有野間麻友 ver.0
どうも、有野間麻友でーす。十二歳です。小学六年生ですよ、まだ中学生ではありません。身長は高いほうかなー。
自分で言うのもアレですけど、ぶっちゃけ、私は超駄目人間です! なんちて……。
はい、自己紹介は、これくらいでいいかな。
では、行きます。
これは、私のカワイソーな想い出です。
ある日から、お母さんは家事をしなくなった。いつもは、お皿を洗い、部屋を掃除して、料理を作っていたのに、全くやらなくなった。朝ごはんも、作ってくれない。お父さんがどうしてだ? と聞くと、お母さんは疲れたから、と言ってすぐに家から出て行ってしまいます。
お母さんの言葉は、嘘です。
時間が無くなったからです。お母さんは、友達から教えてもらったパチンコという遊びに熱中してしまい、それ以外のことを、考えられなくなってしまったのです。毎日毎日、頭の中はパチンコの弾と、タバコの匂いと、騒がしい音楽だけしか、脳みそが考えないんです。
気がつけば、お母さんとお父さんは毎日のように喧嘩をしていました。昔はあんなにも仲が良かったはずなのに、それは嘘だよ! と満面の笑みで言われたかのように、です。お母さんはヒステリーに怒り、私はそれがとても嫌いでした。美人で優しいお母さんが、私の理想で、将来はお母さんみたいなカッコイイ女性になるのが夢だったのに、今のお母さんは全然カッコヨクないんです。しかも、私のことを、よく殴るんです。痛いよ、お母さん、ごめんね、ごめん、ごめんなさい、痛い痛い痛い痛い痛い痛いぎゃー! あんたがしっかりしていれば、私がアイツ(お父さん)に馬鹿にされないっていうのにッ
えーん
えーん
えーん
「有野間さんのお母さん、この前見たよ」
どこでって、聞かないもん。だって知ってるし。
「私のお母さんも、朝見て、お昼に買い物するためにそこ通る時、また見たって」
それは、ずっとそこにいるからだよ。
「なんか凄く痩せていたよ、……病気なの?」
病気だったら、どんなにうれしいか。違うよ、健康なんだ、凄く。この前も元気に私のことを痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
変な男の人と一緒に歩いている。
誰だろう。
もちろんお父さんじゃない。あんなに、チャラチャラした格好していないもん。
誰だろう。
誰、この前お母さんと一緒にいたひバシンッ! ごめんなさい。ちなみに、顔は殴られないのだ。
友達に三回、友達のお母さんにも二回、マユちゃんのお母さんこの前外で「見たよ」って言われちゃった、えへへ。
お母さんは、もうほとんどおうちから居なくなりました。まぁ、お母さんとお父さん、顔を合わせれば即効で罵りあいをするので、ぶっちゃけ、今のほうが平和でした。お母さんがいないおかげで、私、家事が出来るようになりました。料理も出来るんだよ。私の卵焼き、もの凄く美味しいんだよ。他の友達、料理とかお洗濯、皆お母さんにやってもらっているんだってー。あはは、子供だね。私のほうがずっと偉いよ、そうだよね、お母さん。と、時々化粧品や、何か変な書類を捜しにきたお母さんに言うと、キモチワルイナーと、蹴られた。寄ってこないで、ウザいから。うん、はーい。
なんで?
私は、お母さんと一緒に買い物に行くことが大好きでした。近くのスーパーや、大きなデパートに家族で行く時も、私は必ずお母さんと一緒にお買い物をしていました。お父さんは、私と一緒に行動したかったみたいですけど、私はお母さんが大好きで、お母さんと買い物に行くのが大好きなので、お父さんと行動することはありえませんでした。だから、必然的に、三人で行動することが多かったです。三人、家族仲良くお買い物をしていました。お母さんは、買い物をする時は絶対に手を握ってくれて、ぎゅっと、それはとても暖かかったです。
でも、もうそれはありえないのです。
私の家は、あまり大きくなかったです。でも部屋は個別にありました。私は三年生の頃から、一人で寝るようにしました。だけど、夜って、昼間の家と違い、とても恐いんです。見慣れているはずの家具が、お化けになって、私を食べてしまうかもしれません。そういう話は好きだったけど、やっぱり恐いの。だから、夜、眠れなくなった時は、勇気を振り絞って部屋から抜け出ると、早足でお母さんが寝るベッドにもぐりこみます。「もうー、また?」と言いながら、お母さんは優しく私を引き寄せると、一緒に眠ってくれます。そうすると、もの凄く安心しました。心の底からお母さんの温度が伝わってきて、途端に寝てしまうのです。そして、朝起きた時に、布団にお母さんの温もりが残っていて、そこでゴロゴロするのが、好きでした。
今は、もう温度なんて無い。とても冷たい。ねぇ、今はお母さん、今は、誰と一緒に寝てるの?




