第26話 ゴーレムへの挑戦
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建物の中にいたゴーレムの大きさは5mほどで、ゴーレム以外建物の中には何もなく、広い空間が広がっているだけだ。
外から見えた窓もなく、広さも外から見た感じより広いのではないだろうか。
『生体反応確認、問う、汝は挑戦者か。』
いきなりどこからか声が聞こえてきた。
声はスラはんと同じように機械で作られたものだ。
『是か非か』
「なんて言ってますの?」
「挑戦者かどうかって聞かれてる。どうする?」
村ではゴーレムがいるという情報を手に入れたが、挑戦については何も聞いていない。
ここは一度出直した方がいいかもしれない。
「ボクは一度ゴーレムと闘ってからでも撤退は遅くないと思う。一度闘うことで、次に対策を練りやすくなるしね。」
「あたしも折角だし戦いたい。」
「私もフランさんの意見に賛成ですわ。どうやらこの遺跡、私たちに危害を加える様子はありませんし。」
「わかった。『挑戦する』」
3人の意見を聞き、挑戦することを選ぶ。
確かに、一度挑戦を受けてみることは悪いことではない。
『挑戦意志確認、ゴーレム起動、真理を示せ』
その音声とともに、ゴーレムが立ち上がった。
「いくぞ、俺とリアが前に出る!シーナとフランは魔法を頼む!」
動き出したゴーレムに先制攻撃を仕掛けるべく距離を詰める。
風切り音と共に、近づく俺とリアにゴーレムの腕が振るわれる。
思ったよりも素早いが、避けられないほどではない。
俺もリアも難なく避け、俺は右に、リアが左に回り込む。
そのまま刀で一閃。
カキン
「っ硬い!」
全く傷つけることが出来ない。
リアも同様で、一旦ゴーレムから距離を取る。
「フレイムランス!」
「アイスランス!」
詠唱を終えた2人が魔法を放つ。
「「えっ!?」」
驚きの声が2人から漏れる。
魔法が発動しなかったのだ。
「どういうことですの?」
「たぶん、何かしらに効果で魔法が阻害されているんだ。ミツキ、ここは一度引こう!」
「了解!リア!」
「わかったよ!」
俺とリアは振るわれる腕を避けながら、出口へと向かう。
すでにシーナとフランは出口におり、俺たちも一気に出口に駆け寄る。
ゴーレムは俺たちを追いかけてくるようなことはなく、再び元いた場所に戻り、座り込んだ。
俺たちは難なく、建物の外に出ることに成功した。
建物の外に出た俺たちは1度休憩を取ることにする。
遺跡の中は比較的安全なようなので、建物のそばに陣取る。
袋の中からテーブルを取り出し、そこにニースの町で買ったクッキーと飲み物を取り出し置く。
ついでに椅子も取り出す。
俺たちは椅子に座り、ティータイムを楽しむことにする。
『ゴミは此方に』
いつの間にか傍にいたスラはんが、体をゴミ箱のように変え、そこにクッキーを包んであった袋を入れるように言ってきた。
『ありがとう。』
お礼をいい、スラはんにゴミを渡す。
『研究所内の清掃、任務。』
俺がゴミをスラはんに渡したのを見て、3人も袋をスラはんに渡した。
「さて、あのゴーレムの対策を考えよう。」
「どうやら、あの建物の中は魔法が使えないようだね。ここなら普通に使えるみたいだから、壁や床に特殊な仕掛けが施されているとみるべきだ。魔法を使えない前提でゴーレムを倒す方法を考えないといけないね。」
「ゴーレム硬すぎだよ、あれじゃあ、剣が通らないよ。」
「ゴーレムの倒し方って何かありますの?」
3人が思ったことを口に出す。
「ボクは昔ゴーレムと闘ったことあるが、普通に剣で切れたし、槍でも刺せた。魔法も効いていたし、今回のゴーレムは全くの別物だね。」
「そうですの。」
「建物の外から魔法を放ってみるのはどうだ?」
