後始末
オーク将軍デブリンガー・アブラハムの栄光への道 第二十七章
*********** オークロードデブリンガー ***********
それから暫くして、日が傾きかけた頃、ゴブリン達は死亡した者から形見の品を取り終えると、我々に頭を下げ、自分達の集落へと向けて帰って行った。
私の屋敷に避難していた人々は、問題無く撃退出来た事を知らせると、皆それぞれの家に帰って行った。
私は、街の浄化魔法を使用できるものを全員呼び出し、城門前に倒れているおびただしい数のゴブリンの死体を片っ端に浄化させた。
勿論プドルは率先してやってくれている。
何だか、戦闘中よりも余程、酷使してしまっている気がするな・・・。
しかし、この処理を怠ってしまうと、森や山の瘴気を吸収して、死体がアンデッドに変化してしまう事があるので、こればっかりは後回しにしておく訳には行かないのだ。
尤も、この後直ぐに魔法で火葬してしまうので乾燥の魔法の併用は無しだ。
浄化魔法を使えない衛兵達や冒険者達は、浄化の終わった死体を一ヶ所に集める担当だ。
因みにリーネは、屋敷のメイド達と共に、此度の戦闘に参加してくれた者達に振舞うべく用意した食事を配って回っている。
先程、屋敷から運ばれて来たのだ。
浄化担当は魔力切れを起こした者から順次食事休憩を取っている。
死体を運ぶ担当は、先に済ませた。
皆が作業や休憩をしている間に、私は牛王の首を持って、冒険者ギルドを訪れていた。
牛王の首に懸かった賞金を受け取る為だ。
「しかしまあ、本当に一人であの牛王を倒すなんて・・・。」
私が持ち込んだ牛王の首を見て、ギルドマスターが目を白黒させている。
「今回手を貸してくれた冒険者への報酬はこの首の賞金で払うつもりだ。 だから換金して貰いたい。」
「成る程、そう言う事でしたか。 勿論換金させて貰いますよ!」
「しかし、実は牛王に懸かった賞金が一体幾らなのか、私は知らないのだが・・・?」
「この牛王は、何人もの冒険者を殺してきた憎き仇ですからな、賞金額もどんどん膨らんで行き、今では金貨200枚にもなっております。」
そう言って、目の前に金貨のたっぷり入った金貨袋をドンと置いた。
「ほう、これは凄いな、これならば皆に十分な報酬を用意してやれそうだ。」
「え? ま、まさか領主様、金額も知らずに牛王の賞金で報酬を払うつもりだったんですかい?」
「ははは、流石にそれは無い、まあ足しにしようと考えていただけだ。 なにせ冒険者以外にも衛兵や神官、司祭達にも礼を渡さねばならないからな。 まあ、それだけあれば、かなり残るだろうし、折角だから結婚式の費用にでも当てるとするかな!」
少しばかり浮かれてしまった私は、ポロッと結婚する事を漏らしてしまう。
まあ、別に秘密にする事でもないのだが、リーネと結婚できるのが今頃になって実感出来たのか、私は妙にワクワクしてしまっていた。
「結婚式? まさか領主様、結婚なさるんで?」
「ああ、惚れた女性が、戦いの前にプロポーズを受けてくれてね、近々式を挙げようと思っている。」
「あーあ・・・、こりゃあ暫く酒場で荒れる女が大勢出そうだな。」
いきなりギルドマスターがおかしな事を言い出した。
「ん? それはどういう意味だ?」
「領主様はご存じ無いかも知れませんがね、この街には領主様を慕っている女達が大勢居るんですよ。 このギルドに居る冒険者の中にも何人か居ますぜ?」
「そ、そうなのか?」
私は、今までそんな話を聞いた事が無かったので、恐らくからかわれて居るのだろう、此処は聞き流しておく事にした。
「さてと、今回作戦に参加してくれた冒険者達だが、何人参加してくれた事になっている?」
私の言葉に、ギルドマスターが受付の女性から台帳らしき物を受け取って中身を確認している。
「総勢30名の冒険者が参加していますね、魔法師10名、弓師6名、戦士14名です。」
「で、この場合の報酬の相場はどれ位なんだ?」
