第73話 薬草教室
収穫祭から数日後。
『シャルロット薬舗』は、以前にも増して多くの客で賑わっていた。
収穫祭で名を上げた影響もあり、薬草やポーションを求める人々が絶えない。
閉店後。
帳簿を眺めていたソレイユが、嬉しそうに声を上げた。
「シャルロットさん!」
「今月の利益、過去最高ですよ!」
ルークも思わず目を丸くする。
「こんなに利益が出たんだ……!」
シャルロットは帳簿を閉じ、穏やかに微笑んだ。
「皆さんのおかげですね」
仲間たちも嬉しそうに頷く。
しばらく帳簿を見つめていたシャルロットは、静かに口を開いた。
「皆さん」
「この利益を、街へ還元したいと思います」
「街へ?」
ソレイユが首を傾げる。
「はい」
「孤児院で薬草教室を開きたいんです」
その言葉に、ソレイユの表情がぱっと明るくなった。
「薬草教室ですか!」
シャルロットは優しく頷く。
「薬草の知識があれば、身近な怪我や病気にも対応できます」
「将来、薬師や冒険者を目指す子もいるでしょう」
「少しでも、子どもたちの未来の力になれればと思うんです」
エレナは嬉しそうに微笑んだ。
「さすがはシャルロットなのじゃ」
「わらわも手伝うのじゃ」
リュンヌも拳を握る。
「力仕事なら任せて!」
ルークも笑顔で頷く。
「僕は教材を作るよ」
ソレイユも元気よく手を挙げる。
「受付や準備は私にお任せください!」
アマリリスはくるりと宙で一回転した。
「じゃあ私は子どもたちのお姉さん役ね!」
「今日はみんなにも私の姿を見せるわ!」
仲間たちは思わず笑みを浮かべる。
シャルロットも嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます」
数日後。
フルール孤児院。
中庭には長机が並べられ、その上には薬草や乳鉢、小瓶が整然と並べられていた。
教室の開催を知った子どもたちが、目を輝かせながら集まってくる。
「今日は薬草教室へようこそ」
シャルロットが優しく挨拶すると、子どもたちは元気よく頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
シャルロットは一本の薬草を手に取る。
「これは回復草です」
「擦り傷や切り傷に使われる、とても身近な薬草ですよ」
「わあ!」
「いい匂い!」
子どもたちは興味津々に薬草を見つめる。
ルークは黒板へ薬草の絵を描きながら、特徴や効能を分かりやすく説明していく。
エレナは子どもたちへ薬草を配りながら、優しく声を掛ける。
「皆、慌てなくてもよいのじゃ」
「順番に配るゆえ、安心するのじゃ」
リュンヌは机や道具を運び、ソレイユは小さな子どもたちの手伝いをして回る。
アマリリスも子どもたちの輪へ加わり、一緒に薬草を並べたり、小さな子の手を取って教えたりと楽しそうに教室を手伝っていた。
「お姉ちゃん、空を飛んでる!」
「すごーい!」
「ふふっ」
「今日は特別よ!」
アマリリスがくるりと一回転すると、子どもたちから歓声が上がる。
「先生!」
「この草とそっくりだけど、何が違うの?」
シャルロットは二本の薬草を並べて微笑む。
「いい質問ですね」
「葉っぱの裏を見てください」
「こちらには細かな白い毛があります」
「これが見分けるポイントなんです」
「ほんとだ!」
「全然違う!」
子どもたちは歓声を上げながら夢中で薬草を見比べていた。
その無邪気な笑顔を見つめながら、シャルロットも自然と微笑む。
(知識は、人を救う力になります)
(だからこそ、この子たちへ受け継いでいきたい)
その想いは、前世から何一つ変わっていなかった。
夕暮れ。
孤児院には子どもたちの笑い声が響き、薬草の優しい香りが風に乗って広がっていく。
シャルロットは仲間たちと子どもたちの笑顔を眺めながら、この街で暮らせる幸せを改めて噛み締めるのだった。




