第32話 決闘と次なる目的地
お気に入りに登録いただきありがとうございます。
俺とダンダリアンの決闘の火ぶたが切って落とされた。
俺の装備はいつも通り、アイアンリザード製のジャケットにズボン、武器は俺の持ち込んだ日本刀を右手に持ち、それに加え、左の腰にはスプリングフィールドXDを袋からだし携帯している。
対するダンダリアンは、金色に塗られた金属製の鎧に身を包み、エストックを右手に持ち、左手に紋章の描かれた盾を装備している。
練兵場の周りには、いつの間にか騎士たちや町の住民、冒険者たちで溢れかえっており、その中にシーナとフランの姿もあった。
ちなみに、俺とダンダリアンのどちらが勝つのか賭け事まで行われており、チャン商会の人間がそれを取り仕切っていた。
の応援具合から察するに、貴族であるダンダリアンの方が人気そうだ。
「ファイヤーボール!」
俺に向かって火球が飛んでくる。
飛んできた火球を避けると、そこにダンダリアンがエストックを突き出してくる。
それも、体を反らし避け、刀で切りつけるも、キンという音と共に、盾で防がれた。
俺は盾を蹴り、ダンダリアンから距離を取る。
そして、刀を鞘に納める。
「なんだい、降参か!平民風情には荷が勝ちすぎたか。」
俺のその様子を見て、馬鹿にするように嘲笑してくる。
「誰が降参するかよ、御託はいいからかかってこい、ボンクラ。」
腰を落とし、右手を柄に添える。
「貴様、俺様を馬鹿にしおってえええええ!」
ダンダリアンは、盾を前面にだし突進の構えをとる。
そのまま、馬鹿正直に突進してくる。
「すーはー、はっ!」
息を整え一閃、ダンダリアンの盾を切り裂く。
ダンダリアンが驚愕した表情で固まった。
返しの刃で、右腕を打ち据える。
「がっ!」
鎧があるため、切り裂くことは出来なかったが、剣を落とすことには成功した。
すかさず、俺は自分の刀を落とし、ダンダリアンの右手を掴む。
掴んだのと逆の手で4の字を作り、ダンダリアンの右腕を絡ませながら、自分の手首を掴み、ダンダリアンの右手を背後に回すように捻り上げた。
「くああぁあぁぁ!」
ダンダリアンが絶叫する。
鎧を着た相手に、剣での攻撃は効果が薄い。
しかし、関節技ならば鎧を着ていようが関係ない。
俺はダンダリアンに対し、羽折り固めを決めた。
さらに力を込める。
気絶するか、参ったというまで勝負は続く。
なるべく長く痛がらせてやろうと思う。
「があああっ!」
体をゆすり、俺から逃れようとするが、一度決まった関節技がそう簡単に解けるわけがない。
さらに腕を捻ってやる。
俺もじいちゃんにこの技食らったことあるが、痛いなんてものじゃなかった記憶がある。
腕が折れるかと思ったものだ。
「ぐう、ぎさま!」
「どうした、降参するか?」
「平民風情があああ!」
「そうか、なら右腕いらないな?」
右腕を折りにかかる。
関節技のいいところは、痛がらせることも出来るし、破壊することも出来るという点にある。
「ぎゃあああああっ!」
バキンという、嫌な音と共に、ダンダリアンの右肘が本来曲がらない方に曲がった。
腕を折られたダンダリアンは、痛みで絶叫しながら地面をのた打ち回っている。
「ぐっぞ、俺ざまの腕を!」
ダンダリアンは、気丈にも俺を睨み付けてくる。
未だ負けを認める様子はない。
俺は無言で銃を引き抜き、ダンダリアンの右の太ももに狙いを定め、引き金を引く。
「ぎゃあああああ!」
マズルフラッシュが焚かれ、金属製の鎧を貫き、銃弾がダンダリアンの太ももに突き刺さった。
さらに続けざまに2発撃ちこみ、左足、左肩を打ち抜く。
「まだやるか?」
感情の捨て、最終警告をダンダリアンへと告げる。
「ごの俺さまがあ、貴様なんぞにいいい。」
この状況にあって、まだ負けを認めないことには素直に関心する。
「そうか、なら死ね。」
銃口をダンダリアンの額に向ける。
