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第29話 神様の土地

「1,587人……」


山本がノートへ数字を書き込みながら、確認するようにもう一度呟いた。


俺もまだ、その人数を完全には飲み込めていない。


商店が並び、宿屋があり、道には魔道具の街灯まで置かれている。


実際に村の中を見たあとなら納得できなくもないが、それでも人口1,500人を超える場所を普通に村と呼ぶ感覚には、まだ慣れそうになかった。


窓の外へ目を向けると、集会所の前にはさっきより人が増えている。


俺たちを見に来ただけの人もいるだろうが、トラックに商品を積んできたことも、すでに村の中で広まっているらしい。


「店長、先に販売の準備してきましょうか?」


外の様子を見ていた田中が立ち上がった。


「そうだな。頼める?」


「はい。トラックの横で大丈夫ですよね?」


俺はロイド村長へ確認する。


「広場の端を少し使わせてもらっても大丈夫ですか?」


「もちろんです。荷車を置いている辺りなら問題ありませんよ」


「ありがとうございます」


田中はハンディターミナルとモバイルレジを持って立ち上がった。


「持ってきた分だけでいいからな。今日は何が欲しいのかを見るのが目的だから」


「調査販売でしたね」


「そう。出張販売じゃないから」


「その違い、まだよく分かってませんけど」


田中は笑いながら集会所を出ていった。


扉が開いた瞬間、外から子供たちの声が聞こえてくる。


どうやらトラックの周りには、すでに何人か集まっているらしい。


「田中さん、一人で大丈夫ですか?」


山本が尋ねる。


「準備だけなら大丈夫だろ。販売を始める時には俺たちも行くよ」


「そうですね」


これで、しばらくはこちらの話に集中できる。


俺は改めてロイド村長へ向き直った。


聞きたいことは山ほどある。


物価や仕事、賃金、働く時間、休日、町までの距離。


今後レーヴァン村の人をカワダ電器で雇う可能性を考えるなら、この世界の当たり前を知らないまま条件を決めるわけにはいかない。


ただ、その前にひとつだけ、ずっと気になっていたことがあった。


「村長さん。最初に、かなり大事なことを聞いてもいいですか?」


「なんでしょう」


俺は少し言葉を選んでから尋ねる。


「うちの店が建っている場所って、誰の土地なんです?」


隣で山本のペンが止まった。


考えてみれば、今まで誰も確認していない。


こちらの世界にも土地の所有という考え方があるなら、俺たちは知らないうちに誰かの土地を使って営業している可能性がある。


「もし所有者がいるなら、地代とか、その辺もちゃんとしないとまずいですよね」


俺が言うと、山本も頷いた。


「長く営業するなら、早めに確認しておいた方がいいですね」


ところが、ロイド村長は不思議そうな顔をした。


「地代ですか?」


「はい」


「それは必要ありませんよ」


「……必要ない?」


「ええ。あそこは誰かが所有している土地ではありません」


「村の土地でもないんですか?」


「違います」


「じゃあ、領主とか国とか?」


「それも違いますな」


俺と山本が顔を見合わせた。


「じゃあ、誰の土地なんです?」


ロイド村長は、ごく当たり前のことを説明するように答えた。


「神様の土地です」


思わず黙ってしまった。


「……神様?」


「はい。あなた方の店がある辺りは、昔からそう呼ばれています」


冗談を言っているようには見えない。


むしろ、こちらが知らないことの方を不思議に思っているようだった。


「詳しく聞いてもいいですか?」


「もちろんです」


ロイド村長は少し姿勢を整えてから、昔話を思い出すように話し始めた。


「あなた方の店がある辺りは、昔から誰も自分の土地にしてはいけないことになっています。家を建てることも、畑にすることもありません」


「ずっと空けてあるんですか?」


「はい。私が子供の頃から何もありませんでしたし、父の代も、その前も同じだったと聞いています」


なるほど。


カワダ電器の周囲に家も畑もなく、妙に開けた場所が残っていたのには理由があったらしい。


