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考古学者の異世界探索紀行  作者: 桜井由貴
第1章 遺跡の攻略紀行
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第28話 オートマタ、花凛

感想いただきありがとうございます。

 少しの時間を置き、光が収まる。


「魔力の充填を確認しました。オートマタNo1花凛かりん起動シークエンスに入ります。全機能オールクリア、研究所との同期を確認、稼働を開始します。」


 いきなり女の子の口が動き始め、その後目を開けた。

 その視線は俺とフランを交互に見ている。


「おはようございますパパ、ママ。私はマスター凛より生み出されたオートマタで花凛です。これからよろしくお願いします。」


 今までずっと眠っていたとは思えないほどしっかりと体を起こし、花凛が立ち上がった。

 俺としてはそんなことよりも、花凛の言った言葉が気になって仕方がなかった。

 てか、自分の耳が信じられない。


「ちょっと待ってくれ、今俺のことなんて言った?」


「パパと呼びました。」


「…ママは誰だ?」


「そちらのエルフの女性がママです。」


 花凛の視線の先にいるのはフランだ。

 フランも何を言われたのか分からず、混乱している。

 シーナとリアに至ってはポカンと口を開けて固まっている。


「なんで!?」


「私を作ったのはマスター凛ですが、私の意識が生じたのは、パパとママが魔力を注いでくれたからです。ですから、私はパパとママから産まれたことになります。ダメ、ですか?」


 花凛がさみしげな、泣きそうな表情になった。

 そんな顔をされたらダメとは言えなくなる。


「いや、ちょっと混乱しているだけだ。だから、ダメだなんてことはない。花凛の好きなように呼んでくれていい。」


「ありがとうございます、パパ。」


 笑顔でうれしそうに花凛がお礼を言ってくれた。


「ママのこともママって呼んでいいですか?」


「ボクがママ?ママ、ボクが?ミツキがパパ?」


 花凛がフランに話を振るも、フランは茫然として何かを呟いており、花凛の言葉が聞こえていないようである。

 そんなフランを花凛は首をかしげてみている。


「フラン、しっかりしろ、フラン。」


 俺はフランの体を強めに揺する。


「はっ、ボクは何を……。」


 我に返るフラン。


「ママ、大丈夫ですか?」


「ママ…夢じゃない?ボクがママなのかい?」


 どうやらフランは、ママと言われたことを自分の夢か何かと勘違いしていたようだ。


「はい、お二人の魔力で産まれたのでパパとママです。」


「そうか、ボクがママか。それでミツキがパパ…ボクらが夫婦、ふふふっ、フフフフ…」


 不気味な笑い声を発しながら、フランが壊れた。


「おい、フラン戻ってこい!」


 今一度フランの肩をさっきより強く揺する。


「ミツキ、この子がボクのことをママって呼んでくれるんだ!ボク達子供が出来たよ!愛の結晶だよ!」


「落ち着けフラン、一度深呼吸するんだ。はい、吸って、吐いて!」


「すーはー、すーはー…」


「はい、もう一度、吸って、吐いて。」


「すーはー、……すまないミツキ、我を忘れてしまったよ。」


 ようやくフランが落ち着きを取り戻した。

 フランて想定外の事態に弱い気がする。


「それで、私はママのことをママと呼んでいいんですか?」


「それはもちろんだよ。ボクが花凛のママさ。」


 無駄にいい笑顔のフラン。

 よほどママと呼ばれることがうれしいんだろう。

 俺としては自分より少し下に見える女の子に、パパと呼ばれても違和感しか湧かないが、フランはエルフで100歳越えだがらな。

 エルフの婚期がどのくらいであるかは知らないが、ママと呼ばれることに母性本能を刺激されているに違いない。

 それよりも、シーナとリアの2人もどうにかしないと。

 2人は驚きからか、まだ現実に戻ってきていない。

 とりあえず、2人を正気に戻すことから今後のことを考えよう。




 2人を正気に戻すのに、30分ほどの時間を要した。


「改めて、私は花凛、マスター凛に作り出されたオートマタで、研究所を運用するための端末でもあります。」


 俺たちは現状を正確に把握するため、花凛にこの研究所について説明をしてもらっている。


「すべての管理者権限はパパであり、パパが最高責任者であるとしたら、私はパパの秘書で、パパが決定したことを研究所に通達する役目があります。私が動き出したことで、研究所は正式に作動し、この研究所は私を中心に据えて稼働しています。研究所の施設を使用するには、一度私を経由しないと使用が出来ません。また、私に指示を出せるのは管理者であるパパだけとなっています。」


「ようするに、花凛が俺専用の入力端末ってことか?」


「はい、簡単に言うとそうです。この研究所の運営担当ですね。それと、パパはわかっていると思いますが、私はマジックアイテムに分類されてまして、戦闘力は皆無です。レベルアップもしません。」