私の質問にギルドマスターは少し考える。
「普通にこの程度の仕事量なら、銀貨10枚が良い所ですかね。 ただ、今回は相手の数がかなり多かったですし、あの牛王の存在もありましたから、もう少し色を付けてやっても良いのではないかと・・・?」
「ふむ、成る程・・・。」
私は目の前に置いてある金貨袋から金貨を取り出すと、それをギルドマスターの前に並べた。
「金貨31枚ある。 全員に金貨一枚支払ってやってくれ。 残りの一枚はギルドへの手間賃だ。」
「ええっ!? き・・・金貨一枚ですって!? そんなに沢山、いいんですかい?」
「ああ、今回は上手く行ったが、一つ間違えれば全員命の危険もあったのだ。 私からの感謝の印だと伝えておいて欲しい。」
「は、はあ・・・。(全く相変わらず気前の良いお方だ、これだから惚れる女が後を絶たないのにねえ。)」
ギルドマスターは複雑な表情で金貨31枚を受け取った。
「これで、報酬の清算は終わったな、それでは失礼するよ。」
私は残りの金貨の入った金貨袋を懐にしまう。
「おっと、そうだった。 実はもう一つ頼みたい事があったんだった。」
「何ですかい? 領主様。」
「明日の朝私の屋敷に、以前牛王の洞窟に行った事のある冒険者の、あの二人を寄越して貰いたい。」
「あの二人はまだ領主様の依頼の最中ですが?」
「あの仕事はもうそろそろ終了する。 その後で話をしておいてくれ。 報酬は今回と同じだけ出すと伝えて欲しい。」
「な!? また金貨一枚ですか?」
「ああ、仕事内容は来てくれた時に伝える、心配しなくても危険な仕事ではない。 宜しく頼むよ。」
「わ、分かりました。 必ず伝えておきます。」
その言葉を聞いて、私は冒険者ギルドを後にした。
▽
私が、北門前に戻ると、既に日が暮れており、既に全ての死体の浄化が完了していた。
浄化を終えた魔法師や司祭、司教は、城門の内側で、メイド達の炊き出しに舌鼓を打っていた。
リーネは張り切って炊き出しを手伝っていた様だった。
一方城門の外では、松明の明かりを頼りに、死体を一ヶ所に集めている所だった。
そして、その作業ももう少しで終わりそうだった。
どうやら、陛下と共に残っていた親衛騎士団達も、死体の片付けを手伝ってくれていた様だ。
恐らく、ガレオン陛下が手伝うように命令してくださったのだろう。
ガレオン陛下は、松明の横で作業の段取りを指示していた。
私は、ガレオン陛下に近付くと、ある提案をする事にした。
「ガレオン陛下、実は明日の朝に数名の選抜隊を準備し、牛王の洞窟を調査しようと思っているのですが?」
「ん? 何の為にその様な事をするのだ?」
「あの牛王は、長きに渡り盗賊として周囲の集落を襲っては金品を強奪していたと聞きます。 そして魔物化した後も、住処の洞窟やその周囲に近付いた冒険者や旅人を襲って居たのですが、理性を失った後も金品を集め続けていたというのです。」
「なんと!! つまり、あの牛王が今までに収集した宝物を回収しに行くというのか?」
「はい、実は先程冒険者ギルドに行った際に、洞窟に行った事がある冒険者を明日の朝屋敷に寄越して貰う手筈を整えておきました。 彼らに案内して貰えば、簡単に洞窟まで辿り着けるでしょう。」
「ふむ、しかしどれ程の宝があるのかはわからぬのだろう?」
「ええ、もしかしたら大した事も無いかもしれません。 ですが興味を惹かれるでしょう?」
「確かに!」
「そう言う訳ですので、ガレオン陛下からも数名の部下を参加させられてみては如何かと思いまして。」
「ふむ、別に部下を回すのは構わんのだが、何故わざわざその様な事を?」
「勿論、見つかった宝を山分けにする為です。」
ガレオン陛下は、呆れたという顔をする。
「兄弟、何故それをわざわざ余に話すのだ? それこそ、そちらだけで調査しておれば、もしかしたら莫大な財宝を独り占め出来たかも知れぬのに・・・。」
「ですが、碌な宝も無いかもしれませんよ?」
