第25話 東の遺跡の探索
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村長宅で振る舞われた夕食は、素朴ながらも、懐かしさを感じるものだった。
その際、遺跡について村長の知ることを教えてもらった。
まず、遺跡の外観であるが、周りを真っ白な塀で囲まれており、南側に格子型の門扉がある。
塀の高さは約6mで門扉も同じ大きさだ。
格子型の門扉であるため、遺跡の中に入らなくとも遺跡の中に建っている建物を確認することが出来、以前村に来て遺跡に行った冒険者から聞いた話によると、建物も塀と同じく白い壁をしており、四角い形をしている。
中に入るには門扉を開けるしかないが、門扉を守るようにガーゴイルが2匹配置されている。
そのガーゴイルが何やら古代語で話しかけてくるそうで、その後襲ってくるという。
門扉以外から入ろうと画策した冒険者がいたそうだが、塀の上に手を掛けた瞬間、体がしびれ地面に落下したそうだ。
また、門扉の横には何やら古代文字が書かれているものの、解読はなされていない。
遺跡の中に入るとスライムが徘徊しており、スライムに捕まると、大変な目に遭うとのことだ。
建物の中に入ると、今度はゴーレムがいるそうで、多くの冒険者がゴーレムに勝てず、撤退したという。
今では難攻不落の遺跡として認知され、冒険者たちは攻略の難しさに比べ、実入りが少ないことから、遺跡の攻略を敬遠するようになった。
そのため、今では遺跡に向かう冒険者はほとんどおらず、俺たちのような物好きが行くぐらいであるという。
そんなわけで、ミュレの村に到着した翌日、俺たちは件の遺跡に訪れていた。
ミュレの村から森の中を進むと、街道に戻るより早く着くとのことだったので、森を進んでいくと、いきなり白い壁が現れた。
壁は南北に延びており、これが遺跡の塀なのであろう。
「ふわああ、おっきい!」
はじめて遺跡を見たリアは、その大きさに感動していた。
「北の遺跡とはずいぶんと趣が違いますわね。」
「ふーん、興味深いね。遺跡によって造りが異なることは知っていたけど、まさかここまでとは。この塀の材料は一体?」
興味深げに見ているシーナに比べ、フランは何やら難しい顔をしている。
俺にはこの壁に見覚えがあった。
どこで見たのかは思い出せないが、どこかで見たような気がする。
「ここでジッとしていても仕方がないし、当初の予定通り塀を南の沿って行って門扉を目指そう。」
今回、俺たちは前回の遺跡探索を参考にし、まずは門扉を目指し、危険がなさそうならそのまま探索を続行、危険がありそうなら一度村まで戻り、対策を立ててから探索をし直すことに決めた。
塀を発見したところから20分くらい歩くと門扉が見えてきた。
左右の門柱に上に見える石像のようなものが、情報にあったガーゴイルだろう。
慎重に門扉に近づく。
門扉に触れなければガーゴイルが襲ってくることはないそうだが、用心するに越したことはない。
全員、それぞれの武器を抜き警戒する。
「あれがガーゴイルですわね。」
門扉の前まで来ると、シーナが視線を上げ、1mくらいの石像に注目する。
石像は俺の世界での悪魔のような姿で、背には羽を持っている。
「みんな、準備はいいか?」
門扉の前に立ち3人に確認する。
3人は頷くと、ガーゴイルに視線を移した。
俺は塀の中に入るため、門扉へと触れた。
すると、
『ようこそ堺研究所へ合言葉をお願いします。』
『山』
ガーゴイルが情報通り話しかけてきた。
それも日本語で。
3人はガーゴイルの言葉理解できず、困惑しているものの、古代語を話すということを事前に聞いていたためか、取り乱すことはない。
逆に日本語を聞いたことで俺が取り乱しそうになった。
『合言葉をお願いします。』
『山』
再びガーゴイルが聞いてくる。
『川』
とっさに口から言葉が出た。
山と言えば川だ、という勝手な思い込みだが、言ってから後悔した。
こんな簡単なはずがないと。
しかし、そんな俺の思いを裏切るように、
『合言葉を確認しました。どうぞ、お入りください。』
がががががががっ
門扉は開き、ガーゴイルは沈黙した。
「ええーっ!?」
驚いてつい言葉を上げてしまった。
どんだけ簡単な合言葉なんだよ、と思ったがすぐに思い直す。
この世界では、これ以上ない合言葉だ。
何せ、ほとんどの人が日本語を知らない。
ばあちゃんのように知っている人がいたとしても、山、川という合言葉の知識まであるとは考えられない。
それを考えると、この合言葉でも問題はないのだろう。
「流石ミツキですわね!古代語を理解できるだなんて!」
相変わらず、考古学者っぽいことをすると、シーナの好感度が一気に高くなる。
「ミツキ、ここに何か古代文字で書かれているよ。」
「あ、本当だ。なんて書いてあるんだろう?」
興味深げに門柱を見るフランとリア。
そういえば、門柱に古代文字が刻まれているという情報があった。
ガーゴイルに注意を向けていたので見逃していた。
「これは北の遺跡とは違う文字だね。」
俺も古代文字に目を向けると、そこに書かれていたのは案の定日本語だった。
日本語で『堺研究所』と書かれている。
やはり、以前ばあちゃんから聞いたように、この遺跡は俺と同じ日本人が作ったものの可能性が高くなった。