とりあえず、可能性がありそうなことを考えてみる。
「たぶん、外からじゃ魔法が届かない。撤退時にボク達を追ってこなかったところを見るに、一定の範囲からは動ないと考えられる。だから、その案は現実的じゃない。」
フランは的確に分析をしていく。
流石はAランク冒険者である。
「何か弱点があればいいのにな。」
「弱点ですの…」
ゴーレムの弱点てなんだろう。
というか、ゴーレムってどういう存在なんだ。
ふと疑問に思い、フランに聞いてみる。
「ゴーレムは鉱石の魔物で、鉱石が強い魔力を持つと魔物化するって言われているんだ。だから鉱床や岩場に生息していることが多い。たぶん、あのゴーレムも魔法か何かで動いているはずだ。」
「そういえば、ゴーレムが動き出す前、日本語?でしたか、何か聞こえていましたが、なんと言っていたのです?」
「あの時は俺が挑戦するって言ったら、挑戦意志確認、ゴーレム起動、真理を示せ、って言われたんだ。」
「ゴーレムを起動するための詠唱といったところか…」
中々いい案が出ず、みんなで考え込んでしまう。
『スラはん、ゴーレムの倒し方知ってるか?』
何気なしにスラはんに話を振る。
『回答、是』
『え、マジ!』
意外な回答に、椅子から立ち上がってしまう。
「いきなりどうしたのご主人様!?」
突然立ち上がったことで、3人に驚かれてしまった。
「いや、スラはんがゴーレムの倒し方知ってるって。」
「「「本当ですの(かい、なの)!?」」」
「詳しく聞いてみる『その倒し方を教えてくれ』」
『IDとPASSの提出を要求、情報は機密事項』
やはり、世の中そんなにうまくいかない。
俺が製作者なら、同じように機密事項に指定するだろう。
「どうやら、俺たちには教えられないらしい。」
「そうですの。」
「だが、倒す方法があることがわかっただけでも、一歩前進だよ。」
フランの言う通りだ。
倒す術があるとわかっているのとそうでないのでは、モチベーションが変わる。
「ならあとは、挑戦あるのみだと俺は思うんだが、しばらくここを拠点にして、ゴーレムを倒したいと思う。」
「私もあのゴーレムは倒したいですわ。ですが、ここは安全なんですの?」
確かに、ここは遺跡である。
この世界における遺跡は危険なものという認識で、冒険者たちが遺跡を探索する際にも遺跡から離れた場所に拠点を置くのである。
それを、拠点の中に置くというのであれば、当然不安にもなるだろう。
『なあ、スラはん、この敷地内ってどのくらい危険だ?』
『危険度低、侵入者排除、任務、ゴミはゴミ箱。』
ようするに、正規の手続きを踏まずに研究所の敷地に入った人や魔物は、スラはんが対応するため、敷地内は安全だと言いたいのだろう。
そのことを3人にも告げると、3人もここを拠点にすることを賛成してくれた。
というわけで、野営のための準備をする。
まだ日は出ているが、あと数時間もすると暗くなり始める。
出来れば、日没までにあと1度ゴーレムに挑戦したい。
10分ほどで、テントを張り終わり、野営の準備が完了する。
食料も一週間分は持っているので、しばらくはここを拠点にする。
もし、食糧が無くなったとしても、研究所の敷地から一歩外を出ればそこは魔物の住む森である。
食糧は自力で調達できる。
「風呂が欲しいな…」
一週間ここにいるのはいいが、日本人としてはそれだけの期間風呂に入れないのは辛い。
水は魔法で生み出せるし、火魔法も使える。
あとは浴槽さえよう出来れば、風呂に入ることも不可能ではない。
「そうだ!」
浴槽も魔法で作ってしまえばいいのだ。
魔法はイメージする力が重要であると、フランは言っていた。
魔法を使う時、詠唱をするのはそのイメージをより強固にするためのもので、無詠唱であってもイメージさえしっかりしていれば魔法は発動する。