私は笑いながら返事をした。
「ですが、もしも莫大な宝が見つかった時は、是非ともその宝を国庫に入れて頂きたいのですよ。 今迄陛下には何度も助けて頂いておりますから・・・。」
「全く、お人好しが過ぎるぞ、兄弟。」
ガレオン陛下はそう言いながら私の肩を掌で叩く。
「私の街の輸送船を出しますので、片道二日半の工程の内の半分は短縮する事が出来ます。 ですから約三日程で戻ってくる事が出来ると思うのですが、如何されますか?」
「如何するも何も、此処まで言って貰って参加しない訳にも行くまい。 余の親衛騎士団を、数名参加させる事にしよう。」
「それでは陛下共々、今晩は私の屋敷に泊まって頂く事に致しましょう。 陛下は明日、選抜隊を送り出した後に私が責任を持って王城まで御送り致します。」
「わははは! では今晩は久しぶりに朝まで飲み明かすとするか! 今日の所は申し訳ないが、リーネとイチャつくのは、明日以降にして貰うぞ!」
「ははは、望む所です!」
▽
それから暫くして、ようやく死体の運搬も終了した為、炎の魔法を使用出来る魔法師達を集め、一斉に死体を焼却して貰う。
よく燃える様に、予め死体に油を掛けておいたので、勢いよく燃えた死体は僅かな時間で骨と灰になってしまった。
後はこのまま一晩放置して熱を取り、骨を集めて約束の場所に埋葬する。
流石に千人近い人数分の灰までも運搬する事は大変なので、灰は近くの森や草原に撒く事にした。
今日やるべき仕事は一応一段落したので、数名の見張りを残して、全員帰宅して貰った。
既にすっかり日は暮れており、空には一面の星が広がっている。
そんな中を私達は、ガレオン陛下や親衛騎士団達と共に歩いて我が屋敷まで戻ると、それぞれ風呂や食事を順次取って休んでもらう事になった。
尤も、先程言っていた様に、ガレオン陛下は一晩飲み明かす気満々だったので、私はリーネにも先に休むように伝えたのだが、傍に居たいとせがむので、好きにさせる事にする。
親衛騎士団の面々は風呂と食事を済ますと、殆どの者は食堂で遅くまで酒を飲んでいたが、一部の者はさっさと客間に行って眠ってしまった。。
勿論今晩は彼らにも沢山の酒を振舞うつもりだったのだが、明日の選抜のメンバーに選ばれた者は酒も飲まずに眠ってしまった様だ。
彼らには申し訳ないので、洞窟の調査から戻った際にしっかりと楽しんで貰う事にしよう。
一方、食堂とは別のリビングルームには、私とリーネ、ガレオン陛下に加えて、今回の戦闘に参加してくれた仲間達も大勢集まっていた。勿論バルドッグとプドルも同席している。
更にはネイリーの様に、今も私に仕えてくれている元特殊部隊の使用人勢も宴会に参加していた。
今日の戦いの前に、私のうっかりでお互いが想い合っている事を知ってしまったラックとクレアは、宴会が始まると早々に、二人で仲良く飲み出してしまった。
しかし、あまりに二人だけの世界を築き始めてしまったので、未だ独り身の多いウチの使用人連中からは散々白い目で見られていた様だった。
まるで昔に戻ったかの様な顔ぶれに、ガレオン陛下のテンションが何時も以上に高かったのが印象的だった。
きっと、城での毎日に窮屈さを感じているのだろう。
かつては、こうして毎晩の様に馬鹿騒ぎをしていたモノだ・・・。
その晩、私は懐かしさも手伝い、随分と酒を飲んでしまった。
気が付くとリーネは私の膝枕でぐっすりと眠っている。
そんなリーネに、気を利かせたプドルが毛布を掛けてやってくれた。
私は少し控えめの声で礼を言うと、嬉しそうに笑顔で返して、また皆の下へと戻って行く、彼女には毎日世話を掛けっぱなしだな。
一段落したら、彼女にもじっくりと休暇を取って貰いたいものだ。
結局その晩、私達は朝日が昇るまで飲み続けたのだった―――。
▽
翌朝、冒険者ギルドに頼んでいた牛王の洞窟に行ったことのある冒険者二名が屋敷に到着すると、私達は今回の目的を説明し、街の西側にある船着場まで向かった。
