第27話 ゴーレムを攻略しよう
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ゴーレムに初挑戦してから、すでに5日がたった。
その間、ゴーレムに挑戦した回数は20回ほど、一度たりともダメージを与えることができなかった。
水をかけてもダメだったし、火も効かない、素手で殴ってもダメ、間接狙おうと思っても、間接が見当たらない、弱点らしい弱点は全く見つからなかった。
わかったことは、ゴーレムがミスリル鋼で作られていること、後、鑑定したところ魔物ではなくマジックアイテムであった。
「全く、でたらめすぎますわ。」
現在は建物の前で朝食中である。
朝食はパンにピッグボアの肉とレタスを挟んだものに、森でとれた果物である。
研究所周辺の森はここ数年ほとんど人の手が入っておらず、食糧になる魔物はいるし、食べられる山菜や果物が豊富であるため、しばらくここを拠点にしても問題ないくらいだ。
しかも、研究所の敷地内にはほとんど魔物が侵入してくることはなく、もし入ってきたとしてもすぐさまスラはんが感知し、これを排除していた。
そのため、敷地内は安全で、不寝番がいらないほどである。
夜はしっかり寝て、朝起きてゴーレムに挑む。
朝食を食べながら対策を立て、再びゴーレムに挑戦、作戦を変え再び挑戦、昼食を挟み午後も3度ほど挑戦する。
夕食後も1度挑戦し、風呂に入り休むというのがここ5日の過ごし方である。
ゴーレムとばかり闘っているのでレベルは上がっていないものの、回避性能は全員上がった様に思える。
何せ、10tはありそうな腕による攻撃である。
当たれば即死だ。
しかも、建物の中では魔法が使えないため、回復魔法使うにしても、一度外に出なくちゃいけない。
だから、全員攻撃は回避することに専念し、隙を見つけてはいろいろ試していた。
全く効果は見られなかったが。
「本当だよ。流石にもう打つ手がなくなってきたね。」
ゴーレムがマジックアイテムであると聞いて、興味深々であったフランはすでにあきらめモードである。
ちなみに今朝は浴槽を作った要領で土の塊を作り、それを魔法の袋にしまい、リアが袋を使えるように設定し持たせ、ゴーレムの頭上まで跳躍してもらい、そこで袋から土の塊を落とすという作戦をとった。
土の塊は重さがおおよそ1tくらいあったが、ゴーレムにあたると粉々に砕け、逆にその残骸で俺たちが死ぬかと思った。
もちろんゴーレムは無傷だ。
フランの言うように打つ手がなくなってきた。
「あっ、そういえばゴーレムの額に何か書かれてたよ。」
「マジか!」
「うん、土の塊落としたときにチラッと見えたよ。何が書いてあるのかはよくわからなかったんだけどね。」
リアが思わぬ情報をもたらした。
「フラン!」
「ミツキ!」
フランに視線を向けると、彼女も俺と同じことを思ったらしく、俺に視線を向けてきた。
「「それがヒントだ!」」
2人のセリフがシンクロする。
やっと、ゴーレム攻略の糸口を見つけた。
「朝食を食べたら、すぐゴーレムに挑戦するぞ!リアはもう一回ゴーレムの額に何が書かれているのか確認してくれ。俺たちは、ゴーレムの攻撃がリアに行かないように注意を引き付けるんだ。」
急いで朝食を食べ終える。
急いては事を仕損じるというが、今はそんなことどうでもいい。
すぐに建物に入る。
『生体反応確認、問う、汝は挑戦者か。』
すでに何度も聞いた音声が部屋の中に響く。
『ああ、挑戦者だ!』
『挑戦意志確認、ゴーレム起動、真理を示せ』
合成音声に従って、ゴーレムが起動する。
「よし作戦通りいくぞ、リアは何時でも跳ぶ準備しておけ!」
俺は刀を抜き、ゴーレムに正面から近づく。
シーナが左に開き、フランが右に開く。
ゴーレムは正面の俺に攻撃を放ってくる。
それを後ろに飛ぶことで避ける。
俺の距離が離れたことで、今度は一番ゴーレムの近くにいたフランにターゲットが移る。
再び俺もゴーレムに近づく。
シーナも距離を詰める。
「ご主人様、いくよ!」
リアが跳ぶ合図を送ってくる。
俺たちはそれを合図に、ゴーレムに攻撃を仕掛ける。
もちろん、ダメージは与えられないが、攻撃を受けたゴーレムの意識は下に向く。
