第3話 共同戦線
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グランフィズに到着してから2回目の朝、これから俺たちはグランフィズを発ち、スクレクドへと向かう。
グランフィズはニースの町とスクレクドの町のほぼ中間地点にあるので、残り半分の道のりである。
「おはようございます、エディさん。」
待ち合わせ場所であった東門に行くと、そこにはすでにエディさんたちチャン商会の商人たちの姿があった。
「おはようございますミツキ様。ここから先の旅路もどうぞよろしくお願いします。」
「それで、1つ聞きたいのですが、この馬車の数はなんですか?」
今、東門には全部で20近い馬車が集まっていた。
「この先なんですが、最近盗賊が頻繁に現れまして、被害を受ける商隊が多くありまして、自衛のため、同じ方向へ行く商人たちは出来るだけ集まって移動することになったのでございます。また、渓谷には魔物が多く徘徊してまして、そこを無事抜けるためにも、集まって移動しようという声は以前よりありました。もちろん、各商隊ごとに個別に冒険者や傭兵を雇っておりますので、スプリングフィールドの皆様には我々の馬車をお守りいただければ問題はございません。」
なるほど、より多い人数で行動することで、盗賊に襲われる危険性が減るということか。
盗賊がどの程度の規模かは知らないが、見たところ、商会の数は全部で6つ。
これらが別々に護衛を雇っているとなれば、かなりの戦力になるだろう。
「この後、護衛同士で一度話し合いが行われると思われますので、そちらへの参加の方お願いします。」
「わかりました。全員で出た方がいいですか?」
「いえ、各商隊から商会の代表者1名と護衛の代表者、ランクの高いものが1名が出ることになっていますので、護衛代表としてミツキ様にご参加いただきたく存じます。」
確かになあ、護衛全員集まったら大変そうだもんな。
「俺は話し合いに出てくるから、シーナ達は馬車で待機していてくれ。」
俺の後ろについてきていた4人にそう声をかける。
「では、ミツキ様参りましょう。」
俺はエディさんと一緒に、話し合いがされる場所に移動した。
そこには8人の人物がすでに集まっていた。
俺たちを含めて10人だから、あと1組集まれば話し合いが開始される。
少し時間を置いて最後の1組も現れた。
「俺はゴルディ、バリアス商会から護衛に雇われた傭兵だ。」
30代と思われる筋骨隆々とした男がまず、口を開いた。
先ほど聞いた情報によると、バリアス商会はチャン商会に並ぶ大きな商会で、今回同行する商会では一番資金力があるそうだ。
「俺の傭兵団はこの町を拠点に仕事をこなしている。それを踏まえて聞いてほしい。最近、盗賊が出るだけでなく、渓谷では魔物も危険度の高い奴が現れるようになった。なので、俺たちがこの隊列の先頭を行きたいと思う。」
傭兵であることと、その見た目からどんな人なのかと思ったら、冷静に分析の出来るリーダーシップのある男であった。
「質問いいか、俺は冒険者のティガ、マーブル商会の護衛だ。そちらの戦力はどの程度だ?」
次に口を開いたのは、剣士の風貌をした20代の男であった。
「俺を含め10名、俺のギルドランクはA、団員の平均はCだ。全員剣と弓が使える。」
「こっちは12人。俺はCだが、平均はDだ。主に剣と槍で戦う。」
やはり、王国でもトップクラスの商会が雇っただけやって、レベルが高い。
ティガの方も優秀であるが、ゴルディたちと比べると見劣りする。
「他の奴らも自分たちの戦力を教えてくれ。」
ゴルディが俺を含めた残りの護衛にそう聞いてきた。
まず、ゴルディの隣にいた槍を持った男が応えた。
「俺はワイズ、冒険者だ。アリエス商会の護衛だ。人数は15人、俺のランクはC
