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廻る乖離転生  作者: 朔
第七章 西聖国の危機編
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第九十九話  一歩

サラは会議室から飛び出ると走り出した。

そして外へと出ていこうとするリユイを見つけると更にスピードをあげ走った。

そして追い付いた。

今度こそ自分の手に届く位置にリユイがいたのだ。

そしてとうとうサラの手がリユイのローブを掴んだ。

サラに掴まれたことでリユイはその歩を止めた。


「リユイさん、行かないで下さい」


サラはリユイのローブをギュッと握りしめた。


「私は・・・・・リユイさんと一緒にいたいんです」


そしてリユイの背へと寄りかかった。

リユイの温もりが伝わってくるかと思ったが全く感じられなかった。


「ごめん、それは出来ない。ここが一番安全だ。君はここに居てくれ」

「・・・・・」


リユイがそう言いサラの手をローブからはなそうとした。

だがサラはより一層強く握りしめその手がリユイのローブからはなれることはなかった。


「・・・・・私は・・・・・例えどんな危険があったとしてもリユイさんと居たいです!」

「・・・・・」


サラの言葉にリユイは少し驚いた。

だがリユイは首を横に振ると半場強引にサラの手を自分のローブからはなさせると足早に歩きだした。


「・・・・・そんな」


サラは歩いていくリユイの後ろ姿を見つめるもその足が前へ出せなかった。

もうこれ以上リユイへ歩みより拒絶されるのが怖かったのだ。

そしてサラは以上足を踏み出すことは出来なかった。



「本当に軍を出さぬおつもりですか?」


サラが外へと出ていった後ソレイがそう一言ユミへと問いかけた。


「ええ、今はまだ他国へと協力出来る程余裕はないし、何せ急すぎるし勝手だから」

「ですが・・・・・」


ソレイは言いかけるが止める。

と、そこでヒトミが立ち上がった。

それに続きシズク、ホムラ、カエデ、ブーたん、ゴブン、ソウそして慌ててチビドラも立ち上がった。


「ユミ様、アレン様、ソレイさん、今はいませんがサラ様でリユイ様と共に西聖国を助けに行って頂けないでしょうか」

「え?」

「ユミ様達が行っている間は私達がここの防衛をしっかり致しますのでご心配する必要はない感じです」

「けど・・・・・」


そう言うとユミは俯いた。

渋るユミにヒトミは近づく。


「リユイ様は・・・・・普段我々には言わずいつも一人で抱え込み、そして一人で解決していると、私は感じます」

「それでいて私達にはその様子を見せなてないかもなの」

「ちょっと寂しいけどよぉ。それでもそのお陰で俺たちゃ生きてこれてる」

「兄ちゃんもあたしもリユイ様が居なかったらきっと今この場に、いえ、生きてすら居なかったらと思う」

「でもそんないつも一人でやっていけたマスターがオレッチ達に協力を求めているでヤンス。きっと厳しい戦いになるでヤンス」

「確かにもしかしたらリユイ様は今回も一人でやってのけるかもしれません」

「でも、今ここでユミ様達がリユイ様に手を差し伸べて頂ければきっとリユイ様は前のリユイ様に戻れる、と私は思います」

「僕はリユイ様に恩を返しきれていません! だから・・・・・だからリユイ様には絶対に戻ってきて欲しいんです。そうじゃないと恩を返せません!」


各々が自分達に王リユイに対する気持ちをユミへと伝えた。

その真剣な眼差しと声に乗せられた気持ちがユミの心を動かした。


(・・・・・そう、だよね。私はリユイに何かあったら必ず手を差し伸べて助けてあげるってあの時決めていたのに・・・・・私がこんなにんじゃ駄目だった!)


ユミは顔をあげるとヒトミ達に大きく頷いた。


「分かった、任せるね!」

「はい、任された感じです!」

「ったく、しょーがねえな。行くぞ!」


二人の様子を見たアレンは椅子から立ち上がった。


「はい、行きましょう!」


ソレイは椅子から降りてアレンの側へと行く。


「ユミ様」


オイトが椅子から立ち上がりユミの前へと行く。


「よろしければサラと話しては頂けないでしょうか」

「勿論そのつもりです。それに謝んないとないけなしね」

「ありがとうございます」

「それじゃあ行ってきます!」

「「行ってらっしゃい!」」


皆に挨拶をしたユミはアレンとソレイに頷き合うと会議室を後にしたのだった。



サラはリユイが見えなくなった後もそのまま突っ立っていた。

その目には少し涙を滲ませている。

あと一歩。

あと一歩でも足が前へと出ればすぐにでもサラはリユイの元へとかけて行けただろう。

だがその一歩はサラにとってはとても怖くて重かった。

だから歩み出せずその場に立ち尽くしていた。


「サラちゃん」


その声を聞いた瞬間サラは驚くも安堵した。

ああ、この人はやっぱりリユイの元へ行くのだと、行ってくれるのだと、その一歩が怖くないのだと。

そして嬉しかった。

この人ならばリユイを救ってくれると分かっているから。


「ごめんね。私、ちょっと疲れていて混乱していたみたい。一緒にリユイを助けに行こっか」

「・・・・・怖いんです」

「え?」

「リユイさんはもう私の知っているリユイさんなんかじゃなくて私の全く知らないまったくの別人になってしまったんじゃないかって」


サラの言葉にユミは首を横に振った。


「そんなことないよ。確かに大きく変わってしまったかもしれないけど根本的なところはいつも私達のことを大事に思ってくれる優しい人。それはリユイがどんなに変わっても私は変わらないと思う」

「そうですよね。リユイさんが私達のことを考えて言ってくれたのですよね」


今度はサラの言葉に対し頷いた。


「行こう、リユイの所へ」

「はい!」


サラはユミに手を引かれ、やっと一歩を踏み出したのだった。



サラの手を強引にはなし、そのまま歩を進め、そしてとうとう城の前へとリユイは来てしまった。

リユイは一度振り返り自分の城を懐かしむように見つめると視線を己の掌に移した。

その掌は血に塗られ赤く染まっている。

何故リユイはここまで血だらけなのか?

それは欲に任せ魔獣という魔獣を殺し回っていたからだ。

抑えきれなかった。

だが魔獣を殺すたびに胸が痛むが、その胸の痛みは欲に覆われてきてしまっている。

リユイは怖かった。

自分が自分でいられる時間が着実に減ってきていることに。

段々と何かを苦しめていないといても経ってもいられなくなってきていることに。

そしてとうとう自分が完全に欲望に忠実な野生の動物に成り下がらないか、怖いのだ。

そんな事をリユイが考えていると見ている手は小刻みに震え出していた。

リユイは手を血が出るほど握り絞めると自分の城へ背を向け歩き出した。

のだが――


「リユイ!」


ユミの声が聞こえた。


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