第15話 逆鱗
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それから、俺が意識を取り戻したのはすでに朝日が昇った後だった。12時間近く倒れていたらしい。ソードダンスのメンバーにはものすごくすまなさそうにされた。夜の間は、ソードダンスのメンバーたちが交代で見張りをしてくれたようだ。
俺たちは朝食後、街道を南進し、ニースの町に向け歩き始めた。7人もいると、戦闘が落ち着き、すごく楽だった。1人で受け持つ量が減るだけで、体力の消耗が全然違った。
旅は順調に進み、昼過ぎにはニースの町に到着した。北門では、ケリーに迎えられた。
「俺たちはこのままギルドに行くけど、4人はどうする?」
「俺たちは一度宿に戻るよ。短い間だったが、楽しかったよ。また機会があったら、一緒に組もう。」
ソードダンスの連中とは、街中に入ったところで別れた。俺たち3人はギルドに向かう。ばあちゃんに話しておきたいこともあるし、魔物の換金もしたい。
ギルドに入ると昼過ぎにも関わらず、何人か人がいた。30代くらいのおっさんたちで、パッと見柄が悪そうだ。それ以外にも冒険者はいるが、皆彼らを避けるように行動している。
そんな彼らを特に気にすることはなく、俺はカウンターに向かう。カウンターにいたのはやはりメルティさんだった。
「こんにちは、メルティさん。」
「ハルノ様、無事にお戻りになられたのですね。換金でよろしいですか?」
「ああ、換金もしてもらうけど、ギルド長はいるかな?」
「確認してきますので、少々お待ちください。」
相変わらずまじめで丁寧な人だ。
メルティさんを待つ間、カウンターから離れ、掲示板を見ていたシーナとフランに話しかける。
「何かいいクエストでもあったか?」
「そうですわね、私は採取系のクエストを経験してみたいですわ。」
「なら、初めは薬草の採取をするといいよ。薬草の特徴を覚えられるから、旅先で重宝するよ。」
「俺も、薬草がどんな奴だか知らないや。」
薬草や毒消し草は毒草との見分けが難しいらしい。薬草採取はGランククエストであるが、大抵の初めて採取に行く冒険者は毒草9本、薬草1本とかいう割合で採取してくるらしい。だからこそ、ギルドは初心者用のクエストに薬草採取を持ってきている。薬草の見分けがつく様になれば、もし森の中などで遭難した際、用意したポーションがなくなったとしても、薬草を採取することで即席の回復薬として、その場をしのぐことが出来る。そうなれば冒険者の死亡率が減るのだ。
「おいおい、嬢ちゃんたち初心者か?なんなら、俺らが指導してやろうか?もちろん、代金はその体でいいぜ。」
ギルドに入った時に目についた柄の悪い冒険者の男が声を掛けてきた。下卑た笑みを浮かべながら。後ろには同じような笑みを浮かべた男が2人。値踏みするように、いやらしい目を向けてくる。俺は2人を守るように前に出る。
「結構です。それと、俺は男です。」
「ちっ、なんだよてめえ男かよ。」
あからさまに顔をしかめる男。
「てめえに用はねえ。後ろの嬢ちゃんたちに用があるんだ、邪魔だどけよ。」
「いえ、2人は俺の仲間です。御引取ください。」
「ああん?はっ、てめえみたいなガキにはもったいねえよ。俺らが冒険者のルールってやつを教えてやるよ?なあ?」
男が同意を求めるように、後ろの仲間に尋ねる。
「当たり前だろ。俺らがいろいろ教えてやるよ。いろいろな。」
「ちゃんと冒険者としてルールを体に教え込んでやるぜ。へっへっへ。」
「だから、ガキが出る幕じゃねえよ。何、ちゃんと帰してやるさ。俺らが楽しんだ後でな。」
なんでこんな奴らが冒険者なんだ。めんどくせえ。
「一体なんなんですの?」
「たまにいるんだよ、自分が強いと勘違いしている馬鹿な冒険者がね。相手との力量差がわからないようじゃ、三流だよ。」
