結婚式
オーク将軍デブリンガー・アブラハムの栄光への道 第二十九章
*********** ハーフエルフの女性リーネ ***********
結婚式当日、ご主人様とお屋敷の皆と共に、ワタシとご主人様の結婚式を挙げる会場に向かっていた。
何と、式の場所は王都の大教会という、凄く大きな所で行う事になってしまった。
ワタシとしては、もっと静かな所でひっそりと挙げてくれるだけで満足だったのだけれど、ご主人様の仲間のラックさんが同時に結婚式を挙げる事になり、両方に参加する人が沢山居る為、同時に行う事になったそうだ。
私達が目的地に到着すると、そこには既にシャウエッセンの街から来た、ラックさんの結婚式に参加する人達が到着していた。
すると、その中からピピとランが私達の方に向かって駆けてきた。
ワタシとご主人様の結婚式に出席する為に、ラックさん一行に混じってシャウエッセンの街からやって来たのだろう。
ワタシも、何時の間にか二人に向かって駆け出していた。
しかし、集団から飛び出してきた私を見て、二人は驚いた顔をする。
「「ええっ? リーネ・・・なの?」」
そうだった! ワタシってば、身体が大きくなっていたんだった!!
いきなり背が高くなった私を見て戸惑う二人に、慌てて私だと言うことを説明する。
そうこうしていると、駆け出したピピとランを追いかけて、司教様とシスターエリーもこちらに向かって来ていた。そして、ピピ達と同じ様にワタシを見て驚いている。
ワタシは二人にもいきなり大きくなったと説明をした。
はっきり言うとワタシも詳しい理由は分かっていないので、プドルさんが言っていた通りに説明をする。
「子供を産めるように、身体が相応しい大きさまで成長した?」
「ハイ、プドルさんがそう言ってました。 身体には何の異常も無いから安心して良いって!」
ワタシの説明を聞いて、ピピとランは良く分かっていない感じだったが、司教様とシスターは何となく理解している様だった。
司教様は、不思議な事もあるものだと仰っていたけれど、エルフの血を引く私なら有り得るかも知れないと、プドルさんと同じ意見のようだった。
「子供を産めるように・・・。」
しかし、何故かそう呟いていたシスターの顔が赤かった。
あれ、もしかして・・・ご主人様との事、気付かれちゃったのかもしれない・・・。
ワタシは思わず顔が熱くなってしまった。
▽
式まではまだ時間があるので、暫く私達はお話をする事にした。
尤も、ワタシはもう少ししたらドレスを着る為に先に控え室に行かなければならないのだけれども・・・。
「しかし、この前お屋敷に遊びに行った時には、何時もの通りだったのに、ビックリだよね!」
「うん、私もびっくりしたよ。」
「実はワタシもビックリした!」
ワタシがそういうと、二人とも大笑いする。
それから、ポークビッツの街の危機の話を、私の知る限り二人に話して聞かせた。
ワタシは、ふと気が付くとピピがキョロキョロと周りを見ていることに気付く。
「もしかしてピピ、ビット君の事探してる?」
「うぇっ? ア、アタイはそんな・・・。」
顔を真っ赤にして否定するピピ。けれど、こんな顔を見ちゃったら誰も信じないよね。
「相変わらず、ピピはビット君一筋ね。」
からかうランに、もぉ~~!っと起こった振りをするピピ。
そんな二人を尻目に、ワタシは、お屋敷の皆が集まっている所に向かって、大きく声をかける。
「おーい、ビットくーん! こっちこっち!!」
ワタシに呼ばれて、実はさっきからこちらの方をチラチラ見ていたビット君が、駆け足でやって来た。
「リーネ奥様、何か御用でしょうか?」
ワタシはいきなりの奥様呼ばわりにビックリする。
「ちょっ、ちょっと待ってよビット君! どうしていきなり奥様って・・・?」
「あーその・・・、リーネ様は、もう直ぐデブリンガー様の奥様になられる訳ですから、これからは奥様とお呼びするようにと、バルドッグ様から・・・。」
「あー、バルドッグさんか・・・。」
