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元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです!?  作者: Atelier Lotus


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第89話 竜の背中

 教皇サンセリテからの招待状が届いてから数日後。


 『シャルロット薬舗』では、旅立ちの準備が進められていた。


 ルミエールまでは、馬車で一か月以上かかる。


 教皇自らの招待を、あまり長くお待たせするわけにはいかない。


 皆が移動手段について考えていた、その時だった。


「それなら、我が飛んで行けばよい」


 エレナが静かに口を開く。


「我が竜の姿になれば、数日でルミエールへ着けるじゃろう」


 その一言に、一同は顔を見合わせた。


 確かに、それが最も早く、最も安全な方法だった。


「それは良い考えですね」


 シャルロットが微笑む。


 エレナは満足そうに頷いた。


「うむ」


「任せておけ」


「必ず無事に送り届けよう」


 一方、薬舗には誰かが残らなければならない。


 ソレイユは力強く頷く。


「薬舗のことは僕たちに任せてください!」


 ルークも穏やかに笑った。


「留守は僕たちが守るから、安心して行ってきて」


 リュンヌは笑顔で拳を握る。


「帰ってきたら、お土産話をいっぱい聞かせてね!」


 アマリリスはふわりと宙へ浮かびながら嬉しそうに笑った。


「ルミエールかぁ!」


「楽しそう!」


「帰ってきたら、どんな街だったか教えてね!」


 その無邪気な言葉に、皆も自然と笑みを浮かべる。


 旅支度を終えたシャルロットは、見慣れた薬舗をゆっくりと見渡した。


 大切な仲間たち。


 温かな日常。


 守りたい居場所。


 そのすべてを胸に刻み、静かに頭を下げる。


「では、行ってきます」


 その言葉に、皆が笑顔で応えた。


「「「いってらっしゃい!」」」


 二人はフルールの街外れに広がる草原へ向かった。


 エレナは静かに目を閉じる。


 次の瞬間、その身体は眩い紅い光に包まれた。


 光が収まると、そこには巨大な紅竜が悠然と佇んでいた。


 陽光を浴びて輝く真紅の鱗。


 空を覆うほど大きく広げられた翼。


 威厳と美しさを兼ね備えたその姿は、まさに伝説に語られる竜そのものだった。


「さあ、乗るのじゃ」


 シャルロットは優しく微笑み、エレナの背へ乗る。


「よろしくお願いします、エレナさん」


「うむ」


「しっかり掴まるのじゃ」


 エレナは大きく翼を広げた。


「では、参るぞ」


 一度。


 二度。


 力強く羽ばたくと、その巨体はゆっくりと宙へ浮かび上がった。


 やがて紅竜は青く澄み渡る大空へ舞い上がる。


 眼下には、小さくなっていくフルールの街。


 そこには、シャルロットの帰りを待つ大切な仲間たちがいた。


 その景色を胸に刻みながら、シャルロットは静かに前を見据える。


 こうしてシャルロットとエレナは、王都ルミエールへ向け、新たな旅へと飛び立つのだった。

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