たまたま何もない場所へ出てきたのではなく、そもそも昔から誰も使わないようにしていた場所だったわけだ。


山本が尋ねる。


「どうして神様の土地と呼ばれているんですか?」


「昔から、あそこには時折、神様が何かを送ってくると言われているからです」


その言葉で、一気に意識が話へ向いた。


「……送ってくる?」


「はい。物であったり、人であったり、その時によって違ったと伝えられています」


「建物みたいなものが来たことも?」


「大きなものが現れたという話も残っています」


俺と山本は、ほとんど同時に顔を見合わせた。


聞けば聞くほど、俺たちの状況に近い。


少なくとも、この場所で何かが突然現れたのは、今回が初めてではないらしい。


「最近もあったんですか?」


「いいえ。私が生まれてからは一度もありません」


「じゃあ、かなり珍しい?」


「そうですね。父も実際には見たことがありません。ただ、祖父が子供の頃に一度あったという話は聞いています」


毎年や数年ごとに起こるようなものではないらしい。


人間の一生の中で一度見るかどうか、それくらいの間隔なのかもしれない。


「その時、何が来たかは分かるんです?」


「そこまでは。私も祖父から聞いた昔話ですから」


詳しい記録が残っていないのか、それとも長い年月の中で細かな部分が失われたのかは分からない。


それでも、俺たちにとっては十分すぎる情報だった。


「送られてきたものは、その後どうなるんです?」


俺が尋ねると、ロイド村長は少しだけ表情を変えた。


「役目が済めば、元いた場所へ帰ると言われています」


「……帰る?」


思わず聞き返した。


「はい」


それまで動いていた山本のペンも止まる。


帰る。


その言葉だけが、妙に頭の中へ残った。


異世界へ来てから、帰れるかどうかを考えなかったわけではない。


ただ、これまでは食事や寝る場所、営業、在庫、スタッフの生活と、目の前の問題を処理するだけで精一杯だった。


帰る方法について考えたところで、手がかりなんて何ひとつなかった。


それが今、初めて俺たち以外の人間から「帰る」という言葉が出てきた。


「その役目って、何なんです?」


「それは分かりません」


「ですよね……」


さすがに、そこまで簡単に答えが出るはずもない。


何のために送られたのか、誰が決めているのか、いつ役目が終わるのか。


聞きたいことは一気に増えたが、今ここで考え続けても答えは出ない。


「その話って、村ではみんな知ってるんですか?」


山本が尋ねた。


「年配の者なら知っているでしょう。ただ、若い者は、あの土地を勝手に使ってはいけないということしか知らない者も多いと思います」


「だから地代も取らない?」


「はい。神様が使う土地から地代を取ってはいけない。それも昔から伝えられている決まりです」


かなり具体的な決まりだ。


もしかすると、大昔に実際に地代を取ろうとした人間でもいたのかもしれない。


「じゃあ、俺たちは土地代を払わなくていい?」


「必要ありません」


「ずっとですか?」


「あなた方がそこにいる間は」


ありがたい。


異世界で地代まで請求されたら、どう経理処理すればいいのか全く分からなかった。


「ただし、商売をするのであれば税は必要です」


「ですよね」


俺が即答すると、山本が小さく笑った。


「そこは納得早いですね」


「商売して税金までゼロって言われた方が怖いだろ」


土地代は取らないが、この地域で商売をする以上は普通に税がかかる。


その方が、家電量販店の店長としてはむしろ理解しやすい。


「税率や納め方については、あとで詳しく教えてください」


「もちろんです」


山本がノートへ新しい項目を書き加える。


ここまでの話だけでも、今日来た意味は十分にあった。


ただ、もうひとつ気になることがある。


「そういえば、店の周りって何もない割に、道はちゃんと残ってますよね」


ロイド村長が頷いた。


「神様の土地へ向かうための道ですから」


「今でも使われてるんですか?」


「もちろんです。何も送られていない時でも、道をなくしてはいけないと昔から言われています」


それで納得した。


何十年も何も起きない場所なのに、道だけは草に埋もれず残っていた。


