第10話 そうだ、旅に出よう!
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フランの家を出た後、俺たちはニース邸に行き、シーナが旅に同行する許可を求めることとなった。個人的には12歳のそれも貴族の女の子を、危険なたびに連れて行くのは反対であった。アルとセレスさんも反対すると思った。
2人も初めの内は若干渋っていた。しかし、フランが妻と夫が一緒にいるのは当然じゃないかなどと言い、俺とシーナは将来的に結婚するだとか、ボクは性奴隷兼ペット兼妾だとか、わけのわからないことを言った結果、俺はなぜだか正式にシーナの婚約者になってしまった。
俺は弁明したのだが、アルさんに
「なんだお前?うちの娘じゃいやだっていうのか?ああん?」
とすごまれ。セレスさんから、
「もし、シーナを捨てるようなことがあれば燃やし尽くします。」
と、炎で作った鎌を向けられながら、笑顔で言われた。怖すぎて、シーナとの婚約を認めざるを得ませんでした。さらに、2人はフランが俺の第2夫人になることまで認めた。
本当、どうしてこうなった。
もちろん、2人のことは嫌いじゃない。少なからず好ましく思っている。2人とも可愛いし、うれしくないわけがない。だけど、いろいろとすっ飛ばしすぎじゃないだろうか。それとも、この世界じゃこれが普通なんだろうか。
終わったことをこれ以上悔やんでもしかたない。これから町を出て、遺跡に向かうのだから気を引き締めていかないと。
ニース夫婦の説得後、俺たちはギルドに行き、シーナはギルドに入る手続きをし、フランはギルドカードの再発行手続きをしていた。その手続きをしてくれたのはおなじみメルティさん。フランのギルドカードを見て驚いた以外は、いつも通りクールビューティーであった。その後、市場で食料品やテントなどを買い、俺たちは現在北門にいる。ちなみに、荷物は魔法の袋の中。シーナもフランも魔法の袋は持っていた。この袋、実はばあちゃんのお手製で、ばあちゃんがどういう基準化わからないが、周りの人に配っているそうだ。
「おや、あの時の?これからお出掛けですか?」
北門には俺が初めてこの町に来た時にいた兵士がいた。他の兵士の言葉遣いが、少し乱暴なのに、彼はとても丁寧な口調である。それに、勤務態度も大変まじめだ。
彼の名前はケリーといい、誰かに似ていると思ったら、ギルドのメルティさんの弟なのだそうだ。俺たちは、ケリーに見送られ町を後にする。現在は昼を少し過ぎたくらいだ。
「できれば今日中に、この間野営したところまで行きたいな。」
この間は、けが人もいたことで、行進速度が少し遅かったとアルが後で言っていた。なので、順調にいけば暗くなるまでに野営地までたどり着くだろう。
「いやー、ボク久しぶりの旅だよ。30年ぶりくらいかな?」
「私は初めてですわ。馬車に乗って王都には行ったことありますが、自分の足での旅は初めてですの。」
「ここら辺はまだ魔物は出てこないが、もう少しすると西側が森になっていて、魔物が出てくるようになる。」
この北門から延びる街道は、ニースの町とゴンゴラ砦を結んでいる。町から砦に行くのは、補給物資を積んだ商人たちと、一攫千金を夢見た冒険者たちだけである。そのため、俺たち以外に人がいない。
基本、ニースの町にいる冒険者は東の街道沿いにある森や草原で狩りをしている。そちらの方が安全だし、採取物もあちらの方が価値あるものが取れる。それに、町から近いところで狩りができるので、結構人気がある。
反面、こちらは魔物が強いくせに、あまり金にならない。この間の場所まで行けば金になる魔物がいるかもしれないが、いかんせん1日かかるのだ。そんなところにいくのなら、1週間ほどかけて砦に行った方が実入りがいい。なので、こちらは不人気の狩場になっている。
「森だったらボクに任せてほしい。精霊たちが森については教えてくれるのさ。」
「そういえば、精霊召喚のスキル持ってたな。」
「召喚というより、手を貸してもらっていると考えてくれ。ボク達は精霊に命令はしない。同じ森を守るものとして協力しているのさ。」
「なるほどな、シーナはどの程度戦えるんだ?」
「私ですか?お父様から危険度Dまでの魔物になら、剣術で後れを取ることはないといわれましたわ。お母様からは、もう少し練習を積めば中級の火魔法を使えるようになると。そうすれば、戦略の幅が広がると言われましたわ。」