リアが跳んだ。
リアを悟らせないよう、俺たちはゴーレムから離れないように攻撃を避けていく。
距離が近い分、余波が凄い。
気を抜くと、吹っ飛ばされそうである。
「見えた!見えたよ、ご主人様!」
「了解、2人とも戻るぞ!」
リアが着地したのを確認し、俺たちもゴーレムから距離を取る。
そのまま、建物の外に出る。
「リア、よくやった!何が書かれていた?」
外に出てリアの頭を撫でる。
「えーとね、言葉じゃあ説明できないから地面に書くね。」
そういうと、リアは近くに落ちていた木の枝を拾い、地面に何か書き始めた。
「こんな感じの絵が描いてあった。」
リアは地面に「אמת」と描いた。
「これは、古代文字か?ミツキ読めるかい?」
「えーと、これは、ヘブライ語か?前にどっかでみたな。悪い、流石にヘブライ語はわからん。」
「ミツキでも知らない文字がありますのね。驚きですわ。」
なぜだかシーナには、ヘブライ語を読めないといったことに驚かれた。
彼女の中で俺はいったいどういう存在になっているんだろう。
「ミツキ、そのヘブライ語はどんな文字なんだい?」
フランは少しでもヒントを得ようと、俺に質問をしてくる。
「確か、セム語系の言葉でイスラエルっていう国で使われていたな。大昔にユダヤ人たちが使い始めたのが始まりで、そういえば、聖書ももともとはヘブライ語で書かれていたって聞いたことあるな。」
「聖書?」
「ああ、俺たちの世界の宗教で教典とされている書物だ。」
「ということは、君たちの世界にもゴーレムは存在していたのかい?」
俺の説明を聞いて、なぜそう思ったのか分からないが、フランがそんなことを聞いてきた。
「いや、ゴーレムは空想のものとされていたよ。…待てよ。」
頭の片隅に何かが引っ掛かった。
「何かわかりましたの?」
「ちょっと考えさせてくれ。」
地球ではゴーレムは確かに空想上のものだ。
竜の名を持つ某有名RPGでも出てくるくらいに有名なものだ。
しかし、ゴーレム自体の概念は古かったはずだ。
ユダヤ教の伝承の中に登場している。
そういえば、ゴーレムが起動される際、「真理を示せ」って音声が流れていたな。
その瞬間頭の中で何かがひらめいた。
「くそ、やられた。そうだよ、これ造ったの日本人なんだよ。ガーゴイルの合言葉が山・川だったじゃないか。そしたらゴーレムの倒し方だって、元の世界のやり方に準じているはずだよな。」
「ミツキ、何か気付いたのかい?」
「ああ、俺たちの世界にゴーレムはいないが、ゴーレムの倒し方は伝わっているんだ。」
「いないのに伝わっているのかい?随分と不思議な世界だね。」
「まあ、そのことは置いておいて、ゴーレムの額に書かれていた文字「אמת」は多分真理って意味だ。ゴーレムはこれを体のどこかに刻むことで動き出すと言われていて、「אמת」を死を意味する「אמ」に変えることで倒すことが出来るんだ。だから、額に書かれた文字から、「ת」文字を取り除けば倒せるはずだ。」
「流石ミツキですわ。これでゴーレムが倒せますわね。」
「うんうん、すごいよご主人様!」
ゴーレムが倒せることがわかり、2人の表情が明るくなる。
「いや、待ってくれ。文字を消せば倒せることはわかった。だがどうやって文字を消す?あの体にボク達は一度も傷をつけられていない。」
しかし、そこに待ったがかかる。
文字を消すなら、ゴーレムに傷をつけなければいけないのである。
それでも、俺の中には1つの秘策があった。
「いや、まだ試してない武器が1個ある。」
ゴーレムは硬く、剣では傷をつけることは叶わない。
しかし、俺の相棒ならどうだろう。
切り札中の切り札。
残弾の関係からオーガ戦以降一度も使っていない、スプリングフィールドXDならばゴーレムにもダメージを与えられるはずだ。
あとはどうやってゴーレムの額を狙うかだ。
「リア、俺を抱えてゴーレムの頭の高さまで跳べるか?」
「ご主人様を抱えて?うーん、多分いけると思う。」
リアに銃を渡して撃って貰えばいいと思われるかもしれないが、銃を使ったことのない人にとって、銃の反動は厄介なものである。
反動のせいで、狙ったところとは全く別のところに飛んでしまうからだ。