「それに、あの道はレーヴァン村だけのものではありません」


「どういうことです?」


「あなた方の店を挟んで、反対側にも別の村があります。もう少し離れた場所にも、いくつか集落がありますよ」


俺は山本を見る。


「……だからか」


「何がです?」


「来る途中、反対方向から何人かとすれ違っただろ」


歩いている人や自転車、荷物を積んだ三輪車。


俺たちがレーヴァン村へ向かう途中、その反対へ進んでいく人と何度かすれ違っていた。


「もしかして、あの人たち」


「おそらく、カワダデンキへ向かっていたのでしょう」


ロイド村長が普通に答えた。


「もう反対側の村にまで広まってるんですか?」


「珍しい店が現れたという話は、かなり早く広まっていますからな」


山本が少し考える。


「最近、お客様の顔ぶれが変わってきたのって……」


「ああ。それだな」


営業初日は、レーヴァン村の人たちが中心だったのだろう。


最近は見覚えのない客や、少し雰囲気の違う人も増えている。


単純にリピーターが増えただけではなく、周辺の村からも人が来始めていたらしい。


「……商圏、もう広がってたのか」


「こっちが調べに来る前からですね」


「そう言われると、ちょっと悔しいな」


思わず苦笑する。


こっちが何かを仕掛けるより先に、噂の方が走っていたらしい。


「もうひとつ気になってるんですけど」


俺は窓の外へ目を向けた。


村へ来る途中、畑仕事をしている人も、道を歩いている子供も、誰一人として外を怖がっている様子がなかった。


でも、この世界には魔物がいるはずだ。


「この辺りって、魔物は出ないんですか?」


その質問に、ロイド村長は少し意外そうな顔をした。


「この辺りには出ませんよ」


「出ない?」


「ええ。神様の土地の周りには、昔から魔物が近づかないんです」


俺と山本は顔を見合わせた。


「どのくらいの範囲まで?」


「少なくとも、レーヴァン村はすべてその中に入っています」


「村全部?」


「はい。この辺りで魔物を見ることはありません」


ようやく、これまで安全だった理由が分かった。


異世界へ来てから5日。


カワダ電器の周囲で魔物らしいものを一度も見ていない。


運が良かったわけではなく、そもそも魔物が近づかない場所だったのだ。


「じゃあ、店の周りが安全だったのも……」


「神様の土地の近くだからでしょうな」


「この範囲の外は?」


俺が尋ねると、ロイド村長はごく普通のことのように答えた。


「魔物は出ますよ」


「……普通に?」


「普通に出ます」


俺と山本は、もう一度顔を見合わせた。


異世界へ来た初日、俺は店の外を少し調べに行こうかと思ったことがある。


結局、何があるか分からない状態でスタッフを外へ出すのは危険だと判断し、敷地外への探索はやめた。


「あの時、適当に歩き回らなくてよかったな……」


「本当にそうですね」


山本も真顔で頷いた。


知らないまま安全な範囲を越えていたら、普通に魔物と遭遇していた可能性があるらしい。


「だから宿屋が多いんですか?」


山本が尋ねる。


「旅人も利用しますが、冒険者が多いですね」


「冒険者?」


この世界に来てから初めて、いかにも異世界らしい職業を聞いた気がする。


「神様の土地の周りには魔物が近づきませんから、レーヴァン村を拠点にして周辺へ向かう冒険者が多いんです。商店や宿が多いのも、その影響があります」


なるほど。


人口が多く、宿屋や商店が多い理由が少しずつ一本につながってきた。


レーヴァン村は単に大きな農村というわけではなく、魔物の出ない安全な土地を利用して発展してきた拠点でもあるらしい。


その時、集会所の扉が開き、田中が顔を出した。


「店長、準備できました」


「もう?」


「はい。何人か買いたいって待ってます」


「じゃあ行こうか」


俺はロイド村長へ頭を下げる。


「話の続き、あとでもいいですか?」


「もちろんです」


俺と山本は田中と一緒に広場へ向かった。


トラックの横には簡単な販売スペースが作られていて、その周りには十数人ほどの村人が集まっていた。


顔を見れば、なんとなく覚えている人もいる。