魔物の危険度はギルドが定めているもので、上からSABCDEとなっている。危険度Bを討伐でいて一流冒険者と言われている。危険度Eは初心者が相対するレベルだ。ゴブリンやウォルフ、ラピッドラビットがこれに相当する。ちなみに、あまり知られていないが、危険度S上に、災害級という魔物もいるらしい。古代竜がこれに相当し、町の1つや2つ簡単に消し飛ばすらしい。Sランク冒険者たちが複数パーティ作って挑んでも、勝率は2割程度だそうだ。だが、古代竜たちは温厚で、人の言葉もわかる。なので、逆鱗に触れることさえしなければ問題ないそうだ。
この辺に出る魔物はほとんどが危険度Eで時々CやDが出る程度であるそうだ。シュリンプ・スコーピオのような魔物が出ることは稀らしく、アルたちもいるわけがないと思った魔物が出て、焦り、全滅しかけたとのことだった。
俺たちは互いに、どの程度動けるのか確認しながら街道を進む。森が見えてくるも、フランがいるおかげで、魔物が森から襲ってくることが事前にわかり、順調な旅路である。
これまで出て来た魔物は、ゴブリンにピッグボア、トリックエイプの3種類であった。やっかいなのはトリックエイプである。トリックエイプは体調50cmくらいのサルで、けがをするような攻撃はしてこない。しかし、いきなり木の上から出てきて脅かして来たり、バナナと思われる皮を足元に投げ入れてきたり、ちょっとしたいたずらをしてくるのだ。シーナはスカートの中に頭を突っ込まれていた。攻撃しようとするとすぐに逃げ、1匹も倒すことが出来ていない。フラン曰く、奴らは悪戯するだけで特に害はないから、放置でいいらしい。この間はトリックエイプに遭わなかった、そのことについて聞くと、トリックエイプは臆病で、集団でいると近づかないのだそうだ。あれだ、かまってちゃんてやつだ。
ちなみに、このトリックエイプ、俺たちが他の魔物と闘っている最中に邪魔をしてくることはない。これについてもフランに聞いたら、
「ボク達が死んだら、遊び相手がいなくなってしまうと思っているんだろうね。上手く付き合えば悪いやつらじゃないさ。」
といって、肩に乗ったトリックエイプに袋から取り出した果物をあげていた。フランの言ったことは正しく、途中からトリックエイプたちが魔物の存在を教えてくれるようになった。その頃には、俺もシーナもトリックエイプたちを肩に乗せて歩くようになっていた。ちょっとしたペットだ。
フランとトリックエイプたちのおかげで、予定より早く野営地までやってこれた。魔物が現れる前に感知できるので、戦闘は楽であったし、トリックエイプたちは俺たちが闘っている間に、森の中から木の実などの食べ物を取ってきてくれたりした。全く、ういやつらだ。
トリックエイプは顎を撫でてやると気持ちよさそうにするので、悪戯をせず、いい子にしていたり、役に立ってくれた子には顎を撫でてやった。そのため、もう俺たちに悪戯をしてくるほとんどいない。たまに、シーナの胸に飛び込んだり、スカートに顔をうずめる変態サルはいるが。
「今日はここで休もう。」
以前泊まった野営地、少し開けた地形の場所で今日は休むことにする。まだ、暗くなるまでは若干時間があるが、これ以上進んでも土地勘に詳しくないため、休める場所がありかわからない。
「そうだね。ここはテントを張るにはいい場所だよ。」
「私も賛成です…ですから、胸に飛び込んでくるんじゃありませんわ!」
エロサルが1匹、シーナの胸に飛び込んだ。すぐさま、シーナが叩き落とそうとするが、エロサルはそれより早く木に飛び移ってしまう。
「全く、なぜ私ばかり。」
「そりゃあ、そこに山があるからだろ?」
「?山ですの?」
通じなかった。残念。
「テントはミツキが持っていたんだよね?」
「ああ、今取り出す。」
とりあえず、今はテントを張ってしまおう。テントはキャンプで使うようなドーム型のもので、骨組みを組み立てることで空間が出来上がる。ちなみに6人用である。魔法の袋がなければ運ぶのが大変な大きさであるが、持ち運びに心配がないので、大きめのテントを購入したのである。
「フラン、そっち持ってくれ。」
「わかった。」
フランと2人がかりでテントを組み立てていく。フランはAクラスの冒険者だけあって、手際がいい。シーナはこの間、エロサルたちの標的になっていた。
「うし、これでテントは完成。」
「はあ、はあっ、立派なもんですわね。」
エロサルたちとの戯れで、息を切らしたシーナが立ち上がったテントを見て感想をもらす。トリックエイプたちの姿は見えなくなっていた。暗くなるので巣に戻ったのだろう。
