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考古学者の異世界探索紀行  作者: 桜井由貴
第1章 遺跡の攻略紀行
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第30話 ニースの町への帰還

お気に入り登録していただきありがとうございます。

 研究所からニースの町はおよそ3日程度の行程だと言われているが、花凛には見るものすべてが新鮮に映っており、様々なものに興味を抱いては立ち止まり、観察や質問をしてきたので、実際にニースの町に着いたのは研究所を出てから5日後だった。

 三週間ぶりのニースの町には、なんとなく懐かしさを感じた。

 ただ、町へ入る際に花凛が問題になった。

 花凛には身分証がないため、俺が初めてこの町に来た時と同じようにB5くらいの大きさの黒い鉄の板での鑑定が行われたのだ。

 しかし、花凛は人ではなくマジックアイテムである。

 そのため、鑑定結果がでなかったのである。

 このことに思い至らなかった俺の失態である。

 とっさに、


「この子、なんか呪いを受けているみたいで鑑定されないんだ。」


 といかつい顔の東門の兵士に言ったら、


「そいつはかわいそうだな。よし、通行税の銅貨5枚払ったら通っていいぜ!」


 兵士は感極まった感じで、花凛を通してくれた。

 顔に似合わず、いい奴であった。


 町に入ると、すぐさまギルドへと向かった。

 ギルドに入ると、昼過ぎということもあり冒険者はいなかった。

 カウンターにはいつものようにメルティさんがいた。

 俺はメルティさんのいるカウンターに向かう。


「お久しぶりですメルティさん。」


「ハルノ様、お戻りになられたんのですね。ようこそギルドへいらっしゃいました。本日はどのようなご用件で?」


 いつものようにクールな対応だ。


「とりあえず、清算お願いしてもいいですか?それとパーティ名決めたので、その申請もお願いします。」


「かしこまりました。ではまずパーティ名の申請とパーティメンバーの登録をお願いします。こちらに記入とメンバーのギルドカードの提出をお願いします。」


 一枚の紙が差し出されたのでそれを受け取り、俺を含め4人のギルドカードを渡す。

 紙のパーティ名にスプリングフィールドと書き、メンバーのところにそれぞれの名前を書く。


「はい、確認します。パーティ名がスプリングフィールド、パーティのリーダーがハルノ様、メンバーがニース様、フォストレア様、リリシア様ですね。こちらで登録いたします。少々お待ちください。」