考えてみれば、レーヴァン村の住民のかなりの人数は、ここ数日のうちに一度はカワダ電器へ来ている。


だから村で商品を広げたからといって、初めて見るものばかりというわけではない。


「あ、テンチョー」


一人の女性が俺を見ると、気軽に手を上げた。


「この前買った明かり、もう一つ欲しかったの」


「LEDランタンですね。今日は持ってきてますよ」


「じゃあ一つお願い」


別の男性も、並べてある商品を眺めながら声をかけてくる。


「前に店で見た、もっと大きい明かりはないのか?」


「ああ、大きい方ですか。今日は一部の商品しか持ってきてないんですよ」


「店にはある?」


「あります。まだ在庫もありますよ」


「なら、また行くか」


「ぜひ来てください」


こんなやり取りが何度も続いた。


「前に買った菓子は今日はないの?」


「今日は別の種類だけなんです」


「じゃあ今度、店で買うよ」


「お待ちしてます」


俺が思っていた調査販売とは、少し違う。


村で商品を紹介するというより、店を知っている人たちが、近くで売っているからついでに買っていく感じだ。


むしろ、持ってきていない商品の方を何度も聞かれる。


「そういえば、あの大きい箱はないのか?」


別の客が尋ねてきた。


「大きい箱?」


「明かりにも使えて、ほかの物にも力を送れるやつだ」


ポータブル電源のことらしい。


「今日は持ってきてないですね。重いので」


「店にはあるのか?」


「ありますよ」


「なら、明日にでも見に行く」


売れた商品そのものより、こういう会話の方が調査としては価値がありそうだ。


一度店へ来た人が何を覚えているのか。


何を気にしながら買わずに帰り、そのあと何が欲しくなったのか。


普段の売場だけでは見えにくかった部分が、少しずつ分かってくる。


もちろん、全員が来店経験者というわけではない。


列の外側で商品を眺めていた男性が、隣にいた知り合いらしい人へ尋ねた。


「これが、あの店の品か?」


「ああ。俺も昨日行ってきた。でかい店だぞ」


「そんなにか?」


「一度見に行った方がいい。食い物も道具も、色々ある」


俺は口を挟まず、その会話を聞いていた。


こちらから宣伝するより、実際に来た人から聞いた方がよほど説得力がある。


別の場所では、すでにLEDランタンを買ったらしい女性が、まだ店へ来たことのない人へ使い勝手を説明してくれていた。


「……俺たち、いらなくない?」


思わず田中へ言うと、田中が笑った。


「口コミの方が強いですね」


「ありがたいけど、ちょっと複雑」


持ってきた商品は最初から少量に絞っていたので、それほど時間をかけずに数が減っていった。


ただ、今日の目的は売り切ることではない。


どの商品を欲しがるのか。


店で見た商品のうち、何を覚えているのか。


そして、まだ来店していない人がどのくらいいるのか。


その辺りを知ることが目的だ。


販売を終える頃には、持ってきた商品の売れ方よりも、「今日は持ってきていない物を聞かれた回数」の方が気になっていた。


「今日はここまでです」


田中が声をかけると、周囲から何人かが頷いた。


「また店にも行くよ」


「今度は大きい方の明かりも見せてくれ」


「お菓子ももっと置いといてね」


「はい。店なら色々ありますので、また来てください」


自然とそんなやり取りになった。


売りに来たというより、店への案内所みたいになっている。


「調査販売としては、かなり良かったんじゃないですか?」


山本が言う。


「うん。売れた数より、聞かれた商品の方が参考になるかも」


「店に戻ったらまとめます?」


「頼む。次の品揃えにも使えそう」


片付けを終え、俺たちは再び集会所へ戻った。


ロイド村長は、先ほどと同じ場所で待っていてくれた。


「お待たせしました」


「ずいぶん人気ですな」


「店に来たことのある人が多かったみたいです」


「この村からは、ここ数日かなりの人数がそちらへ行っていますから」


やっぱりそうだったらしい。


そこから改めて話を続けた。


レーヴァン村の仕事は農業だけではなく、商店や職人、宿屋など幅広い。


冒険者が多く集まるため、装備の修理や食料の販売、宿泊に関わる仕事も多く、近隣の村との行き来もかなり頻繁だという。