「広くて、使いやすく、虫の侵入も防げる、そこそこの値段がするが、これ以上ない逸品さ!。」
キャンプをしているみたいで、テンションが上がる。キャンプファイヤーでも作ってみようか。幸い周りに木は腐るほどある。
「さて、薪を集めないとね。魔法で火は作れるけど、薪があった方が便利だからね。」
「その辺の木を切って使えばいいんじゃないですの?」
「シーナ、その辺の木は水分を含んでいて薪にするには適さないんだ。だから、地面に落ちている乾いた枝がベストかな。」
「ほう、ミツキはよく知っているね。駆け出しの冒険者は、その辺の木に火をつけようとして苦労するものなのに。流石だね。」
「なるほど勉強になりますわ。」
「それじゃあ、手分けしよう。枝を拾うのと、今日仕留めたピッグボアの解体。ボクは1人でもピッグボアの解体ができるから、2人で薪を集めてきて欲しいけど、いいかな?」
「いいんじゃないか。解体は出来ないことも無いが、俺がやるよりフランがやった方が効率がいいだろう。」
「私もいいですわ。私は解体は出来ませんもの。」
そんなわけで、俺とシーナは枝拾いをすることになった。
「よし、シーナ折角だから勝負しようぜ、どっちが枝を多く拾えるか。勝った方は負けた方に一度なんでも命令できるっていうのはどうだ?ただし、相手の嫌がることはなしで。」
「いいですわ、その勝負受けて立ちますわ。」
俺とシーナの勝負が始まった。制限時間は10分。その間に枝を多く拾って野営地まで戻ってきた方が勝ちだ。俺は、向こうの世界で、じいちゃんにアマゾンに1週間放置された経験を生かし、順調に枝を拾っていった。そして、余裕をもって2分前には野営地に戻ると、シーナはすでに戻ってきていた。
大量の枝と共に。
「ちょ、シーナ、何その量!?」
野営地の端に50cm近く積まれた枝。さっきまではなかった。
「その、おサルさんたちがくださいましたの。」
シーナの肩にはトリックエイプが1匹ずつ乗っており、近くの木にもトリックエイプたちがいた。
「私が枝を拾ってましたら、おサルさんたちが枝を集めてくれましたの。」
「え?俺のところに1匹もいなかったけど!?」
「知りませんわ。ですが、この勝負私の勝ちですわね。」
「くっ、まさかシーナに負けるとは…。」
魔物を使役してはいけないとは決めていない。なので、潔く負けを認める。
「それで、俺に何をしてほしい?」
「そうですわね…すぐには思いつきませんわ。」
「なら、後でもいいぞ。」
「そうですわね、そうしますわ。」
「2人とも、枝をこっちに持ってきてくれるかい?」
ピッグボアを捌き終えたフランが魔法で水を生み出し、捌いた肉を洗いながら支持してくる。空中に浮いた水の中で洗うとか、見ていて不思議な光景である。
支持されたように枝を持っていく。トリックエイプたちも枝を運んでくれた。
「ニース嬢、薪に火をつけてくれ。ミツキは鉄板を出してくれ。」
シーナが魔法で薪に火をつける。俺はテントと一緒に買った焼肉用の足がついた鉄板を魔法の袋から取り出す。それを火にくべる。
「よし、ご飯にしよう。君たちも食べていくかい?」
フランは温まった鉄板に、肉を並べながらトリックエイプたちにも聞いている。トリックエイプは大人しく焼かれていく肉を見ている。どうやら、彼らも食べるようだ。
味付けは塩だけだ。ニースの町は、港町でもあるため、塩が特産物になっており、王国の中では最も塩が安く手に入る。
肉と一緒に、町で買った野菜も焼く。本格的なバーベキューだ。肉の焼ける香ばしい匂いが漂う。
「さて、そろそろいいかな?君たちの分はこっちの葉っぱに乗せておくよ。」
そういうとフランは大きな葉の上にトリックエイプ用の肉を分けた。俺たちはフォークで鉄板から直接食べる。
「うまっ!シュリンプ・スコーピオを食べた時も思ったが、何で魔物がこんなにうまいんだ?」
「本当、おいしいですわ。」
「ピッグボアの肉は町でも普通に売っているが、とれたては格別なのさ。」
本当においしい。塩で味付けしただけなのに、うまみがあり、噛むと肉汁があふれてくる。味としてはピッグボアなのに牛肉に近い。トリックエイプたちもおいしそうに肉をほおばっている。
このパーティで食べる初めての夕食は、トリックエイプの存在もあり、にぎやかなものになった。
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