第12話 絶体絶命
今回、あまりひどくはないと思いますが、残酷な描写があります。
苦手な方は注意してください。
見づらいとのご指摘をいただいたので、一部修正しました。
左腕がまるで、自分のものではないかのように感覚がない。左胸の肋骨も何本か逝ってしまっている。幸いにも肺に刺さるようなことはなく、臓器は傷ついてはいない。
オーガの棍棒から急所をはずし、左腕で防ぐことに成功したが、思ったよりダメージがひどい。今も気を抜くと、意識が飛びそうだ。地面には血だまりが出来ており、体温が失われていくのがわかる。
「そんな、ミツキ、ミツキ…!」
「ニース嬢、落ち着きたまえ!」
「ですが、ミツキのミツキの!
「わかっている!」
「でも、ミツキの腕、腕が!」
シーナはそんな俺の怪我に気付き、気が動転してしまっている。フランも俺が怪我したことはわかっているが、オーガとオークへの牽制のため、魔法を放っているが、その顔には焦りがにじみ出ている。
俺は2人に対し、声を掛ける気力もない。はっきり言ってこんな怪我をしたことはない。頭の中ぐるぐるして、わけがわからない。冷静な俺と、焦っている俺が交錯し自分がよくわからなくなっている。
だけど、やることは1つ。2人を守る。
「ニース嬢はミツキを連れて撤退してくれ!殿はボクが引き受ける。」
「ですが、それではフランさんが!それに、私のせいで!」
「ボクの言うことを聞くんだ!それが現状最善だ!誰かがこのことをギルドに伝えないと、もっとたくさんの被害が出る。君は貴族だろう?なら、その責任を果たしたまえ。ミツキの怪我は左腕だけじゃない。肋骨も何本か折れている。最悪、内臓を傷つけている!」
「そんな、私、どうすれば…」
フランがシーナに指示をだすも、混乱し正常な判断力を失っているシーナはそこから動けずに、立ち尽くしてしまっている。
「フラ、ン、俺も、それには、賛成、できない。」
「しかし、オーガはこの人数で倒せるような物じゃない。ボクの魔法もほとんど効いていない。詠唱の時間さえ稼げれば、この場を脱出するくらいなら出来るが、今の状況じゃとてもじゃないが無理だ。」
「それを、なんと、か、するのが、俺、の役目、だ!」
「私のせいで、私があんなこと言いださなければ、私が!」
パシンッ!
茫然自失状態のシーナの頬を右手で張る。
「シーナ、落ち着け、シーナは、オー、クを抑え、るんだ。」
「私がですの?」
「ああ、シーナな、ら出来る。」
「そう、ですわね。」
シーナの目に光がともる。もう大丈夫だ。
「私としたことが、取り乱しましたわ。私はシスティーナ・フォン・ニース。臣民を守る貴族ですわ!!」
「よし、俺が、オーガの、相手をする。フランは、詠唱、して、くれ。それで、みんなで、助かるぞ。」
「君が言うならボクも君に従おう。もう1発ファイヤーボールをオーガに撃つ。それを最後にボクは詠唱を開始する。1分、いや30秒持たせてくれれば、ボクらが逃げ出せるだけの隙を作ってみせる。行くぞ、ファイヤーボール!」
フランの持つ杖から、それまでより大きな火球がオーガに向け放たれる。それを契機に、俺は痛みをこらえ、オーガに近づく。シーナは剣を抜き、オークへ。
「ぐがああああああああっ!」
咆哮と共に鉄球が振るわれ、棍棒が振り回される。俺は鉄球を避け、棍棒は右手の刀でずらすことでオーガの攻撃を避ける。
「があああ、がぎゃああ!」
攻撃が当たらないことにイラつくオーガ。俺を圧殺しようと武器をふるってくる。だが、今の俺にはその様子がスローカメラのように見えている。脳がアドレナリンを過剰に放出しているのだろう。今はありがたい。
「ミツキ、下がってくれ!ニース嬢もボクの傍に。」
どうやら、フランの詠唱が完了したようだ。俺は頭上から、思いっきり振るわれた棍棒を避け、オーガが前のめりに倒れるように、刀を棍棒に合わせ、体制を崩させる。
俺の反撃を受けたオーガがたたらを踏む。その隙にオーガから距離を取る。
シーナも9匹いたオークを6匹まで数を減らし、ファイヤーボールを放つと、フランに近づいた。
「魔法は効かないだろうが、空気中にある水分を凍らせたものはどうかな!」
なるほど、魔法で生み出すのではなく、周りにあるものに魔法で干渉し、それを武器として使う。オーガには有効な魔法の使い方かもしれない。
ふらついているオーガの頭上に大きな氷の塊が。
「つぶれろ!」
魔法の制御から外れた氷がオーガにぶつかる。
ズシン
大きな音を立て、砂煙が舞った。
「いくぞ、ニース嬢!」
フランが砂塵舞う中、自らの傍にいるシーナの手を取り、出口へと向かう。俺も、なけなしの体力をふるって出口を目指す。いくらオーガといえど、10秒は動けまい。しかし、
「ぐぎゃあああああ!!!!!!」