であるなら、土魔法を使って浴槽を準備できないことはない。
「試してみるか…」
テントを張った場所から少し移動する。
刀で地面を少し掘り、土の感触を確かめる。
粘土質の土で、これをうまく利用すれば少ない魔力でも浴槽が作れる気がする。
「ミツキは何してますの?」
「さあ?ミツキのことだから、多分突拍子もないことだとボクは思うよ。」
「ご主人様、変なところにこだわるもんね。」
そんな俺を3人は訝しげに見ている。
てか、俺ってそんな言われるほど変なことしていないと思うんだけど。
とりあえず、3人は無視して魔法をイメージする。
イメージするのは温泉、もしくはプール。
深さは50cm、縦150cm、横250cm。
土に魔力を流す。
ボコボコボコ
「うっし、まずは第一段階成功。」
俺が思い描いたような、長方形の穴が地面に開いた。
淵の部分は、10cmほど地面より高くなっている。
次に浴槽部分の土を、大理石に変質させる。
これも成功。
排水設備は想像できないので付けない。
それにしても、思いのほか魔力を食う。
たぶん、ここまでの工程だけで半分くらい消費した。
だが、あとはお湯を入れるだけである。
水を先に入れて、あとで火魔法を使って温めるべきか、それともお湯が出る魔法をイメージするべきか。
後者を選択する。
なぜなら、今後もこの風呂作成魔法は使うに決まっているからだ。
魔力を体に循環させる。
右腕全体が水道管になるイメージをし、右手が蛇口で、右腕をボイラーであるとする。
魔力を肩の位置くらいで水になるようにイメージし、二の腕付近は火に包まれており、そこを水が通ればお湯になるようにさらにイメージを重ねる。
さらに集中する。
体内を循環させた魔力を右腕に。
右手から勢いよくお湯が浴槽に向け、噴射される。
「くっ…」
魔力の消費が激しい。
体から力が抜けていく。
それに反比例して、浴槽にお湯が張られていく。
浴槽を満タンにするには、おおよそ180Lものお湯が必要である。
5分ほどかけ、浴槽にお湯が張られた。
「っし、出来た!」
魔力はほぼ空になった。
この魔法は要検証だ。
いくらなんでも燃費が悪すぎる。
お湯に手を浸けてみる。
ちょっと熱いが、今すぐに入るわけじゃないので、入るころにはちょうどいい温度になっているはずだ。
「お風呂ですの?」
「ああ、ニースを出てからもう一週間も風呂入れてなかっただろ。流石に気持ち悪くてな。」
「そういえば、ミツキはお風呂好きだよね。まさか、宿屋の風呂を一日二回も借りているって聞いた時も驚いたけど、執念がすごいよね。」
そう、俺はナンチャッ亭に泊まった翌日から、朝と夜の二回、女将さんに頼んで風呂を借りていた。
ニースの町でいかに温泉が出て、風呂に入るのが一般的であると言っても、週に2回入ればいい方である。
毎日入る習慣はないのだ。
そんな中、一日に二回入る俺は、女将さんにも変な目で見られたし、シーナ達にも奇異の目で見られた。
「おし、風呂も出来たし、ゴーレムの弱点見つけるぞ!」
人間、目標があった方が何事もやる気につながる。
風呂が待っていると思えば、何度もゴーレムとやりあうことも苦痛じゃない。
意気揚々と建物中に入っていく。
「なんか、ご主人様すごく楽しそう。」
「ええ、ミツキはお風呂大好きですからね。」
「ボクとしては、ミツキがお風呂を作るために、魔法を生み出したことに驚きだけどね。」
3人は呆れた顔をしながらも、俺についてきてくれた。
そして、俺たちは再びゴーレムに挑むも、何の収穫もなく撤退することになった。
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