リーネはまだ眠そうだったので屋敷で寝かせてある。
今日は特別困難な用件も無い為、プドルや他の面々は何時もの仕事に戻って居る。
バルドッグは、今回も参加してくれた仲間達に礼を渡す事も兼ねて転送屋まで見送りだ。
船着場で、私の街の衛兵の選抜メンバーと王国側の選抜メンバーそれぞれ五名ずつに船の操作及び管理に五名と、道案内の冒険者二名の合計17名が、用意しておいた輸送船に食料等と共に乗り込むと、早速街を出発する。
一応帰還予定は三~四日後だ。
取らぬ狸の皮算用となっては恥ずかしいが、一応念の為、宝を運ぶ用の荷車も船に乗せてある。
今回の探索に向かうメンバー全員には、宝の有無、多少に関わらず、一律で私から一人頭金貨1枚が報酬として出す事を告げると、全員から歓声が上がった。
きっと、皆しっかり任務を遂行してくれる事だろう。
私としては、勿論多くの宝が見つかってくれる事を期待してはいるのだが、実はそれよりも大きな目的がもう一つあった。
それは、牛王の洞窟を我々がしっかりと調査したという事実だ。
宝の有無は関係無く、あのバイエルン山脈の麓の洞窟を、しっかり調査したと公表すれば、一攫千金を夢見てまたあの危険な森を越えて、瘴気に溢れる洞窟に潜ろうと言う者も現れないだろうと、私は考えたのだ。
今回の選抜メンバー程に手練れの者ならばともかく、未熟な腕前の者にとっては、あの森は非常に危険な場所なのだ。
今までは牛王の恐ろしさに誰も近付こうとはして来なかったが、牛王が死んだとなれば話は別。
きっと人々が殺到するだろう。
しかし、熟練者ならともかく未熟な者では、洞窟に辿り着く前に命を落としかねない。
だからこその大々的な調査隊なのだ。
私のこの考えには、ガレオン陛下も納得されていた。
▽
調査隊の乗った船を見送ると、私はガレオン陛下を王都に御送りするべく、転送屋へと行く事にする。
私達は屋敷から此処に向かう際に乗ってきた牛車と馬車に分かれて乗り込むと、そのまま転送屋に向かった。
転送屋では、先にバルドッグが直に我々が来る旨を伝えていてくれた様で、転送屋も準備が既に整っていた。
親衛騎士団のメンバーも含めた転送となると、一人の魔法師ではとても魔力が足らないので、数名が万全の状態で挑む必要があるのだ。
しかし転送屋では、私共々転送の魔方陣に入ろうとした際、ガレオン陛下に止められてしまった。
「兄弟、送ってくれるのは此処までで十分だ。」
「しかし、王城まで御送りすると・・・。」
「わはははは、心配しなくても余は十分に強い。 それに親衛騎士団もこれだけの数がまだ残っている。 向うに着いたら馬車を呼び城に帰るだけだ、此処までで十分だよ。」
「ガレオン陛下・・・。」
「それに、そなたも色々と忙しい身、その上可愛いリーネといちゃつきたいのであろう? だったら此処は素直に余の言う事を聞くのだ! それに、兄弟の結婚式の際にはまた遊びに来るからな! わははははっ!」
私は、ガレオン陛下の気遣いに感謝し、その場で深く頭を下げ、一行が王都まで転送されるのを見送った。
▽
ガレオン陛下を見送って、転送屋を出た私は、牛車に乗り込むと教会へと向かった。
今回のゴブリンの死体の浄化に協力してもらった礼にそれなりの額の寄付をする為だ。
一応、衛兵には次の給与にボーナスと言う形で今回の分の報酬を追加するつもりなのだが、戦闘に参加していなかった教会関係者には、まだ礼金を渡していなかったからだ。
まあ、浄化魔法を使って貰っただけなので、冒険者達のように高額な礼金を渡すわけではないのだが、それでもかなりの数の浄化を手伝って貰ったので、金貨10枚程、教会に寄付と言う形で礼としておこうと思っている。
私が教会で寄付をして建物から出てくると、前方に見知った顔を見つける。
ハイタウロスのウロスだ。
昨日、興奮剤で発情してしまっていたタウロスマンの女性を押し付けたままになっていたが、果たして、女性は正常に戻れたのだろうか?
