第34話 まだまだ売れる商品あるかも?
昼を過ぎても、客足は途切れなかった。
初日のように店の外まで長い列ができるほどではないものの、一組帰ればまた一組といった具合で、店内には常に何人かの客が残っている。
しかも最近は、明らかに見覚えのない顔が増えてきた。
「今日、村の人じゃない人も結構いますよね」
2階の集中レジにいた高橋が、会計の合間にそう言った。
「やっぱり?」
「服装が違う人もいますし、聞いたことない村の名前を言ってた人もいました」
どうやら口コミは、レーヴァン村の中だけでは収まっていないらしい。
昨日あたりからその傾向は感じていたが、近くの村や集落からも客が来始めていると考えてよさそうだった。
商圏が少しずつ広がっている。
それ自体は、かなりいい流れだ。
ただし、売れる商品が増えてきたことで、別の問題も見え始めていた。
「……狭くなってきたな」
俺は2階の催事スペースを見渡した。
最初はかなり広いと思っていた場所だが、食品や日用品に加えて、乾電池、LEDランタン、モバイルバッテリー、ポータブル電源、小型扇風機など、客の反応を見ながら商品を増やしてきた結果、少しずつ余裕がなくなっている。
「まだ置けますけどね」
高橋が言う。
「置けるのと、見やすいのは別だからな」
「それはそうですね」
棚を増やせば商品自体はまだ置ける。
けれど、ただ詰め込んでしまえば客が商品を探しにくくなり、売場としては逆に使いづらくなる。
そんなことを考えているうちに、ふと昨日のドイルさんの反応を思い出した。
マットレスを見た時の、あの食いつき方だ。
あそこまで喜ぶということは、まだ俺たちが売れると気づいていない商品が、この店の中にはかなり残っているんじゃないだろうか。
「高橋」
「はい?」
「ちょっと吉田借りてもいい?」
高橋が少しだけ首を傾げた。
「いいですけど、どこ行くんです?」
「3階」
「また何か探すんですか?」
「そのつもり」
高橋は苦笑した。
「店長、宝探しみたいになってません?」
「売れたら宝だから」
「否定できないですね」
◇
吉田を呼び、俺たちは2人で3階へ上がった。
普段は客を入れていないこのフロアには、白物家電や調理家電だけでなく、家具や寝具、それにアウトドア用品まで並んでいる。
改めて眺めてみると、本当に家電量販店とは思えない品揃えだ。
まあ、そのアウトドアコーナーを広げたのは俺なんだけど。
「今日は何探すんです?」
吉田が聞く。
「売れそうな物」
「範囲広すぎません?」
「昨日のマットレスがあっただろ」
「ああ」
「あれ見て思ったんだよ。俺たち、まだかなり見落としてるんじゃないかって」
吉田も周囲の売場を見回した。
「まずは寝具ですか?」
「そうだな」
俺たちは布団や枕、毛布、敷きパッドなどを順番に見ていった。
日本ではどれも普通の商品だが、この世界の一般家庭が普段どんな寝具を使っているのか、俺たちはまだちゃんと確認できていない。
だから、この世界には布団がないとか、柔らかい寝具が珍しいとか、勝手に決めつけることはできなかった。
「とりあえず、見せて反応を見るくらいかな」
「そうですね」
実際に触ってもらえば、軽さや柔らかさ、厚みの違いは伝わる。
ただ、マットレスほど用途が分かりやすいわけではないので、いきなり大量に持っていく必要はない。
「この辺は見本だけ持ってこう」
「布団と枕ですか?」
「あと毛布も少し」
「了解です」
次に、俺たちは家具売場へ移動した。
テーブルや椅子、収納棚に組み立て家具と、こちらも商品は山ほどある。
「家具はどうでしょうね」
吉田が言う。
俺も同じことを考えていた。
この世界にはドイルさんのような木工職人がいて、普通に家具を作っている。
そう考えると、日本の量産家具を何でもかんでも持ち込めばいいという話ではない。
値段では勝てたとしても、現地の職人と真正面から競合する商品ばかり売るのは、少し違う気がした。
