第29話 研究所の使い方
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研究所を手に入れた翌日から、俺はこの研究所がどの程度の性能を有しているのか試していた。
まず、3階でスキャニングして作れるものであるが、これは鉱物を原料とするものしか作れないことがわかった。
俺的には3Dプリンターのようなものと考えていたのだが、堺さんの残していた研究ノートによると、彼女は無生物から人造生物を作る研究をしており、その研究過程で金属の加工を簡単にするために作ったマジックアイテムであるそうだ。
このマジックアイテムを作り上げたことで、彼女の研究は飛躍的に進んだそうだ。
やはり、ハンドメイドで毎回同じものを作ることは難しく、画一的なものを作れなかったことが、それまでの研究における課題であったそうだ。
形が少し違うだけで、魔力の流れ方が変わり、成功したものと同じように作っても動かず、苦労したようである。
それが、このマジックアイテムを作ってからは、均一的な部品が作れるようになり、ガーゴイルの量産に成功し、数年後にはゴーレムの量産することが出来たそうだ。
しかし、このマジックアイテムにも難点がある。
それは一度に1つの物しか作れない点だ。
銃弾を作成している間は、他のものをスキャンすることが出来ず、銃弾を作り終えるまでは次に作りたいものを作れないのである。
また、1つの物を作るのに時間がかかる。
日本の工場であれば1時間あたり数千個単位で作れるのだろうが、流石にそこまで高性能な代物ではなく、大きさにもよるが銃弾であれば1日に100個が限界であるようだ。
スキャンできる最大の大きさのものを作ろうと思ったら、数日はかかるとのことだった。
思いのほか生産性はよくないのである。
それでも、この世界ではチートであるが、俺はしばらく銃弾以外作るつもりはない。
今後も遺跡探索の際には危険が付きまとうことはわかっているので、なるべく銃弾は用意しておきたい。
次に4階の工場設備であるが、こちらはゴーレムとガーゴイルの量産工場である。
てか、それ以外は作れない。
魔力炉の生産もここでされており、魔力炉の材料は宝石であり、透明度の高いものほど容量が大きい魔力炉が生産できるそうだ。
花凛に搭載されている魔力炉は10000カラットのダイヤモンドから作られたもので、堺さんの生涯最高傑作であるという。
ただ、花凛を動かすための必要魔力量が多くなりすぎてしまい、一度稼働実験をした時には、研究所内で使っていた魔力をすべて持って行ったにも関わらず、10分しか稼働しなかったそうだ。
また、その時にはしゃべることも出来ず、単なる人形が動いているようだったらしい。
しかしながら、一度完全に稼働してしまえば、魔力炉が活動に必要な魔力を自前で作ることが出来るため、俺とフランの両方が死ぬまで稼働が可能であるそうだ。
花凛の魔力炉と同じものは工場での生産が不可能であるらしい。
ちなみにゴーレムとガーゴイルに搭載された魔力炉は、石英から作られたものであるそうだ。
石英は比較的手に入りやすく、透明度も高いため量産に最も適しているとのことだ。
ただ、石英で作られた魔力炉には活動限界があり、研究所からの魔力供給が受けられないと、すぐさま活動停止してしまう。
そのため、外部でゴーレムとガーゴイルを運用することは不可能であるそうだ。
スライムのスラはんにも魔力炉が搭載されていて、こちらはダイヤモンドで作られている。
魔力炉の性能によって作られた人造生物のAIの性能も変わり、質が良ければ人以上の性能を発揮するが、石英で作った物程度では簡易の命令を聞かせることが限界である。
確かに、花凛は人間と同じく話すのに、ゴーレムとガーゴイルは同じことしか言わなかった気がする。
スラはんも花凛と比べるとロボットぽいが、こちらの質問は理解するし、コミュニケーションがきちんととれた。
ラボのある5階であるが、堺さんが生きていた時はここを拠点にして、研究所の管理をしていたそうだ。
しかし、その機能はすべて花凛が担うこととなり、ここの使い道はない。
ただ、堺さんの残した研究ノートや本などが置いてあるので、それらを仕舞っておく場所にしておけばいいと思う。
何せ、ノートと本はすべて日本語で書かれているから、今のところ俺しか読めないだろう。
それと、残念ながら花凛の作成方法についてはどこにも書かれていなかった。
そんな感じで、一週間はあっという間に過ぎた。
「パパ、銃弾が全てできました。」
朝起きて2階にあるキッチンで朝食を作っていると、木箱を3つ持った花凛に話しかけられた。
