第77話 雪祭り
季節は巡り、フルールの街にも本格的な冬が訪れていた。
一面を覆う白銀の雪。
屋根や街路樹には雪が積もり、吐く息は白く染まる。
そんな冬の訪れとともに、街では毎年恒例の雪祭りが開催されていた。
「雪祭りですよー!」
朝早くからソレイユが元気いっぱいに薬舗へ飛び込んでくる。
「今日はお店もお休みです!」
リュンヌは窓の外を眺めながら目を輝かせた。
「すごい雪!」
「雪遊びしたい!」
エレナは湯気の立つお茶を飲みながら微笑む。
「これほど雪深い土地は初めてなのじゃ」
「白一色の景色も、美しいものじゃな」
アマリリスは窓の外をくるりと飛び回る。
「雪だるま作ろう!」
「雪合戦もしようよ!」
ルークも苦笑する。
「遊ぶ気満々だね」
「もちろん!」
シャルロットは皆の様子を見て、思わず笑みを浮かべた。
「それでは、今日は皆で雪祭りを楽しみましょう」
「やったー!」
街へ出ると、祭りはすでに大勢の人で賑わっていた。
広場には大きな雪像が並び、職人たちが作り上げた氷の彫刻が陽の光を受けて美しく輝いている。
屋台からは温かなスープや焼き菓子の香りが漂い、人々は笑顔で祭りを楽しんでいた。
「シャルロット先生!」
「こんにちは!」
街の人々が次々と声を掛けてくる。
シャルロットも笑顔で応えた。
「こんにちは」
「今日は皆さんも楽しんでくださいね」
ソレイユは焼きりんごを頬張りながら幸せそうに笑う。
「おいしいです!」
リュンヌは大きな雪だるまを作り始め、子どもたちと一緒になって歓声を上げていた。
「もっと大きくするよ!」
「うん!」
エレナは雪像を眺めながら感心したように頷く。
「人間とは、雪でも芸術を生み出すのじゃな」
アマリリスは子どもたちと雪玉を投げ合いながら笑い声を響かせる。
「えーい!」
「きゃー!」
ルークも苦笑しながら雪玉を投げ返した。
「ちょっと、アマリリスさん!」
「本気で投げないでよ!」
「えへへ!」
祭りの笑い声が、雪景色の街へ響き渡る。
その光景を眺めながら、シャルロットは静かに微笑んだ。
(フルールにも、こんな素敵なお祭りがあるのですね。)
前世では、魔王討伐の旅に明け暮れ、ゆっくりと季節の行事を楽しむ余裕はなかった。
だからこそ、仲間たちと笑い合いながら過ごす何気ない一日が、何よりも愛おしく感じられる。
舞い落ちる雪。
人々の笑顔。
温かな街の賑わい。
シャルロットは胸いっぱいに冬の空気を吸い込み、小さく微笑んだ。
(これが、私の守りたかった日常なのですね。)
雪祭りは、まだ始まったばかり。
冬のフルールは、今日も笑顔で満ちあふれているのだった。




