第92話 教皇との謁見
ルミエール大聖堂。
二人が正門をくぐると、受付に控えていた神官が丁寧に一礼した。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
シャルロットは大切にしまっていた封書を取り出し、神官へ差し出す。
「教皇猊下より招待状をいただきました」
神官は恭しく受け取り、封蝋を確認した。
教皇の紋章。
間違いなく本物だった。
「シャルロット・メシャント様でいらっしゃいますね」
「はい」
「こちらは付き添いのエレナさんです」
エレナも軽く一礼する。
「よろしく頼む」
神官は名簿へ目を通した後、不思議そうな表情を浮かべた。
「失礼ですが……」
「招待状をお送りしてから、まだ数日しか経っておりません」
「ルミエールまでは馬車でも一か月以上かかる距離ですが、どのようにお越しになられたのでしょうか」
エレナが静かに口を開く。
「我が、この娘を背中へ乗せて飛んできたのじゃ」
神官は一瞬きょとんとする。
「背中へ……?」
エレナは穏やかに続けた。
「我は紅竜じゃ」
「竜の姿となり、この娘をここまで送り届けた」
その言葉に、神官は目を見開いた。
「こ、紅竜様でいらっしゃいましたか!」
慌てて深々と頭を下げる。
「大変失礼いたしました」
「まさか竜族のお方とは存じ上げませんでした」
エレナは穏やかに笑う。
「気にするでない」
「我は今日は付き添いとして参っただけじゃ」
神官は姿勢を正し、改めて丁寧に一礼した。
「教皇猊下がお待ちしております」
「どうぞ、こちらへ」
二人は神官の案内を受け、大聖堂の奥へと歩いていく。
重厚な扉の前で神官が立ち止まり、静かに扉を叩いた。
「教皇猊下」
「シャルロット・メシャント様と、付き添いのエレナ様をお連れいたしました」
「お通ししてください」
穏やかな声が部屋の奥から返ってくる。
神官がゆっくりと扉を開いた。
教皇執務室。
執務机の前には、サンセリテが穏やかな笑みを浮かべて立っていた。
シャルロットは静かに一礼する。
「お久しぶりです、教皇猊下」
サンセリテも優しく微笑み返した。
「ようこそ、ルミエールへ」
「お待ちしておりました、シャルロット殿」
生誕祭以来となる再会。
教皇は改めて二人を温かく迎え入れるのだった。