「普通の家具は、現地の職人さんとぶつかりそうだな」
「ですよね」
「でも、こういうのはどう?」
俺は折りたたみテーブルを持ち上げ、その場で脚を畳んでみせた。
「持ち運べるやつですね」
「そう。椅子も同じ」
折りたたみチェアなら軽いうえ、使わない時は小さくできる。
普通の家具とは用途が違うし、旅や荷物の運搬にも向いている。
「これも候補だな」
「持っていきます?」
「うん。いくつか」
そして最後に、俺たちはアウトドアコーナーへ入った。
テントや寝袋、キャンプマット、ランタン、クーラーボックス、ポータブル電源、ソーラーパネル、アウトドアチェアに簡易テーブルと、日本なら休日のキャンプやバーベキュー、車中泊で使うような商品が並んでいる。
ところが、この世界の生活を思い浮かべながら見直してみると、同じ商品でも意味が少し違って見えてきた。
「……これ、こっちの人からしたらキャンプ用品じゃないよな」
吉田が俺を見る。
「どういうことです?」
俺は寝袋を手に取った。
「普通に旅道具じゃん」
「あ」
村から村へ移動し、街道を何日も進み、途中で野営する。
そういう移動が珍しくない世界なら、寝袋やマット、折りたたみ椅子は趣味の道具ではなく、普通に便利な旅道具として使える。
「これ、かなり相性いいかもしれないな」
吉田の表情も変わった。
「寝袋、持っていきます?」
「何個か」
「マットも?」
「何個か」
「テントは?」
俺は少し考えてから首を振った。
「今日はやめとこう。広げる場所もいるし、説明も必要だから」
いきなり全部を出すより、まずは分かりやすい商品から反応を見る方がいい。
俺たちは寝袋、キャンプマット、折りたたみチェア、折りたたみテーブルに、寝具の見本をいくつか加えて2階へ戻った。
◇
2階へ戻ると、高橋が商品を見て目を丸くした。
「何持ってきたんですか?」
「売れそうな物」
「また増えてるじゃないですか」
「まあまあ」
俺が寝袋を広げると、高橋は生地を触りながら中を覗き込んだ。
「これ、売れるんじゃないですか?」
「やっぱそう思う?」
「思います」
続けて折りたたみチェアを広げると、高橋は実際に座って感触を確かめた。
「これいいですね。軽いし」
「畳めるしな」
「旅する人には便利そうです」
その言葉を聞いて、やっぱり方向性は間違っていないと思った。
ただし、問題はやはり場所だった。
「全部並べるのは無理ですね」
「だよな」
そこで今回は見本だけを出し、残りの在庫は別の場所に置くことにした。
客が興味を示したら説明し、購入することになれば商品を持ってくる。
少し手間はかかるが、今の売場ならそれが一番現実的だった。
◇
反応は、思ったより早く出た。
最初に食いついたのは折りたたみチェアだった。
「これは、座る物か?」
「そうです」
俺が椅子を広げると、客は少し警戒しながら腰を下ろした。
何度か体重をかけてから立ち上がり、今度は椅子そのものを持ち上げる。
「軽いな」
「畳めますよ」
脚を折りたたんで薄くすると、客の表情がさらに変わった。
「これなら荷車にも積めるな」
どうやら気に入ったらしく、そのまま一脚売れた。
次に興味を示したのは、若い男だった。
「これは何だ?」
「中に入って寝る物です」
「中に?」
寝袋を広げ、ファスナーを開けて使い方を説明すると、男は中を覗き込みながらしばらく考えていた。
「毛布みたいな物か?」
「近いですね。でも、こっちの方が持ち運びやすいです」
そう言って収納袋に入れてみせると、さっきまで人が寝られる大きさだったものが、小さな筒状にまとまった。
それを見た瞬間、男の表情が明らかに変わった。
「……小さいな」
「旅には便利だと思います」
「毛布より小さくなるのか」
「なります」
どうやら、暖かさ以上に荷物の小ささが刺さったらしい。
旅をする人間にとって、持ち物の体積が減るというのは、それだけで十分な価値になる。
