第88話 教皇からの招待状
大聖女生誕祭から数か月後。
秋の穏やかな午後。
『シャルロット薬舗』には、今日も多くの患者が訪れていた。
その時、一台の白い馬車が薬舗の前で静かに止まる。
馬車から降りてきたのは、ルミエール大聖堂の神官だった。
「シャルロット・メシャント様でいらっしゃいますか」
「はい、私ですが」
神官は丁寧に一礼すると、一通の封書を差し出した。
純白の封筒には、教会を象徴する紋章と赤い封蝋が押されている。
「教皇猊下より、お預かりしております」
シャルロットは驚きながら封を開く。
中には、一通の手紙が収められていた。
そこには、教皇サンセリテ直筆の文字が綴られている。
『シャルロット・メシャント殿
ぜひ一度、ルミエール大聖堂へお越しいただき、お話を伺いたく存じます。
ご都合の良い折に、お越しいただければ幸いです。
教皇 サンセリテ』
「教皇猊下から……」
シャルロットは思わず目を見開いた。
ソレイユも手紙を覗き込み、驚きの声を上げる。
「教皇猊下からのご招待ですか!?」
ルークも驚きを隠せない。
「まさか、本当に教会本部へ招かれるなんて……」
リュンヌは嬉しそうに笑った。
「すごいじゃん!」
「教皇様が会いたいって言ってくれてるんだよ!」
エレナも静かに頷く。
「行くべきじゃな」
「教皇自ら招待状を送られるなど、並大抵のことではない」
アマリリスは封書を見るなり、ぱっと笑顔になった。
「わぁ!」
「ルミエールへ行くんだね!」
「なんだかワクワクしてきた!」
くるりと宙を一回転する。
その無邪気な様子に、皆も思わず笑みをこぼした。
仲間たちの言葉を聞きながら、シャルロットは静かに手紙を見つめる。
(サンセリテさん……)
(私に、お話があるのですね)
百年ぶりに再会した旧友。
そして、その旧友からの正式な招待。
胸の奥には、小さな期待と緊張が入り混じっていた。
やがてシャルロットは、ゆっくりと顔を上げる。
「行ってみます」
「ルミエール大聖堂へ」
その言葉に、仲間たちは笑顔で頷いた。
こうしてシャルロットは、新たな旅立ちを決意する。
その旅の先には、大聖女の記憶。
魔王因子の封印。
そして、百五十年前から続く運命の真実が待っていた。
静かに巡り始めた運命の歯車は、ここから再び大きく動き始めるのだった。