バルドッグさんは、何時も、誰に対しても丁寧な口調なので、流石にワタシも慣れていたのだけれど、他の皆はとても気軽に話し掛けてくれていたので、口調を直して貰うのは諦めていたのだけれど・・・。
「でも、ワタシは奥様なんて呼ばれても困るから、今まで通りでお願いね?」
「承知致しました。 リーネ様。」
相変わらず仕事中は丁寧なビット君だった。尤も今は仕事中じゃないんだけど・・・。
「それよりも、ねえビット君! 今日はよかったら、ピピのエスコートをお願いしても良いかな?」
「えっ? 僕がですか?」
「ピピはビット君が傍に居てくれたら、きっと嬉しいと思うから・・・ね?」
「あわわわわっ! リーネ何を言って!?」
真っ赤な顔でワタシを止めようとするピピと、そんなピピをニヤニヤとした顔で見ているラン。
ビット君も顔を赤くしてはいるけど、突然何も言わずにピピの手を握った。
「え・・・。」
「リ、リーネ様のご指示ですので・・・。」
そう言いながらもビット君の顔はどんどん赤くなって行く。
ピピはもうこれ以上赤くならないって言うほど真っ赤だ。
そしてピピはビット君に手を引かれて、綺麗な花が植わっている花壇の方へと歩いて行った。
そんな二人をワタシとランは静かに手を振って見送った。
「あの二人も、いつか結婚しそうだよね。」
ランがそう言ってくる。
「そうだね。 ご主人様もあの二人が結婚したいって言ったら、出来る限りの事はするつもりだって!」
「それ、本当なの?」
「う、うん。 ご主人様のお屋敷では、男性の使用人の建物と、女性の使用人の建物がそれぞれ母屋の傍に建っているの。 でも結婚している使用人は、母屋のお部屋を一部屋、二人の部屋として与えて貰えるの。」
「そ、そうなんだ・・・。」
「今はまだ、お屋敷で結婚している使用人の数は少ないから、部屋は沢山残っている筈だよ。 ご主人様は、ピピをお屋敷のメイド見習いにして、将来はビット君と夫婦になるのも良いかもしれないって・・・。」
「ふえー、リーネのご主人様って、使用人一人一人の事をそこまで考えてるんだ。」
「そうなの! ご主人様は、お屋敷の皆を大切な家族だって思ってるんだよ!」
ついついご主人様の凄いところの話になると、熱く語り出すワタシの話を、ニコニコと笑顔で聞いてくれているランだったが、突然とんでもない事を言い出した。
「所でリーネって・・・、あの時、私達を助ける為に奴隷になったんだよね?」
「え・・・。」
いきなりそんな事を言われてワタシは言葉が止まってしまう。
「実は私ね、司教様とシスターが話しているのを偶然聞いてしまったの。」
ワタシはランが私が奴隷になった事を知っていた事実に驚きを隠せなかった。
「い、一体いつ頃知ったの?」
「うーん、いつだったかな・・・。 確かリーネが突然居なくなって、一月ほど経ってから初めてリーネが教会を訪ねて来てくれた時の後だったと思う。」
ランは少し下を向いたまま話を続けた。
「司教様達から、リーネは他所のお屋敷で働く事になったって聞いていたし、私達と違って、多少の読み書きや計算の出来るリーネなら、働き口があるのも当然かなって思っていたんだ。 それに、久しぶりに会ったリーネは、とても幸せそうだったし、だから、まさか私達を助ける為に、自分を奴隷として売っていたなんて思いもしなかった!!」
ワタシは何も言わずランの言葉を聞く。ランの目には涙が溢れていた。
「ねえ、どうしてそんな無茶な事をしたの? 一つ間違ったら、とんでもない事になっていたかもしれないんだよ!?」
そう言ってくるラン。
どうやら、ランも何となくであはあるけれど、愛玩奴隷がどういう目に合うか分かっている様だった。
ワタシは、どうしてと何度も聞いて来るランに正直に答える。
「あの時、三人全員を助けるにはあれしかなかったの。 あの時の教会には一人だけしか養うお金が無くて、シスターはワタシに教会に来るように言ってきた・・・。 私達三人の中で、奴隷になって一番身が危険なのはワタシだからって・・・。」
「だったら、どうしてリーネが教会に行かなかったのよ! あの時の私達は、生き延びる為に奴隷になるつもりで居たんだし。」