山本のノートは、話を聞くたびにどんどん埋まっていった。


ただ、賃金や労働時間については仕事ごとの差が大きく、今日一度聞いただけで簡単に整理できるものではなかった。


「この辺りは、もう少し詳しく聞いた方がよさそうですね」


山本がノートを見ながら言う。


「ああ。採用条件を決めるなら、適当に平均だけ聞いて終わりにはできないな」


高すぎる給料を出せば、村の仕事から人を一気に奪うかもしれない。


だからといって安すぎれば、こちらが一方的に得をするだけになる。


日本の感覚で普通だと思う条件を、そのまま持ち込めばいいという話ではなかった。


気がつけば、窓の外はすっかり夕方になっていた。


「今日は、このくらいにしておきますか」


俺が言うと、ロイド村長も頷いた。


「そうですな。まだ聞きたいことがあるのでしたら、明日また来られるといいでしょう」


「いいんですか?」


「もちろんです」


ありがたい。


一日で全部を聞こうとする方が無理だった。


「でしたら、その前に夕食を食べていきませんか?」


「夕食?」


「せっかく来ていただいたのです。何も出さずに帰すわけにもいきません」


俺は山本と田中を見る。


二人とも断る理由はなさそうだった。


「じゃあ、お言葉に甘えて」


その日の夕食は、集会所の近くにある大きな家でいただくことになった。


出てきたのは焼いた肉と野菜の煮込み、黒っぽいパン、それに豆を使ったスープだった。


見た目は素朴だが、どれもいい匂いがする。


「いただきます」


肉を一口食べる。


「……うまい」


思わず口から出た。


山本が笑う。


「なんで驚いてるんですか?」


「いや、もっと独特な味を想像してた」


「それ、かなり失礼ですよ」


塩気は少し控えめだが、肉にも野菜にもちゃんと味が染みている。


ここ数日、レトルトや冷凍食品が多かったせいか、手作りの温かい料理が妙にうまく感じた。


「これ、何の肉なんです?」


田中が尋ねる。


ロイド村長が答えた。


「グラン鳥です」


聞いたことのない名前だ。


俺は少し迷ってから尋ねる。


「……魔物じゃないですよね?」


山本が呆れたようにこちらを見る。


「店長」


「いや、気になるだろ」


ロイド村長は楽しそうに笑った。


「家畜ですよ」


よかった。


異世界で初めて食べる村の料理が、いきなり魔物料理ではなかった。


食事中も話は自然と続いた。


今度は仕事の話だけではなく、村の祭りや季節、近くの町、旅人や冒険者の話など、昼間の聞き取りとは少し違うことも聞けた。


こういう場だからこそ分かることも多い。


気がつけば外はすっかり暗くなり、そろそろ戻らなければ店の方にも心配をかける時間になっていた。


「今日はありがとうございました」


俺たちは席を立つ。


「明日も来ますので、今日の続きを聞かせてください」


「お待ちしております」


ロイド村長が笑う。


ミアと父親も見送りに来てくれた。


二人はそのままレーヴァン村へ残り、俺たち3人はトラックへ乗り込む。


昼間と同じ道を戻るだけなのに、来た時とは景色の見え方が少し違っていた。


神様の土地と呼ばれる場所があり、そこには昔から時折、何かが送られてくるという。


役目を終えれば元いた場所へ帰るとも伝えられている。


その周囲には魔物が近づかず、レーヴァン村まで安全な範囲に入っている一方で、その外へ出れば普通に魔物がいる。


店を挟んだ反対側にも別の村があり、そこからもすでにカワダ電器へ客が来始めていた。


たった一日で、店の外の世界は一気に広がった。


それでも、分かったことより分からないことの方がまだ多い。


「明日も忙しくなりそうですね」


助手席側から山本が言う。


「ああ」


「店の営業もありますよ」


「分かってるよ」


俺は前を見ながら、小さく笑った。


明日も店を開ける。


そして、またレーヴァン村へ来る。


俺たちの商圏開拓は、まだ始まったばかりだった。

次回は明日21時公開予定


ストックがなくなりましたので、しばらくは毎日1話追加します

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