第17話 ナンチャッ亭
本当は前話をこの時間に投稿するつもりが、間違えて中途半端な時間に投稿してしまった。
なので、昨日は3話投稿になりましたが、基本的には1日に1~2話投稿になります。
そしてやってきましたナンチャッ亭。
そこにはボロボロの廃墟のような建物があった。
「…ここでいいのか?」
「ですが、看板にはナンチャッ亭と…」
「何、こういう宿も楽しくていいじゃないか。」
唖然とする俺とシーナに対し、フランはそのボロボロさが逆に気に入ったようで、わくわくしている。
「てか、フランは自分の家があるんだから、わざわざ宿屋に泊る必要ないんじゃないか?」
「ボクだけ仲間外れにするきかい?」
「まあ、フランがいいならいいんだけど。」
とりあえず扉に手を掛ける。
「おや、見ない顔だね?」
中に入ると、そこは外見とは似ても似つかないくらい綺麗であった。
そして、中には恰幅のいいおばさんがいた。
「えーと、今日泊まりたいんですけど、部屋は空いていますか?」
「なんだい、あんたら客かい?よくこんな宿に入ってくる気になったね!」
「ギルド長に紹介されました。」
「ババ様の紹介か。なら、最高のもてなしをしてやらんとね。私はこの宿の女将でマリー。女将とよんどくれ。部屋は3人部屋でいいかい?」
「いえ、1人部屋…」
「「いいですわ(構わないよ)。」」
「あいよ、3人部屋だね。ご飯はどうする、泊まるだけなら1人一泊銅貨20枚、二食つきなら銅貨30枚だよ。」
「どうする?」
「二食つきでいいのではなくて?」
「とりあえず、三泊くらいで平気だと思うよ。」
「三泊食事つきでお願いします。」
「あいよ、270Xのところを、ババ様の紹介だから250Xにまけとくよ。夕食は18時から22時の間、朝食は6時から9時の間だよ。」
銀貨2枚、銅貨50枚を取り出し、女将に払う。
「部屋は305号室、三階の突き当りの部屋だよ。もし、お風呂に入りたかったら今のうちに教えておくれ。風呂は宿泊者で共同だから、時間を決めて入ってもらうことなってるんだ。1人につき30分だけどね。まあ、そこそこ大きな風呂だから、パーティで2時間借りる冒険者もいるよ。」
「そうですわね、何時頃が空いてますの?」
シーナは風呂に乗り気である。
こちらの世界、風呂に入る習慣はあまりなく、貴族や王族が風呂を持つ程度で、庶民にはあまり縁がない。
しかし、ニースの町は温泉が出るのだ。
そのため、お風呂に入ることが一般的なっている。
ニース邸にも大きな風呂があった。
「今ならいつでも平気だよ。」
「でしたら、20時ごろお願いいたしますわ。」
「わかったよ。お二人さんはどうする?」
「ボクは別にいいかな?」
「いけません、フランさん。女性なのですから。フランさんは私と一緒でいいですわ。」
「あいよ、坊やはどうする?坊やも2人と一緒かい?」
にやりと、笑みを浮かべながら聞いてくる。
「いや、それは…」
「そうですわ、流石に…」
「ふむ、折角だからそうしよう!女将、20時から1時間30分で頼む。」
「あいよ、あんまりヤリすぎて風呂で倒れるんじゃないよ。こいつが部屋の鍵さ。私は夕食の準備があるから、用があるなら厨房に声かけておくれ。大変だろうけど頑張りなよ、お兄さん。」
俺に対する呼称が坊やからお兄さんに変わった。
絶対女将さん、変な勘違いしている。
とりあえず、部屋に向かう。
風呂は一緒に入らなくとも、俺が2人の後に入れば問題ないだろう。
「へえ、部屋も立派だな。」
「本当ですわ。どうして外見はあんななんですの?」
「きっと女将さんなりのこだわりがあるんだよ。」
部屋の広さは12畳ほどで、ベットが並んで3つあり、クローゼットも備え付けられていた。
部屋の中央にはテーブルと椅子もある。
クローゼットは魔法の袋のおかげで必要ないけれど。
「とりあえず、今日の報酬を渡すよ。」
俺たちは椅子に腰かけ、テーブルを囲んだ。
「1010940Xだから、1人頭336980Xか。」
「いえ、オーガを倒したのはミツキですし、そんなにいただけませんわ。」
「そうだね、ボクたちは金貨1枚で十分だよ。」
「いや、でも2人がいたから、オーガを倒せたのであって…」
「ミツキ、それは違うよ。ボクとニース嬢はあの時何も出来なかった。君がいなかったら、今頃はオークの苗床さ。君がいたからこそこうして無事にニースの町に戻ってこられたんだ。ボク達がいたからオーガを倒せたんじゃない。君がいたからオーガを倒せたんだ。」
「そうですわ。オーガ討伐は実質ミツキ1人で行ったものですわ。」
「いや、でもな…」
金貨1枚じゃ、流石に少なすぎる。
「ミツキ、この国では強いものこそが報酬を受けるのですわ。それが強き者の特権ですの。ミツキは堂々と報酬をいただけばいいのです。」
「わかった、2人がそこまで言うなら、2人には金貨1枚ずつ渡す。だけど、もしお金が足りない時は言ってくれ。」
袋から金貨を2枚だし、2人に渡す。
2人もそれを受け取り、袋へとしまった。
「しかし、この大金どうしよう…」
金がありすぎて使い道が思い浮かばない。
1億だ。
家でも買うか?