「だって・・・、友達だもん。 ワタシ、人付き合いが苦手で、20年生きていても友達って呼べる人はほんの少ししか居なかった。 その友達も皆大人になって居たし。 そんなワタシに久しぶりに出来た友達がピピとランとレンだった。」
ワタシは自分の手を見る。
手のひらに集中すると、淡い白い光が手の平に集まってくる。
「これね、治癒魔法なんだ。 プドルさんに教えて貰って、やっと少しは使えるようになったの。」
「治癒魔法・・・。」
「もしもあの時・・・、レンが具合が悪くなったあの時にこの魔法が使えていたら、もしかしたらレンの命は助かったかもしれない。 だけど、あの時のワタシは使えなかった。 簡単な回復魔法しか使えなかったの。」
「・・・・・・。」
「ワタシは自分がまるで役に立たない事が悔しかった。 お父さんとお母さんを失ってから半年、何もしないで、誰とも関わり合おうとしないで、ただ家に引き篭もっていたワタシ・・・。 もしあの半年間に友達を作ろうとしていたら、あんな偽者の伯母に騙されて家を奪われることも無かったかもしれない。 もしあの半年間に魔法の訓練をずっと続けていたら、今のワタシみたいに治癒魔法が使えるようになっていて、レンを救えたかも知れない・・・!」
いつの間にかワタシの目からも涙が零れ落ちていた。
そんなワタシの涙を、ランがハンカチでそっと拭ってくれる。
「もしもの話をしても、何の意味も無いよ?リーネ。 あの時リーネには、いえ、あの時の私達には誰にもレンを助ける力が無かった・・・。 それだけだよ。」
悲しそうな、それでいてどこか優しい表情でランが言う。
ワタシはそんなランに言葉を続ける。
「あの時、ワタシも最初は教会に逃げようと思っていたの。 だって、ワタシは以前帝国軍の兵士に襲われて、乱暴されそうになった事があったから・・・。」
ランは凄く驚いた顔をした。このことはピピとランには言っていなかった事だ。
「その時は偶然助かったけれど、襲われた恐怖は全然消えなくて・・・だからワタシは、最初はピピとランを裏切ろうと思った。 だけど、赤の他人に家を騙し取られて、人に裏切られる辛さを思い知っていたから・・・。 そんな思いを、折角出来た友達にさせたく無いもの!」
「だから自分が奴隷になったって言うの?」
ワタシは黙って頷いた。
「もうっ! 本当に無茶するんだから・・・。」
ランはそう言いながらワタシの事を抱きしめてくれた。
以前はワタシよりも背の高かったランだが、今ではワタシより小さかった。
ワタシは、泣きながらワタシを抱きしめてくるランに、涙声でごめんねと言い続けていた。
▽
ようやく落ち着いた私達は、また会話を再開する。
「と、兎に角、ピピにはこの事言ってないから安心して!」
ランの言葉にワタシはホッとする。
もしもこの事がピピに知られたら、もっと怒られてしまうだろう。しかし・・・。
「でも、多分このままだと、将来的にはバレてしまいそう・・・。」
「どうして?」
「だって、あの二人・・・。」
ワタシの視線の先には、仲良く手を繋ぎながら花壇の前で会話を続けるピピとビット君が居た。
「将来あの二人が結婚したら、ご主人様のお屋敷で生活する事になる訳で・・・。」
「あー、確かにそうだね~。 もう諦めて怒られる覚悟しておいた方が良さそうね。」
私達はやっと大笑い出来た。
▽
その後ランからは、シャウエッセンの街の現状と、教会の事を聞いた。
なんでも、新しい領主様になったラックさんが、教会の寄付金を元に戻してくれたお陰で、以前のような苦しい状況はなくなったそうだ。
教会には、浄化魔法が使える神官が二人も新しく配属され、新しいシスター見習いも何人か増えたらしい。
それに、領主様が新しく教会の横に孤児院をお作りになられて、今まで教会の講堂で寒さを凌いでいた孤児達が、そこで暮らせるようになったのだとか。
更に、炊き出しに並んでいた大人の人を数人、孤児院の職員として雇う事で、その人達にも済む場所と仕事を与える事で、炊き出しに並ぶ人の数もかなり減らす事が出来たのだそうだ。
しかも、この方法。実はご主人様のアイデアらしいと言うのだ!