シーナとフランはさげすむような視線を冒険者たちに向けている。ギルドにいる冒険者たちは俺たちを遠巻きに眺めているだけで、飛び火を恐れてか、だれも関わってこない。
そんななか、今ギルドに入ってきた筋肉ダルマと俺の目があった。後ろには赤茶の髪をした女性の姿もある。
「だから、ガキはすっこんでろ!俺らが嬢ちゃんを楽しませてやるからよ!」
「ほう?俺の娘に何をするつもりだ?」
冒険者の肩に筋肉ダルマ、もといアルの手が置かれた。
「ああ?誰だよ邪魔…す…」
振り向いた男は、アルの姿を見るなり黙ってしまった。そりゃあ、190もある筋肉ムキムキのおっさんに肩を掴まれていたら恐怖だろう。
「で、俺の娘に何をするって?ああ?」
どっちが悪役かわからない。
「うっ、うっせんだよ、このじじい!!!てめえの娘と、てめえが連れてきたチビガキも一緒に可愛がってやるぜ。」
肩を掴まれている男が、アルに殴りかかった。他の2人も同じようにアルに殴りかかる。が、
「誰がチビガキですか?もしかして私ですか?そうですか、殺しましょう。」
ものすごい殺気がギルド中に充満する。冒険者の中には腰を抜かしている奴までいる。アルを殴ろうとした3人は、拳を振りかぶった姿勢のまま静止している。
「あの3人、死にましたわね。」
殺気を放つセレスさんを見て、若干気の毒そうな表情を浮かべたシーナがそう言った。
「アル、その3人を外へ。ここでは手狭だわ。」
「お、おう。」
顔をひきつらせたアルも、セレスさんの言う通り、3人の襟首をつかみ出口へ引きずって引く。
3人は碌な抵抗も出来ず、引きずられていく。
「もう2度と、あんな口聞けないようにしてやるわ。」
ぽつりとセレスさんが呟く。そのまま、アルに続いてギルドの外に出て行った。超怖い。
「「「ぎゃあああああああああ!!!」」」
町中に響くほどの悲鳴が響き渡った。その後、彼らの姿を見た者はいない。
「お待たせしましたハルノ様。2階でギルド長がお待ちです。その間に換金の手続きを行いたいと思いますが、よろしいですか?」
そんな悲鳴にも我関せず、職務に忠実なメルティさんが話しかけてきた。クールなメルティさんが今はまるで清涼剤だ。
「お願いします。ただ、魔物の量が多いのでここだと…」
「わかりました。では、裏手にお願いします。」
「あっ、2人も一緒でいいですか?」
「問題ありません。ハルノ様、ニース様、フォストレア様、ギルドカードの提示をお願いします。」
メルティさんの言葉に従い、ギルドカードを取り出す。
「お預かりいたします。それでは、私についてきてください。」
メルティさんがカウンター奥の出口に向かう。俺たちもそれに続く。
カウンター奥から外に出ると、そこは魔物の解体小屋があった。
「こちらにお願いします。」
俺たちはそれぞれの魔法の袋から魔物を取り出す。オーガにジェネラルオーク、オーク、ピッグボアにラピッドラビットそれにウォルフ。全部で100体ほどであろうか。死体が山積みだ。
「………たった2日でこの量ですか?」
「ええ、まあ。」
「それに、これはオーガ?」
「その、襲われまして…」
メルティさんの視線がなぜか痛い。
「しかも、鬼化したオーガですか…」
「鬼化?」
メルティさんの口から聞きなれない言葉が聞こえてきた。
「そういえば説明していなかったね。オーガは怒気が一定以上になると、皮膚が赤くなり、パワースピードが上昇するんだ。それが鬼化と呼ばれる現象なんだ。」
俺たちのパーティのブレイン、フランさんの魔物講座である。
「オーガと闘う時には、オーガを鬼化させる前に倒さないと、危険度が倍増すると言われていてね、鬼化したオーガ皮膚が市場に出回ることも少ないんだ。あの時は説明するどころの騒ぎじゃなかったからね。」
「ふぉふぉふぉ、そのとおりじゃ、よく勉強しているね、ルル久しぶりだね。」
突如、誰かの声が響いた。
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