第百話 リユイの異変
「リユイ!」
そのユミの声で振り返ったリユイの目には信じられないという表情が詰まっていた。
「ユミ・・・・・! 来てくれるのか?」
リユイの元へと駆け寄ってきたユミはリユイの目の前にくると大きく頷いた。
「さっきはごめんね。ちょっと私疲れてたみたい」
「・・・・・ごめん」
「な、なんで謝るのよ。ほら行こう!」
「ああ」
ユミはリユイの手を掴みかけるもその手はリユイの手を掴む前に止まり二人の手が繋がれることはなかった。
そんな様子を見つめる二人はどこか胸に痛みを覚えていた。
「「・・・・・はー」」
リユイとユミを見つめる二人は深くため息をつくとソレイは不思議そうに首を傾げた。
「どうしたのですか、二人とも」
「い、いえ。なんでもないですよ」
「あ、ああ。なんでもねえよ」
それだけ言うと二人はリユイ達の後を追って歩きだした。
ソレイはまたしても首をかしげるもサラ達とともにリユイ達の後を追うのだった。
先にリユイとユミが翼を生やし西聖国付近へと飛ぶとリユイの〈空間転移〉で残りの三人を転移させると早速西聖国へと向かった。
「ここが西聖国・・・・・東聖国とは少し違った雰囲気ですね」
「ああ、大陸西側は国が多い。お陰でそこそこ発展しているのだろう」
「リユイ、あれって」
アレンが指す方を見るとそこには様々な紋様の兵士達が大勢いた。
つまり西聖国の駐屯地があったのだ。
「ああ、ここには大陸西側の全ての国が応援に来ているようだ。だからこれほどの――」
「いや、そうじゃなくて。あれだよ、あれ」
アレンの指す方を更に詳しく見た四人は予想外の人物を見つけ驚いた。
「叔父さん!?」
サラは驚きのあまり思わずそう声をあげてしまった。
するとその声に呼ばれた主はサラの声に気づいてしまった。
「む、サラか?」
ライトはどこからか聞こえた姪の声に辺りを見回すがそこにはサラの姿はいなかった。
「「「「「ふー」」」」」
物陰に隠れた五人は他の者が自分達に気づいていないことにあ安堵し、同時に息を吐いた。
「たく、危なかったじゃねえか。今度からは気を付けろよ」
「皆さんごめんなさい」
サラは頭を深々と下げる。
「そ、そこまで謝らなくていいわよ」
ユミは慌ててサラに頭をあげさせる。
「にしてもなんでここにライトがいるんだ?」
「なんで? 別に東聖国の人なんだから同じ聖国である西聖国が攻められているなら応援に向かうのはおかしくないんじゃないの?」
「いや、確かにおかしいです。叔父さんはこれからはカマクラ国でお世話になるとこの手紙に書いてあります。その場合報せを聞いてからここに来るには・・・・・」
サラはメイド服のポケットから手紙を取り出す。
ユミはその手紙を見せてもらい読み始めた。
「何故ボク達より先にいるのか、ですね」
ソレイの言葉にサラとアレンは頷く。
また三人の言葉でリユイとユミも納得した。
「ねえ、その手紙の内容って本当は嘘なんじゃない?
本当は東聖国陥落後、すぐに西聖国へと向かったんじゃないかな。
そうすればいくら魔物の森だからと言っても数ヵ月かけて大勢で行けば抜けられない訳でもないと思うんだけど」
ライトからの手紙にはカマクラ王の善意で雇ってもらえることになった、と書いてある。
サラはその手紙を信じきりライトが本当にそこにいるのか詳しくは調べていなかった。
なので確かに手紙の内容が事実かはわからない。
ユミの考察に四人は頭を悩ましたがその考察はアレンの言葉によって確かなものではなくなった。
「いや、よくよく考えてみればそんなことねえや」
「え、なんで?」
「俺はそもそもこの大陸西側にある修行していた聖国から東側にある東聖国へと行ったんだよ」
「そうなのか」
「ああ。けどよ、その時は魔物の森なんて通んなかったわ」
「じゃあどうやって来たんだ?」
「船で海を渡ってきた。数日で着いたぜ」
「なるほど・・・・・確かにそれならおかしくはないかしら」
「・・・・・」
「リユイ、ライトさんとコンタクトを取る?」
黙っているリユイに
「え、あ、ああ。その方がこちらも動きやすくなるだろう、と思う。
でもそうなってくると何故ライトさんが西聖国の最高指揮官であるのか?
