表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/40

11・2 ついに迎えた結婚式

 パジャマパーティーの翌朝。

 エルゼが浮き立つ気持ちで廊下に出ると、なんと向かいの壁にハインツがもたれかかっていた。


「おはよう、エルゼ。迎えにきたよ」

 ハインツはとてつもなくいい笑顔でエルゼに歩み寄り、腰を抱き寄せ額にキスを落とす。

「王女殿下の元だから警備は万全だとは思っているんだが。やはり君の顔を見るまでは落ち着かなくてな」

「……このとおり、何事もなく朝を迎えておりますわ」


 いったいいつからそこで待っていたのやら。

 若干引き気味ながらも、エルゼはにっこりと微笑む。

(殿下はちょっと心配性すぎるというか。過保護というか。一度私が処刑されたと信じたせいだから、そうなるのも分からないでもないけど)


 でもちょっと度が過ぎるわよねと思いつつも、エルゼはハインツにパジャマパーティーをさせてくれた礼を伝える。

「アーデル王女は、エルゼが身代わりをしてもいいと思えるほどの友人なのだろう? だがこれからはお互いに気軽には会えなくなる。今のうちに沢山ともに過ごす時間を作っておくべきだと考えてな」

「ありが――」

「私より愛されている人間が存在するのは耐えがたいが、君の前ではいい男でいたい」


 ハインツは笑顔でちゅっとちゅっとエルゼの額にキスの雨を降らす。

 同性の友達にまで嫉妬をするのかと驚きながらも、エルゼは慌てて、「で、殿下! 支度に遅れてしまいます!」と抗議する。

「それは困る。宿願がついに叶う日なのだからな」

 ますます嬉しそうに破顔するハインツ。


 今日はハインツとエルゼの結婚式だ。

 ハインツはエルゼとヴァルターのために、フランク夫妻も招待している。長く会社を空けられないふたりのために、わざわざ転移魔法を使うという気の使いようだ。


 ほかにも短い準備期間で、どうやって用意したのか不思議になるほどの豪華でエルゼの雰囲気とサイズにぴったりのウエディングドレスも用意し、ヴァルターの愛らしさを最大限にいかす礼服を用意するという気合の入れようである。


(殿下がくれるのと同じだけの重さの愛は返せないけれど。良き伴侶にはなりたい。これが私の好きの形なんだわ。私がこんな結婚ができるなんて思いもしなかった)


 愛が重すぎるハインツに対して若干思うところがないこともない。だけどエルゼも幸せな気持ちでハインツに一言二言返し、エスコートを受けてともに歩き出す。

 そこでふと、思い出した。


(そうだわ。ジーモン様。彼が行方不明だと伝えたほうがいいのかしら。でも――)

 

 ハインツはジーモンをひどく嫌っている。わざわざ不快になる話をする必要はないだろう。

 エルゼはそう考えて、結婚式のことだけを考えることにした。


 ◇


 木製の扉が左右に開くと、目の前には深紅の絨毯がまっすぐに伸び、その先の祭壇前には三人の男がエルゼを待っていた。

 薄いヴェール越しに見えるのは婚礼を執り行う司祭。新郎であるハインツ。彼の腕の中にヴァルター。


 最初にこの案をハインツが教会に提案したとき、教会は子供が新郎と共に新婦を待つなど前代未聞だと拒否したらしい。けれどそれをハインツは権力と多額の私財寄付で黙らせたのだとか。


 ハインツは誰よりもエルゼとヴァルターを愛してくれる。

 多少の引け目や戸惑いなんかよりも、その事実のほうがずっと重要で。エルゼは迷いなく足を前に進めた。


 通路の両脇には多くの参列者が並んでいる。

 その中には旧友のアーデル、新しい友人のカロリーネ、両親のような存在のフランクとグレタがいる。

 一応戸籍上の両親となってくれた公爵がエルゼをエスコートし、公爵夫人とその息子は参列席の最前列で、笑顔でエルゼを見守っている。

(ああ、本当に私がこんなに祝福される結婚をする日がくるなんて)


 胸を震わせながらエルゼは祭壇前に到着した。

 満面の笑みのハインツと。目をまん丸にしながらも、声を出さないように両手で口を塞いでいるヴァルターと。


(三人で家族になるのだわ。どうしよう、すごく嬉しい)


 司祭が粛々と典礼を進めていく。その間、エルゼはともすれば涙が零れ落ちそうになるのを懸命にこらえていた。

 そうしてそれぞれの宣誓が済み最後の誓いのキス。

 ハインツは左腕に乗せるようにヴァルターを抱っこし、右手で器用にエルゼのベールを上げた。


 視界が開けたエルゼの目に飛び込んできたハインツの表情は、泣き出す寸前のようで。

「エルゼとヴァルターを愛しているよ」と、瞳を金色に煌かせながらかすれた声で囁いた。


(どうしてそんなに切なそうなの?)


 胸がいっぱいのエルゼは、なんとか「嬉しいです」と返す。

 それを聞いたハインツの表情は幸せそうなものに変わる。そして右手でエルゼを抱き寄せると、しっかりと唇を重ねた。


 王太子の婚姻を祝福する花びらが祭壇前の三人に降り注ぎ、教会内は万雷の拍手に包まれる。


「お花!!」

 可愛らしい声にエルゼとハインツが我が子に目を向けると、ヴァルターは両手を上げて目をきらきらさせていた。

「そうね素敵ね」

 ヴァルターの頭を優しくなでたエルゼはハインツと目が合う。

 エルゼは自然と、幸せだわ、と思った。


昨日アナウンスを忘れてしまったのですが、本日より更新は12時と21時の1日2回になります。

よろしくお願いします。

コミカライズ『愛のない結婚も二年目に入りました。いまだ旦那さまのお顔を見ておりません。』が、本日より多くのサイトで配信開始となりました。

諒しゅん先生がとても可愛らしい作品にしてくださっているので、ぜひこの機会にお読みくださいませ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