第74話 優しいお兄さん
薬草教室が開かれてから数日後。
フルール孤児院では、『シャルロット薬舗』による健康診断が行われることになった。
「今日は皆さんの健康診断です」
「順番に診ていきますから、慌てなくて大丈夫ですよ」
シャルロットが優しく声を掛けると、子どもたちは元気よく返事をした。
「はーい!」
長机には診察道具が並べられ、シャルロットは一人ひとり丁寧に診察していく。
ルークは診察結果を記録し、リュンヌは子どもたちを順番に案内する。
エレナは待っている子どもたちへ穏やかに声を掛けた。
「皆、慌てなくてもよいのじゃ」
「すぐに順番が来るのじゃぞ」
一方、ソレイユは小さな子どもたちの手を引いて歩いていた。
「次はこちらですよ」
「怖くありませんからね」
泣きそうだった女の子も、ソレイユが優しく微笑むと安心したように笑顔になる。
「ありがとう、お兄ちゃん」
その一言に、ソレイユも照れくさそうに笑った。
「どういたしまして」
「また遊ぼうね」
その様子を見つめていたアマリリスは、嬉しそうに微笑む。
「ふふっ」
「ソレイユ、本当に立派になったわね」
「最初はシャルロットの後ろに隠れてばかりだったのに」
「今じゃ、ちゃんと誰かを安心させられるお兄さんになってる」
シャルロットも優しく頷いた。
「ええ」
「ソレイユさんは、毎日少しずつ成長していますから」
アマリリスはどこか誇らしげにソレイユを見つめる。
「なんだか、お姉ちゃんとして嬉しくなっちゃう」
ソレイユは照れくさそうに頬を掻いた。
「もう、アマリリスさん」
「褒めすぎですよ」
そのやり取りに、皆が笑顔になる。
診察が終わる頃には、子どもたちはすっかりソレイユへ懐いていた。
「ソレイユお兄ちゃん!」
「また来てね!」
「約束だよ!」
子どもたちに囲まれながら、ソレイユは満面の笑みで頷く。
「もちろん!」
「また遊びに来るよ!」
その姿を見つめながら、シャルロットは静かに微笑んだ。
(ソレイユさんも……。)
(この街で、自分だけの居場所を見つけられたのですね。)
青空の下。
子どもたちの笑い声に包まれながら、ソレイユは優しいお兄さんとして、また一歩成長していくのだった。