 メルティさんが席を立ち、カウンターの奥で何やら作業を始める。

 紙とギルドカードを確認しながら、何かにその情報を入力しているようだ。


「えっ?」


 俺のギルドカードを確認した時、メルティさんの口から驚きの声が漏れた。

 そして、すぐさまカウンターに戻ってきた。

 メルティさんにしては興奮した様子で。


「ハ、ハルノ様!この、ギルドカードに書かれていることは事実ですか!?」


 俺のギルドカードの裏面、遺跡を攻略したことを表す文を指しながら、取り乱したメルティさんが聞いてきた。


「ええ、まあ、その、事実です。」


「しょ、少々お待ちを!」


 あわててギルドの2階へと走っていくメルティさん。

 メルティさんでもあんなに慌てることあるんだな。

 数分もしないうちに、メルティさんはばあちゃん、ギルド長を連れ戻ってきた。


「ミツキや、よく戻ったね。今メルティから聞いたのじゃが、東の遺跡を攻略したそうじゃないか。」


 ばあちゃんの発した攻略という言葉に、ギルドにいた職員たちがざわめいた。


「ああ、所有権が俺になった。ゴーレムも倒したよ。」


「ゴーレムの残骸は回収したのか?」


「回収した。袋の中に入っているよ。」


 研究所の1階にいたゴーレムは花凛に聞いたところ、修復が不可能であるらしく、フランにギルドに持ちかえればいいと言われ、袋に入れておいた。


「そうか、なら裏まで来とくれ。」


 ばあちゃんに促され、ギルドの裏手に回る。

 ばあちゃんだけでなく、メルティさんを始め他のギルド職員もついてきた。


「かなりスペースを開けてくれ。」


 一言かけてから、ゴーレムを取り出す。


「「「「「おおおおおっ!!!!!」」」」」


 職員たちが感嘆の声を漏らす。


「これは、すべてミスリルじゃな?間違いない、東の遺跡にいたゴーレムじゃな。」


 職員たちから、


「じゃあほんとに」


「攻略したのかよ」


「ミスリルって」


「あいつ何もんだ」


 といった声が聞こえてくる。


「よくやったのうミツキ、まさかわしもこうも早く遺跡が攻略されるとは思わなんだ。」


「いや、今回はばあちゃんの言ったように、俺と同じ世界から来た人が作った物だったんだ。」


「詳しくは後でゆっくり聞こう。わしはこのことを本部に報告せにゃならん。お主らも疲れたじゃろう。今日はゆっくり休むとええ。また明日ギルドに足を運んでくれんか?」


「わかった。もし何かあったらナンチャッ亭にいるはずだから、連絡くれればすぐにここにくるよ。」


「うむ、本当によくやった、ではわしは失礼する。」


 そそくさと、ばあちゃんは自分の部屋へと戻っていった。


「ハルノ様、ギルドカードをお返しします。それと、遅れましたが遺跡攻略おめでとうございます。」


 メルティさんがお祝いの言葉を口にしたのを皮切りに、他のギルド職員たちを口々に俺たちをいたわってくれた。

 俺たちはそんなお祭り騒ぎのギルドを後にし、ナンチャッ亭に向かった。


「女将さんいますか?」


 相変わらず見た目のボロイ宿に入る。


「おや、帰ってきたのか。」


「ええ、泊まりたいんですけど大丈夫ですか?」


「ああ、4人だろう空いてるよ。」


「いえ、5人でお願いします。」


「5人?」


 女将の視線が花凛に向けられる。


「あんた、また女を増やしたのかい?中々やるじゃないか!わかった、5人部屋だね、502号室をお使い。何泊する?」


「とりあえず2泊で食事もお願いします。」


「あいよ、銀貨3枚だよ。」


 銀貨3枚を渡し、鍵を受け取る。

 階段を上り、5階に行き502号室に入る。


「ふう、やっと一息つけますわ。」


 防具を外しながらシーナがベッドに腰掛ける。


「ギルドは今頃すごいことになっていそうだね。」


 先ほどのギルドの熱狂ぶりを思い出してか、フランがそう言った。


「ご主人様、今日はこれからどうするの?」


「んー、花凛、ニースの町見て回るか?」


「いいんですか、パパ。」


「ああ、花凛もいろいろ見たいだろ。みんなはどうする?」


 花凛は町に入ってからも、きょろきょろとあたりを見回し、物珍しげにしていた。

 だから、俺としては花凛にいろいろと見せてやりたい。


「私は一度お父様とお母様に挨拶してきますわ。」


「ボクも一度家に戻って、花凛用の装備を見繕ってくるよ。」


「私はご主人様とご一緒します。」


「わかった。なら、18時頃下の食堂に集合な。」


 俺たちは別れ、ナンチャッ亭をでる。

 俺とリア、花凛は町中を散歩へ、シーナはニース邸に、フランは自分の店へと向かう。


