはり、ばあちゃんは遺跡に関して情報隠蔽をしてくれたようである。
まあ、俺しかあの遺跡稼働させられないし、情報を隠蔽してくれた方が俺としては面倒事を抱えずに済むからありがたいことである。
俺が遺跡を攻略したという情報も流されていないことは、これまで会った人々やマリアの態度からもわかっていた。
「そういえば、あの書物はニース東部の遺跡から持ってきたものと言っていませんでしたか?皆さんは遺跡に行ったことがあるのですか?」
「ああ、あるぞ。俺たち、ニースの町を本拠地に置いているからな。それに、シーナは領主の娘だ。」
「うぇ、シーナさん貴族だったのですか!?」
「ええ、そうですわ。私の本名はシスティーナ・フォン・ニースと言いますの。」
「なるほど、それであの書物を手に入れることが出来たのですね。」
シーナが貴族であると知り、日本語で書かれた本は貴族だったから手に入ったとマリアは勝手に勘違いしてくれた。
俺としては遺跡を攻略したことをあまり知られたくないので、深く追求されないことはありがたい。
「マリアもう一つ質問なんだが、この町の図書館は誰でも利用できるのか?」
「誰でも利用できるわけでもありません。図書館に蔵書されている本は貴重なものが多数ありますので、身分がしっかりしたものでなおかつ、保証金の金貨1枚が払える者に限られています。例外は学院関係者だけです。ですが、ミツキさんでしたら、ギルドからSランクを受けていますので、金貨1枚用意出来れば図書館に入館できます。」
よかった、図書館には問題なく入れるようだ。
Sランク万歳。
「他に質問はありますか?」
「聞きたいことは聞けたし、あっ、この辺でお勧めの宿ってあるか?出来れば風呂付がいい。」
「宿ですか…風呂付ですと瑪瑙亭でしょうか、貴族の方々が利用されるところですので、値段は高いですが、サービスはいいらしいですよ。」
今日の宿はそこにしよう。
名前的に、グランフィズにあった翡翠亭と同じ系列なのかもしれない。
「いろいろ教えてくれてありがとうな。俺らはそろそろお暇するよ。」
「そうですか、こちらこそ助けていただきありがとうございました。」
俺たちはマリアの家を後にした。
その足でマリアに教えてもらった瑪瑙亭に行く。
瑪瑙亭に行くと、そこはやはり翡翠亭の姉妹店で、ギルドカードを見せたらすぐに部屋に案内してくれた。
料金も翡翠亭と同じであった。
風呂は内風呂だけであったが、10日ぶりにゆっくりとつかることが出来た。
翌日、俺たちは早朝から智の塔を訪れた。
観光名所にもなっていると聞いていたので、人の少なそうな時間を選んだのだ。
智の塔周辺はやはり、朝ということもあり人もまばらで、智の塔の入り口に数名人がいる程度である。
「すいません、智の塔に入りたいのですが。」
俺は智の塔の入り口にいた兵士に声をかけた。
「ようこそ智の塔へ、観光ですか?」
「いえ、俺はミツキ・ハルノといって考古学者です。」
俺はギルドカードを取り出し、兵士に見せる。
「考古学者の方ですね。それもSランクですか。4階層へご案内させていただいてよろしいですか?」
「はい、おねがいします。」
俺たちは兵士に案内され、4階層へ上がった。
「こちらが4階層になります。この階の問題は中央の石碑に掘られております。健闘をお祈りします。」
それだけ言い残し、兵士は持ち場に戻っていった。
4階層には俺ら以外誰もいなかった。
「さて、どんな問題なのかな。」
「ミツキならどんな問題でもすぐに解きそうですわ。」
「そうだね、ここの入り口にも日本語が書かれていたからね。」
そう、ここの入り口には日本語で五重塔と書かれていた。
俺は塔というから、ピサの斜塔みたいな西洋風のを想像していたのだが、至って純和風の塔だった。
確かに、五重塔も塔であることに変わりないが、少しばかり残念であった。
中も純和風な作りになっている。
壁には龍の絵が描かれていたり、掛け軸が飾ってあったり障子が張られていたりした。
その中で異質なのは中央に置かれた石碑である。
思いっきり、和風な世界観をぶち壊している。
「ふむ…」
石碑に目をやる。
石碑には次のような問題が書かれていた。
第4階層問題
金=76、銀=47、銅=29である時
太陽(SUN)=16、92、7
月(MOON)=42、8、7
となる。
15、53、7、19となる言葉は何か。
「なんだこれ?」
「金、銀、銅ですの?」
「それに太陽と月か。」
「あたしにはなんのことかわからないよ。」
「この数字にどんな意味があるんでしょうか?」
問題を見て全員で首をかしげた。
数字の規則性が全くわからないし、金、銀、銅、太陽、月の関連性もわからない。
50音と数字が対応しているのかと思ったが、金は76だし、太陽では92が使われており、答えとなる言葉にも53が使われている。
そのため、アルファベットということも考えられない。
元の世界で最も文字の多い言語は日本語だったから、他の文字ということもないだろう。
「あっ、ご主人様、裏にも何か書いてあるよ。」
問題が全く理解できず、そうそうに諦めたリアが石碑の裏面に何かを発見したようである。
「なんて書いてある?」
「うーん、日本語で書いてあるから、あたし読めない。」
もしかしたらこれを解くカギかも知れない。
そう思い、裏面に回る。
裏面には以下のように書かれていた。
ヒント:『性質を包括する抽象的概念』を知る者がこの先に進むことが出来る。
「ミツキ、何が書いてありますの?」
「ヒントが書かれているけど…」
ヒントなのに、ヒントの意味が分からない。
もっとわかりやすいヒントだせよ。
「なんて書かれているんだい?」
「『性質を包括する抽象的概念』を知るものがこの先に進むことが出来るって書いてある。」
「性質を包括する抽象的概念?なんだいそれは?」
「俺にも意味が分からない。問題に関係あるはずなんだけど…」
ヒントを見たことでさらに謎が深まった気がする。
昨日は簡単に解けるかと思ったけど、これは苦戦しそうだ。
リア以外の4人で問題に取り組んでいるが、誰も何も言わない。
リアは物珍しそうに、日本風の内装を見て回っている。
「研究所の例を考えると、向こうの知識と関係があると思うんだけど、花凛何か思いつくか?」
「マスター凛から与えられた知識ですと、該当事項がありませんが、マスター凛の研究と近いものではないでしょうか?」
「堺さんの研究か、そういえば堺さんって元の世界でも科学者の卵だったって何かに書いてあったな。」
「科学者?どのような職業ですの?」
「科学っていうのは、こっちの世界でいう魔法みたいなものだよ。俺たちの世界には魔法の代わりに科学って呼ばれるものがあったんだ。」
そういえば、こっちの世界は魔法文明だから科学は発達していないんだよな。
待てよ、科学か、もしかして。
「わかったかもしれない。」
「本当かい!?」
「ああ、多分あっていると思う。」
俺は閃いた問題の解答と解き方をみんなに聞かせた。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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