その男は寝袋を買い、続いてキャンプマットも何枚か売れた。
一方で、布団の反応は少し違った。
興味は持ってもらえるし、実際に触ってもらえば「柔らかい」「軽い」「厚い」と驚かれる。
ただ、その場で購入する人はいなかった。
「やっぱり、使い方が分かりにくいか」
俺が呟くと、吉田も頷いた。
「見慣れてない物ですからね」
マットレスほど目的が明確ではないし、そもそも現地で普段どんな寝具を使っているのか、俺たちが把握できていない。
ここは無理に売ろうとせず、もう少し調べてからでもいい。
「寝具はもうちょい調査だな」
「ですね」
それでも、寝袋とマットには十分な反応があった。
在庫を確認してみると、このままではそれほど長く持ちそうにない。
「追加しとくか」
「寝袋ですか?」
「うん。あとマットも少し」
吉田が数量を確認し、そのまま発注を進める。
これでまた一つ、売れる可能性のある商品が増えた。
◇
夕方になると、1階から渡辺の声がインカムに入った。
『店長』
「はい」
『ちょっと来てもらっていいですか?』
「何?」
少し間があった。
『魔導車です』
俺はすぐに立ち上がった。
「行く」
昨日、俺は渡辺が撮った写真で初めて魔導車を見た。
存在自体は知っていたが、実物を見るのはこれが初めてだ。
階段を下りて入口へ向かい、外を見た瞬間、思わず足が止まった。
「……でか」
昨日、写真で見た魔導車とは形が違っていた。
一回りどころではなく、かなり大きな車体で、頑丈な荷車をさらに大型化して、そのまま自走できるようにしたような見た目をしている。
木材と金属を組み合わせた車体には、地球の車では見たことのない部品がいくつも取り付けられていた。
当然ながら馬はつながれていないのに、それでも自力で走ってここまで来た以上、この世界では間違いなく車として使われているのだろう。
「昨日の人?」
俺が聞くと、渡辺は首を振った。
「違います。昨日来た人とは別です」
つまり、魔導車を持っている人間が少なくとも二組、この店まで来たことになる。
かなり珍しい乗り物ではあるらしいが、世界に一台しかないような特別な物ではなく、資金や立場のある人間なら所有できる程度には普及しているのかもしれない。
やがて魔導車から数人が降り、その中の一人が店へ入ってきた。
40代くらいに見える男だった。
そして、こちらへ来るなり真っ先に口にした。
「とても安い光る魔道具はどれだ?」
やっぱり、それが目的だったらしい。
昨日来た客とは別人なのに同じ物を探しているということは、LEDランタンの噂はかなりの速さで広がっている。
「こちらです」
俺はLEDランタンを見せ、その場で点灯させた。
男は明るさを確認したあと値札を見て、さらに驚いたように目を見開いた。
「本当にこの値段なのか?」
「はい」
「魔石は?」
「使いません」
「交換は?」
「乾電池なら交換が必要です。充電式なら、電気を入れればまた使えます」
そこからは、これまで何度かやってきたのと同じように、モバイルバッテリーやポータブル電源、ソーラーパネルを順番に見せながら仕組みを説明した。
男は一つずつ真剣に質問し、値段の安さだけでなく、魔石を消費せず何度も使えるという点にもかなり興味を示していた。
ただ、昨日の客とは少し買い方が違った。
「これは?」
「小型の冷蔵庫です」
「こっちは?」
「扇風機です」
「これは何だ?」
「寝袋ですね」
今日出したばかりの商品まで見つけたらしい。
使い方を説明し、収納した状態も見せると、男は何度か持ち上げながら重さや大きさを確かめていた。
「これなら人数分積んでも場所を取らんな」
やっぱり、そこが一番分かりやすい利点になるらしい。
毛布を何十枚も積むより、収納袋に入れた寝袋を積んだ方が必要な場所はずっと少なくて済む。
魔導車で多人数が移動するなら、荷物の量を減らせること自体が大きな価値になる。
「何人くらいで移動されるんです?」