これをすぐに修正するのは至難の業で、おそらくリアであってもすぐには無理だろう。
きちんと打てるようになる前に、確実に弾が無くなってしまう。
であれば、俺が撃つしかない。
「作戦を説明する。大筋はさっきまでと一緒だ。違う点は俺がリアに持って貰って一緒に跳ぶ点だ。シーナとフランには少しきついかもしれないが、2人でゴーレムを相手取ってくれ。出来るか?」
「出来るかじゃありませんわ!やるのですわ!」
「ボクも、ミツキのためならどんなことでもやって見せるさ。」
2人の表情は明るい。
なにせ、5日目にしてやっと希望が見えたのだから。
「リアも大変だと思うが頼むな。」
「任せて!ご主人様の1人くらいなんてことないよ!」
「よし、ならゴーレム退治と行きますか。」
俺は袋からスプリングフィールドXDを取り出す。
弾も補充してある。
一応マガジンを確認する。
オールグリーン、いける。
再び建物へと足を踏み入れる。
機械の音声に応えゴーレムが起動する。
「2人とも頼んだ!」
シーナとフランがゴーレムに接近する。
ゴーレムは腕を振って2人を攻撃するも、何度も同じ攻撃を受けてきた2人にとってすでに脅威なものではない。
「ご主人様、しっかり捕まってて!」
背後からリアの腕が回され、俺に抱きついてくる。
リアは少しでも身軽になるため、プレートメイルを外しているため、背中にぷにゅんという柔らかな感触を感じるが、今はそれにかまっている暇はない。
右手で銃を持ち、左手でリアの腕を掴む。
「跳ぶよ!」
その声と共に浮遊感が俺を襲う。
ゴーレムの額の高さまでの跳躍。
俺は右腕をゴーレムに向けまっすぐ伸ばす。
チャンスは一度。
ゴーレムの額の高さに近づいていく。
そして、額の高さに達し、「אמת」の文字を確認した。
引き金を引く。
バン
マズルフラッシュと共に銃口から9x19mmパラベラム弾が飛び出し、まっすぐ「ת」の文字に飛んで行き、
ガン
『挑戦者、目標を撃破』
「ת」文字を抉り取ると、合成音声が聞こえ、ゴーレムがその動きを停止した。
「っしゃ!」
「やりましたわ!」
「やったね、ミツキ!」
「やったあ!」
そのことに全員が喜びを露わにする。
5日間の苦労がやっと実ったのだ。
『挑戦者、直進し、奥のエレベーターへ』
再び合成音声が聞こえてきた。
「どうやら、先に進んでいいらしい。」
俺はその声に導かれるまま、入り口とは反対側の壁に向かう。
ウィーン
すると、壁の一部に切れ目が入ったと思うと、機械的な音を立てて開いた。
中は、合成音声が言っていたようにエレベーターで、俺はそれに乗り込んだ。
3人も俺に続く。
ドアが閉まり、ガコンという音と共にエレベーターが上昇する。
「きゃっ!」
「えっ!?」
「ふわっ!」
いきなりのエレベーターが動き出したことに驚く3人。
少しするとエレベーターは停止し、扉が開かれた。
エレベーターから出ると、そこはラボラトリーの用であった。
何に使うのかよくわからない機械がおいてあり、大きなテレビのようなものまでも壁にかかっている。
テレビの前にはコンソールが設置されており、まるで秘密基地のようであった。
ブウン
そんな音と共にテレビに映像が映った。
『ここまでたどり着いたゆうんは、誰やかわからへんが、うちと同じ世界から来た人やね?うちの名前は堺凛ゆうんよ。この研究所を作った張本人なんよ。』
テレビに映ったのは20代くらいの、おっとりとした女性であった。
堺凛と名乗った女性は京都弁であろうか、訛りのある日本語で話しだした。
『うちがこの世界に来たのは魔法歴653年のことなんよ。来る前はな、日本の京都におっったんや。』
魔法歴とはこの世界で使われている暦である。
神から魔法を授かった歳を魔法歴元年としており、今は魔法歴1660年である。
堺さんは1000年前のこの世界に飛ばされたようである。
『この研究所はな、うちが人造生物の研究をするために作ってな、もしうちが死んだあと悪用されでもしたらかなわんやろ。だからな、うちと同じ世界の人が来るまでは、他の人にはここの施設を使えないようにするつもりなんよ。この映像がながれているんやから、同じ世界の人がここにいるつもりでうちはしゃべるんよ。』