もしかしたら、中に入れば何か情報があるかもしれない。
「安全そうだから中に入ろうと思う。」
3人に確認する。
「私は賛成ですわ。」
「ボクも魔力も温存されてるし、問題ないと思うよ。」
「あたしはご主人様について行くだけだよ。」
俺は門扉から遺跡の敷地内へと入る。
俺たちが入ったのを待っていたかのように、門扉は閉じた。
中にはスライムが出るとのことだったが、姿は見えない。
「リア何か感じるか?」
耳のいいリアに索敵を頼む。
ピクピクとウサ耳が可愛らしく動く。
「んー、あたしがわかる範囲では特に何も感じないよ。」
「よし、なら警戒しながら建物まで進むぞ。」
俺たちは周りを警戒しながら、建物に近づいていく。
建物は現代日本のビルといった様相で、パッと見5階建てである。
正面にガラス張りの入り口があり、壁は白く、一定の間隔で窓ガラスが埋め込まれている。
「きゃうぅぅぅん!」
いきなり、魔物の何声が聞こえた。
「ご主人様、何かいる!」
建物の陰からウォルフの頭が出て来た。
俺たちは武器を構える。
ウォルフは宙に浮いており、なにやら液体状の物体が持ち上げていた。
あれが、スライムなのだろう。
『侵入者排除成功。ゴミはゴミ箱へ。』
スライムはそんな日本語を話しながら、門扉の方へと近づいていく。
俺たちは警戒しながら、その様子を見ていた。
門扉までスライムが辿り着くと、門扉が開き、ぽいっとごみでも捨てるようにウォルフを敷地の外に捨てた。
スライムはそのまま、俺たちに近づいてくる。
『生物反応を確認。識別…正規の手続きを確認。関係者と認定。対象の生物データ登録。ようこそ堺研究所へ。』
どこから音を出しているのかは不明だが、スライムは合成音声のような声の日本語でそう言った。
どうやら、ガーゴイルはこの研究所の門番を務め、スライムが侵入者排除の役割をしているようである。
どうやって確認しているのかはわからないが、合言葉で入ってきたことで、俺たちは正規の手続きを経た関係者であると思われているようだ。
スライムはゲル状体を器用に人間の手の形に変え、俺に向けてきた。
「ミツキ、どうしますの!?」
その様子を見て、日本語のわからない3人はスライムが攻撃してきたと認識したようで、スライムに武器を向けている。
「大丈夫だ。こいつに敵意はなさそうだ。」
俺はスライムの手を取り、握手をする。
『名前を。』
『春野水月だ。』
『春野水月様。データベースに該当者なし。新規にデータベースに登録。生体データ及び名前の登録完了。』
『お前の名前は?』
スライムが自己紹介を求めて来たので俺は答え、逆にスライムにも聞く。
『私がマスターより授かった名は「スラはん」侵入者排除用自動スライム「スラはん」』
『マスターって?』
『マスター、該当者1名。当研究所所長、堺凛。生体反応確認、最優先事項を識別へ』
他にも質問したかったのだが、生体反応があったらしく、スラはんはどこかに去って行った。
「ふむ、先ほどのスライムの行動を見るに、侵入者排除を目的としているのか。」
そんなスライムの行動を見て、フランが日本語がわからないながらも正解に辿り着く。
「ああ、そうらしい。俺たちは正規の手続きを踏んでこの遺跡に足を踏み入れたと認識されたようで、スライムを警戒する必要はないだろう。」
「先ほど、ミツキとあのスライムが話していた言語はなんですの?」
「あれは日本語と言って、俺の国の言葉だ。どうやらこの遺跡、正式には堺研究所というらしいが、俺と同じ世界の人物が作った物みたいだ。」
「ご主人様の国の人?」
「たぶん、かなり昔にこの世界に飛ばされて、どういう経緯かはわからないけど、ここに研究所を作ったんだよ。」
「ボク達このままいけば、この遺跡攻略出来るんじゃないか?」
「どうすれば攻略になるんだ?」
攻略と言っても俺にはパッと来ない。
ラノベなんかでは、遺跡のボスを倒すとか、お宝をゲットすると遺跡を攻略したことになるのだが、この研究所にそんなものがあるとは思えない。
「フロレンス王国の現在の王都には昔遺跡があったんだ。この国を建国した冒険者がその遺跡を攻略したと言われていて、攻略した証としてその遺跡の所有権を手に入れたそうだ。今の王宮はかつての遺跡なんだよ。だから、この遺跡の所有権を得れば、遺跡を攻略したと認められる。」
「所有権か…」
この研究所がいつごろ作られたのか定かじゃないが、ここを作った堺凛という人物はすでに亡くなっているだろう。
しかし、ガーゴイルやスライムが稼働していることから、研究所は正常に稼働していると見るべきだろう。
そうであるならば、誰かが管理していることになる。
「今は考えてもわからないな。特に害はないようだし、建物の中に入ろうと思う。」
今のところ、研究所の敷地内で俺たちを襲ってくる気配はない。
ならば、このまま探索を進めても問題ないだろう。
俺は3人と共に建物の入り口に立つ。
ガラス張りの扉は、いわゆる自動ドアで、近づくと独りでに開いた。
3人は勝手に開いたことに警戒感をあらわにしたが、俺としては別段異常な事ではなかったので、中に入る。
中には1体の巨大なゴーレムが鎮座していた。
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