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トラ×ヨネ飯   作者: 有栖 多于佳


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9/12

ライスカレー

当時の食料事情とは違っている箇所があるやもしれません。

川芝村はフィクションです。

周辺の市町村は空襲を受けなかったので比較的食べ物が手に入りやすいという設定です。

ご了承ください。

誤字誤謬は可及的速やかに訂正致しますがご不快になられる方申し訳ありません。

誤字報告大変ありがたいです。

冬の訪れが、暖地の静岡にもやって来た。

火鉢を出して暖を取る。


台所にはトラが分家の従兄弟と作ったダルマストーブが置かれた。


農作業も終わり時間ができたトラは、ヨネの両親が住んでいる隣町の鉄工場の手伝いに出かけていた。

軍に長く勤めていたトラは機械の整備や自動車の運転など技術があった。

復興真っ只中の戦後日本で、需要は多かったのである。


分家の従兄弟と通っていた鉄工場のドラム缶でダルマストーブを作って会社のトラックで持ってきた。


「親方んちの分も、会社の分も作った。冬の台所仕事は寒いからな」

「トラちゃん、ありがとー!」


**************************************


町に行くようになると、村の商店では手に入らない物もトラに頼んで買ってきてもらえた。


日曜日の昼過ぎ、台所でトラが割烹着を着ていた。


「トラちゃん、いいよ、私が作るから。休日位ゆっくり休んで」

「トラ兄チャン、アタシも居るんだから。」

「ヨネ、七緒。大丈夫だ、今日は俺が夕飯作るから。」


トラは、大正生まれの農家の長男だ。

《男子厨房に入るべからず》世間ではそんな人も多いようだが、トラは違った。

元々食べるのが好きな腹っぺらかしで、母親の手伝いと称して味見をするためよく台所にいた。

その後軍隊生活で、男でもみな料理をしなければならない状況の中、門前の小僧の覚えよろしく

料理の腕前は良い方だった。


トラは後悔があった。ヨネの誕生日、ヨネがご馳走を作ったのである。

毎日元気に働く新妻に慰労するつもりだったのに、ヨネの求めている料理の作り方も、味もわからなかった。

都会からこんな田舎へ嫁いできて、不満もあるだろうに明るく元気なヨネに感謝を伝えるべく、

自作の食を振る舞いたかったのだ。


「いいから、ヨネと七緒は居間にでも行っていて」

「いやよ、ここの方が温かいわ。ここでトラちゃんを見ててもいいでしょ?」


ええー!?手元を見られるのは恥ずかしいな、とは思ったが、まあいいかと了承した。


*****************************************


まず、飯を炊く。いつもより多目に炊く。絶対おかわりするからだ。

井戸水は温かいとはいえ、水は冷たい。

シャクシャクシャクシャク

米を研ぐ。それを竈で炊いていく。

ここらへんは子供の頃からの手伝い通り。問題ない。


分家が潰した鶏の骨付き肉をもらってきてぶつ切りにする。

にんにくを擦って肉に刷り込み、塩と胡椒で下味をつける。

ジャガイモニンジン玉ねぎの皮を剥き、一口大に切る。


油を入れて熱した鍋に骨付き肉を入れ、表面の色が変わったら野菜も入れて軽く炒める。

水を入れて、鍋をダルマストーブの上にかければ一休み。


「トラちゃん、カレーなのね!」

「そうさ、軍でも評判のよかった、俺のチキンカレーさ」

「すごいわ、トラちゃん。あ、じゃあ私はちょっと納屋に行ってくる。」

「どうした、ヨネ??」


いいのいいの、とヨネは納屋へ行ってしまった。


じっくり煮込んで、鶏の骨から良い出汁が出て野菜が柔らかく煮えたら、オリエンタルカレーを入れる。

今日のために、町で買ってきたのだ。

焦げないように、鍋底から木ベラでかき混ぜて、水溶き小麦粉を少しずつ入れてトロミをつける。

皿にご飯をよそい、カレーをかけたら出来上がり。


温かいので、台所の上がりの板の間にちゃぶ台を出して皿を並べた。

小さい壺にらっきょうの甘酢漬けを入れてヨネが戻ってきた。

「夏の始めにナナちゃんと漬けたやつ」

「ああ良いな」

「どうだ、食べてみてくれ。」

神妙な顔のトラが可笑しくて、七緒とふふふと笑いあって、一口。

「「美味しい!」」

「そうか、良かった。」

「これカレー粉だけじゃないでしょ?後引く味よ」

「秘密の隠し味さ。」

「えー教えて、何を入れてるのよー」

「当ててみて!」

うううん、うううんと二人があれこれと言う。

「兄チャン、見てたけど作ってる時変わったことしてなかったのに。」

「二人が渋抜きした柿の塾し過ぎたやつを少し潰して入れたのさ。

タイではカレーにバナナやココナッツなんか入れるんだ。」

「へー、フルーツを料理に入れるのね。変わってるー」


辛くてしょっぱくてちょっと甘くて、後引く後引くと三人ともおかわりして腹一杯食べた。

寒さの辛くなってきた初冬の夜、これは温かい台所でトラ特製のカレーを腹一杯食べたお話。

お読みくださいましてありがとうございました。


誤字誤謬があるかもしれません。


わかり次第訂正いたします。


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よろしければお願いいたします。

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