そして、指を引き金にかける。
「待て待て、俺様の負けだ!」
ようやく、俺が本気であることを悟ったのか、焦って負けを認めてきた。
「勝者ミツキ様!」
セバスさんから俺の勝利宣言が告げられる。
見物客からは落胆する声と、歓喜する声が響き渡った。
「ご主人様!」
決闘中、アルたちのところで観戦していたリアが、俺の胸に飛び込んできた。
「全く、一体どういう状況ですの?」
「ミツキは厄介ごとに好かれているのかい?」
群衆の中からは、シーナとフランが出てきてこちらにやってきた。
どうやら、2人は騒ぎを聞きつけてやってきただけで、状況が良くつかめていないようである。
そんな2人にこれまでのことを簡単に説明する。
「おう、ミツキ、よくやったな!スカッとしたぜ。」
「パパ、恰好よかったです。」
近づいてきたアルと花凛から賛辞の言葉を貰った。
「流石でございますミツキ様、こちら白金貨10枚になります。」
「ありがとうございます。セバスさんも審判お疲れ様です。」
白金貨を受け取り、セバスさんにお礼を言う。
地面に捨てた日本刀も回収し、白金貨と共に魔法の袋にしまった。
「さてと、宿に戻るか。アル、後はよろしくな。」
流石に疲れた。
ニースの町に戻ってばかりだというのに、決闘をする羽目になるとは思ってもみなかった。
「任しとけ、こいつは俺の方で預かっておく。」
俺にやられたダンダリアンは、教会の司祭から回復魔法を受けているところである。
これ以上難癖つけられると面倒なので、この場はアルに任せて、さっさと宿に帰るに限る。
俺はうれしそうに腕に抱きついたままのリアをそのままに、他の3人と共にナンチャッ亭へと戻った。
その日の夕食はこれまでナンチャッ亭で出されたものの中で、最も豪華であった。
そのことについて女将さんに尋ねると、俺のおかげで臨時収入があったから、そのお礼であると言われた。
どうやら女将さんも、俺とダンダリアンとの決闘を見に来ていたらしく、賭けでは俺に賭けていたそうだ。
これは後々知ったことであるが、賭けの倍率は俺が50倍、ダンダリアンが2倍であったそうだ。
ちなみに、ちゃっかりアルたちも俺に賭けていたらしく、後日騎士たちからもお礼を言われた。
決闘から一夜明け、俺たちはギルドへとやってきた。
遺跡攻略のことについてばあちゃんに説明するためだ。
ギルドに入ると、俺たちに気付いたメルティさんによって、ギルド2階のギルド長室に通された。
「さて、ミツキや、遺跡攻略まずはご苦労であった。」
いつものように席に着くと、ばあちゃんがそう切り出してきた。
「ゴーレムの討伐報酬なのだが、すべてミスリルであったので、白金貨75枚が報酬じゃ。ほれ、受け取れ。」
ばあちゃんが白金貨の入った袋を投げて渡す。
毎度のことであるが、こんなに貰っていいのか不安に駆られる。
「それではミツキや、遺跡にについて詳細に教えてくれまいか?」
俺は遺跡、堺研究所について現在わかっていることを事細かに説明した。
俺と同じ日本人の手によって、約1000年前に作られたこと、花凛のこと、工場のことと順番に説明していった。
ばあちゃんが俺の説明で一番驚いていたのは、花凛についてのことだった。
どう見ても人間なのに、その正体はマジックアイテムなのだから。
俺は花凛のことでばあちゃんに相談したいことがあったので、そのことについて聞いてみた。
「ふむ、花凛にギルドカードを作れないかとな?」
この町に入るとき、花凛は身分証明書がなく、鑑定石も使えず、問題となった。
それを解決するために、なんとかギルドカードを用意してほしいとお願いしたのだ。
「ああ、花凛とは今後も一緒に冒険するつもりだし、町に入るたびに誤魔化すのも大変なんだよ。」
「わかった、ギルドカードについてはわしが何とかしよう。」
「ありがとうばあちゃん。」