で平均はDだ。全員が近接タイプだ。」
「俺はスウェンだ。ケベック商会にやとわれた冒険者だ。13人いて、全員がDランクだ。俺たちも近接タイプだ。」
次にその隣の護衛が話した。
この分だと、俺は最後になりそうだ。
「俺はカープ、サントス商会から依頼を受けた冒険者だ。人数は12人、俺はBランク、メンバー平均はDだ。俺は下級の風魔法と水魔法が使えるが、他の奴は近接メインだ。」
俺の隣にいた男が、自分たちの情報を伝えた。
ここまで、ほとんどの護衛が近接タイプのようだ。
魔法が使えるのはカープ1人らしい。
「最後に、お前は?」
「俺はミツキ、チャン商会から依頼を受けた。俺たちの平均ランクはCってところだ。人数は9人、俺を含め3人が魔法を使える。俺は回復魔法も使えるから、即死以外なら治してやれると思う。」
平均ランクの出し方がいまいちよくわからないので、とりあえずCということにしておく。
それと、俺のランクは意図的に言わなかった。
「ほう、魔法使いが3人か。どの程度の魔法が使える?」
何かを考えるように、ゴルディが聞いてくる。
「俺は下級が精一杯だ。属性としては火、水、土、風が使える。あとさっき言ったように回復魔法もだ。」
「ほう、その年でそれだけの魔法を使えるのか坊主。すげえな。」
ゴルディが感心したように声をあげた。
「よし、なら俺はお前たちの半分が前方に出てきて欲しいと思うんだが、どうだ?」
「俺は長距離の護衛任務を受けるのは今回が初めてだからよくわからないんだが、それだと、依頼を受けた商会の護衛が手薄にならないか?」
「商会に関しては中央に固め、周囲を護衛たちで守る。俺たちも半分は商会の護衛に回す。やはり、一番先頭が危険度が高くなる。だからこそ、お前たちから半分を回して欲しい。」
「ちょっと待ってくれ、魔法が使えるのなら、俺たちが前に出てもいいんじゃないか?」
そこで、カープが待ったをかけてきた。
先頭は危険が多い分、魔物と闘うことも多く、稼ぐことが出来るからだろう。
「いや、俺の見立てでは、お前よりこっちの坊主のほうが使える。それに頭も切れる。仲間の戦力を馬鹿正直に伝えないしな。」
「なんだと、俺がこんなガキに劣るというのか?」
「俺はさっきこの坊主にどのくらい魔法使えるか聞いたが、あれは坊主だけでなく他の2人についても聞いたんだ。だが、この坊主は意図して自分のことしか話さなかった。」
「それがなんだっていうんだ?」
「なに、こいつの仲間にはこいつ以上に魔法の使える奴がいるんだよ。それも俺たちに教えたくないくらいの奴がな。」
ゴルディは俺が思った以上に頭が回る。
まさか、俺が考えていたことをすべて見抜いているとは。
「そんなわけないだろ?大方、適当に魔法使えるって嘘ついて、そこを聞かれたから自分のことしか言わなかっただけだろ?こんなガキが魔法使えるってだけでも驚きなのに、そんなやついるわけねえよ。」
「それは坊主に聞かなきゃわかんねえよ。どうなんだ坊主?」
「はあ、ゴルディの言う通りだ。残りの二人は俺より魔法が使える。よくわかったな。」
「これでもいろんな奴らと旅してんだ。それで、実際のところどのくらい使えるんだ?」
ここまで来たらもう誤魔化すのは難しそうだ。
「1人は光、闇、火、水、風、土は上級、無が下級だ。もう1人は火だけだが、中級まで使える。」
「おおう、それはいくらなんでも予想外すぎだぜ…6属性上級?そいつはどんな化物だよ。」
ゴルディの顔が驚きでゆがむ。
「そりゃあ、秘密にしときたくなるわな。俺が自分の傭兵団に欲しいくらいだぜ。」
「やらないぞ。」
なんとなくこうなる気がしたから黙っていたのだ。
以前に、冒険者の引き抜きはよくあると聞いていたから。
「これで、坊主たちが前方に来てもらうことに納得してもらえたか?」
確認するようにゴルディがカープに尋ねる。