「こちらの大きな箱に入っているのが普通の弾で、こちらが銀で出来たもの、こちらがミスリルで出来たものです。」
「おお、ありがとう。これからもしばらくは、今回と同じペースで銃弾を作るようにしてくれ。」
「わかりました。」
俺は木箱を受け取り、中身を確認し、魔法の袋にしまう。
これで、弾不足に悩まされずに済む。
「それと、朝食が出来るからそろそろ3人を起こしてきてくれ。」
「はい、パパ。」
花凛がキッチンから出ていく。
よくできた娘である。
この一週間、俺の手伝いは積極的にしてくれるし、料理も初めは出来なかったが、今は俺がいろいろと教えて、簡単なものであれば作れるようになった。
花凛も食事は普通にする。
今日の朝食は、頭が二つある鶏の魔物、ニワニワトリの卵で作ったスクランブルエッグに、ピッグボアの肉を茹でて塩で味付けした物、森で取れた山菜で作ったサラダに、スープ、デザートのマンゴーである。
ニワニワトリは昨日研究所の敷地に入り込み、スラはんに処分されそうになったところを、俺がスラはんから貰ったものである。
俺は、スラはんから貰った後、森から木材を集め、ニワニワトリの小屋を作ってみた。
すると、ニワニワトリは喜んでくれて、そこに住み始めたのだ。
今日の朝小屋を見てみると、卵を10個ほど産んでおり、そのうちの5個を俺にくれた。
餌に関しては、スラはんに森から山菜や果物を取ってきて与えるように指示をだした。
これで、俺たちがいなくても死ぬことはないだろう。
「おはようございますわ、ミツキ。」
最初に起きてきたのはシーナであった。
すでに準備完了といった装いで、朝食後すぐにここを出発できるように準備しているあたり、シーナの真面目さが窺える。
シーナは料理はあまり得意ではない。
冒険者になったことで多少は覚え始めたが、ニース邸で生活していた時にはメイドたちが料理をしていたため、覚える機会がなかったそうだ。
「ご主人様、ごめんなさい、寝坊したよ~!」
次にキッチンに来たのは、リアであった。
リアは自分は奴隷であるから、炊事洗濯はすべて任せてほしいと言ったのだが、料理に関しては俺が元の世界に近いものを作ることに挑戦してみたかったので、俺が担当することにした。
それでもリアは料理の際は、花凛とともに俺を手伝ってくれる。
リアには何日か前、奴隷から解放すると言ったら、奴隷のままでいたいと言われ、奴隷のままである。
「おはようミツキ、今日の朝食はなんだい?」
最後に起きてきたのはフランだ。
その後ろから花凛もついてきている。
フランは何気に寝起きが悪い。
野営しているときはそんなことないのだが、安全な場所であると中々起きず、研究所内で寝起きするようになった次の日、起こすのにかなりの時間を要した。
しまいにはキスしてくれたら起きるという始末である。
フランは料理は出来るものの、あまり食にこだわらないため、自分で料理することはない。
フランに料理をさせると、ピッグボア丸焼きといったこれぞ冒険者料理といったものを作るため、俺としては物足らない。
「これそっちのテーブルに運んでくれ。」
キッチンに併設されたダイニングに移動し、みんなで朝食をとる。
「今日は昨日も言ったようにここを後にして、ニースの町に戻ろうと思う。」
朝食を取りながら、今日の予定を確認する。
「ニースの町を出発してから二週間ちょっと経ちましたものね。戻るころには三週間、そろそろお父様とお母様に顔を見せたいですわ。」
「そうだね、この遺跡を攻略したことを一度ギルドに報告するべきだろう。」
「ギルドに報告ってどうすればいいんだ?」
ただ単に、遺跡を攻略したと言えばいいのだろうか。
それだと、確かめるのに時間がかかると思う。
「ミツキ、ギルドカードを確認してないのかい?」
「ギルドカード?」
「ああ、遺跡を攻略したら、攻略者、今回はミツキだがギルドカードにその旨が記される仕組みになっているはずなんだ。」
フランの言葉に従い、ギルドカードを取り出す。
ギルドカードの表には名前とギルドランクが書かれているだけで他は書かれていない。
ひっくりかえし裏面を見てみると、そこにそれまで無かった記述があった。
ニースの町より東に3日の遺跡の攻略を確認、と書かれていた。
「どうだい、わかるようになっているだろう。ギルドが把握している遺跡を攻略すると、仕組みは不明だが、ギルドカードでわかるようになっているんだ。だから、ギルドに行ってギルドカードを見せれば、遺跡攻略が認められるよ。」
なるほど、ギルドカードにそんな機能があったのか。
ギルドカードは身分証くらいにしか思っていなかった。
「ギルドで思い出したんだが、メルティさんにパーティ名決めてくれって言われてたんだ。」