これで、俺の不安が一つ解消された。
「俺から遺跡についての報告は以上だ。他に何かあるか?」
「うむ、協議の結果、ミツキ、お前さんにSランクが与えられることとなった。」
「Sランク!?」
「お主はギルドに入ってから日が浅いが、遺跡を攻略したことで今後否応にも目立つことになる。そうなれば、いろいろと面倒事に巻き込まれることになるやもしれん。そうであれば、それ相応の地位と権限を与えて、問題に対処できるようにしようということとなった。」
ばあちゃんの言うことには一理ある。
俺が遺跡攻略したと広まれば、嫉妬する奴や、おこぼれに預かろうとするやつらが現れることは想像にかたくない。
であれば、そういった事に対処するために俺に強い権限を与えてしまおうということなのだろう。
Sランク冒険者ともなれば、冒険者の中でも一握りのエリートである。
指名依頼を断ることが出来、他の冒険者を招集する権限も持っている。
また、どこの国に行っても国賓級の扱いを受けることになる。
それだけ、Sランクというのは権限も強く、尊敬される存在である。
「それと、他のパーティメンバーについてじゃが、シーナはBランクに、リアはCランクへ昇格となった。花凛に関しても、わしの権限でDランクとなれるように手配しておこう。」
俺たちはばあちゃんに促され、ギルドカードを提出した。
ギルドカードが却って来たとき、俺のギルドカードが黒になっており、浮かび上がる文字も金色に変わっていた。
黒いギルドカードはSランク冒険者の証で、昨日こそ普通のものと変わらないが、一目見てSランクであると区別できるようにするため、色を変えているとのことだ。
花凛のギルドカードもこの時に作ってくれて、これで町に入る際の余計な手間が省ける。
俺はそれから、ばあちゃんに他の遺跡の情報について聞いてみた。
フロレンス国内には全部で8つの遺跡があり、北部、南部、西部に2つずつ、東部、中央部に1つずつあるとのことだ。西部の2つはすでに行ったところであり、ここから行くのであれば南部にある遺跡、海底神殿か、智の塔のどちらかが距離的には近いそうだ。
海底神殿はその名の通り海底に存在し、その姿は見えているものの、中に入ったものはいないという謎に包まれた遺跡である。
智の塔はその名の通り塔を訪れたものの知を試す遺跡で、遺跡の周囲には町が作られており、王国内で最も考古学者や魔法学者などの知識人の集まる町となっている。
町の名前はスクレクド、学園都市としての性格もあり、スクレクド王立魔法学院では、その名の通り魔法も教えるが、遺跡探索の基礎知識、冒険者としての心得といったことも教えている。
「わしのおすすめはスクレクドじゃ。ここには図書館もあり、様々な蔵書が保管されておる。それに、お主であれば、智の塔を攻略できるやもしれん。」
「スクレクドか、この町からどのくらいかかる?」
「二週間もあれば着くであろう。行くのであれば、馬車を用意することをお勧めするぞ。」
「そうだな、俺はスクレクドに行きたいと思うけど、みんなはどうだ?」
「私は賛成ですわ。新しい遺跡探索ですもの、わくわくするではありませんか。」
シーナは遺跡探索であるということでものすごく乗り気である。
「ボクはどこまでもミツキについて行くよ。」
「あたしの居場所は、ご主人様のいるところです。」
フランとリアの2人は、俺と一緒にいたいと言ってくれる。
「パパの助けになるのであれば、私もお供します。」
花凛もスクレクド行きに賛成してくれた。
俺たちの次の目的地はスクレクドに決まった。
出発は3日後、それまでは体を休め、必要なものを準備して過ごすこととなった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
誤字脱字、その他気になった点がありましたら、コメントよろしくお願いします。