確かに、ここまで来るためには元の世界の知識がないと来れないだろう。
何せ、元の世界のネタを知らないと攻略できないのだから。
『うちはここまでたどり着いた人やったら、この施設を預けても問題ないと思ってんよ。だからな、うちの研究成果を受け取ってくれへんかな?そんなわけやから、どうするか次の選択肢から決めてな?』
堺さんの言葉と同時に、画面に日本語で3つの選択肢が現れる。
1、受け取る
2、受け取るしかない
3、受け取らないわけがない、てかめっちゃ欲しい
『コンソールがあるやろ、そこの数字を押してきめてな?』
選択肢は全部同じだ。
選ぶも何もないだろう。
『どうしたんよ?はよえらびーな。』
とりあえず、3人にも聞いてみる。
3人は日本語がわからないので、黙って聞いているだけで、なにを言っているのかはわかっていない。
「どうやら、この研究所をくれるらしいんだがどうする?」
「本当ですの!?」
興奮したようにシーナが詰め寄ってくる。
相変わらず、遺跡のこととなると遠慮がなくなる。
「せっかくここまで来たんだ。貰っておくべきだよ。」
「ご主人様のしたいようにすればいいよ。」
3人はここを受け取ることに賛成のようだ。
「なら、ありがたくもらっておくか。」
選択肢の1を選ぶ。
『あんさん、その程度の想いなん?もう一度考え直してな?』
堺さんにそんなことを言われた。
「ちょ、うざっ!」
次に2を選ぶ。
『本当にその程度の想いなん?うちの研究成果なんよ?』
え、なにこの人、かまってちゃんなのか、選択肢の意味ないじゃん。
仕方なしに3を選ぶ。
『そかそか、そんなにうちの成果がほしいんか。しゃーないな、そこまで欲しいんやったらあんさんにあげるんよ。』
なんだろう、この残念感。
研究所もらえるのはうれしいけど、素直に喜べない。
『コンソールの隣にな、生体認証の端末の水晶があるんよ。そこに右手の平をつけてな、魔力を流すとな、あら不思議、あんさんにここの権限が移るようになっとる。』
俺は言われた通り、コンソールの隣にある水晶に右手で触れる。
そして、魔力を流す。
『管理者権限の移行を行います。これより管理者を春野水月に変更。以降、研究所の全権限は春野水月の物なります。』
研究所全体に機械音声が流れた。
『これでこの研究所はあんさんも物なんよ。最後に1つだけお願いや。隣の部屋に行ってほしいんよ。もし、うちの願いを聞きたくなければ、コンソールの1を押してな。聞いてくれなくても特に問題はない。だから、あんさんの好きにするといい。ほなな。』
その言葉を最後に、映像は途切れた。
「どうなりましたの?」
事の成り行きを見守っていたシーナは話しかけてきた。
「ここの研究所の権限が俺に移った。ただ、最後にお願いを聞いてくれって言われた。」
「どんなお願いだったんだい?」
「隣の部屋に行ってくれって。もし、嫌ならコンソールの1を押してくれって。」
「隣の部屋に何があるとかは言っていなかったのかい?」
「ああ、言っていなかった。」
さて、どうするべきか。
お願いを聞いてもいい気がするが、先ほどまでの堺さんのことを考えると、碌でもないことが待っている気がする。
「ご主人様、この扉を開ければいいの?」
俺がそんなことを考えているうちに、リアが隣の部屋に続くドアのノブに手をかけていた。
そして、そのまま、
「あれっ?」
ドアは開かなかった。
「なんで?」
押しても手前に引いても動かない。
「貸してみてくださいな。」
シーナが同じように開けようとするも、やはり開かない。
「ボクにも試させてくれ。」
フランも挑戦するも結果は同じ。
試しに俺もノブを持ち、押してみる。
開かない。
手前に引く、開かない。
ノブは回るから、鍵がかかっているようなことはない。
「もしかして…」
ノブを持ってドアを横にスライドさせる。
すると、ドアが動いた。
なんとなく堺さんの性格がわかってきた。
あの人、単なる面白いもの好きだ。
部屋の中に入ると、1人の女の子がベッドの上で寝ていた。
『あんじょう行ったようやね。』
いきなり、壁に映像映し出され、再び堺さんが現れた。
