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考古学者の異世界探索紀行  作者: 桜井由貴
第1章 遺跡の攻略紀行
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第13話 芽生えた気持ち

コメント下さりありがとうございます。

より良いものになるよう、頑張っていきたいと思います。

 辛くも、オーガを倒すことに成功したものの満身創痍である。左腕は痛みすら感じなくなってきているし、吐き気が止まらない。


「ごほっ、ごほっ、」


 吐血の量も多く、左腕からの出血もひどい。なんだか、全身はお風呂に入っているかのように温かい。


(ヤバい、これ全部俺の血かよ。)


 温かいと思ったのは、すべて俺から流れ出た血液であるようだ。体温も低下しており、徐々に寒気も感じ始めてきた。早く血を止めないと死ぬ。


「ひくっ、うくっ、うーぐすっ、」


 フランの押し殺したような鳴き声が聞こえる。早く安心させてやらないと。全身を魔力で包む。左腕と内臓により多く魔力を送り込む。


「ヒール」


 左腕の出血は止まった。しかし、動かせるまで回復していない。内臓にいたっては、治った感じがしない。


「ごふっ、がはっ、ごほっ、ごほっ…」


 口元が血で濡れる。やはり、内臓は治っていない。確か、ヒールは軽傷には効いたが、重症、重体には効き目が薄い。

 今一度、左腕と内臓に魔力を注ぐ。


「っぐう、リザレクション!」


 青白い光に包まれる。左腕の感覚が戻り、体の中の気持ち悪さが消える。若干、体も軽くなったような気がする。銃を袋にしまい、体を両手で支え立ち上がる。

 立ち上がった瞬間、目まいが襲う。やはり、血を流しすぎた。回復魔法で傷は治ったものの、失った血は戻ってこない。逆に、回復魔法を使ったことで、魔力を消費したため、体力的にも気力的にも限界が近い。


 ふらふらと、覚束ない歩きであるが、オークたちの死体に囲まれ、怯えたままのフランに近づく。フランの服と防具はほとんどその役目を果たしておらず、薄いながらもほんのりと膨らんだ胸と足の付け根は、フランが自分の腕で守るように、抱くように隠しているにすぎない。


「ひくっ、うくっ…」


 嗚咽を漏らすフランを抱きしめる。


「フラン、もう大丈夫だ。」


 安心させるように、優しく声を掛ける。抱きしめながら「ヒール」と回復魔法をかけることも忘れない。


「すまな、うくっ、い。ボク、すぐに、ぐすっ、ひく、ううぅぅっ」


 フランはすがるように、俺の背に腕を回し、痛いくらいに抱いてくる。


「いい。ゆっくり落ち着けばいいぞ。大丈夫、大丈夫だから。」


 フランを抱きしめながらシーナに目を向ける。シーナの服もはだけており、肌が露出しているものの、大事なところは隠れている。見た感じ気を失っているだけで、外傷は見られない。しかし、見えないところにダメージを受けているかも知れないのでヒールをかける。


「んっ、んん、私は…」


 ヒールを掛けると、シーナがすぐ目を覚ました。


「ひっ!」


 周りに倒れるオークたちを見て、顔が恐怖にゆがむ。が、それが物言わぬ躯であるとわかると、安堵の表情に変わる。


「あっ、ミツキ、フランさん、無事…で…す?何してますの?」


 安堵した後、これまでのことを思い出したのか、視線が俺たちを探す。そして、俺たちに視線を向けると、訝しげな表情に変わった。俺を見るまなざしが冷たい。

 俺は今、床に座り込み裸のフランを抱きしめている。左手を腰に回し、右手は頭を撫でている。フランは俺に覆いかさぶるようにギュッと抱きついている。また、フランは安心したのか、先ほどまでの我慢するような泣き方ではなく、俺の胸に顔をうずめ鳴き声を我慢するようなことはしていない。


「あー、シーナ言いたいこともあるだろうが、まずは前を隠してくれ。」


 寝ていたシーナが体を起こしたことで、12歳にしてはふっくらとした胸の見えてはいけない桜色がちらちらしている。


「前で…す?きゃあ!」


 視線を下に下げ、自らのあられもない姿に気付く。悲鳴と共に、胸を隠すように服を引っ張る。


「…私、オークに……」


 最悪の可能性が頭によぎったのか、顔色が一気に蒼白に変わる。


「いや、大丈夫だ。犯されてはいない。その前に何とか助けられた。」


「そう、みたいですわね。」


 自分の体に特に異常がないと感じたのか、シーナの表情が柔らかいものに変わる。男である俺には分からないが、女の子それもまだ年端もいかないシーナにとってオークに犯されたかもしれないというのは、相当な恐怖であろう。

 Aランクの冒険者であり、100歳を超えるフランでさえ、犯される直前まで行ったことで、女としてかなりの恐怖を感じ、泣いてしまっている。シーナは逆に、気を失っていたことで、これから犯されるという恐怖を感じずに済み、よかったかもしれない。

俺としては、こんなことになってしまい、2人に申し訳ない思いでいっぱいだ。もっと、うまくやれていればと思うと、後悔の念が絶えない。


「ミツキ、フランさんは、その…」


 「大丈夫だったのか?」その言葉がでず、口ごもってしまう。自分はまだ衣服を着けていたが。フランは裸である。また、怯えたように泣いている。オークの餌食になってしまったのではないかと考えてしまっても、仕方のないことであろう。


