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元大聖女シャルロットは、転生してからスローライフを満喫するようです!?  作者: Atelier Lotus


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第71話 天才魔法使い

 十五歳の誕生日。


 ルークは、フルール神殿で成人の儀を迎えていた。


 神殿には同じ年頃の少年少女たちが集まり、一人ずつ魔法適性の測定を受けていく。


 やがて、ルークの番が訪れた。


 神官は静かに魔導具へ手をかざす。


 淡い光がルークの身体を包み込み、その魔力を測定していく。


 次の瞬間だった。


 魔導具が、眩い光を放った。


「……っ!」


 神官たちの表情が一変する。


「この数値は……」


「まさか……」


 周囲にいた神官たちも慌てて魔導具を確認し始めた。


 静まり返る神殿。


 やがて、年長の神官が厳かな声で告げる。


「ルーク・メシャント殿。」


「あなたは歴代屈指の魔法適性を有しています。」


「神殿は、あなたを天才魔法使いとして正式に認定します。」


 どよめきが広がった。


「歴代屈指だって……!」


「すごい……!」


「将来は宮廷魔術師かもしれないぞ!」


 ルークは驚きながらも深く一礼した。


「ありがとうございます。」


 その日の夕方。


 シャルロット薬舗。


 食事を終えたルークは、神殿の図書室から借りてきた数冊の古い論文を机へ並べていた。


「姉さん。」


「少し付き合ってくれる?」


 シャルロットは微笑んだ。


「もちろんです。」


 ルークは一冊の論文を手に取る。


「ずっと考えていたんだ。」


「どうして姉さんは魔法が使えなかったのか。」


「それに、ジェネラルオーガとの戦いで見せた、あの不思議な力。」


「きっと理由があるはずなんだ。」


 シャルロットも静かに頷く。


「私も知りたいです。」


 二人は並んで論文を読み始めた。


 魔術理論。


 古代魔法。


 魔法史。


 何冊も読み進める中、一冊の古びた論文が目に留まる。


 表紙には、見覚えのある名前が記されていた。


 『魔法適性理論(ミア理論)』


 著者――


 ミア・フォン・ヴァイスラント。


 その名前を見た瞬間、シャルロットは懐かしそうに目を細めた。


(……ミアさん。)


 百年あまり前。


 ヴァイスラント帝国皇妃。


 大魔法学者クロエの弟子として魔術を学び、『妖精誘導理論』と『魔法適性理論』を完成させた天才魔術師。


 さらに、高純度の魔法石を用いた魔導暖房器具を開発し、極寒のヴァイスラント帝国を寒さから救った英雄でもあった。


 その功績は世界中へ広まり、人々の暮らしそのものを変えた。


 前世のシャルロット――大聖女ミュゲも、そんなミアの歩みを温かく見守っていた。


(本当に……立派な魔術師になられましたね。)


 懐かしさを胸に抱きながら、シャルロットは論文を開く。


 整った文字で、びっしりと書き込まれた記録。


 そこには、魔法適性の理論だけでなく、誰にも語られることのなかった魔法の真理が記されていた。


 『光魔法体系』


 ルークは思わず息を呑む。


「光魔法……?」


 一方、シャルロットは静かにその文字を見つめた。


(光魔法を……理論としてまとめられたのですね。)


 前世のミュゲにとって、光魔法は当たり前のように使ってきた力だった。


 光の聖剣を顕現させ、人を癒やし、穢れを祓う。


 しかし、それがどのような原理で成り立っているのかを考えたことは一度もなかった。


 この論文には、その力の本質が、魔術理論として詳細に記されていた。


(さすがです、ミアさん……。)


 シャルロットは心の中で静かに感嘆した。


 そこには、こう記されていた。


 ――光魔法とは、魔素を完全に四属性の魔粒子エレメントへ分解した際に発生するエネルギーを利用する特殊な魔法体系である。


 通常魔法は、魔素から必要な魔粒子を抽出し、制御することで発動する。


 しかし光魔法は、その根本原理そのものが異なる。


「だから……。」


 ルークは論文から顔を上げた。


「だから成人の儀では反応しなかったのか。」


 シャルロットは首を傾げる。


「どういうことですか?」


「成人の儀で測っているのは、四属性魔法への適性だけなんだ。」


「でも光魔法は、四属性魔法とはまったく別の体系だった。」


 ルークは静かに微笑んだ。


「だから、姉さんは『魔法適性なし』と判定された。」


「本当は、光魔法の適性者だったのに。」


 シャルロットは静かに目を見開いた。


「……そういうこと、だったのですね。」


 胸の中で、長年抱き続けてきた疑問が、ようやく一つ解けた気がした。


 二人は再び論文へ視線を落とす。


 その先には、まだ知らない世界の真理が記されている。


 ルークは決意を新たにした。


(姉さんの力の正体を、必ず解き明かす。)


(そして、姉さんのように人を救える魔法使いになる。)


 静かな夜。


 一冊の古い論文は、姉弟の前に新たな世界への扉を開こうとしていた。

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