「多い時は40人ほどだ」
それだけの人数が移動するなら、寝具だけでもかなりの荷物になる。
男は少し考えたあと寝袋をまとめて注文し、その後も売場を歩きながら次々と商品を選び始めた。
買ったのは寝袋だけではない。
LEDランタンに大型のポータブル電源、大型のソーラーパネル、ポータブル冷蔵庫や扇風機、キャンプマットなど、今までこの世界の客に売れてきた商品をかなり幅広く選んでいく。
一つ一つの数量も少なくなく、どうやら自分一人で使うためではなく、魔導車で一緒に移動する人間全体の装備を揃えるつもりらしい。
そんな中、男が売場を見回しながらぽつりと言った。
「ここは、外で使える物が多いな」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中で別々に見えていた商品が一つにつながった。
LEDランタンも、ポータブル電源も、冷蔵庫も、扇風機も、ソーラーパネルも、今日出した寝袋やマットも、確かに電気や設備のない場所で使いやすい物ばかりだ。
俺は入口の外に停まっている魔導車へ目を向けた。
大きな車体には荷物を積む場所が十分にあり、屋根もかなり広い。
しかも、複数人が長距離を移動するために使われているとなれば、日本でいうところのキャンピングカーに近い使い方ができるんじゃないだろうか。
「……これって、キャンピングカーの発想そのまま使えるんじゃないか?」
思わず口にすると、男が首を傾げた。
「キャンピング?」
「いや、こっちの話です」
俺は魔導車を見ながら考える。
もし、あの広い屋根にソーラーパネルを取り付けることができれば、停車中だけでなく移動中にも発電できる可能性がある。
そこで作った電気をポータブル電源へ貯めておけば、夜はランタンを使い、食料は冷蔵庫で冷やし、暑い時には扇風機を回すこともできる。
「屋根って、物を載せたりできます?」
男が振り返った。
「載せられるが?」
「だったら、これを屋根に付けられるかもしれません」
俺は大型のソーラーパネルを指した。
「これを?」
「ただし、今すぐ取り付けられるとは言えません」
屋根がどの程度の重量に耐えられるのかも分からないし、走行中には風や振動も加わる。
固定方法を間違えて外れでもしたら危険なので、魔導車の構造を確認しないまま取り付けを約束することはできない。
「構造を見ないと分からないです。ただ、地面に置いて使うだけなら今すぐできます」
「屋根に付けられれば?」
「移動中や停車中にも発電できる可能性があります。少なくとも、毎回地面に広げる手間は減らせると思います」
男の表情が変わった。
「……それはいいな」
その反応を見ながら、やっぱり大事なのは商品の名前や売場ではなく、どう使えるかなんだと思った。
魔導車は、この世界の人間が作った技術だ。
ソーラーパネルやポータブル電源は地球の商品だが、どちらか一方だけで完結させる必要はなく、組み合わせることで新しい使い方が生まれる。
以前、神様が言っていたことを少しだけ思い出した。
俺たちがこの世界へ答えを持ち込むのではなく、何かを考えるきっかけになればいい。
もしかすると、こういう形もその一つなのかもしれない。
◇
結局、その客はかなりの量の商品を買っていった。
寝袋も人数分に近い数が動いたが、それだけが特別多かったわけではなく、ランタンやポータブル電源、ソーラーパネルなども含めて、全体としてかなり大きな買い物になった。
積み込みには渡辺だけでなく鈴木さんまで加わった。
鈴木さんは店の外へ出るなり、見慣れない大きな魔導車を見上げた。
「なんだこりゃ」
「魔導車らしいです」
「これが?」
「昨日とは別のやつです」
「また来たのかよ」
「また来ました」
鈴木さんはしばらく車体を眺めていたが、すぐに視線を商品の山へ移した。
「で、今度は何積むんだ?」
「いっぱい」
「雑だな」
「本当にいっぱいなんですよ」