「そいつが嘘言ってるかもしれないだろ!?大体、なんでその魔法使いじゃなく、そいつがここにきているんだよ。各護衛の中から一番ランクの高いが集まるんじゃなかったのか?」
「そりゃあ、坊主のランクが高いからだろう?違うのか、チャン商会の商人さん?」
「はい、ミツキ様は私たちがお願いした護衛の中で最も高いランクの持ち主です。」
カープがあまりにもしつこいので、ゴルディがエディさんに確認をとる。
商人たちは信用を第一に行動するので、こういった場面で絶対に嘘はつかないからだ。
「そんなのウソに決まってるだろ!大体そのガキ、自分のランク言ってないじゃないか。ギルドカード見せてみろよ、そしたら信用してやるよ。」
それでもなおカープは食い下がる。
「坊主、わりいが、全員を納得させるためにギルドカード見せてくれねえか?」
やれやれと言った表情で、仕方ないといった感じでゴルディが促してくる。
俺としては黙っていたかったが、こうなっては仕方ない、ギルドカードを取り出す。
「おい、あれ…」
「ああ、あの色…」
「でも、そんな…」
俺のギルドカードを見た護衛たちがそんな声を漏らした。
「そんな、馬鹿な、こんなガキがSランクだと…」
「やっぱりな、坊主が噂になってた奴か。」
カープは俺がSランクであることが信じられないようであるが、ゴルディの方は薄々気づいていたようだ。
「カープ、これで文句ねえだろ。他の奴らも坊主たちが前方に来ることに異論はねえな?」
護衛たちは一様に驚いた表情を浮かべているが、反対する様子はない。
「うし、なら決定だ。俺のところから半分、坊主のところから半分が前方を担当、カープとティガのところから半数が後方を受け持ってくれ。残りは商会の護衛だ。それじゃあ、解散。」
ゴルディの一声で話し合いは解散となった。
護衛たちは商人と共に仲間の元に戻っていく。
俺もエディさんと一緒にその場を立ち去ろうとした。
「坊主、嫌な思いさせちまったな。」
そこへゴルディが話しかけてきた。
「気にしてないよ。ニース町を出てからずっとこうだったからな。」
「そうか、俺は坊主にゃ期待してるぜ。」
「まあ、出来る範囲でやらせてもらうよ。それとさっきも言ったが、死ぬような怪我じゃなけりゃ治してやるよ。」
「そいつは頼もしいぜ。じゃあ、また後でな。」
「ああ、後でな。」
それから準備を整え、エディさんとも相談した結果、俺たちスプリングフィールドは全員で前方に出ることとなった。
エディさんには2人は残すと言ったが、前方にいて貰った方が自分たちも危険が減ると言われ、全員で行くこととなった。
「おう坊主さっきぶり。随分いい馬車じゃねえか。」
隊列を組むため、俺たちの馬車とゴルディたちの馬車が前に出て来た。
ゴルディたちの馬車は至って普通の馬車である。
「奮発したからな。どうだ、いいだろう。」
無駄に自慢してみる。
「はっ、中々言うじゃねえか。こっちのメンバー紹介しとくぜ、右からマック、メンディー、フレッドだ。」
ゴルディの団員は全員男だった。
てか、うちの護衛以外で女性を見ていない気がする。
装備はロングソードと弓、遠距離と近距離どちらも対応できるようである。
「俺の方はシーナ、フラン、リア、花凛だ。」
俺もパーティメンバーを紹介する。
こっちは俺以外みんな女性である。
「随分と羨ましいメンバーじゃねえかよ。坊主のハーレムってか?」
「あー。間違っちゃいない。」
「マジかよ、まあ、坊主がSランクなら不思議でもねえか。よし、軽口はこのくらいにして、そろそろ出発するぞ。」
俺たちの後ろの隊列も整ったようである。
グランフィズの町から東に進路を進める。
スクレクドへの残りの旅が始まった。
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