後日、プドルさんから聞いたのだけれども、ポークビッツの街では既に実施されている事なのだそうで、ご主人様のお屋敷に居る孤児達は、そんな中でもやる気のある子達や、それとは逆に戦争の恐怖で心に傷を負った子供達を敢えて引き取ったそうだ。
ワタシの知っているお屋敷の子達は、皆明るくて元気一杯で、とてもそんな風には見えなかったのだけど。
そして、暫くすると、プドルさんがワタシを呼びに来た。
結婚式の衣装に着替える時間になったそうなので、ワタシはランに別れを告げて、プドルさんと控え室へと向かった。
*********** オークロード・デブリンガー **********
遂に大教会で式が始まった。
教会内の座席には、私とリーネ、そしてラックとクレアの結婚式に参列する者達が、既に座っている。
実際の所、殆どが共通の知人なのだ。
何時の間にか参列者の席の最前列には、ガレオン陛下がライリー王妃と共に座っていた。
このライリー王妃も、実は私のかつての部下だった女性で、私の元でメイドとして今も働いてくれているネイリーの実の姉だった。
尤も、見た目も性格も姉妹にしては随分と違っていたのだが・・・。
そして私は、大教会の大司教の立つ祭壇の前で、緊張気味に立っていた。
大司教を挟んで反対側の座席の前には、私以上にガチガチに緊張しているラックが直立していた。
よく、自分より慌てている者を見ると、かえって自分は落ち着くと聴いた事があるが、緊張でも同じ事が言えるようだ。
私が緊張を解すべく周囲の様子を確認していると、花嫁の準備が整ったと合図が入る。
私達が礼拝堂の入り口に目を向けると、礼拝堂の大きな扉が開いて二人の花嫁がそれぞれ二人の男性に付き添われ姿を現す。
二人はそれぞれ純白のシンプルなドレスを身に着けており、頭にはヴェールを一枚被っていた。
王国では、昔から教会での結婚式は、基本的にシンプルな純白のドレスが望ましいとされており、リーネとクレアの二人には、その伝統に則ったドレスを用意しておいた。
対する新郎の我々二人も、白いスーツを着込んでいる。
まあ、結婚式において新郎など添え物のようなモノなので、白ければ特別何か決まりが有る訳でもなかったのだが・・・。
向かって左側が、ラックの花嫁のクレアだ。
既に両親の居ないクレアのエスコートはバルドッグが担当している。
そして向かって右側、私の愛しいリーネは、メルビン司教がエスコートを買って出てくれた。
本来ならバルドッグがエスコートする所だったのだが、リーネと同じく両親の居ないクレアにとって、エスコートに適任だったのは、私かバルドッグだけだったのだ。
予想外の所で同時に式を挙げる弊害が出てしまったが、幸いメルビン司教が名乗り出てくれたので、リーネのエスコートをお願いする事となったのだ。
二人ともヴェールで顔を隠しているが、身体の動きで緊張している事がありありと分かった。
二人の花嫁は、エスコートの二人に伴われ静かに祭壇の前に歩いてくる。
両サイドからは、徐々に拍手が鳴り響きだし、何時の間にか割れんばかりの大喝采となっていた。
ようやく新郎である私達の前に、新婦の二人が到着すると、エスコートの二人は、割り当てられている座席へと向かう。
二人が着席した事を確認すると、誓いの儀式が始まった。
この大教会での結婚式は、夫婦になる男女の婚姻の誓いの言葉の後に、大司教が新たに夫婦となった新郎新婦に、祝福の魔法を唱えて結婚成立となる。
そう、最後に魔法を掛けるのだ。
但し、隷属魔法の様な何かしらの強制力のある魔法ではなく、ペアで魔法を掛けられた者の運の値を、半永久的に少し上昇させるといったものだ。
この祝福魔法は、二人でいる時が長いほど、より幸運を運んで来てくれると言われている。
しかも、この祝福を受けた夫婦の間に生まれた子供にも、同じく祝福の効果があるのだ。
但し、この祝福魔法を唱える事が出来るのは、聖者や聖女と呼ばれる、正に限られた一握りの存在だけなのである。(まあ、当然の如くプドルは唱える事が出来るのだが・・・。)
一通りの祝言の言葉の後、遂に誓いの言葉だ。
最初に打ち合わせした通り、先ずは私とリーネの誓いの言葉からだ。
「新郎、デブリンガー・アブラハム。 貴方はここに居る新婦、エルリーネ・ミモリーを生涯の妻とし、永久に愛し続けることを誓いますか?」
「誓います。」