いろんなことがありすぎて、今の今まで忘れていた。
「何かいい案あるか?」
はっきり言って、俺にそんなセンスはない。
昔、猫を飼っていたことがあるのだが、その名づけの際、朔夜ににいの考える名前はダサいとバッサリ言われたのだ。
「ミツキに何か思い入れのある名前とかないんですの?」
「ボクもミツキの好きな名前でいいと思うよ。」
「ご主人様の付けたパーティ名ならどんなものでもあたしはいいよ。」
思い入れのある名前ね。
なんかあったかな。
「スプリングフィールドなんてどうだろう。」
ふと、思いついた愛銃の名前であり、俺の名字を英語にしたものを提案してみる。
「どんな意味ですの?」
「特に意味はないんだけど、俺が使っていた銃があるだろ、あれの名前なんだ。こっちの世界に来てから何度もあいつに命を救われているから、俺としてはいいかなって。」
とってつけた説明であるが、結構いい気がしてきた。
「スプリングフィールドか、ボクはいいと思うよ。」
「あたしも賛成!」
「確かに、私たちにぴったりかもしれませんわ。」
3人はこのパーティ名に賛成のようだ。
「花凛はどうだ?」
「私ですか?パパの名字をもじっているので、その点からもいいと思いますよ。」
花凛には向こうの世界の知識もあるので、春野を英語にしたものであることもお見通しの用である。
「よし、なら今から俺たちのパーティ名はスプリングフィールドだ。」
これで、メルティさんに報告が出来る。
「そういえば、パパ1つ質問いいですか?」
「なんだ。」
「どうしてパパは、ママたちと子供を作らないんですか?」
瞬間、空気が固まった。
ママたちというのはシーナ、フラン、リアのことだ。
花凛はこの一週間で、それぞれをシーナママ、フランママ、リアママと呼ぶようになった。
「花凛、どうしてそんなことを?」
「いえ、ただ単に疑問だっただけです。マスター凛がくれた知識によると、夫婦は同じベッドで寝て、子供を作るそうじゃないですか。それなのにパパは毎日一人で寝ていて、子供を作る気配がなかったからどうしてかと。」
「花凛、それはねボク達はまだ正式に結婚したわけじゃないんだ。」
俺がどう説明しようかと思案していると、フランが口を開いた。
「そうだったんですか。」
「うん、それに、今子供を作っちゃうと、ボク達は遺跡調査が出来なくなってしまうからね。」
「なるほど、ありがとうございますフランママ。」
どうやら花凛はフランの説明で納得してくれたようである。
シーナとリアは顔を真っ赤にしながら、朝食を進めている。
こんな感じの花凛のプチ暴走はこの一週間のうち、何度かあった。
どうも、花凛が堺さんから与えられた元の世界の知識には偏りがあるらしく、時々突拍子もないことをしたり、聞いてくる。
思春期の娘の気持ちを知りたいと言って、
「パパ、臭い、キモイ、近寄らないで!」
と花凛に言われた時は、演技だとわかっていてもへこんだ。
あとは、ヤンデレってどんな感じって聞かれて、説明した翌日に、花凛が起こしてくれえた時、ヤンデレ風に起こされた時は寿命が縮んだ。
だって、手に包丁持ってるんだもん。
俺に馬乗りになっている花凛が中々起きない俺に対し
「どうして起きてくれないの、ねえ、パパ!」
て言いながら包丁を振りかぶっているのを目覚めと同時に見た時の恐怖、わかるだろうか。
俺に叫び声を聞いた3人が部屋に入ってきて、青い顔で必死に花凛を俺から離そうとしてくれた。
花凛はその時何食わぬ顔で、ヤンデレがわかりましたと言った。
他にも、親子のスキンシップといって裸で俺の入っている風呂に乱入して来たり、夜伽をしようとしたり、BLについて聞いて来たり、男の子と男の娘の差について聞いて来たりと大変だった。
それも日が経つにつれ少なくなった。
昨日は何もなかったから、もうないだろうと油断していた時に今の質問が来たのである。
これからも花凛の言動には注意しなければいけない。
まあ、産まれてからまだ一週間だから仕方ないのかもしれない。
そんなこんなで、朝食は楽しく過ぎていった。
朝食後、俺たちは荷物をまとめ、研究所の出口にやってきた。
格子状の門があり、ガーゴイルの門番がいる場所だ。
見送りにスラはんが来てくれている。
『じゃあスラはん、俺たちはしばらく留守にするけど、ニワニワトリの世話とここの管理頼むな。』
『了解、命令実行、問題ない』
スラはんに一言告げ門を開ける。
門から森に出て俺たちは来る時より1人、花凛が増えた状態でニースの町に向かって出発した。
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