4-4 (ウィリアム視点)
「派手に立ち回ったものだ」
アラスターに開口一番そう言われて、ウィリアムは反応に困る。
「まさか、聞こえていましたか?」
そこまで大きな声を出したつもりはないが、と確認すれば、アラスターはふっと息をついた。
「いや。でも最初から見ていた」
「は……」
アラスターが何を言いたいのかわからず、気の抜けた返事をしてしまう。
「今のお前の目には、オルレア嬢はどのように映っている?」
(どのように?)
心の中で反芻すると、オルレアの表情が次々に浮かんだ。
(俺の申し出をそこまで嫌がってはいない、と思うが――)
「オルレア嬢は迷惑がっているかもしれません」
(とても慎重に考えこんでいる態度だった。『負担なら言ってほしい』そう願われた)
離婚時に、元夫から重荷だとか言われて責められたのか?
アラスターがゆっくりと瞬きをすると、僅かだが顔色が曇った気がした。
「……そうか。では、お前は?」
「彼女がまだゼッタリング辺境伯を想っているのは当然です。後悔はありません」
言葉にすれば自分がまるでオルレアに恋心を抱いているかのようで、慌てて付け加える。
「私は、オルレア嬢をスティール卿から守りたいのです。あの兄は妹を駒としか見ていません」
言い訳がましくなってしまった自覚はあった。案の定、アラスターの顔から表情が抜け落ちて〝無〟になる。
「貴族とはそんなものだ。お前はきれい事ばかり並べている」
瞼を伏せてこめかみ付近を指先で揉むアラスターの後ろで、「キャア!」と黄色い声が上がった。いつの間にか彼の背後に令嬢が数人列を作っていた。
「自分が本当は何を望んでいるのか。そして――オルレア嬢が何を恐れているのか。考え、観察しろ」
上司の厳命に沈黙するしかなく、背を向けたアラスターがあっという間に令嬢に取り囲まれるのをウィリアムはただ見つめていた。




