第94話 聖女ソフィア
大聖堂の見学を終えた後。
サンセリテはシャルロットとエレナを応接室へ案内した。
「もう一人、ぜひお会いいただきたい方がおります」
そう言って神官へ目配せをする。
しばらくすると、扉が静かに叩かれた。
「失礼いたします」
部屋へ入ってきたのは、一人の若い女性だった。
美しい金色の髪。
澄み渡る青い瞳。
純白の聖衣を身にまとったその姿は、優しさと気品に満ちている。
現代最高峰の光魔法使い。
教会の聖女、ソフィアだった。
ソフィアはシャルロットを見ると、嬉しそうに微笑んだ。
「シャルロットさん、お久しぶりです」
「大聖女生誕祭以来ですね」
シャルロットも笑顔で一礼する。
「お久しぶりです、ソフィアさん」
「またお会いできて嬉しいです」
サンセリテは穏やかに微笑む。
「今日はゆっくりお話ししていただければと思い、お呼びしました」
三人は席へ着き、お茶が運ばれてくる。
自然と話題は薬学へ移った。
薬草の調合。
地方医療。
治療法の工夫。
患者との向き合い方。
教会医療の現状。
二人は初めてじっくり語り合うとは思えないほど話が弾んでいく。
「そんな方法があったのですね」
ソフィアは目を輝かせる。
「私も、まだまだ勉強不足です」
シャルロットは優しく微笑んだ。
「知識に終わりはありません」
「私も毎日、新しい発見ばかりですよ」
ソフィアは何度も頷く。
「シャルロットさんとお話ししていると、本当に勉強になります」
隣で聞いていたエレナも笑みを浮かべた。
「二人とも、よう似ておる」
「人を救いたいという想いが、言葉の端々から伝わってくるわい」
サンセリテも静かに頷き、その様子を穏やかな眼差しで見守っていた。
しばらく談笑が続いた後。
ソフィアはふと、シャルロットの横顔を見つめる。
(不思議……。)
生誕祭でも感じたことだった。
一緒にいると、心が落ち着く。
もっと話していたい。
もっと教えていただきたい。
そんな気持ちが自然と胸に湧き上がってくる。
理由は分からない。
けれど、この人とはこれからも、ずっとお話ししていたい。
「シャルロットさん」
「また、お話ししていただけますか」
シャルロットは優しく微笑んだ。
「もちろんです」
「私もソフィアさんとお話しできて、とても楽しかったです」
その言葉に、ソフィアは花が咲くような笑顔を浮かべた。
こうして二人は、生誕祭の時よりもさらに親交を深めていく。
ソフィアはまだ知らない。
胸に芽生えたその不思議な親しみが、これから先、大きな運命へと繋がっていくことを。