「奴隷を買ったらどうだい?今回3人でパーティ組んで思ったんだが、ボク達のパーティはバランスが悪い。ミツキは前衛、ニース嬢とボクが後衛、僕らは2人とも剣が使えるとはいえ、基本的には魔法を使って戦う。今回、危機に陥ったのは前衛が足りないせいだとボクは分析している。」
「そうですわね、剣で戦いながらですと、詠唱うまくいきませんし、前衛は必要ですわ。」
「なら、わざわざ奴隷なんて買わず、普通に冒険者でいいんじゃないか?」
奴隷制があることは知識として知っているが、買うことには抵抗がある。
「ボク達、とくにミツキは特殊だ。迷い人であるからね。このことを他の冒険者に知られるのはあまりよくない。だから、冒険者をパーティに迎えるより、奴隷を買った方が情報が漏れる心配が少ない。」
フランの言うことにも一理ある。
俺が異世界人であることはなるべく知られたくない。
他の冒険者とパーティを組むと、それが露呈してしまう可能性がある。
しかし、奴隷であれば主人に害を与えることは出来ず、主人には絶対服従である。
そのため、情報漏えいはまずない。
「まあ、ボクとしては無理強いはしない。ただ、明日にでも一度奴隷商に行ってみよう。それからでも、遅くはないからね。」
「奴隷商でしたらニース家で懇意にしているところがありますわ。」
「わかった。とりあえず、奴隷商には行く。買うかどうかはその時までに決めるよ。」
戦力増加は図りたい。
そうすれば、危険が減る。
かといって奴隷はやはり抵抗感がある。
まあ、明日見てから考えればいいか。
奴隷に関する話はそこでやめ、俺たちは今後のことについて話し合った。
その結果、東の遺跡を探索することになった。
出発は1週間後にして、それまでは休息や準備の時間に充てることにする。
そうやっていろいろ話していたらすっかり外が暗くなっていた。
この世界には魔法で作られた時計があり、それによって時間がわかる。
現在は19時、夕食を食べるにはいい時間かも知れない。
「話はこれくらいにして、そろそろ夕食にしないか?」
「そうですわね、おなかもすきましたわ。」
俺たちは部屋をでて、階段をおり1階にある食堂へ足を運んだ。
食堂には何名かに冒険者がおり、食事をしていた。
俺たちは空いている席に着く。
「宿泊者の方ですか?鍵を見せてください。」
すると、すぐに明るい女の子がやってきた。
従業員の子だろうか。
その子に鍵を見せる。
「ありがとうございます。すぐに準備しますね。」
鍵を見た女の子はそう言い残し、厨房へ消えていった。
「お母さん、305号室のお客さんの料理お願い!」
厨房から女の子の声が聞こえてくる。
女将さんの娘だったのか。
それからすぐ、料理を持った女将さんが姿を現した。
娘さんは他の席の片づけをしている。
「お待たせ。今日は特別に当宿名物の、海鮮づくしナンチャッ亭スペシャルだよ。」
テーブルと同じくらい大きなお皿に盛られた魚料理。
煮つけに刺身、焼き魚にカルパッチョ、たたきにすり身を茹でたもの、たくさんの料理が出て来た。
魚づくしである。
「足りなければおかわりあるから、遠慮なくいいな。」
そういうと、女将さんは厨房に戻っていった。
「これはすごいね。」
「そうですわね。全部食べきれますの?」
「いけるだろう?いただきます。」
まずは刺身を一口。
醤油がないので、塩を付けるのだがおいしい。
次に煮つけ。
これも味がしっかり染み込んでいてうまい。
白米が欲しくなる。
この世界にも白米はあるそうなので、いずれ手に入れたい。
フランの店の周りの荒地を開拓して、水田にするのもいいかもしれない。
料理はどれもおいしく、食べきれるか不安と言っていたシーナもよく食べていた。
30分ほどで、皿は空になった。
満腹である。
「お客様、こちらお風呂のカギになります。」
俺たちが食べ終わったのを見計らって、娘さんが風呂のカギを渡しに来てくれた。
「今日は他の宿泊者の方はお風呂を使用しないそうなので、母が22時までなら自由に入っていいと言ってました。それと、お楽しみくださいって。」
女将さん、娘になんてこと言わせているんだ。
「ありがとう。女将さんに料理とてもおいしかったって伝えてくれ。」
「わかりました。お母さんも喜びます。では、」
ペコリと会釈をし、娘さんは去っていった。
俺たちも、食堂を後にし、部屋へと戻った。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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