「それでは新婦、エルリーネ・ミモリー。 貴女はここに居る新郎、デブリンガー・アブラハムを生涯の夫とし、永久に愛し続けることを誓いますか?」
「ハイ! 誓います。」
「よろしい。 今、神の目の前で、新たな夫婦が誕生しました。 この新しい夫婦に、永久の祝福のあらん事を。 エターナル・ハピネス!」
大司教の言葉と同時に、私とリーネの身体を、金色の光が包み込んだ。
「さあ、この光が消えてしまう前に、誓いの口付けを。」
その言葉に、私はその場に膝を付くと、リーネのヴェールを捲り上げ、そっと口付けを交わした。
すると、座席からは大きな拍手が起こる。
リーネは感極まってしまったのか、目に涙を浮かべたまま私に抱きついてきた。
私はそんなリーネを抱きかかえると、そのまま、祭壇の前から少し離れた。
次はラックとクレアの番だからだ。
「新郎、ラック・モンプチ。 貴方はここに居る新婦、クレアを生涯の妻とし、永久に愛し続けることを誓いますか?」
「は、はい! 誓います!」
「それでは新婦、クレア。 貴女はここに居る新郎、ラック・モンプチを生涯の夫とし、永久に愛し続ける事を誓いますか?」
「誓います。」
「よろしい。 今、神の目の前で、新たな夫婦が誕生しました。 この新しい夫婦に、永久の祝福のあらん事を。 エターナル・ハピネス!」
そして私達の時と同じく、ラックとクレアを金色の光が包み込む。
「さあ、この光が消えてしまう前に、誓いの口付けを。」
大司教にそう言われ、慌ててクレアのヴェールを捲り上げようとするラックだが、緊張で手が震えているのか、随分苦労している。
しかし、何とか捲り上げると、ようやくクレアに軽く口付けをする事が出来た様だ。
すると、先程の軽い口付けでは納得出来なかったのか、クレアはそのままラックの頭に手を回すと、思いっきり口付けを交わしたのだった。
その様子に、座席からは拍手だけでなく歓声も上がっている。
リーネも、そんな二人に拍手を送っていた。
式は滞りなく終了し、座席に座っていた参列者達が先に教会の外に出る。
最後に私達二組の夫婦が礼拝堂の外に出ると、皆は大歓声と拍手で迎えてくれた。
そして教会の前で、事前に礼拝堂の出口で、新婦がシスターから手渡された小さな銀のメダリオンを、新婦が次に結婚すると思う女性に手渡すのだ。
これは、今結婚したばかりの夫婦の幸せを、次の夫婦にお裾分けをすると言う意味合いが有り、どの女性に渡すかは、新婦の独断に委ねられている。
尤も、大体は新婦と仲の良い友人の女性に渡すのが通例となっているのだが・・・。
(決して、投げたりしないぞ?あくまで手渡しだ。)
リーネは自分の手の中の銀のメダリオンを確認すると、真っ直ぐピピの元に歩み寄る。
「次はピピの番だと良いね。」
リーネはそう言ってピピの小さな手の平に、銀のメダルを置いた。
そしてその隣に立っているビットに一言。
「ピピの事宜しくね、ビット君!」
「は、はい! リーネ様!!」
顔を赤くして返事をするビットと、そんな彼の袖を掴んで顔を真っ赤にしているピピに、周囲から暖かい拍手が送られた。
そして次はクレアの番だ。
クレアが向かったのは、私のかつての仲間達が集っている場所だった。
そこにいたのは、以前のシャウエッセンの街の調査の際に、この王都からわざわざシャウエッセンまで出向いて調査をしてくれたメンバーの中の一人、ワードッグのヨークだった。
クレアは、唖然としているヨークの手に、銀のメダリオンをそっと乗せる。
そして耳元に口を近づけると。
「何処かのニブチンに、伝わるといいね。」
と小声で囁いた。
メダリオンを受け取ったヨークは、顔を真っ赤にしている。
思い当たる事があるのだろう・・・と言うか、実は私は知っている・・・。
因みに、私は大変耳が良いので、今の言葉を拾ってしまったが、果たして周囲に居る者の中で、あの言葉を聞き取れたのは一体どれだけ居たのだろう。
特に、クレア曰くニブチンのドベルは、間違いなく聞き逃しているだろうなと、私は遠い目をするのだった。
『いっそ、また私がうっかりした事にでもして、無理やりくっつけてしまった方が良いのだろうか・・・?』
そんな考えが一瞬頭を過ぎったが、下手にやらかしてヨークに恨まれても困るので、実行する際は事前に彼女に相談する事にしよう。
兎に角、こうして私達の結婚式は無事終える事が出来たのだった。




