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元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです!?  作者: Atelier Lotus


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第83話 教皇来訪

 大聖女生誕祭、二日目。


 フルールの街は、昨日にも増して多くの巡礼者で賑わっていた。


 そんな街へ、一台の白い馬車が静かに到着する。


 扉が開き、一人の男性がゆっくりと姿を現した。


 白銀の長い髪。


 長い耳。


 穏やかで知性に満ちた瞳。


 教皇サンセリテ。


 その隣には、純白の法衣を身にまとった一人の女性が立つ。


 現代最高峰の光魔法使い――聖女ソフィアである。


「教皇猊下だ!」


「教皇様がお見えになったぞ!」


 街中に歓声が広がる。


 巡礼者や街の人々は次々と道を開け、深く頭を下げた。


 サンセリテは穏やかな笑みを浮かべ、一人ひとりへ静かに応えていく。


「今年も多くの方がお見えですね」


 ソフィアが微笑む。


「ええ」


「ここは、大聖女ミュゲ様がお生まれになった街です」


「毎年、多くの方が祈りを捧げるために訪れます」


 サンセリテは穏やかに頷いた。


 二人は祭りの様子を眺めながら、ゆっくりと街を歩く。


 その時だった。


 サンセリテの足が止まる。


 視線の先には、一軒の薬舗。


 木製の看板には、大きくこう刻まれていた。


 ――シャルロット薬舗。


「……シャルロット」


 サンセリテは静かに呟く。


 数か月前、ナルシス王国教会支部から届いた報告書。


 そこに記されていた受験者の名。


 ――シャルロット・メシャント。


 ソフィアも看板へ目を向けた。


「報告書にあった薬師さんのお店ですね」


「ええ」


 サンセリテは静かに頷く。


「少し立ち寄ってみましょう」


 二人は薬舗の扉を開いた。


「いらっしゃいませ!」


 ソレイユが元気よく迎える。


 店内では、シャルロットが巡礼者へ薬を手渡していた。


「こちらのお薬は、一日三回、食後にお飲みください」


「ありがとうございます」


 患者を見送ったシャルロットは、新たな来客へ視線を向ける。


 その瞬間、胸が大きく高鳴った。


(サンセリテさん……)


 百年前。


 まだ若き魔術師だった頃の面影を、そのまま残した懐かしい姿だった。


 その時、店内にいた巡礼者が驚きの声を上げる。


「きょ、教皇猊下……!?」


 別の客も慌てて立ち上がる。


「聖女ソフィア様まで!」


「教皇猊下と聖女様が、どうしてシャルロット薬舗へ……!?」


 店内は一瞬にして騒然となった。


 ソレイユも目を丸くする。


「きょ、教皇猊下……!」


 ルークも慌てて姿勢を正した。


「まさか、本当に教皇様がお見えになるなんて……」


 リュンヌは思わず背筋を伸ばし、エレナも静かに一礼する。


「教皇自ら薬舗を訪れるとは……」


「よほどのことじゃな」


 巡礼者たちは慌てて道を開け、深々と頭を下げた。


 その光景を見て、シャルロットは静かに目を見開いた。


(教皇様……)


(サンセリテさんは、教皇になられたのですね)


 胸の奥から、懐かしさが込み上げる。


 百年という長い時を越え、再び旧友と巡り会えた。


 それだけで胸が熱くなった。


 思わず「お久しぶりです」と声を掛けたくなる。


 けれど、その言葉を胸の奥へそっとしまう。


(今の私は、シャルロット・メシャント)


(もう、大聖女ミュゲではありません)


 たとえ前世の記憶を話したとしても、信じていただけるはずがない。


 それに、この人生はシャルロットとして歩んでいくと決めた。


 だから今は、一人の薬師として、この再会を迎えよう。


 シャルロットは穏やかな笑みを浮かべ、丁寧に一礼した。


「ようこそ、シャルロット薬舗へ」


 サンセリテもまた、穏やかに一礼する。


「初めまして」


「ルミエール大聖堂から参りました、サンセリテと申します」


「こちらは聖女ソフィアです」


 ソフィアも優雅に一礼した。


「初めまして」


「本日は、お邪魔させていただきます」


 百年という長い時を越え、二人は再び巡り会った。


 だが今はまだ、一人は薬師シャルロットとして、一人は教皇サンセリテとして。


 互いの胸に様々な想いを秘めたまま、新たな出会いが静かに始まるのだった。

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