「ほれ、ぼさっとしてねえで運べ」
「はいはい」
こういう時の鈴木さんは、とにかく仕事が早い。
渡辺と手分けしながら商品を台車に載せ、魔導車の積載場所を確認しつつ、重い物から順番に効率よく積み込んでいく。
最後の商品を積み終えたところで、男が俺のところへ戻ってきた。
「また来る」
「ありがとうございます」
「次は、屋根に付けられるか見てもらいたい」
「構造を確認してからですね。取り付けられるかどうかは、それを見てからになります」
「分かった」
やがて魔導車は店の前からゆっくり走り出した。
地球の車のようなエンジン音ではなく、低く響く独特の振動音を残しながら、そのまま街道の向こうへ消えていく。
俺はその後ろ姿を見送りながら、この世界の商品や技術とうちの商品が、少しずつ混ざり始めていることを実感していた。
単に日本の商品を安く売るだけではなく、この世界にすでにある物と組み合わせれば、俺たちが想像していなかった使い方が生まれる。
そう考えると、まだ店の中に眠っている商品の見え方まで、少し変わってきた気がした。
◇
営業が終わり、木村が今日の売上をまとめた。
「今日の売上、5,214,860円です」
「520万か」
昨日は約650万だったので、今日はそこから約130万下がったことになる。
しかも今日は、最後に魔導車の客がかなりの量を買っているため、その売上を含めても520万ということは、通常の客だけを見れば開店直後ほどの勢いはなくなってきている。
「やっぱ落ちてきたな」
俺が言うと、山本は少し考えてから首を横に振った。
「でも、悪い下がり方ではないと思います」
「そう?」
「今日、村の人だけじゃなかったですよね」
確かに、高橋も言っていた通り、今日はレーヴァン村では見たことのない客が何組も来ていた。
開店直後の物珍しさやまとめ買いは落ち着き始めている一方で、噂が周辺へ広がり、店へ来る地域そのものは少しずつ広がっている。
「最初の数日みたいに、毎日800万や1,000万近く売れ続ける方がおかしいですよ」
「まあ、それはそうなんだけど」
開店直後は、今まで見たことのない商品をまとめて買う客が多かった。
必要な物を一通り揃えてしまえば、同じ客が毎日同じように買うわけではないので、売上が少しずつ落ち着いてくるのは当然と言えば当然だ。
「累計は?」
俺が聞くと、木村が画面を確認した。
「122,117,290円です」
目標は150,000,000円なので、残りは27,882,710円になる。
「あと2,800万弱か」
山本がさらっと言った。
「余裕でしょうね」
「ずいぶん強気だな」
「だって、今日でも520万ですよ?」
確かに、数字だけを見ればまだ十分すごい。
ただし、このまま同じ商品を同じ売り方で並べ続けているだけでは、いずれ売上は頭打ちになるはずだ。
今日だって、3階へ行かなければ寝袋を売場へ出していなかったし、あの客が来なければ魔導車とソーラーパネルを組み合わせる発想も出てこなかった。
そう考えると、この店にはまだ俺たち自身が価値に気づいていない商品が、かなり残っているのかもしれない。
日本では家電、家具、寝具、アウトドアと売場ごとに分類しているが、この世界の客にとっては、どの売場の商品だったかなんて関係ない。
自分たちの生活で使えるか、今より便利になるか、旅先へ持っていけるか。
客が見ているのは、たぶんそういう部分だ。
俺は2階の売場へ目を向けた。
今日出した寝袋は少しだけ残っていて、追加分の発注もすでに済ませてある。
「まだ、俺たちが売り方に気づいてない商品ありそうだな」
山本が笑った。
「店長、また探す気ですね」
「もちろん」
今まで売れなかった商品があるんじゃない。
まだ俺たちが、どう売ればいいのか分かっていない商品があるだけなのかもしれない。
そう思うと、この店にはまだまだ売れる物がありそうだった。
次回は明日21時公開予定




