有野間麻友 ver.00
カナちゃんに最後の挨拶を言ってから、私は必死に走っていた。
泣きながら、声を漏らさないと頑張っているのに、駄目だー、声が出ちゃう。
恥ずかしいと思っていると、ふと、目の前に、公園があることに気づいた。
そこはとても小さい公園で、ベンチが一つしかない。だけど、とても寂しい雰囲気で、人がいない。ここで、涙が止まるのを、待とうと思った。
でも、駄目だ。ベンチに座った瞬間、涙がボロボロと落ちていく。本当は、転校なんてしたくない。仲の良い友達、特にカナちゃんとは、別れたくなかった。転校したら、一生合えなくなるかもしれない。そんなの嫌だ。手紙とか、そういうのをずっと続けていれば友達で居られるかも、と思ったけど、そんなの難しい。
それに合わさって、お母さんのことが、頭の中でぽんぽんと生まれてくる。物心がついた頃から、お母さんとは一緒にいた。私の記憶には無いけど、私は幼稚園に行くのを嫌がり、毎日泣く私を、お母さんと先生で必死に剥がしていたらしい。買い物にはいつも一緒に手を繋いで行ったし、一緒に寝ていた。お母さんは、とても美人でカッコイイ! 大好きだった。三人で遊園地に行ったことや、食事に行った時などの記憶、お父さんはキャンプが好きで、夏休みは決まってどこかのキャンプ場へ向かいテントを建てて泊まっていた。それはとても楽しい思い出ばかりだった。
お母さんは、ちょっと私に甘くて、私は、ほとんど怒られたことがない。何か失敗したって、すぐにぎゅっと抱きしめてくれて、もう! って笑いながら怒る。殴られたことなんか、一度も無かったはずなのに、
キモチワルイナ
キモイ
ウザイ
邪魔
●ね
寄ってくるな
手ぇ、触らないでよ
あんたなんか生まれてこなけぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ
ガッシッ
ボカッ
ドカッ
グシャッ
ぐちゃ
私が、いけないのかな?
私が悪い子供だから、お母さん、変わっちゃったのかな?
そうなの?
ねぇ、教えてよ、お母さん……。
涙は止まらない。ずっと出る。このまま身体中の水が、全て涙になってしまい、そのまま干乾びて、死んでしまうと思い、とても恐かった。あ、でも、もし私が死んだら、お母さん、私のお葬式に出てくれるかな? 私の笑顔の遺影見て、涙を流してくれるかな? どうかな? 教えて、あ……ごめんなさい。
そして、私が顔を上げると、景色が一変していました。
私は驚きます。何故なら、今座っている場所は、あの公園ではなく、なんと駅のホームにあるベンチに座っているからです。驚きのあまり、頭が混乱しそうになるけど、そうだ、これは夢なんだと、思い納得しました。
どうやら、私は泣いているうちに眠ってしまい、夢の世界に入り込んでしまったみたいです。やけにリアルなのはちょっと恐いけど、まぁ、私はこの世界を楽しむことにしました。というより、もうあまり、元の世界に戻りたいとは、思いませんでした。……嘘です。本当は、もう帰りたくない。ここが夢の世界なら、一生ここに居たいと、思いました。何故なら、夢の世界なら、お母さんが、私の家にいるはずだからです。私が帰ったら、いつものように「お帰り」って笑顔で迎えてくれて、お菓子を出してくれて、今日は何食べたい? って、聞いてくるに、決まっているからです。それが、私にとっての現実のはずなのに、今は、……夢でした。
涙は止まりませんでした。
私のホームには誰も人がいません。影すらありません。とても静かで、風の音さえ聞こえてきそうでした。
その向かいには、誰か人がいました。
一人は女性で、もう一人は、……小さい子供。男の子、だと思います。その男の子は、よちよちと可愛く歩くと、その女性の下へ進みます。女性は、しゃがむと、腕を広げて、男の子が飛び込んでくるのを待っています。途中で何度か左右へ危なっかしく揺れましたが、無事に、女性の胸に飛びこみます。きゃっきゃと笑い、その顔に、女性は、頬を摺り寄せました。
「お母さん……」