 ニースの町の領地は南側を頂点とした三角形の形をした街で、北西部から北東部にかけ扇状に塀が築かれており、北門と東門の2か所からしか町に入ることが出来ない。

 北部は主に農地で、農民たちが住んでいる地域となっている。

 まだ完全に開拓が終っていないため、一部は荒地のままである。

 農地から南下していくと、街中に入れ、町の中心にニース邸がある。

 町の東側にはギルドがあり、冒険者向けの宿や武器屋、防具屋立ち並んでいる。

 南側は漁師たちの住む地区で、海に面しており、塩の精製も行われている地区である。

 西側は町民向けの商業地区になっていて、チャン商会がここに店を構えている。

 俺たちがこれから向かうのは、西側の商業地区だ。


 商業地区には八百屋や肉屋、魚屋といった食料品を取り扱う通りと、服や日用品を取り扱う通りの主に二つの通りに分かれている。

 まずは花凛の服を見たいので、後者の通りに向かう。

 花凛の服は、初めて会った時に着ていたセーラー服のみで、他の服を一着も持っていない。


「花凛、欲しいものがあったら、遠慮しなくていいぞ。」


「ありがとうございます、パパ。」


 きょろきょろと、左右の店に視線を送る花凛。

 パタパタとお店を見に行っては、次の店に行き、また次の店に行きを繰り返している。


「花凛ちゃん、かわいいですね、ご主人様。」


「ああ、やっぱきちんと経験させてやらないとな。」


 花凛は知識量こそ多いが、実体験がない。

 だからこそ、俺は花凛にいろんなことを体験させてやりたいと思ったのだ。


「リアも何か欲しければ買うぞ?」


「いいの?」


「もちろん。」


 俺がそういうと、リアは服を見ている花凛の隣に行き、二人で楽しそうに話し始めた。

 女の買い物が長いのは、元の世界で朔夜と買い物に行った際に経験済みなので、俺は俺で、店を見て回ることにする。

 そんな大きな通りでもないので、この通りにいる限りは迷子になることも無い。

 それに、ニースの町自体治安のが良く、誘拐されることも稀である。


 今俺が見ている店は、貝で作ったアクセサリーを売るお店だ。

 これはニースの町の特産の1つで、王都でも人気があるものらしい。

 アクセサリーは1つ1つ丁寧に作られており、作り手の愛が感じられる。


「パパ!」


 外で花凛が俺のことを呼んでいる。

 俺は店を後にし、花凛の声のした店に向かう。


「この服、どうですか?」


 白のワンピースを持った花凛が店の中で俺を待っていた。


「そうだな、色つきの方がいいんじゃないか?そうだな、こっちの桜色の方が花凛には似合いそうだ。」


 俺が手に取ったのは、桜色の生地に花の刺繍が胸元にワンポイントでされたワンピースである。

 花凛は日本人然とした顔立ちをしているので、俺としては桜色を推したい。

 淡い色の服を花凛が着ると、儚く見えて可愛さが倍増すると思う。


「これも可愛いですね。うーん、どっちにしましょうか?」


 2つの服を手に持ち、花凛が悩む。


「気に入ったなら、両方買ってやるぞ。それに、一着じゃ服足りないだろ。」


「じゃあ、お言葉に甘えて両方お願いします。」


「了解、すいません!」


 花凛から服を受け取り、店員さんを呼ぶ。

 店員さんに服を渡し、買う旨を告げて清算してもらう。


「ほら、花凛。」


「ありがとうございます、パパ。」


 買った服を花凛に渡してやると、うれしそうにそれを受け取ってくれた。


「他には…下着も必要か、あとは合羽に長靴もあると便利か。」


 今後旅をするうえで、花凛に必要そうなものをリストアップする。


「あれ花凛、リアは一緒じゃないのか。」


 先ほどまで花凛と一緒にいたはずのリアの姿が店の中にはなかった。


「リアママなら、他のお店を見てくるって言ってました。」


「リアにも何か買ってやらないとな。花凛は他に欲しい物あるか?」


「出来れば髪をまとめる物を何か欲しいです。」


「髪か…」


 花凛の髪は背中までの長さで結構長く、今はそのままストレートに落としている。


「そうすると、リボンかな?」


「そうですね、リボンがいいです。」


 リボンが帰るお店か。

 どこにするべきだろうか。

 やっぱり、チャン商会に言った方が良いものがあるかもしれない。

 なら、リアを拾ってチャン商会に行こう。


「いい加減やめてよ!」


 俺が、次の目的地を決めた時、外からリアの嫌がる声が聞こえてきた。


最後まで読んでくださりありがとうございます。

誤字脱字、その他気になった点がありましたら、コメントよろしくお願いします。

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