気になった私は、大きな声を出して、少しはなれた所を歩いているウロスに声を掛ける。
「ウロス!」
私の声に気が付くと、ウロスはこちらに向かってドスドスと駆けてきた。
「デブリンガー様! お早うであります。」
私に挨拶をしてくるが、何だか少しやつれている様だ・・・。
「おや? デブリンガー様、少し感じが変わったでありますか?」
どうやら浅黒くなった私の肌の事を言っているらしい、そういえばウロスは先に女性を連れて戦闘から離れていたので、私の進化に関しては知らなかったのだろう。
戦いが無事終わった事は宿屋の人間から聞いていただろうが、私が進化した事まで宿屋の人間も知らないだろうしな・・・。
「ああ、この肌の色はな、牛王を倒した時にまた進化してしまってな。」
「し、進化!? オークジェネラルでも信じられないと言われているのに・・・、と言う事はオークキングになられたのでありますか?」
「いや、ガレオン陛下を差し置いてキングは名乗れないと悩んでいたら、ガレオン陛下にオークロードを名乗るように進められてな、今はオークロードだよ。」
「オークロード・・・。 相変わらずデブリンガー様は規格外でありますな!」
呆れ気味に笑うウロス、私も思わず笑い返していた。
しかしそこで、私は大切な事を忘れていた事き気付く。
「おっとそうだった。 ウロス、昨日は厄介な事を押し付けてしまって済まなかったな?」
私の言葉に、夕べの事を思い出したのかウロスは顔を赤くしてうろたえる。
「い、いえ・・・別にその様な事は・・・。」
「所で、昨日の女性の件だが・・・、正常な状態に戻る事は出来たのか?」
「え、ええ。 あの娘はかなり長い間、薬を盛られ続けていたらしく、毒は消えても・・・その、あれは一向に治まる気配が無くて最初の内は心配したんですよ。 しかし、今朝方になってようやく落ち着きを取り戻しまして安心したであります。」
そうか、正気に戻れたのか。
「それは良かった。 しかし、そんな彼女を一人にしておいて出歩くのはあまり感心しないな。」
「い、いえそれが・・・、彼女が風呂に入りたいと申しまして、今は宿屋の風呂に入っております。 自分はその間に、彼女の着る服を調達しようかと・・・。」
何でもあの女性の着ていた服は、大変汚れて居た為に、風呂上りに再び着させるのは忍びなかったそうだ。
女性に対して、私と同じく不器用だと思っていたウロスだが、案外細かな気遣いが出来るようだ。
私は懐から金貨を三枚取り出すと、それをウロスに握らせる。
「一枚は、今回の協力に対する何時もの礼だ。 そして残りで、あの女性に出来る限りの事をしてやってくれ。」
私がそう言うと、ウロスは黙って頷いた。
「考えようによっては、彼女が今回の一件の一番の被害者だ。 服装や肉体的な苦痛以外にも、心も傷付いたかも知れん。 出来れば彼女が落ち着くまでお前が傍にいてやってくれ。 そして出来れば彼女の家まで送って行ってやってくれ。 お前ならばボディーガードとしても実力は問題無しだしな!」
「はい、自分もあの娘の事に関しては、全ての責任を持つつもりであります!」
少し頬を染めてそう言い切るウロス。
『ああ、これは惚れたな・・・』と内心そう思ったが、流石に此処でからかうのは無粋だろう。
「宜しく頼むぞ!」
私はそう言うと、牛車に乗って屋敷へと戻ったのだった。
▽
それから四日後、街に帰還した牛王の洞窟の調査隊が持ち帰ったのは、金貨に換算すると三百枚以上にも及ぶであろう財宝の数々だった。
あの恐ろしい牛王とは言え、単身でそれだけの宝を集めていたと言うのは、流石に驚きだった。
恐らく、表に出ている以上の多くの冒険者達が、あの牛王に挑んでは命を落としていたのだろう。
私は、金貨二百枚分に相当する宝を、ガレオン陛下へとお渡しする事にした。
山分けと言う約束だったが、少しでも国庫の足しにして貰いたかったのだ。
残りは、皆への報酬や輸送船の手配にかかった資金などを差し引いて、全てこの街の資産とした。
街や国を維持していく上では微々たる金額ではあるが、無いよりはマシと言うものだ。
因みに、選抜メンバーになってくれた王国騎士団の面々には、その晩思いっきり酒を楽しんで貰ったのは言うまでもない。




