お好み焼き
当時の食料事情とは違っている箇所があるやもしれません。
川芝村はフィクションです。
周辺の市町村は空襲を受けなかったので比較的食べ物が手に入りやすいという設定です。
ご了承ください。
誤字誤謬は可及的速やかに訂正致しますがご不快になられる方申し訳ありません。
誤字報告大変ありがたいです。
冬も深まったある日。
火鉢に網を置いて、干しイモを炙って食べていた。
鉄瓶ではお湯が沸いていて、大きな湯飲みにたっぷりとほうじ茶を入れて指先を温める。
外はあいにくの曇天で、それだけで寒さが強まる気がする。
そうは言っても、名古屋よりは全然暖かいのよね。雪も降らないし。
ヨネの父親は方々の工事現場の人足出しの仕事をしていた。
仕事の話が来ると、汽車であちらこちらと行ってしまう。
そうすると、半年やそこら、長くなると一年位か、帰って来ない。
そうすると母親と二人きりである。
父親はたまにしか会わない娘に滅法甘く、ヨネは父が大好きだったけど、その分母は厳しかった。
冬の雪降る中、豆腐屋へお使いに行かされ、鍋を胸に抱えて手を羽織に入れて歩いていた。
滑って転んで、豆腐は見るも無惨に潰れてしまった。
慌てて帰って謝るが、
「きっと録でもない持ち方でもしてたんだろう、反省するまで家に入れないよ」
と、寒い中夜まで外で立たされた。
そんなことはしょっちゅうで、ヨネは厳しい母が苦手だった。
窓の外の、寒風に舞う落ち葉を見ながら、そんな子供時代のことを思い出していると
玄関から子供の声がした。
「こんにちはー、下の家から来ましたー」
「はーい。」
ヨネが出てくと分家の子供たちが籠を抱えて立っていた。
「これ、うちの蜜柑。お裾分けです。」
「まあ、まあ、ありがとう。嬉しいわ。」
ここら辺の農家は広い庭先に果樹を植えている。
たくさん採れた果物は、近所でお裾分けしてみんなで楽しむのだ。
「ああ良い香り。」
ヨネは籠から漂う爽やかな柑橘の香りに気分もすうっと晴れるようだった。
「ちょっと上がって行かない?おやつでも食べて行きなさいよ。」
「「わーい」」
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台所に立つと、今朝畑から採ってきたキャベツを刻む。
「ネエサン、手伝いますよ。」
「ありがとう、じゃあ納屋から生姜の梅酢漬けを持ってきて。」
「ハイ」
丸々一個刻んだキャベツを鉢に入れて、小麦粉と水を入れる。
油を引いて熱した鉄のフライパンに先ほどの生地を流し入れる。
生地に火が通ったら、ひっくり返して、フライ返しでギューギューと圧す。
薄く周りがパリパリになるように焼いて刷毛で醤油を塗る。
皿にのせたら削り節の粉になった物と刻んだ生姜の梅酢漬け(紅しょうが)とネギをふって出来上がり。
「ただいま」
「お帰り、トラちゃん」
今日は土曜日だから半日仕事で帰ってきたトラが台所に顔を出す。
「良い匂いだな、それは何だい?」
「お好み焼きって言うのよ。昔からお母ちゃんがおやつに作ってくれてたの。」
「それは、おやつ?昼じゃなくて?」
「今、下の家の坊たちがお使いで蜜柑持ってきてくれたのよ。火鉢のところにいるわ。
子供のおやつにと思って。」
「なんだ、そうか。俺もそれが食べたいな。今日の昼はそれにしよう。」
「え?これでいいの?トラちゃんじゃ足りるかしら?」
「何枚でも食べれそうだ。ちょっと子供たちの顔を見てくるよ」
トラは居間に向かって歩いていった。
「ネエサン、アタシもそれ食べたい。キャベツ刻むから、お願い。」
「ふふふ、ナナちゃんまで。子供のおやつよ。まあ、作りましょ?」
それから、みんな二枚ずつ焼いて、トラの分は四枚焼いた。
「「「ウマーい!!!!」」」
「これは美味しい、お好み焼きはヨネのに限る、これは今日から我が家の家訓にしよう!」
「なに言ってるのよ、トラちゃん。」
これは、曇天の日に、お茶を飲み飲み、火鉢で炙ったイモ食べたり、蜜柑食べたりしながら、
家族三人と従兄弟の子供達と一緒に腹一杯お好み焼きを食べたお話。
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*注意 お好み焼きというか今で言うチヂミのような物でしょうか?
作者の子供時代はお好み焼きと言えば醤油味のパリパリの物でした。うちだけかもしれません。