「うん、鑑定した時にそれはわかってる。ところで、この研究所では何が出来るんだ?」


 今はラボラトリーで花凛から説明を受けているが、未だこの研究所がどういったものなのかわかっていない。


「マスター凛の主な研究は人造生物の製造でしたが、この研究所では私と同じものを作り出すほどの設備はありません。せいぜいゴーレムやガーゴイルを作り出す程度です。また、作り出した生物は研究所の敷地外に出ることは出来ません。」


 そういえば、ミュレの村の村長からガーゴイルは何度倒しても、数時間すると復活すると聞いている。

 破壊されると、生産システムが起動し、新たな個体を作り出し、再び門番にしていたのであろう。


「それと、専用のマジックアイテムでスキャニングした物を作り出す機能も備えています。もちろんすべての物を作り出せるわけではありませんが、材料があれば大体の物は生産できます。」


 ようするに工場機能があるのか。

 まてよ、


「なあ花凛、もしかして銃弾とか生産できないか?」


 材料さえ揃えてしまえればスキャニングした物を作れるのなら、と思い花凛に尋ねる。


「銃弾を見せて貰っていいですか?」


 俺は魔法の袋から9x19mmパラベラム弾を一発取り出し、花凛の手に乗せる。


「そうですね、これならば生産可能です。幸い、研究所の地下は金属の鉱床になっているので、金属には事欠きません。ミスリルでの作成も可能です。」


「マジか!それはいい、これで弾不足に悩まされないですむ。じゃあ、銃の方はどうだ?」


 今度はスプリングフィールドXDを取り出し、花凛に渡す。


「パパ、残念ですが銃本体の作成は不可能です。まず、生産に使われている材料がわかりません。他のもので代用するのも難しいですね。」


「そうか、まあ、弾が手に入るとわかっただけ十分だ。とりあえず、9x19mmパラベラム弾と全く同じものを500発、銀製のものを50発、ミスリル製を50発作ってくれ。」


 これだけあれば、しばらくは銃を使うことが出来る。

 銀製を頼んだのは、もしかしたら魔物に対して強力な威力を発揮するんじゃないかと思ったからで、ミスリル製はとある考えが浮かんだから作ることにした。


「わかりました。生産に一週間ほど時間がかかります。大丈夫ですか?」


「ああ、今更一週間くらいどうってことない。幸い、食糧にも困ってないし、寝床はあるし。」


 この研究所の権限を得たおかげで、建物の他の階にも自由に行けるようになった。

 この建物内には休憩するための部屋がいくつかあり、ベッドも備え付けられている。

 まず1階、俺たちがゴーレムと闘った場所であるが、1階には大部屋一つだけで他には何もない。

 2階にはキッチンや大浴場があり、宿泊設備もこの階にまとめられている。

 3階、4階は工場施設になっており、ガーゴイルの生産から銃弾の生産まで可能な場所である。

 そして今いるラボがあるのが5階である。

 ここは管理施設の役割があったそうだが、今はその役割を花凛が担っている。


「では、銃弾をスキャンするために3階に行きましょう。私だけでも大丈夫ですが、パパたちはどうしますか?」


「俺は花凛と一緒に行こうと思うけど、3人は?」


「そうですわね、しばらくこちらの建物に寝泊まりするのでしたら、私は外に設置したテントを片付けてきますわ。」


「そうだね、ボクもニース嬢と一緒に片付けてくるよ。」


「なら、あたしも片づけを手伝うよ。」


 そんなわけで、俺たちは二手に分かれることになった。

 俺が花凛と来たのは3階、よくわからない機械が置いてあり、ベルトコンベアーもあったり、本当に工場である。


「銃弾をこちらの箱に入れます。」


 花凛は四方に宝石のついたガラスでできていると思われる透明な箱の前で立ち止まった。

 その箱のふたを開けると、そこに銃弾を入れた。


「スキャニング開始。」


 その言葉と共に、宝石から七色のビームのようなものが銃弾へと照射される。


「スキャニング終了、生産を開始。」


 ゴウン、という音と共に機械が動き出した。


「パパ、これで一週間後には銃弾が生産されます。今後は私に指示をくれればどこにいても工場を稼働させることができます。」


「すげー便利だな。」


「マスター凛は、日本にある工場をこの研究所に再現しようとしていました。この世界の常識に当てはめればオーバーテクノロジーです。」


 この世界で物を作るとしたら、大体のものがハンドメイドである。

 汎用の剣などは一部鋳造で作られているが、鍛冶師の手で作られたものと比べると性能が落ちる。

 そのため、大量生産はされることが少ない。

 しかし、ここでは作れるものは限られるが、ほぼ自動で生産してくれるのだ。

 特に銃弾を生産してくれるのはありがたいし、便利である。


「あとは一週間待つだけか。その間にこの研究所で出来ることを把握しておかないとな。」


 俺と花凛は3階を後にし、1階へと降り、シーナ達と合流した。

 その後、2階に移動し休憩を取ることにした。


最後まで読んでくださりありがとうございます。

誤字脱字、その他気になった点がありましたら、コメントよろしくお願いします。

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