オーガのこれまでよりも威圧感のある咆哮が、俺たちの体を一瞬硬直させた。数秒が命運を分けるこの状況で、それは致命的な隙となった。
「しまっ、ぐっ!」
「きゃっ!!」
オーガがシーナとフランの2人に向け、自らの武器を投げつけた。体を硬直させている2人にそれを避けれるはずもなく、棍棒が当たり、吹き飛ばされる。
自らの肉体を武器に変えたオーガは、俺に迫ってくる。その肌の色は、先ほどまでの黒さから、ところどころが赤く脈打っており、それまで以上のスピードを持っていた。
オーガの拳が俺の腹を打ち抜く。
「かはっ…」
後ろに吹き飛ばされ、口から血を吐く。右手に持っていた刀はどこかに行ってしまった。急いで立ち上がろうとするも、体が言うことを聞かない。幸い、おなかに穴が開いてはいないが、内臓の損傷がひどい。俺のいる少し先には、棍棒につぶされ、身動きの取れない2人の姿が。
「がふっー、がふっー、」
気持ちの悪い息遣いのオーガがゆっくりとこちらに近づいてくる。体からは煙が上がっており、皮膚の赤さと相まって、燃えているように見える。
「ぐっ、ごふっ…」
シャレにならない量の血が口からこぼれる。そんな俺をあざ笑うかのように、オーガが俺の目の前で歩みを止める。
俺は袋に手を入れる。
シーナとフラン、2人の方には、オークたちが近づいていく。動けない牝などオークにとっては最高の得物である。どうやら、シーナは気を失っており、フランは魔法を使おうとするが、肺をやられたのか、うまく声を出せないでいる。
「ぐはあっっっ」
オーガが俺の頭をその手に持ち、俺は足を宙に浮かせ、宙刷りの状態にされる。
シーナとフランの方も、残った6匹のオークに押さえつけられ、上に乗った棍棒がどかされていた。気を失ったシーナは目を覚ます様子がなく、胸に付けたプレートメールが抵抗なく外された。フランもうまく動けないようで、腰に付けた剣はすでに外されている。
「ファイヤーぼぐっ、かは。」
魔法を放とうとしたフランがおなかを強打され、魔法の発動には至らない。それにイラついたオークは、すでに、途中まで服を脱がせた、気を失っているシーナを床に放置し、フランへと群がっていく。
「く、来るなっ」
フランはオークによってこの後訪れるであろう未来をを想像してか、今までで最も焦っているように見える。
「ぷぐふっ、ぷぐふっふふ。」
気持ちの悪い笑いを浮かべたオークの表情が、この後のことを期待してかだらしないものに変わる。
「いや、嫌だっ!」
戦闘中はずっと冷静だったフランの声に、恐怖の色がにじみ出る。オークの手がフランの服にかかる。
「ぐはあっ!」
オーガはオーガで、俺を頭を自分の目線の高さまで持ち上げた。まるで、俺の表情を楽しむかのようである。
オークたちの方からは、そちらを向けないためどういう状況なのかわからないが、シュルシュルと服を脱がす音が聞こえてくることから、フランの服が脱がされているものと思われる。フランのすすり泣くような声もかすかに聞こえる。
(このまま、全滅してやるものか!)
ムカつく、油断し、俺をこれからいたぶろうとしているオーガにムカつく。
「ひっく、嫌だっ!離せっ!ぐすっ、」
俺の女を泣かせているオークたちにムカつく。
やることは1つだ。オーガを排除し、オークを殲滅。
絶対に2人を助ける。そのためには、
袋から右手を抜く。慣れ親しんだグリップの感触。
そして、
バン、バン
2発のマズルフラッシュ。そして、銃口から放たれた2発の弾丸が、オーガの両目に飛び込む。
「がっ?ぐぎゃああああっ、ぁぁぁ………」
ドシン
断末魔と共に、オーガが倒れる。確かにオーガの皮膚は硬いかもしれない。こちらの武器では傷つけることも難しいかもしれない。
だが、俺の最も信頼のおける相棒、スプリングフィールドXDから放たれる音速にも等しい9x19mmパラベラム弾。こいつを皮膚とは違い、柔らかな粘膜である瞳ならそのまま、脳を破壊でき、また、先ほどまでの戦闘で魔法を避けていなかったことをみると、音速を超える銃弾を避けられる道理はない。
俺の体は地面に投げ出される。しかし、すぐさまスプリングフィールドXDを握る右手をオークたちに向ける。突然のことに、オークたちは何が起きたのか分かっておらず、間抜け面をこちらに向けている。フランを犯すつもりであったため、その手に武器はない。
「くたばれ、豚野郎ども…」
バン、バン、バン、バン、バン、バン
6発の銃弾が、その脳天に吸い込まれていく。
最後まで、何が起こったのか理解していないオークたちは、間抜けな表情のまま絶命した。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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