「ああ、違う違う、フランも犯されてはいない。ただ、あと少しで犯されるところだったんだ。それに、フランは意識がはっきりしていたから…」


「ぐすっ、すまない、ボクとしたことがみっともないところを見せてしまった。」


 落ち着きを取り戻したフランが、俺にしがみついたまま、顔をあげる。目尻は赤くはれており、涙の跡が頬に残っている。


「本当は、年長者で、冒険者の先輩であるボクがしっかりしなければいけないのに、本当すまない。」


 未だ、目に涙を浮かべながらも、すまなそうに謝ってくる。そんな言葉とは裏腹に、フランの両手は俺のジャケットを掴んで離さない。それに、体もまだ震えている。俺はそんなフランの涙をぬぐってやり、何も言わず優しく頭を撫でる。


「ん、ミツキ、君は優しいな。ボク、このままじゃ君に…………よ///。」


 気持ちよさそうに撫でられるフランが、言葉を発するが、最後の方が上手く聞き取れなかった。その頬はほんのりと赤みを帯びている。


「今、なんて言ったんだ?」


「いや、なんでもない、なんでもないよ、うん、本当。」


 なぜか、少し焦ったようにまくし立ててくるフラン。


「そうか?」


「その、改めて自分の姿が、全裸で君に抱きついているかと思うと、こう、恥ずかしさが///。」


 恥ずかしそうに、はにかむ。その表情にグッと来てしまった。


「お前、昨日は俺の前で服脱いでいただろう?見られても平気なんだろう?」


「いや、あの時のボクは興奮していて我を忘れていたというか、言っただろう、ボクに男女の経験がないって。だから、冷静な状況で今の状態は恥ずかしすぎるぅ///」


「ミツキ、最低ですわ…」


 フランの熱っぽい表情に、少し惑わされ、つい変なことを口走る。逆に、シーナの目が冷たい。変態を見る目だ。12歳の女の子に罵られる、これはこれでいいものだなんて思っちゃいない。俺はノーマルだ。


「すまん、俺が無神経だった。」


「全く、ミツキも男ということですわね。」


「男はみんな狼って、ボクは聞いたことあるよ。」


「面目ない。」


 なぜだか、俺が責められる流れになっている。しかし、フランの体の震えは止まっているし、結果的によかった。


「その、服を着たいから、ミツキは向こうを向いていてくれるかい?」


 フランはもう大丈夫そうだ。なんか、冷静になると、フランの柔らかさ、フワッとした香り、体温の温かさが気になりだしてしまう。


(やっぱ、フランもちゃんと女の子なんだなー)


「ミ・ツ・キ?」


「すいません、目を瞑って向こうを向いてます。」


 シーナが怖い。セレスさんの血は侮れない。


「「きゃあああああああ!」」


 その時、遺跡の外から女性の悲鳴が聞こえてきた。


「「うおおおお!」」


 それと共に、野太い雄叫びも聞こえてくる。


「っつ!」


 忘れていた。遺跡に近づいてくる冒険者の存在と、遺跡から冒険者に向かっていったオークたちの存在を。


「シーナ、フラン俺は冒険者たちを助けに言ってくる。2人はここにいてくれ!。」


 オークにあんな目に遭わされた2人に、すぐさま戦えというのは酷だろう。俺も限界が近いが、オーク程度に後れは取らない。


「ミツキ、私も」


「いや、シーナはフランを守っていてくれ。ヒールで治せるのは傷だけで、失った血なんかは時間が経たないと回復しない。頼んだぞ!」


「ちょ、ミツキ!」


 2人の返事も聞かず、俺は落とした刀を拾い、森へと飛び出していった。





「全く、ミツキは勝手すぎですわ。」


「いや、ミツキはボクとニース嬢のためにああ言ってくれたんだよ。」


「私たちのため?」


「うん、流石にボクもこれからオークの相手をしろって言われるとね…」


「…その、フランさん、大丈夫ですの?」


「オークたちに何かされる前にミツキが助けてくれたからね。」


「ですが…」


「怖くなかったって言うと嘘になるし、さっきのことを思い出すと今でも体が震えそうになるよ。だけど、ミツキに抱きしめられてすごく安心できた。もう大丈夫なんだって。」


「フランさん、何か変わりまして?」


「ボクが?」


「なんと言いますか、可愛らしくなったといいますか、表情が女っぽくなったといいますか。」


「あー、それは、もしかしたら…」


「何か思い当たることがありまして?」


「まだはっきりしたわけじゃないけど、ミツキを本当に好きになってしまったかもしれない。」


「えっ!ミツキを好きに!!」


「いや、昨日は冗談半分で第2夫人になるとか言ったけど、今は本当にそうなれたら幸せだろうなって思っているんだ。」


「そうですの、私、なんと言っていいか…私はまだ、自分の、」


「何、ニース嬢が思い悩むことはないさ。ニース嬢はニース嬢で、思うまま生きればいいさ。ミツキを好きなら好きで、ボク達2人で虜にしてしまえばいいんだからね。」


「そうですわね、私も頑張らなければいけませんわね。」


「うん、時間はまだある。ゆっくり進めばいいさ。」


最後まで読んでくださりありがとうございます。

誤字脱字、その他気になった点がありましたら、コメントよろしくお願いします。

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