また何故我々の国を攻撃しきたのかが尚更分からない」
「最高指揮官? なんでそんな事分かるんだ?」
「胸につけている階級を表す階級章を見てみて。アレンなら分かるんじゃない?」
リユイの言葉に言われるがままアレンが物陰から少し頭を出しライトの階級章を見ると確かにそこには最高指揮官を表すマークが描かれていた。
「本当だ・・・・・」
「嘘・・・・・でもなんで? 普通姪がいる国に話し合いもせず攻撃してくるかな?」
「・・・・・叔父さんは私達の国だって気づかなかったんじゃないですか?」
サラは動揺するもなんとかその一言だけ言うと黙ってしまった。
普通攻める国のことを一切調べもせずに攻め混む筈はない。
それもオイトの弟であるライトならば尚更。
ちょっとでもスパイがリユイの国に入ればと王と共に戦っていたメイドとして有名なサラぐらいすぐに分かるだろう。
その事に言いながらも気づいてしまったがサラは叔父が自分を殺そうとしたと言う事実を未だに受け入れられなかった。
「ほ、ほら、何かの勘違いとか、その探りを入れた者が私のことを言っていなかったということもありますしそれに・・・・・」
「サラちゃん・・・・・落ち着いて」
「・・・・・はい」
冷静さをかきはじめていたサラにリユイは落ち着くように言うとサラ一つ深呼吸をして喋るのをやめた。
「はっきり言って今の状況じゃあライトが敵だかわかんねえ。どうする、リユイ?」
「・・・・・」
アレンがリユイへと問いかけるがリユイは全く返事がない。
そんなリユイの態度を不審に思ったアレンはリユイの方を見るとそこには小刻みに震える右手を反対の手で血が出るほど強く爪を突き立て握るリユイの姿があった。
「おい、リユイ!」
「はあ、はあ、はは、はあ、はあ、あはははは」
アレンが屈みこむリユイへと近づくと微かに歯ぎしりするような音さえ聞こえてきた。
「お、おい」
「死が足りない・・・・・あいつらを全員殺したら足りるかな?」
「え」
アレンは微かに、だがしっかりと透き通るリユイの独り言を聞いてしまった。
その言葉を聞いた瞬間背筋に寒気を感じる。
(聞き間違い、だよな?)
自分の耳を疑ったアレンは少し恐れながらもリユイの肩を揺さぶった。
「リユイ、しっかりしろ。どうしたんだ?」
「え・・・・・あ、うん。ごめん。ごめんなさい、ごめんね」
「おい、大丈夫か?」
「あ、ああ」
リユイはおぼつかない足取りでなんとか立ち上がると短剣を出現させた。
アレンはそのリユイの仕草に疑問を持った直後、リユイは己の肩に短剣を突き刺すと小声で呻いた。
「お、おい。なにやってんだよ!」
アレンは慌ててリユイから短剣を引き抜くと最近覚えたヒールを魔方陣を描き詠唱し使い、リユイの傷口をふさいだ。
そんな事をしている間にリユイの異常行動をユミ達も気づいてしまった。
「え、リユイさん、何をやってるんですか!?」
「ちょと、リユイ!?」
「リユイ様!?」
「も、もう大丈夫、それよりも・・・・・」
アレンから離れ、今度はしっかりとした足取りでリユイは立ち上がると話を進めようとした。
だが
「ねえ、リユ――」
「リユイさん! もう隠さないで教えて下さい。一体何を隠しているんですか!」
「・・・・・」
ユミが言いかけた時、突然サラが声をあげた。
リユイはサラの言葉に黙ってしまう。
「もう、我慢できません。今のリユイさん、ずっとなにかを怖れて必死に私達から隠そうとして・・・・・もうそんな辛そうなリユイさんを見てられません! ・リユイさん、そろそろ話してくれませんか?」
「・・・・・」
リユイはサラの勢いに少し圧されるも黙ってしまう。
ユミ達もそんなリユイの様子にこれ以上口を出せずにいた。
そこに・・・・・
「君達何を・・・・・うん? もしかしてサラか?」
「「「「「あ・・・・・」」」」」