『この子はな、うちの最高傑作のオートマタなんよ。炊事に洗濯から夜伽まで何でもこなせる、ただな、1つ問題があってな、動かすのに大量の魔力が必要なんや。そやけど、うちは魔力が低くて動かすことが出来へんかった。もし、あんさんが動かせるんなら、この子を起動させてほしい。よろしゅうな。魔力は胸の中心に流してくれたらええ。そこに魔力炉、人でいう心臓やな、があるから頼むわ。』
それだけ言うと、映像は再び途切れた。
さて、どうしよう。
オートマタか、この子が作り物ということが信じられない。
髪は茶髪で、顔立ちはぱっと見日本人の可愛い系。
体型は幼めで、中学生くらいに見える。
来ている服がセーラー服だから、よけいそう見える。
肌の色は白く、手足はすらっとしている。
「ご主人様、この子どうしたのかな?」
「寝ていますの?」
シーナとリアの2人は寝ている女の子を不安そうに見ている。
「ミツキ、さっきの人は何を言っていたんだい?」
フランは先ほどの映像が気になるようだ。
「フラン、オートマタって聞いたことあるか?」
「オートマタ?なんだいそれは?」
やはり、オートマタはこの世界にはないか。
どう説明したものか。
「その女の子な、人じゃないんだ。魔法で作られた人形っていえば通じるか?」
「人形ですの?」
「そんな、まさか…」
「こんな綺麗なのに?」
3人は俺の言葉が信じられないようだ。
俺だってこの子が人形だなんて言われても信じられない。
元の世界の知識があるから、オートマタという存在を知っていたからこそ、受け入れることが出来たのだ。
「それで、この子を動かすのには大量の魔力が必要らしいんだ。俺は動かせるか試してみようと思う。」
「魔力?確かに、体の中心に、これは魔力炉?」
フランの右目に魔力が灯る。
その目で女の子を見たフランがそう漏らした。
そういえばフランも魔眼持ちであった。
確か、魔力眼だったか。
「ああ、そこに魔力を流し込むと、動くらしい。」
「だが、この魔力炉の容量はなんだ?こんなのボクでも無理だ。最低でも倍以上必要だ。」
倍か、確かフランのMPって1600くらいだったよな。
「なあ、フラン、俺とお前の2人ならどうだ?」
「君とボクでかい?ボクは君の魔力量を知らないから、何とも言えないよ。」
「俺の魔力量は1800だ。フランより多いはずだ。」
「…エルフのボクより多いのかい?いや、君ならばあり得るか…」
フランがなんとも言えない顔をしている。
「俺の本来のレベル教えてなかったから今教えておくけど、レベル124なんだ。」
「「「ええっ!?」」」
今度は全員に驚かれた。
「ミツキ、本当ですの?人族で100超えは伝説の英雄クラスですわよ?」
「レベルまでボクより高かったのか、なるほどあの強さも納得だよ。」
「ご主人様すごいよ!」
「今はそんなことより、フランいけると思うか?」
再度フランに問う。
「そうだね、それなら試してみる価値はあるよ。」
フランが肯定の意を示す。
なら、後は試すだけだ。
「どうやれば魔力って効率よく流れる?」
「そうだね、魔力炉が体の中心にあるから…両手からボク達で一気に流すのがいいと思う。」
「わかった。」
俺は女の子の右手を掴む。
フランは反対の手を掴んだ。
「準備はいいか、フラン?」
「いつでも行けるよ。」
「3、2、1!」
一気に魔力を流し込む。
フランも同じように魔力を流している。
どんどん体から魔力が抜けていく。
女の子が動く気配がない。
「くっう、」
フランが苦しそうだ。
俺も結構キツイ。
そろそろ限界だ。
「もう、ダメ…」
フランの体がぶれる。
そのまま床に倒れるかと思ったが、
「フランさん!」
シーナが彼女のことを抱きとめた。
「くそっ、無理…か」
俺の魔力も枯渇した。
体が後ろに倒れる。
「ご主人様!」
ポヨンと頭が柔らかいものに包まれた。
どうやら、リアが支えてくれたようである。
「はあ、はあ、ダメだったか…」
息も絶え絶えに女の子を見るも、変化はない。
「ボク達、2人でもダメ、はあっ、だなんて。」
フランも辛そうである。
その時、女の子が眩い光に包まれた。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
誤字脱字、その他気になった点がありましたら、コメントよろしくお願いします。




